民家にたどり着いたのはそれからしばらくのことだ。

「ここが、ユキさんの家ですか?」

 肌寒い針葉樹林を抜けて見えてきた景色。
 そこにあるのはみすぼらしい古家と、ボロボロに崩れ落ちた井戸。
 あられや吹雪などに傷つけられた痕跡が残され、その被害は道中の木々にも見られた。

「っ……、この雪山って自然災害とかの被害が大きいんですか?」
「ぴゅうう……そうなの。だから将来はあったかいところに住みたいの」

 目をそむけるような表情を見ていると、少年もなんだか悲しい気持ちになった。