ある国に、新しい物好きの王様がいた。
ある日、お城にセールスマン二人組がやってきた。
彼らはなんと、「水しか出さない究極のエコカー」を作ることができるという。
王様は大喜びで、国民に課した税金から大金を払い、FCVを注文した。
王様が役人を視察にやると、車からCO2が出ていないだけで、水素製造時にCO2を出していて、トータルでCO2が減っているようには全く見えない。
役人は、王様にはトータルでCO2が減っていなかったとはいえず「車から排出するCO2はありません」と報告することにした。
その後、視察に行った役人はみな「うちの役所でも温暖化防止のため税金でFCVを購入します」と報告する。
最後に王様が直々に視察に行くと「水しか出さない究極のエコカー」は、王様の目にもトータルでCO2が減っているようにはさっぱり見えない。
王様はうろたえるが、役人たちが「車から排出するCO2はありません」と言っているのに、「トータルでCO2が減っていない」とは言えず、
FCVの出来栄えを大声で称賛し、周囲の役人も調子を合わせてFCVを褒める。
いよいよ、王様のFCVは完成した。王様はお披露目のパレードを開催することにし、「トータルでCO2が減っていない」FCVに乗り、大通りを行進する。
集まった国民も「トータルでCO2が減っていない」とは言えず、歓呼してFCVを誉めそやす。
その中で、沿道にいた一人の小さな子供が、「FCVのCO2はトータルで減っていない、減っていない」と叫び、群衆はざわめいた。「CO2は減っていない?」「CO2は減っていないのじゃないのか?」
ざわめきは広がり、ついに皆が「CO2が減っていない!」「王様はCO2が減っていないFCVに税金で乗っている」と叫びだす中、王様のパレードは続くのだった。