◆洞窟のイデア

プラトンは著作『国家』の冒頭でソクラテスの言葉として
我々が見ている世界は全てかりそめの幻であり、真実ではないとした。

これは一般に『洞窟のイデア』とされている有名な話で、
この世界のありようを例えるならば、
世の人々は深く暗い洞窟の奥に閉じ込められており、
壁に映し出された物体の影しか見ることができないと述べている。

人々は首も視線も動かす事ができず、洞窟の奥側の壁を凝視する事しかできず、
人々の背後では火が焚かれている。

火の前を実体が横切ると、その影が壁に映り、
人々はそれを見て実体だと認識する。
人々は猫や樹木を見ていると思っていても、実際に見ているのは
背後に存在している猫や樹木の影にすぎない。
しかしそれに誰も気づいていな。

もし誰かひとりが自由に動けるようになって、背後を向いて実体を知ったり、
真実の世界を知ろうとして洞窟から脱出したとしたら、
最初は太陽の眩さに苦しみ、真実の世界の様相に戸惑うかもしれない。
しかしやがて世界の真の姿を理解し、影しか知らない人々を哀れむ事になるだろう。

一方で洞窟に残った人々にその話をしたところで、
彼らは目に映る世界だけが真実と思い込んでいるため、
真実を知るのを拒み、外の真なる世界について語っても、
こいつは頭がおかしくなったと思われて笑われ、排斥されるだろう…
というものだ。