愛「恋バナしようよ!」 せつ菜・かすみ・しずく「!?」
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更新大変遅くなりすみません!
保守ありがとうございます。 歩夢の部屋
歩夢「ふー……」
歩夢(勉強も終わったし、そろそろ寝ようかな)
ピロン
歩夢(侑ちゃんからLINEだ)
侑:
歩夢、ベランダ出られる?
ベランダ
歩夢「侑ちゃん?」タタッ
侑「あ、歩夢。ごめんね遅いのに」
歩夢「ううん。どうしたの?」
侑「ちょっと歩夢と話したくなってさ」
歩夢「そっか」
侑「そろそろせつ菜ちゃんのライブの日だね」
歩夢「そうだね!」
侑「楽しみだなー」
歩夢「私と侑ちゃんが同好会に入るきっかけをくれたライブだもんね」
侑「そうそう!」
侑「私がこんなにスクールアイドルにハマっちゃうなんて、昔は思ってもみなかったよ」アハハ
歩夢「私も!」フフッ 侑「……」
侑「歩夢、話は変わるんだけどさ」
歩夢「うん」
侑「あんまり話したくないかもしれないけど……」
侑「歩夢、中3の時あの子と付き合ってたじゃん」
歩夢「うん……」
侑「どうして別れちゃったの?」
歩夢「……」
侑「ごめん、答えたくなかったら……」
歩夢「ううん、大丈夫だよ」
歩夢「どう言ったらいいのかな」
歩夢「実際付き合ってみたら、お互いに思ってた感じと違ったんだと思う」
歩夢「それですれ違っちゃって……」
侑「別れを切り出したのは歩夢からだったよね?」
歩夢「うん」
侑「辛かった?」
歩夢「辛かったかもしれないけど、そのまま無理に一緒にいる方がもっと辛いと思うから……」
侑「そっか」
侑「……」
侑「あのさ……」
侑「今日、かすみちゃんのこと泣かせちゃったんだ」 歩夢「……」
歩夢「喧嘩、しちゃったの……?」
侑「喧嘩とは違うんだけどさ」
侑「私、ちゃんとかすみちゃんの恋人できてなかったみたい……」
歩夢「それって、この前言ってたこと……?」
侑「うん。たぶんそういうこと」
侑「私の好きとかすみちゃんの好きは違うのかなって」
歩夢「ま、待ってよ……それじゃ今私に聞いたのって……」
侑「……」
侑「その……私も、まだわからないんだ」
侑「どうしたらいいのか、わからない……」
歩夢「……」
歩夢「どうすべきか決めるのは侑ちゃんだけど」
歩夢「私、かすみちゃんからたくさんお話聞いたから知ってるんだ」
歩夢「かすみちゃんが侑ちゃんのことどれだけ大好きか」
歩夢「心の底から大切に思ってるか」
歩夢「だから、それだけは伝えておくね」
侑「歩夢……」 その場ですぐ自分の気持ちがわかるくらいならこうなってないよね そっか。
私だって中学の時そうだったように。
付き合って恋人になることがゴールじゃない。
その先にはさらにいろんな出来事があるはずで。
場合によっては……
(侑「私の好きとかすみちゃんの好きは違うのかなって」 )
侑ちゃんとかすみちゃん。
大丈夫かな……
せつ菜「歩夢さん……?」
歩夢「……!」
歩夢「あ、ごめん、せつ菜ちゃん!」
せつ菜「何か考え事ですか?」
歩夢「ううん、何でもないの!」
歩夢「えっと、編みぐるみの話だよね!」
せつ菜「はい! やっぱり歩夢さんと侑さんのお揃いの編みぐるみ、とっても可愛いです!」
歩夢「ふふっ、ありがと!」
せつ菜「その……」
せつ菜「私も、歩夢さんと何かお揃いのもの持ちたいな、なんて……」
歩夢「お揃い?」
せつ菜「はい……」
歩夢「いいね! 何にしよっか!」
