議論の余地ある問題に権威ある説を引用して、躍起になって性急に決着をつけようとする人々は、自分の理解力や洞察の代わりに、他人のものを動員できるとなると、心底よろこぶ。
かれらにはそもそも理解力や洞察が欠けている。こうした人々は無数にいる。セネカが言うように「誰だって、判断するより、むしろ信じたい」(『幸福な人生について』)からだ。

ショーペンハウアー『読書について』