秋のお化け [無断転載禁止]©2ch.net
秋の影
陽が傾き、木々の葉が赤く染まり始めた秋。大学生の真由は、一人暮らしを始めたアパートで奇妙な体験をし始める。
ある晩、真由は部屋の窓辺から外を眺めていた。薄暗い月明かりに照らされた木々は、まるで影絵のように揺れていた。すると、その影絵の中に、一人の少女の姿が浮かんだように見えた。
少女は白いワンピースを着て、長い髪を垂らしていた。真由は声をかけるが、返事はない。少女はただじっと真由を見つめている。
恐怖に駆られた真由は、目をそらして部屋の奥に逃げ込んだ。しかし、目を閉じていても、少女の視線が感じられる。
翌朝、真由は窓辺を確認するが、何もなかった。しかし、あの少女のことは忘れられなかった。
それからというもの、真由は夜になると、必ず少女の幻影を見るようになった。少女はいつも同じ場所で、同じように真由を見つめている。
真由は、アパートの管理人に相談してみるが、取り合ってもらえない。近所の人にも聞いてみるが、誰も少女のことを知らないという。
真由は、次第に精神的に追い詰められていく。もうアパートにいるのが怖くなり、引っ越すことを決意する。
引っ越しの日、真由は荷物をまとめて部屋を出ようとした。すると、背後から声が聞こえた。
「待って…」
振り向くと、そこにはあの少女が立っていた。少女は、真由に微笑みかける。
「やっと会えたね…」
真由は恐怖で声も出ない。少女はゆっくりと真由に近づいてくる。
「ずっと待ってたんだよ…」
少女の手が真由の首に伸びてくる。真由は目を閉じて、覚悟を決めた。
しかし、何も起こらない。
目をそっと開けると、少女の姿は消えていた。
真由は呆然と立ち尽くす。何が起こったのか理解できない。
その後、真由は二度と少女の幻影を見ることはなかった。
しかし、あの少女のことは、真由の心に深い影を残した。
真由は、今でも時々あの少女のことを思い出す。そして、自分が本当に少女を見たのかどうか、未だに分からない。
秋になると、真由はいつもあの日のことを思い出す。そして、木々の影の中に少女の姿を探してしまう。