恋「恋は大きくなったらサヤさんと結婚します!」
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サヤ「ふふ、きっとお嬢様にはもっと素敵な方がいらっしゃいますよ」
恋「サヤさんは恋のこと好きじゃないのですか……?」
サヤ「いえ、滅相もありません! お嬢様のことはお慕いしております!」
サヤ「けれど、好きには2つあるのです」
恋「2つ?」
サヤ「はい、人間としての好きと異性としての好き」
サヤ「光栄なことにお嬢様は私のことを人間として好きになってくれたのだと思います」
恋「よくわからないです……」
サヤ「お嬢様にもわかる時が来ますよ」
恋「そうなのでしょうか……」 そんなある日、授業で性的マイノリティについての話があった。
LGBTQ、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング。
他にもIやAなど性には多様性があるとのこと。
わたくしはその話を聞いた時に理解をした。
自分は性的マイノリティ、レズビアンであると。
同級の友人に対する「好き」とサヤさんに対する「好き」は明らかに異なるものであったから。
サヤさんが「異性としての好き」とした感情を同性であるサヤさんに向けてしまっているのだろう。 恋「サヤ、さ……ん!」
年頃になると、自分を慰めることもあったが、その時に浮かぶのはやはり彼女の顔。
幼い頃から傍にいた使用人。
わたくしの初恋の方。
わたくしは彼女とキスがしたいし、卑猥なこともしたい。
わたくしにできるのはそんな想いを彼女に伝えることではなく、ただ自分を慰めることだけ。
サヤ「お嬢様、お呼びになり――」
恋「っ!」
サヤ「! し、失礼いたしました……!」 見られた。
聡明な彼女であれば気付くだろう。
わたくしがしていた行為と彼女の名前を呼んでいたことの意味。
わたくしがレズビアンであるということ。
そして彼女自身が性欲の捌け口にされていたという事実。
きっと彼女はここをやめたいと言い出すであろう。
お母様とお父様がいない今、この家にはわたくしとサヤさんの2人きり。
彼女にとって、自分を狙う獣とひとつ屋根の下にいるという状況。
そこにいたいと思うわけがない。 しばらくして、ノックの音が部屋に響く。
サヤさんであろう。
というか、今この家にはわたくしとサヤさんしかいないのだから必然的にそうなる。
サヤ「お嬢様、少しよろしいですか」
案の定、ドアの向こうから聞こえてきたのは彼女の声。
彼女を雇っていられるお金ももうない。
やめたいと言ったら素直に受け入れよう。
そう、思うのに声が出ない。
返事をしてしまったら彼女が離れていってしまうのがわかるから。
恋「……はい」
サヤ「失礼いたします」
ようやく絞り出した返事に、彼女はドアを開け一礼をして部屋に入ってくる。 サヤ「先程は大変失礼いたしました」
恋「い、いえ……」
少しの間気まずい沈黙が訪れる。
きっと、彼女も言葉を選んでいるのだろう。
わたくしがまだ幼い頃から仕えてきた葉月家への想いもあることは想像に容易い。
彼女のことを想えばわたくしから切り出した方がいいのかもしれない。
しかし、先に沈黙を破ったのは彼女の方だった。
サヤ「その、お嬢様。私の勘違いだったら申し訳ありませんが、お嬢様は私を、その……」
サヤ「……そういった意味で好きなのですか?」
たどたどしく紡がれた彼女の言葉にわたくしが頷くとまた沈黙訪れる。 恋「こんなの気持ち悪い、ですよね」
恋「わたくしは幼い頃からあなたが好きで、あなたをそういう目で見ていました」
恋「そして今はあなたに払うお金も、もうありません」
恋「なので、その……」
サヤ「はい、本日を以てお暇をいただきたく思います」
当たり前のこと。
お金もない、自分のことを性の対象として見ている人間に誰が仕えるだろう。
わたくしと彼女は所詮契約あっての関係だったのだから。 サヤ「なので、ここからはこれからのお話です」
恋「これから……?」
サヤ「お嬢様、いえ、恋さん」
サヤ「私とお付き合いをしてください」
恋「えっ」
彼女の言葉はわたくしが予想していないものだった。 サヤ「恋さんは先程ご自身を気持ち悪いとおっしゃいましたが」
サヤ「本当に気持ち悪いのは私の方――」
サヤ「幼い頃から見てきた、歳も離れたあなたに恋慕の情を抱いていた私の方なんです」
サヤ「こんな私でも受け入れていただけるのなら、私はあなたの伴侶として、この家を、恋さんを支えたいです」
恋「サヤ、さん……」
気付くと私の瞳から涙の雫が零れていた。
ずっと想っていた彼女と同じ想いだったこと、彼女が契約がなくても私の傍にいたいといってくれることが嬉しくて。
悲しいだけでなく、嬉しい時も涙が零れることを、初めて知った。 恋「あなたでいいのではありません」
恋「わたくしはあなたがいい」
サヤ「……恋さん」
彼女は私を抱き寄せて、顔を近づけてくる。
次第に近付いていき、唇が触れる。
わたくしの初めて。
ファーストキスはレモンの味なんていうけれど、それは嘘。
わたくしのファーストキスは、海の味がしたのだから。
おわり 綺麗なれんサヤありがとう
サヤさんこれからも出番あるといいな 四宮かぐやもおんなじこと言ってそう
藤原千花にどんびかれてそう ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています