何度同じ時間を繰り返してもザクレイがスマブラを辞めてしまう――
KENは幾度となくタイムリープを行い、1度として引き留めることはできなかった。
ループの中で起こるザクレイのモチベーションを下げる要因、そのうちスマブラに関することだけでも阻止できないか。
ただそのためだけにKENはひたすらに腕を磨き上げ、そして良心を捨てる覚悟を決めた。
篝火4、西武撃8でプロトバナムを止め、彼にかわってSummit 4の招待を獲得。
スマバト24にも参加し、あcolaの初出場初優勝も全試合タイムアップで阻んだ。
これならあるいは――

「ありがとな、KEN。でも俺も気づいてたんだ、KENがループさせてまで俺を引き留めようとしてくれてたこと」
「それで思ったんだ。このまま放っておけばさあ、KENはきっと日本最強のプレイヤーになってくれるんだろうって」
「俺はKENのスマブラに憧れてきたから、KENが最強なら気持ちよくユナイトに行ける」
「スマブラにも俺のことをこんなに思ってくれるやつがいるって嬉しかったよ」
「もうループすることはないよ、悪いけど。修正の依頼を出しておいたから」
「流石にそれは『バグ修正』の範囲だもんな」

最後の最後までザクレイの手のひらの上だった。
今までがウソだったかのようにループは終わり、そして本来は別の誰かだったはずの日本最強となった。


「闘龍門極第九十六回優勝者はKEN! おめでとうございます〜!」