プロジェクトX〜挑戦者たち〜  不正の嵐のスバル。砂粒のような良心

2017年、広報部長は、頭を悩ませていた。調査報告の締切が迫っていた。
無資格検査の報告だけでは許されなかった。もっと調査しろと怒られた。思案にくれていた時、社長は意外な事を言った。

「もうさ・・・全部吐いちゃったらどうだろう。」 広報部長は戸惑った。 確かに全部話せば楽になれる。しかしそれではこれまで濡れ手に粟で稼いだ利益が無駄になる。
「無理です。出来ません」広報部長は思わず叫んだ。「なら少しでも誤魔化すんだ。コレまでの利益を吹っ飛ばすつもりか」

社長の熱い思いに、広報部長は、心を打たれた。「やってみます」
それから夜を徹して文言を考え、調査報告書を作成した。
しかし、あまりにも内容が濃い。調べれば調べるほど不正が出てきて収拾が付かない。
燃費データ書き換え、排ガス検査数値書き換え、ブレーキテスト、操舵角テスト、スピードメーター検査、湿度管理もヤカンで湯を沸かしていたらしい。。
広報部長は、大きなニュースや週末に合わせて小出しに発表を繰り返した。「そろそろ限界だ・・・CMを増やして誤魔化すか!」追い詰められていた。

暫くすると社長が現れた。そしてこうつぶやいた。
「発想を変えるんだ。自動車評論家が問題ないとお墨付きをくれたらどうだ?」

そうだ。エビカニだ。
スペック厨が多いスバリストは自動車評論家の言うことは鵜呑みにしてくれる。エビカニ送って改善されるなら儲けもんだ。
暗闇に光が射した気がした。

広報部長は有名自動車ヒョウンカに記事を依頼してみた。
「ここからが自動車ギョウカイの奥行きや難しさになるのだった」
良い感じだ…自然に制度が悪いという方向に話をすり替えてくれた
「社内規定には届かないが保安基準内なので問題ない」
社内基準が厳しかったと取れる…これも良い感じだ

「これだ、これが探してた俺たちだけの安心技術なんだ!」
社長と広報部長と従業員は、工場の片隅で朝まで飲み明かした。 広報部長は、すきま風に晒され、震えが止まらなかった。
「社長、俺、すきま風対策にガムテープで目張りしますよ!」若手従業員は言った。
「ああ、よろしく頼む。綺麗にふさがったら加湿器を購入してやるからな。」 社長は自分のジョークに、肩を揺らして笑った。