【抜粋3】

『メンバー3人の個性や自由なアイデアを大切にしたいとは、振り付け担当のMIKIKO氏ともよく話しています。』

『制作サイドで練りに練って考えたことを逐一、彼女たちに伝えることはあえてしていないです。』

彼女たちの、大人には生み出せない自由な発想や仕草はダンスの振り付けに多数取り入れられている。

『最初は生バンドじゃなくてもいいって思っていたんです。でもやってくうちに生バンドで見てみたいって思うようになっちゃって(笑)』

当初は骨の衣装を着た、当て振りバンド(エアバンド)とカラオケでライブをしていたが、
音響の技術がかなり進歩している今でも、録音と生演奏では躍動感や音圧が格段に違う。
特に音質に重きを置くメタルミュージックではそれが顕著なので、彼は一人のメタラーとして許せなくなってしまった。

『しっかりと演奏できて、メタルの神に変身してくれる人、世界観を楽しんでやってくれる人を探すのに本当に苦労しました。
普通の人間が後ろで演奏してたら世界観が壊れちゃうから。』

当初このプロジェクトには少ない予算しか与えられていなかった。これらを限られた予算枠の中でやるというのはかなりの高望みであった。

またBABYMETALではコンピューターで作曲をするケースも多く、人間が演奏する事を前提に作られていないフレーズも多くある。
それを人間が再現するとなると、要求される演奏のレベル・テクニックがかなり高くなってしまう。
なおかつ化粧をして自分の顔も名前も隠して、フロントはローティーンのアイドル、しかも曲はイロモノ・・・。

『神バンドの最初のコンセプトは『テクニカル』でした。個人のスキルはもちろんピッタリと息が合った演奏が必須でした。』

しかも求めていたのは個人のテクニックだけでなくバンドとしての「一体感」。
いくら一人一人がプロフェッショナルでも、人間同士の仕事なのでどうしても相性が出てきてしまう。
コンピューターとの協調性を得意とするプレイヤーもいればそうでないプレイヤーもいる。
レコーディングだけなら後で音をコンピューターでイジリ倒してどうにかできるが、
生ライブで表現するとなるとごまかしが利かない。しかもメタルは演奏が細かい・・・。

後にKOBAMETALは『業界人に評判がいい』と語っているが、それはコンセプトやセールスなどではなく、
舞台関係者や裏方で仕事をしている人達は、このプロジェクトの本当の恐ろしさに気付いているからだ。

『神バンド対しては、女の子だから、アイドルだからって手加減はいらない。
ゴリッゴリのバッキバキでやって欲しいって言ったんです(笑)』 

『ヤバくないすか?歌が乗るのに爆音過ぎじゃないすか?ってバンド側が遠慮する事もあったんですけど、
常に振り切ってくれってお願いしましたね(笑)』

『メタルと名乗ってる以上はバンドでちゃんと魅せないと、って思ったんです。
そのためには生バンドでの修行に出なきゃいけないなって。それで5月革命をやりました。』

『メンバーは3人ですけど、バンドが4人、マニピュレータ1人=実演奏者8人。
スタッフなどは普通のバンドの倍以上。メイクも二人以上。3人用と神バンド用。スタイリストも同じ。
かなり大所帯なんだけど、無理してでもやろうってなったんです。やらないと次に進めないって感じたから・・・。』

妥協してもいいタイミングなんて、いくらでもあった。

しかし、大人達がくじけそうになった時でも、日に日に肥大化してゆくプロジェクトの中で、
BABYMETALの3人は常に高いプロ意識でフロントマンとしての「仕事」をしていた。
彼女たちの高いプロ意識と、時折見せる「あどけなさ」を目の当たりにする度に、大人達は我に返った。

やろうと思った。やり抜こうと思った。
やらないと次に進めないと思ったから。