政府・与党は仮想通貨の取引などで得る所得の悪質な申告漏れを防ぐため、仮想通貨交換業者などに情報を照会する制度を設ける方針を固めた。今は業者が個人情報の提供に応じる義務はなく、税逃れを追い切れない。
悪質な取引への税務調査を徹底し、
税金をきちんと払っている人との不公平感をなくす。

取引にかかわる氏名と住所、マイナンバーを交換業者などに求める「情報照会制度」をつくる。与党の税制調査会で議論して2019年度の税制改正大綱に反映し、国税通則法の改正を目指す。

仮想通貨の売買やシェアリングサービスなどのオンライン取引は、誰が実際に取引をしているのかを当局が把握しづらい。どのくらい申告漏れがあるのかすら分からないのが実情だ。

新制度では悪質な申告漏れが疑われる取引について、氏名などを事業者に照会する。照会の乱発を防ぐため、税務署が入念に事前調査をすることを条件とする。
照会を不当に拒否した場合には、懲役1年以下または罰金50万円以下の罰則を設ける。

照会できるケースは限定する。例えば過去1年間の税務調査で、取引をしている人の半数以上が申告漏れ状態と判断できた場合や、脱税目的が疑われる不自然な取引形態の場合などに限る。高額の申告漏れに的を絞るため、
取引で得られる利益が1000万円未満のようなケースは対象から外す方針だ。

経済のデジタル化に対応した所得の把握については、政府の税制調査会(首相の諮問機関)でも見直しを求める意見が出ていた。米国やドイツ、英国などでも同様の情報照会制度がある。

業者は顧客の情報をできれば外に出したくないうえ、守秘義務契約を交わしている場合もある。こうした事情にも配慮して「当局側の事前調査が不十分」などの不満がある場合には、国税不服審判所に不服申し立てをできるようにする。