BABYMETALが欧米の聴衆を日本語の歌詞で魅了できる理由
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彼女の魅力は声量の大きさと音域の広さにもある。
ロックは地声でハイノートを出せば出すほど聴衆を興奮させる。
これが他のジャンルと違うところだ。

 ハイノートの音域の広さならクラシックの声楽家にはかなわない。
クラシックのソプラノではhihiD(D6)までは普通に必要とされる。
ただし、クラシックではすべて裏声(頭声)だ。

 一般的に言って、多くの女性はhiC(C5、ド)あたりから裏声に変わる(喚声点という)。
hiD(D5、レ)を地声で出せる女性歌手はそれほど多くはない。
SU−METALは完全な地声(胸声)でhiDを楽に出す。
当てるだけでなく、フォルテで伸ばす。これはすごい。
圧倒的な存在感を与える。かわいらしいソプラノボイスではなく、
胸に突き刺さるフォルテになる。
声量に余裕があるので、癇に障る悲鳴ではなく、
音を伸ばすだけで表現力豊かな音楽として聴こえる。

 たとえば、2枚目のアルバム「METAL RESISTANCE」(2016年)を聴くと、
大半の曲の最高音はhiC♯、hiDで、例外なく地声のフォルテである。
「KARATE」と「From Dusk Till Dawn」という曲では、hiE(ミ)まで地声で出している。
しかもノン・ビブラート、フォルテ一発で音程を当ててくるので、
聴き手は瞬間的に彼女の術中にはまる。
この手法を中学生のころから使っているのだ。
彼女の歌唱法はロックやポップスやクラシックではありえない。
つまりオンリーワンだ。

 地声のハイノートを要求されるのはミュージカルである。
ミュージカルでは地声でhiEくらいは普通に使う。
地声のメリットは、歌詞がよく聞き取れることだ。
ミュージカルは演劇なので、歌詞はセリフでもあるから、
聞き取れないとまずいのである。

 SU−METALはミュージカル女優と同じ手法で、
地声のフォルテでハイノートを当てているわけである。
しかも、ノン・ビブラート唱法はミュージカルでも聴いたことはないから、
やはりオンリーワンだ。
青少年の合唱団の歌い方に聴こえるというが、
合唱団はクラシックが基本なので裏声を使う。
やはり、SU−METALの地声はオンリーワンである。

 あの強烈で美しい地声のハイノートは実に魅力的だ。
下から上の音域まで地声で通し、
フェスで数万人の聴衆を前にしても一発で音程を当てる度胸はすごい。