千砂都「普通科ではそんなにテストがあるの?」すみれ「そうよ」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
千砂都「ふーん」
すみれ「数学に英語、古文漢文現代社会……キリがないったらキリがないわよ。やらされるこっちの身にもなってみなさいよね。ねっ、かのん?」
かのん「うげっ!?」
かのん(ど、どうしてそこで私に話振っちゃうの……?)
千砂都「かのんちゃんもお勉強頑張ってるの?」
かのん「う、うん。まあ、最低限は、だけど……」
可可「おまけに一つでも赤点を取れば部活動停止とか、正気の沙汰じゃないデス。さすがの可可でも頭にきマスよ……」
千砂都「そっか、勉強かぁ……」 ◇———◇
千砂都(ぐすっ、ぐすん……)
フキフキ
千砂都「……よしっ!」
千砂都(負けない!自分になんて絶対負けたくない!)
千砂都「あ、あのっ!失礼します!」
ガチャッ!
恋「はい。……あら?嵐さん、お久しぶり
千砂都「お願いがあるの!」
恋「?」 恋「勉強を、ですか?」
千砂都「うん。他の娘から聞いたんだ。恋ちゃんってお勉強も得意だって」
恋「別に、得意というほどでは……ただ、一応進学も視野に入れて勉強をしているというだけで……」
千砂都「それでもいい。お願い、私に勉強を教えて欲しいの!」
恋「私から?」
千砂都「うん。私ね、みんなに追いつきたい!普通科のみんなに、絶対に負けたくなんてない!」
恋(なるほど。だからこの前は図書室であんなに熱心に参考書を読んでおられたのですね) 恋(この時期に急に音楽科から普通科に転科されたとは伺いましたが、やっぱり千砂都さんは千砂都さんで並々ならぬ努力をされているのですね。すごいなぁ)
千砂都「お願い恋ちゃん!一生のお願い!」ペコリ
恋「ですが……私も普通科のカリキュラムの全てを理解しているわけではありませんよ?」
千砂都「それでもいい!私は、恋ちゃんがいいの!恋ちゃんしかいないの!」
恋「……」 千砂都(それから、私は恋ちゃんに教わりながら必死に勉強を繰り返した)
恋「そこ、不等号の向きを変えるのを忘れていますよ」
千砂都「あっ!」
恋「不等式は方程式の基礎が出来ていれば同じように解くことが出来ます。ですが、負の数での乗除を行うと不等式の向きが逆転するというのは、重要な違いとして覚えておく必要があります」
千砂都「そっか、ごめんね恋ちゃん!同じミスは二度と繰り返さないようにしないと!」
恋「いえ、私に謝られると言うのも違うような気もするのですが……」
千砂都「……」ガリガリ
恋「……」 千砂都(お昼休みも学校から帰った後も、かのんちゃんたちがスクールアイドル活動を頑張ってる時も)
千砂都「ごめんね!今日も練習お休みするね!」タッ!
かのん「あっ、待ってよ!ちぃちゃん!」
千砂都(それからそれから、もちろん可可ちゃんたちがなぜか部室で椅子取りゲームで遊んでいる時だって)
可可「はいデス。すみれの椅子は可可がこれで支配したので、すみれは今日は一日中ずーっと空気椅子デス!」ビシッ!
すみれ「このゲームそういうルールじゃないでしょ!」
千砂都「……」ガリガリ
千砂都(私は必死に頑張った。みんなに追いつこうと、必死に。ただひたすらに問題を解いた)
千砂都(問題を解いて、そのたびにマルが増える感覚が、私はたまらなく大好きだった) 千砂都(そして訪れた数学の小テスト返却日、リベンジの日!)
千砂都「……っ」
千砂都(お願い!いっぱい!丸がいっぱいついてて!)
千砂都「……」
ペラッ!
千砂都「えっ……」
すみれ「千砂都、どう?前回は不服そうな様子だったけど、今回はちゃんと解けてた?」
千砂都「えっと……」
可可「可可はいつも通り満点でした」
千砂都「……」
すみれ「あんたの点数なんて誰も聞いてないわよっ!」モニッ!
可可「ふええ〜!だから頬っぺた引っ張らないでください〜!」
千砂都「……っ!!」
ダッ!
すみれ「千砂都!」
かのん「ちぃちゃん!?」 千砂都「っ……!!」
千砂都(どうして!!どうしてどうしてどうしてっ!!)
千砂都(どうして完璧に出来ないのっ!!あんなに頑張ったのに!!がんばってたくさん勉強したのに!!)
千砂都(恋ちゃんにだって協力してもらって!!みんなより、可可ちゃんより何倍の時間も勉強して!!大好きなダンスだって我慢したのにっ!!)
千砂都「ぐすっ、ふぇぇ………」
千砂都(それなのに、それなのにどうして私は、いつまで経っても追いつけないの……?やっぱり私は、変われないの?ずーっとダメダメな私なの……?)
千砂都「………ひくっ、うぅぅ、かのんちゃぁ
ペチッ!
千砂都「いてっ!」 千砂都「あぅぅ……」ウルッ
すみれ「……はぁ、デコピンしたくらいで泣いちゃうなんて。千砂都ってば泣き虫ね」
千砂都「なっ……!?泣いてない!泣いてないもん!!」コシコシ
すみれ「なによ、泣いてるじゃない。目真っ赤に腫れてるわよ」
千砂都「違うもん!!さっきちょっとこすっちゃっただけ!!泣いたわけじゃないもん!!」
すみれ「……あっそ。それで、テストの方はどんな感じだったの?」
千砂都「……」
すみれ「……」
千砂都「……すみれちゃんは何点だったの?」
すみれ「私?そうね、確か……86点とかじゃなかったっけ」
千砂都「……」
千砂都(すみれちゃんも、私より10点以上高い……) 千砂都「……むっ!!」
すみれ「なによ。また目、真っ赤にしちゃって。泣きたいの?」
千砂都「泣きたくなんてないもん!!泣いてたまるか!!泣かない!!泣かないったら、泣かない、ぐすっ………」
すみれ「……」
千砂都「ぐすっ………うぇ〜ん!!」
すみれ「はぁ……ほんと、千砂都ってば弱虫なんだから」ポンポン
千砂都「ひぐっ、ひぐっ……」ポロポロ
………
……
… ◇———◇
千砂都「……」チュー
すみれ「んくっ、んくっ……ぷはぁ!にしても不思議ね。学校の自販機で紙パックが売ってるなんて。そう思わない?」
千砂都「……」チュー
すみれ「……」
千砂都「……」チュー
すみれ「……いや、せっかく話題提供してあげたんだから掘り下げなさいよ」
千砂都「別に。そんなこと一度も頼んでないもん」
すみれ「はいはい、わかったわよ。ほんっと素直じゃないわね」
千砂都「……」チュー
すみれ「それで?テストの点が悪かったからそんなに落ち込んでたの?」
千砂都「……」
コクン すみれ「そっか。でもそんなことだってたまにはあるわよ。特に千砂都は普通科に転科してきたばっかだし
千砂都「ダメなの!!そんなことを言い訳にしてたらダメなのっ!!」
千砂都「編入生だからとか、ダンス頑張ってるからだとか!!そんな言葉を言い訳にしたくない!!私が許せない!!」
千砂都「じゃないとかのんちゃんに顔向け出来ない!!ちゃんと真正面から向きあえない!!私は完璧じゃなくちゃいけないのっ!!」
すみれ「……」 千砂都「私はね、ほんとは一人じゃなーんにも出来ないんだ。空っぽなの。だから全部出来るようになんなくちゃいけない」
千砂都「運動でも、勉強でも。かのんちゃんが出来ないことは何でも代わりに出来るようにならなくちゃいけない。可可ちゃんじゃなくて、私が。私が出来るようにならないとイヤなんだもん」
千砂都「だって私たち!大切な幼馴染で
ペチッ!
