しばらくして、ノックの音が部屋に響く。

サヤさんであろう。

というか、今この家にはわたくしとサヤさんしかいないのだから必然的にそうなる。

サヤ「お嬢様、少しよろしいですか」

案の定、ドアの向こうから聞こえてきたのは彼女の声。

彼女を雇っていられるお金ももうない。

やめたいと言ったら素直に受け入れよう。

そう、思うのに声が出ない。

返事をしてしまったら彼女が離れていってしまうのがわかるから。

恋「……はい」

サヤ「失礼いたします」

ようやく絞り出した返事に、彼女はドアを開け一礼をして部屋に入ってくる。