「人生 スマブラ」

かつてスマブラSP最強の宅オフとして賞賛と羨望を集めたつーたら宅。
その家主の一人であった男のTwitterプロフィールに書かれていた言葉だ。
スマブラforではルカリオを駆り世界で注目を集め、SPにおいても界隈の中心として活躍を続けてきた。
そんな彼も強力なDLCキャラクターの追加や、バランス調整での冷遇により、煮え湯を飲まされてきた一人だ。

ルカリオを使いたい

そんな彼の純粋な想いは報われることなく、ルカリオの相対的な弱体化は進んでいった。
それでも彼は持ち前のセンスを発揮し、さまざまなキャラクターを使いこなすプレイヤーとして、上位に君臨し続けていた。
君臨し続けるはずだった。

コロナ禍で宅オフでの活動が制限される中、強力なDLCキャラクターが次々と追加され、彼の求めるスマブラは徐々に過去のものとなっていった。
極めつけは、つーたら宅よりさらに優れた宅オフの出現だった。
設備、環境、そして人。プロゲーミングチームの持ち物であるその宅オフに、つーたら宅がかなうはずもなかった。
モチベーションが失われていく中、それでも彼は大型大会を目指して、閑散とするつーたら宅で、一人、研鑽を積んだ。

10月31日。その日、つーたら宅の常連としてともに鍛えあった彼が、実装して2週間のDLCキャラクターを使って大型大会で優勝を飾った。
自分の中で、何かが終わった気がした。

「スマブラSP、大満足致しました。」

1月の大型大会でも入賞を果たすが、もはやスマブラSPで彼の心の穴が埋まることはなかった。
Twitterプロフィールには、いつしかスマブラ以外の単語が追加され、生活からスマブラが消えていった。

3月、彼は遊戯王に打ち込んでいた。

そんな中、あの大会で、ソラとともに鮮烈な優勝を果たした彼がスマブラの活動を休止し、別ゲームに専念することを発表した。
かつて、つーたら宅の常連だった彼とは、すっかり顔を合わせることも連絡を取ることもなくなっていた。

ふと、Twitterのプロフィールが目に入る。潮時だと、察してしまった。
さあ、イベントに向けてデッキの調整をしよう。

「人生 遊戯王」