せつ菜「……!!」パアアア 当たり前だけど高校の時に付き合ってそのままという方がずっと少ないしな ◆
歩夢「それじゃせつ菜ちゃん、明日のライブ頑張ってね!」ニコッ
せつ菜「はい! 熱いライブにしてみせます!」
歩夢「すっごく楽しみなんだー!」ニコニコ
せつ菜「……っ」ドキッ
せつ菜「……」
せつ菜「あの、歩夢さん……」
歩夢「うん?」
せつ菜「明日のライブが終わった後、少しだけお時間いただけませんか?」
せつ菜「歩夢さんに大切なお話があるんです」
歩夢「……」
歩夢「うん、いいよ」 部長「明日はせつ菜ちゃんのライブだね」
しずく「はい、楽しみです!」
部長「ふふっ」
しずく「……」ボーッ
部長「……」
部長「しずくさ、何か悩んでる?」
しずく「え……?」
部長「最近のしずく、たまに元気ない気がして……」
部長「何か悩みでもあるのかなって、ちょっぴり心配なんだよ」
しずく「それで最近遊びに誘ってくれたりしたんですか?」
部長「ま、まあ……」
しずく「部長は優しいですね」フフッ
しずく(そっか……)
しずく(部長もこんな私のこと、心配してくれてたんだ)
しずく「……」
しずく「悩み、というより……」
しずく「私、失恋したんです」
しずく「それはもう気持ちいいくらいフラれちゃって」
部長「そうだったんだ……」
部長「ごめん……」
しずく「いえ、部長のおかげでだいぶ気は晴れましたから」
部長「ちなみに、さ……その相手って……」
しずく「スクールアイドル同好会の先輩です」
しずく「彼方さん」
部長「……」
部長「彼方……」 翌日 ライブ会場
しずく「部長! 始まっちゃいますよ!」スタスタ
部長「うん、待ってしずく!」
しずく(それにしてもお客さんたくさん!)
しずく「あ、彼方さんたちだ!」スタスタ
しずく「こんにちは!」
彼方「おー、しずくちゃーん!」
エマ「そろそろだよー!」
果林「あら、演劇部長さんも一緒なのね」
部長「せつ菜ちゃんのライブはやっぱり気になるからね!」
彼方「……」チラッ
部長「彼方、久しぶり」ボソッ
彼方「うん……」
しずく「……?」 せつ菜も決心しちゃったか
歩夢も薄々察してそうだしどうなるんだろう ◆
せつ菜「夢はいつかー♪」
せつ菜「ほーら、輝き出すんだ!」
ワーワーワーワー
「せつ菜ちゃん可愛いー!!」
「きゃー、せつ菜ちゃーんー!!」
「せつ菜ちゃんカッコ良すぎ!!」
歩夢「……」
歩夢(やっぱりせつ菜ちゃんって凄いな……」
◆
愛「せっつー、すっごく良かったよ!!」
侑「うんうん! せつ菜ちゃんのライブ本当にトキメいちゃうよ!!」
歩夢「ファンのみんなもすごく盛り上がってたよね!」
せつ菜「皆さん、ありがとうございます!」
彼方「じゃあこの後は打ち上げだねぇ」
エマ「うん。まだまだ感想たくさん言いたいしね!」
せつ菜「はい!」
せつ菜「私はまだやらないといけないことがあるので、少し外しますね!」
果林「あら、何か手伝えることはある?」
せつ菜「いえ、大丈夫です! 皆さんは先に行っていてください!」
ピロン
歩夢「……!」カチャッ
せつ菜:
ステージ裏で待ってます。 ステージ裏
せつ菜「……」
ついに。
ついに、歩夢さんを呼び出してしまった。
この想いを伝えるために。
せつ菜「……」ギュッ
期待しちゃダメなのはわかってる。
そんな夢みたいなこと起こるはずないってわかってる。
でも。
それでも胸の鼓動は高鳴って。
同時にのしかかってくるのは、とてつもない不安。
もし、歩夢さんが来てくれなかったらどうしよう。
