サヤ「お嬢様、お座りになってください。朝食をご用意します。お飲み物は何になさいますか?」

「きっと貴方が忘れていないか気になって仕方が無かったのよ?」

「恋の、ピアノコンクール入賞のお祝いだろう? 覚えているよ、夕食に店も予約しているし今日は仕事も早く上がるさ」

「ワンッ! ワンワンッ!」

「チビは残念だけどお留守番ね」

「キューン……」

恋(おかあさまが、おとうさまが……家にいる……チビも、サヤさんも……)

サヤ「お嬢様、お飲み物は紅茶か牛乳か……お嬢様?」

恋(もう、わたくしとチビだけになるはずだったのに……でも、でも……)

サヤ「お嬢様、お嬢様!」

恋「うっ、ううっ……うっ……」

「どうした、恋?」

「どうして泣いているの? 怖い夢で見たのかしら?」

「キュゥン……」

恋(もういちど、もどりたかった……みんながいる、この家に……)

恋(ほんとうに、もどってきた……)


……
…………