0016名無しで叶える物語(しうまい)
2021/09/14(火) 21:09:10.13ID:XvFm4rFA璃奈『あなたの元の世界に帰りたいっていう意思に、枕の管理プログラムが反応したから私が出てきている。私自身は、ガイドするただのAI』
璃奈『元の世界に、帰りたい?』
恋「はい。この世界は、確かに私が望んだ世界です。母が生きて……両親もサヤさんもチビも、みんなが家にいて」
恋「外に出ると嵐さんたちが待っていてくれて、皆で結ヶ丘に行くんです」
恋「何を悩むこともなく、私は私の思うままでいられるんだって、とても嬉しくて……」
恋「でも、それではいけないんです」
璃奈『どうして?』
恋「元の世界で、母は確かに亡くなりました。私は何度も母が生きていた頃の夢を見てきました」
恋「……その度に、目が覚めると胸が痛みました」
璃奈『この世界なら、ずっとお母さんがいる』
恋「はい。ですが私は、母の死を知っているんです。私がこの世界に甘んじてしまうと、初めてこの世界で目が覚めた時のように、母の死を思い出してずっと怯えていくことになる」
恋「胸の痛みは、母が私と一緒に生きてくれた証なんです。この痛みから逃げてしまうと、その証を否定してしまうことになります」
恋「だから、私は元の世界に帰らなければならないんです。母の生を否定しないためにも……これからの、私自身のためにも」