残業してたんだわ、ついさっきまで。
残ってたのは、俺、女、イケメンの三人。
いつもどおり、黙々と仕事する俺は、その場に居ない事になってた。
…いいんだよ、それは別に。話し振られても、キョドるだけだしな。

そしたらさ、外が暗い中、部屋の電気つけて仕事してるもんだから、
経費削減で冷房代わりに開けてた窓から、一匹の蛾が迷い込んで来たのな。ふらふらっと。

俺、虫は苦手な方なんだけど、別に自分が危害加えられてるわけでも
ねぇし、ほっといたんだわ。そしたらさ…案の定、女が騒ぎやがって…
「キモい!キモい!○○くん(当然、俺じゃない)、やっつけて?」ってな。

イケメン様も、面白がって箒なんか持ち出しちゃってさ、ぶんぶん振り回して、ふらふら逃げる蛾をおっかけてんだわ。
…何か、間が悪い蛾と、面白半分に殺戮を楽しむイケメン・女に、
普段の自分の生活がオーバーラップしちゃってさ。

たまらず、
「…部屋の電気を一旦消せば、外の明るさにつられて出て行くんじゃないかな?殺すこと、ないんじゃない?」って言った。
止せばいいのにな…当然、無視。シャレにもならんが。

意気揚々と蛾の死骸を窓から捨てるイケメン。
笑顔でそれを見つめる女。
俺は…なんか鼻の奥がツンとしてた。
…それだけだ。 長文ごめんな。('A`)