想いを伝えることすら許してくれなかったらどうしようって。
それでも今は待つのみだ。
伝えるべ言葉を心の中で唱え、深呼吸し、歩夢さんの笑顔を思い出し、
そして……
歩夢「せつ菜ちゃん」
せつ菜「……!」
せつ菜「歩夢さん……」 歩夢「ライブ、本当に素敵だったよ! お疲れ様!」
せつ菜「ありがとうございます」
せつ菜「歩夢さん、お呼び出てしてしまいすみません」
せつ菜「昨日お伝えしたとおり、歩夢さんに大事なお話があるんです」
歩夢「うん。なあに?」
歩夢さんの美しい瞳が私を見据える。
ついに、この時が。
せつ菜「歩夢さん……」
私は、
あなたのことが。
せつ菜「……っ!」
発したい言葉が喉まで出かかっているのに、それが声にならない。
あと一歩前に踏み出せない。
全身が硬直していることに気付いた。
あんなにイメージしたはずなのに。
練習したはずなのに。
歩夢さんを前にすると、これ以上、何も言えない。 ライブ後の高揚感で勢いそのままに告白とはいかないか 大好きな人にその気持ちを伝える。
これ以上ないくらい素敵なことのはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
胸が締め付けられるんだろう。
切り裂かれそうになるんだろう。
私は、
私は……
歩夢「せつ菜ちゃん」
その声にハッとする。
歩夢さんの声が、私の意識をその場に呼び戻したんだ。
鋭い興奮と共に。
いつものように優しく微笑んでくれている歩夢さん。
それが失速していた私に限りない勇気をくれて。
せつ菜「歩夢さん、大好きです」
せつ菜「私と恋人になってください!」 歩夢ちゃんがせつ菜ちゃんの背中を押してるのいいね
意外にもこの2人が最初の上手くいったカプになるんだろうか 歩夢「…………」
せつ菜「…………」
歩夢「ここに来たってことは、わかるでしょ?」
せつ菜「え……?」
歩夢「私で良ければ喜んで」ニコッ
歩夢「よろしくお願いします」 おつ
歩夢ちゃんは過去の経験あるから理解した上での答えと考えていいのかな りなあいのためには絶対に1人泣かないといけないのが辛いな 部長さんの今の気持ち知ったら彼方ちゃんはますます遠慮してしまいそう せつ菜上手くいったか良かったな…
と思いつつも今までの展開からしてまだまだ油断ならんね… ぽむせつは過去の失敗とデートの積み重ねがあるから上手く行く……はず…… 更新来てたのか ぽむせつはこのまま成功しそうだなぁ ライブ打ち上げ後
ワイワイ ガヤガヤ
部長「なんで私も参加しちゃったんだろ……」
しずく「別にいいじゃないですか!」ニコッ
部長「でも私部外者だし……」アハハ
彼方「その割には楽しそうにしてたじゃ〜ん」
部長「彼方……」
かすみ「ねぇねぇしず子ー! これ見てー!」
しずく「なあに、かすみさん」スタスタ
彼方「……」
部長「……」
部長「彼方も今度ライブやるんでしょ?」
彼方「うん。彼方ちゃんのライブはみんなでお昼寝するんだ〜」
部長「ふふっ、相変わらずだね」
部長「……」
部長「ねぇ彼方、ちょっと2人で話さない?」
彼方「……?」 部長「……」スタスタ
彼方「……」スタスタ
しずく「……?」
しずく(あれ、部長、彼方さんを連れてどこへ?)
しずく「……っ!」ハッ
しずく(まさか……!!)
(部長『彼方、あんた私の可愛い後輩のことフったらしいじゃない?』)
(部長『しずくは本気なのにどういうつもりなの?』)
(部長『普段お世話して貰ってるならデートくらいしてあげなよ』)
しずく(いやいやいやいやいや!!)
しずく(部長! 私のためでもそれは違います! 違いますよー!!) 部長「改まって言うのもなんだけど、なんて言うかさ、彼方にちゃんと謝れてなかったなって」
彼方「何のこと?」
部長「別れる前にさ、私ひどいこと言っちゃったじゃん……」
部長「遥ちゃんのこと悪く言ったりとか、彼方のことも、傷つけた……」
彼方「……」
部長「だから、ごめん。悪かったと思ってる」
部長「ちゃんと謝りたかったけど、なかなか言えなくてさ……」
彼方「そうだったんだ」
彼方「大丈夫だよ。気にしてないから」
部長「……」
部長「私さ」
部長「彼方と付き合ってた間、本当に幸せだったよ」
彼方「……!」
部長「それは伝えたかったんだ」
彼方「……」
彼方「そっか……」 しずくちゃんからだとそういう風に勘違いしてしまうのも仕方ないか 彼方「彼方ちゃん達、なんで別れちゃったんだろうね」
彼方「あんなに楽しかったのに……」
部長「それは、仕方ないよ」
部長「彼方は次の人とかいないの?」
彼方「いないよ〜」
部長「付き合ってた頃は随分モテモテだったみたいだけど」
彼方「それ君が言う?」
部長「私は普通だよ」
彼方「……」ムゥ
彼方「あのさ……」
彼方「久しぶりに彼方ちゃんちにご飯食べに来ない?」
部長「え……?」
彼方「やり直せないかな、私たち」
部長「…………」
しずく「……っ!」ギュッ 未練あるの彼方ちゃんの方だったか
しずくちゃんきっつ… かすみ「侑先輩、この前は変なこと言ってごめんなさい」
かすみ「かすみん、なんか熱くなっちゃって……」エヘヘ
侑「ううん。私の方こそ、ごめん……」
侑先輩と2人での帰り道。
侑先輩が一緒に帰ろうって言ってくれたのがすごく嬉しかった。
そしてそれは、駅に着いた時だった。
侑「え、あれ……!?」
侑先輩があることに気付く。
自分のバッグを凝視してから、青ざめた顔で私を見た。
私もそれに気付き、全身から血の気が引いていくのを感じた。
侑先輩がいつもバッグに付けている編みぐるみがなくなっていた。
歩夢先輩とお揃いの大切な編みぐるみが。 ◆
それから私と侑先輩で懸命に編みぐるみを探し回った。
歩いてきた道中を辿り、ライブ会場まで戻った。
でもどこを探しても見つからなかった。
かすみ「ライブが始まる前に、侑先輩のバッグについてるのは見た気がするんです」
かすみ「だからきっとこの道のどこかに……」
侑「……」
侑「かすみちゃん、一緒に探してもらっちゃってごめん」
侑「でももう遅いから、帰ろっか……」
かすみ「……」
かすみ「嫌、です……」
侑「かすみちゃん?」
かすみ「私絶対見つけますから! もう1回ライブ会場戻ってみます!」タタッ
侑「あ、ちょっと、かすみちゃん!」
諦めたくなかった。
どうしても見つけたかった。
だって、あれは…… もう一度ライブ会場をくまなく探す。
入口からステージ裏まで。
それでも見つからない。
歩夢先輩手作りのあの……
なんで。
なんで、なんで、なんで!!
お願い!
お願い、出てきてよ!