千砂都「いてっ!」
すみれ「……バカね」
千砂都「はぁぁ!!?」
すみれ「ばーか」
千砂都「むうっ!!そりゃ今はまだ勉強始めたばっかだけど!いつかぜぇ〜ったいに
すみれ「違うわよ。そういう意味で言ってるんじゃないの」ムニッ!
千砂都「もむっ!?んんん〜んっ!!」フニフニ 千砂都「むぅぅ……」
すみれ「別に間違ったままでもいいじゃない。完璧になるってそんなに重要なことなの?」ツンツン
千砂都「むうう〜、放してよ〜!」フニフニ
すみれ「二人とも出来ないままだったとしても、二人で道に迷ったとしても、一緒だねって笑い飛ばせればそれでいいじゃない。むしろおそろいみたいでちょっと可愛いじゃない。補完するってそれほど大事なこと?」
千砂都「……」
すみれ「たとえなーんにも出来なかったとしても、全部間違っていたとしても、二人で並んで努力できるのなら、そっちの方がよーっぽど幸せだと思うわよ。ねっ、かのん?」
かのん「うげっ!?」ビクッ!!
千砂都「かのんちゃん!?」 かのん「あ、あはは……」ヒョコリ
千砂都「いつからそんなところにいたの!?」
すみれ「さっきからずーっとよ。気づかなかったの?」
千砂都「!?」
かのん「あはははは、だってちぃちゃんの様子が気になっちゃっ
すみれ「ほら、後はあんたの仕事なんだから」グイッ!
トンッ!
かのん「きゃあっ!ちょっとすみれちゃん!」
ギュッ!
千砂都「……」ウルウル
かのん「ちぃちゃん……」 千砂都「……」
かのん「……」
千砂都「……ふぇっ」
かのん「ああっ!!ご、ごめんねちぃちゃん!!盗み聞きなんてするつもりは全然なくて!!」
千砂都「ううん、そうじゃなくて…………私の方こそごめん。かのんちゃんの期待に応えられなくて」
かのん「えっ?」
千砂都「テスト。ごめんね、中学の時はよくかのんちゃんに勉強教えてたりしてたよね。なのに私、高校生になって、普通科にも転科して来たっていうのに、頼りにならなくて、ほんとごめん……」
かのん「ちぃちゃん……?」
かのん(えっ?嘘?ちぃちゃんってそんなテストの点数低かったの?前回とか私の半分以上も取ってなかったっけ??)
千砂都「ごめんね。頼りにならない私なんかで、ほんとごめんね。ぐすっ……」ポロッ
かのん「ちぃちゃん……」
千砂都「ふぇっ、ひぐっ……」
かのん「よしよーし。ごめんね、気づいてあげられなくてずっとごめんね」
千砂都「ぐすっ……」
かのん「……」ポンポン かのん「……」トントン
千砂都「……」
ナデナデ
かのん「でも、私はちぃちゃんのことはずーっと好きだよ」
千砂都「えっ?」
かのん「ちぃちゃんは昔からいつも頑張りやさんで、その努力を半分くらいは分けて欲しいなーってずっと思ってた。ちぃちゃんは昔からずーっと私の憧れだよ」
かのん「だから私はちぃちゃんが好き。ダンスが出来るからとか、なんでも出来るからとかじゃなくて、私は頑張りやさんのちぃちゃんが好きなの」
千砂都「かのんちゃん……」 かのん「だからそばでずーっと見てて欲しい。テストが上手くいかなかった日も、私が壁にぶつかってくよくよしちゃいそうになってる時も!ねっ?」
千砂都「うん!」
かのん「あっ、ちぃちゃんやっと笑ってくれた。やっぱり笑ってるちぃちゃんの方が可愛いよ。泣いてる時じゃなくて。ふふっ!」
千砂都「あっ!その言い方!かのんちゃん絶対バカにしてる!」プクーッ!
かのん「してないしてない!本気で思ってるよ!」
千砂都「そっか!ふふっ!」
かのん「あははっ!」
キャッキャッ!
………
……
…
理事長「……澁谷さん。あなたは他人を励ましている場合ではないと思いますが」
かのん「えっ?」 理事長「今回のテストで三回連続の赤点を記録したと普通科の方から報告があったのですが……この報告に間違いはありませんか?」
かのん「……」
理事長「『校則第7条143項、結ヶ丘において赤点を記録した者は、これを部活停止に処する。』もちろん知らないはずはありませんよね?学校一有名な校則なんですものね」
かのん「……」
理事長「ここに、各教務課から預かった澁谷さんの成績表があります。これによると
かのん「!?」ダッ!
理事長「こら!逃がしませんよ!唐さん!」
可可「はいデス!」シュバッ!
かのん「くぅっ!!」
ガシッ!
かのん「放して〜っ!!補習なんていやっ!絶対にいやぁ〜っ!!」
可可「うるさいデス!!いつもかのんにお仕置きされてる復讐デス!!」 〜部室〜
かのん「ふえーん!!どうして私だけがこんなにたくさんの課題やる羽目になってるのーっ!!」
恋「文句を言わないでください。テスト期間に勉強をしなかったあなた自身が悪いのですから」
かのん「それにどうして恋ちゃんまで部室にいるのーっ!!」
恋「生徒会として補習を見守る義務があります」
かのん「むぅぅ……」
可可「そうデスよかのん。口ではなく手を動かしてください。もぐもぐ……」
すみれ「あっ!そのシュークリーム私にも一つちょうだい!」
可可「はいデス!あーん!」
すみれ「あーん!ん〜!うまぁ〜!」パクッ!
かのん「うぅぅ……可可ちゃん!!勉強の邪魔だから出ってってよ!」
可可「わかりました。では可可はこのシュークリームと一緒に
かのん「だめっ!!そもそもそれは理事長先生から補習を頑張っている私への差し入れなんだから!!勝手に食べないでーっ!!」 かのん「うぅぅ……」
可可「〜♪」
かのん「……そ、そうだ。私もちょっと休憩してシュークリーム食べよっかなぁ……?多分そっちの方が効率も……」
ソーッ…
恋「ふんっ!」
ペチッ!
かのん「いてっ!」
恋「その問題集が終わるまで休憩は禁止だと言ったはずですよね?」
かのん「むぅぅ……!!」
千砂都「まあまあかのんちゃん、私も一緒に頑張るから!ねっ?」
かのん「うぅぅ、私の味方はちぃちゃんだけだよーっ!」
千砂都「えへへ、ありがとっ!」 千砂都「〜♪」
千砂都(かのんちゃんは、昔からお勉強が嫌いです。だからいつも私と隣で一緒にやるのが、昔からの習慣なんだ)
千砂都(かのんちゃんの方が先を走ることが多かったけど、いつしか私もおんなじ景色を見られるようになって。私がかのんちゃんに教えてあげられることも多くなったけど、かのんちゃんに教わることもまだまだあって……)
千砂都「かのんちゃん!すごい!丸の数この前よりも多くなってるよ!」
かのん「ほんとに!?よかったぁ、これで明日までには終わらせられるかも……」
千砂都(……こうしてずーっと、おばあちゃんになっても一緒にいられたらいいなぁ。なんてことを考えながら、私はかのんちゃんの問題集に大きな大きな丸をつけてあげるのでした!)
千砂都「〜♪」クルクル
千砂都(もちろん私も、隣で勉強がんばります!) 終わりです。お読みいただきありがとうございました! 負けず嫌いでストイックで、でもちょっと泣き虫な所は昔から変わらない、そんなちぃちゃんが好きです
このSSはまさに理想のちぃちゃんを描いてくれました
ありがとう、本当にありがとう 乙
千砂都以外の4人それぞれにちゃんと役回りがあって話のバランスがよかった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています