初代NSXが出たのは1990年。
すでに日経平均株価は下落を始めていたが、バブル崩壊に気づいていた日本人は
ほとんどおらず、空前の好景気が続いていると思われていた。
そんな時代に、日本初のスーパーカーが登場したのだ。
なにしろ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と、日本人が自らに酔っていた時代。
初代NSXの発表当初の価格は800万円(ATは60万円高)。今思うと驚くほど安い。
1990年当時の日本人の平均年収は425万円で、現在とほとんど同じ。
収入が増える中、800万円で日本初のスーパーカーが買えるとなれば、
多くの人が「欲しい!」と思って当然ではないか?
対する現行NSXはというと、まず価格が2370万円。初代の約4倍だ。
日本人の平均年収はこの28年間でほとんど増えず、むしろ減っているくらいだから、ハードルは4倍も高くなった。
フツーの日本人には到底買えない。つまり自分とは関係ない。周囲にも熱狂はない。
速く走ったって誰も喜んでくれないし、逆に危ない、怖いと嫌われる。
あの頃とは時代が変わってしまった。醒めるのも当然だ。
ところで、なぜNSXはこれほど値上がりしたのか。
実は、日本以外の先進国にとっては、NSXは特に高くはなっていないのだ。
この28年間で、アメリカ人の平均年収は約2.5倍になっている。
富める者はますます富み、貧富の差が広がっているので、
スーパーカーが買える層の年収は、おそらく4倍以上になっている。
NSXの値段が4倍になっても、価格据え置きみたいなもの!
この28年間、先進国の中で日本だけがデフレで苦しみ、平均年収が上がるどころか下がってしまったので、
相対的にNSXがメチャメチャ値上がりしたように感じるだけなのである。