月刊「正論」2020年5月号
消えた9億円 仮想通貨扱う保守系団体で内紛 (ジャーナリスト 坂田拓也)より抜粋
https://www.fujisan.co.jp/product/1482/new/ 

「仮想通貨の発行を名目に、数百人の投資家から9億円を集めることに成功しました。しかし仮想通貨を発行する前に、ほぼ使い切ってしまったのです。これだけの金がどこへ消えたのでしょうか。」
複数の内部関係者が怒りを向ける先は、「保守」を掲げてイベントを開催している一般社団法人「JCU」の饗庭直道議長(53)である。

「饗庭さんは、JCUを設立する時に有志の寄付などで1億円の基金を作りました。しかし十名に満たない組織でも、イベントの開催費用やスタッフの人件費がかさむ一方、保守を理念に掲げても資金は簡単に集まらず、ほぼ一年後に使い切ってしまいました。
その後、饗庭さんは自身の資産を売却するなどして1億円を準備しましたが、それも底を突きかけ、17年末に開催したJ-CPACの費用が払えないほど追い込まれたのです。」(内部関係者の一人)

17年末冬―。饗庭氏は、慶応の先輩からアドバイスを貰ったと前置きし、「仮想通貨を発行してこの難局を乗り越える」と言い出したという。
すぐに計画立案に着手し、ホワイトペーパー(プレゼンテーション資料)が作成され、仮想通貨は「リバティー」と名付けられた。
幸福の科学の機関誌の誌名でもあるが、関係者は「無関係だ」と説明する。

プレゼン資料では、饗庭氏がトランプ大統領と二人で写った写真や、ペンス副大統領らと写った写真などが添付された。
そしてアジア太平洋地域の保守活動の促進を目指し、将来は仮想通貨リバティーを活用して「保守の一大コミュニティーを創出する」と謳われた。

「饗庭氏自身もZoomのカメラに向かって投資家へプレゼンテーションしました。饗庭氏の名前(直道)は、幸福の科学の大川隆法総裁に名付けられたものですが、JCU立ち上げ後もそのまま使っています。信者に大きなアピールになったのだと思います。」(同)
だが実際の金集めは、"マルチまがい"と取られかねないものだった。


「饗庭さんの知人の幸福の科学信者の松本充弘さんと、金集めが得意なTさんの外部の二人が販売代理人となり、正式に契約は交わしませんでしたが、販売額の10%をボーナスとして支払う約束をしました。
松本さんのグループを通じてお金を出した大半は信者とみられます。個々のセミナーでは、リバティーの価値は十倍にも二十倍にもなると宣伝されました。」(同)
保守のコミュニティー創出を理念に掲げた仮想通貨事業は、しかし発行よりも金集めが先行した。

仮想通貨リバティーは、国内法の規制や課税を回避するためにシンガポールに設立した法人が発行することになった。
プレゼンテーションが成功して18年1月から投資家が続々と入金を始めたが、仮想通貨を発行するリバティーエコシステム社を設立したのは、入金が始まった5か月後だったのである。
当初は口座も準備されたなかったと見られ、投資家が入金する口座は饗庭氏の個人口座やJCUの法人口座など複数あった。
後に沖縄銀行の東京支店に専用口座を開設して一本化された。

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