実際、ジョブズと禅には深い結びつきがある。
彼は青年時代から禅と接し、曹洞宗の僧侶である乙川弘文(おとがわこうぶん)老師に師事していた。

カウンターカルチャーが全盛を迎えた1960年代から70年代前半、若者たちは物質万能主義に疑念を抱き、
精神世界に関心を向けた。ジョブズも、72年に大学に入ると東洋思想に傾倒していく。なかでも仏教や禅には強い影響を受けた。
後年彼が語ったところによれば、「抽象的思考や論理的分析よりも直感的な理解や意識のほうが重要だと、このころに気づいたんだ」
(ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズI』講談社)という。