電話での振り込め詐欺やネットの詐欺メールなどでは、話があまりにも不自然だったり、文章が多少おかしかったりすることが多い。
しかし、こうした犯罪に詳しい人によると、実は普通の人が騙されないような文章を送ることは、「騙されやすい普通じゃない人」を抽出するための手段だという。
もし、詐欺の途中でこれはおかしいと気づかれ、警察に届けられたりすると、詐欺師としては不都合だ。
むしろ、最後まで騙し続けられる「カモ」を探すには、最初の段階で明らかにおかしいものを提示し、それでもおかしいと思わない人を選び出す必要がある。
 これと同じように、競合優位性がないコンテンツにお金を払う人を見つけるためには、最初の段階で明らかに「炎上」するようなコンテンツを提供し、それを批判するのではなくむしろ呼応するような読者だけを、効率的に探し出す必要がある。
 そして、そのような読者にとっては、多くの人に批判されても自分の意見を曲げない筆者はある種「殉教者」であるから、逆に信仰の対象となるのだ。
かくして、「炎上」を好む読者は、有料課金型のコンテンツビジネスにとって、良い潜在顧客になるのである。
『戦略がすべて』瀧本哲史・著、新潮社