かすみ「ああっ!」ヨロッ
焦りのあまり足が躓いて転んでしまう。
かすみ「いてて……」
侑「かすみちゃん、大丈夫!? 怪我はない?」
かすみ「うぅ……」
顔を上げたその時。
その先の花壇の隅に。
かすみ「あ……」
かすみ「あったああああああ!!」 ◆
侑「かすみちゃん、本当にありがとう!!」
侑「ごめんね、洋服汚れちゃったよね」
かすみ「服は洗えばいいだけですから!」
侑「でも、私のために、こんなに……」
かすみ「えへへ、侑先輩のためなら当然です!」エヘヘ
かすみ「それに歩夢先輩のためにも……」
侑「え……?」
かすみ「もしその編みぐるみを侑先輩がなくしちゃったら」
かすみ「歩夢先輩、きっとすごく落ち込んじゃうと思うんです……」
侑「……」
かすみ「かすみん、歩夢先輩のことも大好きだから」
かすみ「侑先輩とかすみんが付き合うことで、歩夢先輩が寂しい思いするのだけは絶対嫌だなって……」
かすみ「ずっとそう思ってて……」
侑「かすみちゃん……」
かすみ「だから……」
かすみ「2人の宝物が見つかって、本当に良かったです!」ニコッ
侑「……!」 彼方「まさかしずくちゃんに聞かれてたとはね〜」
しずく「すみません。盗み聞きするつもりはなかったんですが……」
あたりはすっかり暗くなっていた。
公園のベンチで2人。
彼方さんは弱々しい表情でずっと下を向いていた。
こんな彼方さんは初めてだった。
彼方「彼方ちゃん、カッコ悪いよねー」
しずく「そんなこと、ないです……!」
この前私が感じたとおり、彼方さんの中には未練があったのだろう。
その相手には正直驚いたけど……
彼方「しずくちゃんにこんなこと言うの、彼方ちゃんひどいと思うけど……」
彼方「私、あの子のことまだ好きだったみたい」
彼方「今日話してみて、やっぱり好きだなって、思っちゃった……」
しずく「彼方さん……」
しずく「で、でも、部長もずるいですよね。幸せだったなんて言われたら、その気になっちゃいますよ」
彼方「ふふっ、しずくちゃんは優しいね」
彼方さんの頭が私の肩にもたれる。
彼方「少しだけ、こうしてていい? しずくちゃん」
しずく「……」 あまりにも弱った彼方さん。
私が慰めなきゃって、肩に乗る彼方さんの頭を優しく撫でる。
柔らかい髪。ふわふわとした感触が心地良い。
優しく、優しく。彼方さんに触れる。
そして、彼方さんの熱を感じる。
その熱にもっと触れたくなって。
指先をゆっくりと首筋まで移動させる。
さらさらな肌。そこをまた、慰めるように撫でた。
彼方さんはじっとして、黙っている。
指先はさらに彼方さんの熱を求める。
彼方さんに触れたい。
もっと先へ。奥深くへ。
しずく「……!!」
そこでピタリと手が止まる。
今、私はいったい何をしようとしてたんだろう。
最低なことをしようとした。
彼方さんの傷付いた心に付け込もうとしたんだ。
今なら、彼方さんが手に入る気がして。
しずく「……!!」グッ
そんな愚かな考えが一瞬でも脳裏を過った自分を恥じる。
欲望をぎゅっと堪える。
この時ばかりは、彼方さんへの気持ちを忘れないと。
そして、1人の後輩として、友達として、彼方さんの頭を優しく撫で続けた。 失恋直後は最大のチャンスとはいうけどなかなかいけないよね 侑の部屋
侑(かすみちゃん……)
侑(歩夢のことそんなに考えてくれてありがとう……)
やっぱりかすみちゃんって本当に良い子なんだな。
心の優しい子なんだ。
それにしても……
(かすみ『本当に良かったです!』ニコッ)
侑「……」トクン
あの時感じた、この胸がざわつくようなトキメキ。
せつ菜ちゃんのステージを観た時のトキメキとはまた違ってて…… 数日後
今日は侑先輩に夜ご飯に誘われていた。
侑先輩の方からそんな風に誘ってくれるのは珍しい。
