(周りがみんな、君を悪く言っているよ。)
 芝村に、評判悪いよと教えました。
「…放っておけばよかろう。
 別に我らに直接害を与えぬ限り、なにを言わせても良いような気がするぞ。
 だいたい、いちいちそういう人間を殺していたら、我らは世界の半分以上を滅ぼさねばならんではないか。
 やってもいいが、後始末を考えると私はあまり世界を滅ぼすのは好きではないな。
 どうせなら、猫の観察の方が良い。
 そなたも、そう思わぬか?
 …いや。
 まさかと思うが、そなた世界の思想を統一化せねばならんと思っているのか?」
 舞は、恐ろしいものを見るようにこちらを見ました。
「そうだとしたら、我ら芝村すら思い付かぬような、恐ろしいことをよく考える。
 そなた、剛毅だな。
 世界中が「我は芝村」と言うのは、はなばた生活しにくいと思うぞ。
 一体誰が時計の電池を取り替えるのだ。
 思うに人間にはすべからく得意不得意があると思うぞ。部屋の時計の電池を買いに行くのを誰もが面倒に思ったら電池業界はどうなる。」
 舞は、かなり部屋の時計の電池にこだわっているようだ。
「うむ、忠告するが、今すぐ思想統一事業などやめよ。めいめい人が勝手なことを言うのはそう悪いことではない。
 私はネズミが嫌いだが、猫はそれがないとさびしく思うであろう。そうであれば、自分の都合でなんでもしていいという訳ではない。
 人も同じことだ。殺すのは簡単だが、いかなる我らして死者は蘇らせられぬ。
 覆水盆に返らず。軽々しく力は使わぬが良い。」
 なんだか良く分からないが、説教されました。
「話を聞いているのか? そなたのことだぞ。
 だが…そなたの心遣い、嬉しく思う。
 私のために進言したこと、嬉しかった。
 礼を言う。」