筆者は現行型のマツダ ロードスターのことを素晴らしいクルマだと思っている。
各位にも、もしもその気があればご購入を強くおすすめしたいほどだ。
だが同時に、こうも思わざるを得ないのである。
「初代からわざわざ時間をかけてコレを実現させたわけで、それはそれで素晴らしい営みなんだけど、
よく考えたら26年前の初代ロードスターでもほとんど同じ快感は得られるじゃないか」
そうなのだ。1989年に登場した初代マツダ ロードスターと2015年に登場した4代目の
同ロードスターは、その本質においては「ほぼ同じ」なのだ。
いやもちろん「洗練」や「安全性」といった部分においては、年月なりの雲泥の差はある。
人馬一体でありながら洗練もされている現行型と比べてしまえば、
初代ロードスターはガタピシいいながら走る「古くさいクルマ」だ。
しかし、現行ロードスターの部分で述べた「曲がろう、加速しよう、減速しようというドライバーの
瞬間的な想念と意志が、そのまま(ほぼ)瞬間的にクルマへと伝わる」という、
ロードスターにとっての本質的かつ最大の美点においては変わらないというか、大差はないのだ。
もちろん「絶対的な性能」に関しては現行型のほうが明らかに上であることは間違いない。
しかし、いろいろな部分の作りがプリミティブな初代ロードスターだからこそ堪能できる
「感覚的な性能(というか楽しさ)」というものも、世の中には確実にある。
もしもそこも勘定に入れるのであれば、2015年に生まれた現行マツダ ロードスターと
1989年に誕生した初代マツダ ロードスターの勝負は、筆者に言わせれば「イーブン」だ。
そこに優劣はなく、ただ好みと美意識、人生観の違いがあるだけなのである。
現行型と初代のどちらを好むか。
どちらがある人生を、より美しいと感じるかは人それぞれだ。