以前なら頬が緩んでしまうところだけど、今回は素直に喜べなかった。
きっと侑先輩の方から何か話があるんだろうなって予感できたから。
それがいつなんだろう。いつ侑先輩の口から出るんだろうっていつも怯えてた。
今日がその日なんだ。
侑「これ美味しいね」
かすみ「そうですね!」ニコッ
侑「……」
かすみ「……」
料理は美味しかったけど、いつも楽しいはずの先輩との会話はまったく弾まなかった。
当然だよね。
侑先輩だって、私がこれから言われることを覚悟してるって、雰囲気で伝わっているんだと思う。
食事中はずっと重い空気だった。 侑「来て欲しい場所があるんだ」
そう言って侑先輩が食後に連れてきてくれた場所。
お台場の夜景が一望できる静かな場所だった。
かすみ「キラキラで素敵ですねー!」
侑「うん、そうだね!」ニコッ
こんなところで侑先輩と2人きり。
ロマンチックなはずなんだけど、今日は違う。
ここが最後の思い出の場所になるんだから。
侑「かすみちゃん、話があるんだ」
きた。
かすみ「なんですか? 侑先輩」
できるだけ明るく返事する。
最後は笑顔の可愛い私を見て欲しくて。 侑「この前泣かせちゃったこと、本当にごめん」
侑「かすみちゃん、辛かったよね」
かすみ「い、いえ、それはかすみんが勝手に……」
侑「ううん、私がしっかりしてないから、かすみちゃんのこと不安にさせちゃった」
かすみ「……」
侑「私、付き合うとか初めてだったし、よくわかってなかったんだ」
侑「かすみちゃんへの好きが、どっちの好きなのかなって、ずっと考えてた」
かすみ「はい……」
侑「それでね、答えが出たんだ」
かすみ「……」
だめだ。
堪えられない涙が、今にも溢れ出しそうだった。
侑「私……」
侑「かすみちゃんのこと、大好き!」
かすみ「…………」
かすみ「それって、どういう……」
侑「かすみちゃんのこと、彼女として、恋人として大好きだってこと」
何が起きてるのかわからなかった。
侑先輩にぎゅっと抱きしめられる。
侑「愛してるよ、かすみちゃん」 かすみちゃんはきょとんとしていた。
そうだよね。突然私がこんなこと言ったらビックリするよね。
でもね、これが今の私の本当の気持ちなんだ。
かすみ「ゆ、侑先輩……」ギュッ
かすみ「かすみんも、侑先輩のこと大好きですううう!!!!」ポロポロ
嬉しいけど、そんなに泣いたら、せっかくの可愛い顔が台無しだよって、そっと涙を拭ってあげる。
かすみちゃんはなかなか泣き止まなかったけど、顔をくしゃくしゃにして笑顔を見せてくれた。
そんな彼女が愛おしくて。愛おしくて。
堪らなくて。
侑「かすみ……」
かすみ「…………っ!?」
その頬を撫でながら、静かに口づけする。
初めて触れ合う互いの唇。
甘くて爽やかな香りがした。 ◆
2ヵ月後
◆
虹ヶ咲学園 放課後
愛「……」テクテク
愛(今日は同好会も休みだし、これからどうしよっかなー)
歩夢「〜♪」テクテク
愛(あ、歩夢だー! 遊び誘っちゃお♪)
愛「おーい、あゆ……」
せつ菜「歩夢っ!!」バッ
愛「!?」
歩夢「あ、菜々ちゃん!」ニコッ
歩夢「生徒会の方は大丈夫なの?」
せつ菜「はい! 今日は生徒会もお休みです!」
歩夢「そうなんだ!」
せつ菜「では行きましょうか」
歩夢「うん!」
歩夢「今日は菜々ちゃんに似合うコート選ばせてね!」
せつ菜「歩夢の選んでくれた服はどれもお気に入りになるので楽しみです!」
歩夢「菜々ちゃんはいろんな服が似合うから、選ぶのも楽しいんだよ♪」
せつ菜「あ、私も歩夢の服選びたいです!」
愛「……」
愛(これからデートだったのね!) かすみと歩夢への呼び捨ていいね
そっちの二組はもう大丈夫そうだからあとは愛さんとしずくちゃんか 璃奈「……」ポツン
愛(あ、りなりーだ!)
愛「おーい、りな……」
浅希「ごめん璃奈! 待った?」スタッ
愛「!!」
璃奈「ううん。今来たところだよ」
浅希「そっか! それじゃ行こ!」
璃奈「うん」
璃奈「浅希ちゃん、今日はうち泊まっていくでしょ?」テクテク
浅希「うん。そのつもりだよ♪」テクテク
愛「……」 エマ「あ、愛ちゃん!」
果林「そんなとこでどうしたの?」
愛「エマっち、カリン!」
愛「いやー……」
愛「みんな青春してるねー!!」アハハ
愛「愛さんも青春しちゃうぞー!!」イエーイ
果林「やけに元気ね」
エマ「良い事でもあったの?」ニコニコ
「あ、愛ちゃんだ!」
「愛ちゃーん!!」
「みんなでこれからカラオケ行くんだけど、愛ちゃんも来てよー!」
愛「いいねー! 行く行くー!!」ピース
愛「それじゃあね、エマっち、カリン!」タタッ
果林「ええ」
エマ「じゃあね!」
愛「ねーねー、カラオケの後はみんなでカフェで恋バナなんてどう?」
「えー、なにそれー」クスクス 果林「あら、あそこにいるのは……」チラッ
エマ「侑ちゃんとかすみちゃんだね! これからデートなのかな?」ニコッ
かすみ「今日のスイーツビュッフェ、かすみんずっと楽しみにしてたんです!」
かすみ「今日のために、コッペパンを1週間我慢しましたから!」
侑「おお! すごい気合いだね、かすみ」
かすみ「美味しくて可愛いケーキがたくさんあるんですよ!」
かすみ「どれを食べようか迷っちゃいますー!」
侑「ふふっ」
かすみ「どうしたんですか、侑先輩?」
侑「ううん!」
侑「かすみ、今日も可愛いなーって思って」ニコッ
かすみ「……っ!」
かすみ「もうっ! 侑先輩、好き好きー!」ギュッ
侑「あはは」
侑「そうやって甘えてくれるかすみも最高に可愛いよっ!」ナデナデ
かすみ「あーんっ! 侑先輩ー!!」ギュッギュッ
イチャイチャ イチャイチャ
果林「……」
エマ「……」ニコニコ 中庭
しずく「彼方さん、みんな帰ってますよ?」
しずく「まだここにいるんですか?」
彼方「うーん、今はすやぴな気分なんだ〜」
中庭のベンチで彼方さんと2人きり。
横になる彼方さんの膝枕をしてあげて。
彼方「しずくちゃんの膝枕は格別だよ〜」スリスリ
もう2度とできないと思っていた膝枕。
でもこうしてまた彼方さんのお昼寝を見守らせてくれるくらい、私と彼方さんは元の関係に戻っていた。
仲良しの先輩と後輩、友達の関係に。
彼方「だんだん瞼が重く……」
しずく「いいですよ。ゆっくり休んでください」
今でも、彼方さんは世界一美人で、世界一可愛い女の子だって本気で思う。
いつだって私は魅了される。
もちろんすぐ何かが起こるなんて思ってない。
それでも、彼方さんが私を傍にいさせてくれる限り、この気持ちを伝え続けたい。
彼方さんのことが大好きだって。いつも幸せを貰ってるって。
例え言葉にせずとも、伝え続けたい。
彼方「すやぁ……」zzz
しずく「おやすみなさい。彼方さん」ニコッ 愛「さすがしずく、凄かったねー!」
よく晴れた昼下がり。
しずくの主演舞台を観る為に、久々に同好会の面々が集まった。
みんなと会えたのは嬉しかったけど、今はこっそり2人で抜け出して……
璃奈「うん。しずくちゃんの演技、さらに磨きがかかってたと思う」
隣にいるりなりーが言う。
そよ風が気持ちいい。
私は大学2年に上がり、りなりーも大学生になって、お互いバタバタしていたから、私たちも会うのは久々だ。
”あの頃”に比べたら、りなりーも大人っぽくなったなって思う。
背も少し高くなったし、髪も伸びた。
まだ幼さみたいなのも残ってるけど、立派な大人の女性になっていた。
璃奈「愛さんも変わらず元気だね」
愛「愛さんはもちろん元気だよ! りなりーは大学どう? 楽しい?」
それから、お互いの大学のことや同好会のみんなのことを話す。
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