彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
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※ここまでのあらすじ※
長年連れ添った互いに好意を持っている仲の良い近江姉妹
しかし最近になって妹の遥が「部活疲れ」を理由にスキンシップを控えてしまう
悩みに悩んだ彼方は夕飯の最中、おもむろに「彼氏がいるんだ」と嘘をつくのだった 彼方「あ……」
遥「え……」
果林「いい加減、見てられないし聞いてられないから口を挟ませて頂戴」
果林「部外者が口をはさむことじゃないとは思うけれど」
果林「ここまで協力してあげたんだから、少しくらい言わせてもらうわ」
果林「良い?」
彼方「あ、うん……」
遥「どうぞ……」
果林「遥ちゃんは、彼方に彼氏が出来ることを本当に許せるの?」
遥「許せません」
果林(即答……)
果林「彼方は、遥ちゃー―」
彼方「死ぬ」
果林(言わせてくれさえしないし……)
果林「はぁ……」
果林「じゃぁもういっそ、二人が付き合っちゃえばいいじゃない」
果林「その心配も疑いも必要ないし、付き合ってれば互いに求めあうことに躊躇も何もないでしょ?」
果林「いろいろ問題はあるだろうけど、ぎすぎすしたり、無関係の人……巻き込むよりはマシだと思わない?」 彼方「……果林ちゃんって、女の子同士で恋愛しちゃうタイプだったんだ」
果林「はぁ!?」
遥「……待ってお姉ちゃん、それ以前に姉妹だよ?」
彼方「そうだよね……」
彼方「あ……果林ちゃんもしかして、女の子同士なら妊娠しないから姉妹でもオッケー的な考えなのかな〜」
遥「その発想はなかった……」
遥「確かに、姉妹だとしても女の子同士なら子供が出来ちゃう心配ないよねっ」
遥「なにより、今までは姉妹のスキンシップってだけのつもりだったから」
遥「一方的になっちゃうと申し訳なかったり、愛されてないのかなって不安になったりしたけど」
遥「恋人同士なら、常に好きって言っても愛してるって言ってもおかしくないもんね」
彼方「果林ちゃん、天才だねぇ」
果林「……」イラッ
果林(……まさか、彼方が本気になられたら困るって言ってたのって)
果林(遥ちゃん云々以前に、女の子同士だからってことだったの?)
果林(周りからしてみれば、2人のスキンシップがもはや交際してるレベルだって暴露してやろうかしら……) 果林(仲良くお出かけはともかく)
果林(常に手を繋いでたり、腕を組んでたり、食べさせあったり)
果林(カップルジュースだのなんだの……)
果林(カップルジュースって……カップルじゃないの?)
果林(それをこんな、茶番……)
果林(部屋掃除を喜々としてやってたエマの隣で鳴り響く電話)
果林(綾小路さんからの、男性とデートってどういうことなのかという怒鳴り声)
果林(床に落ちるゴミ袋、笑顔のエマ、向けられる刺すような視線)
果林(交際相手なんていないって説得に費やした昨夜の1時間半……彼方に付き添ってさぼった今日の午後)
果林(ふ……ふふ……ふふふっ……)
彼方「果林ちゃん、ありがと……私たち付き合ってみるね」
遥「姉妹とか女の子とか、変だって思ってたけど……でも、問題が起こらない分安心だし安全ですよね」
遥「ありがとうございます」
果林「ふ、ふふっ……そう、そうね」
果林「よかったじゃない……」
果林(夫婦喧嘩は犬も食わないんじゃなかったの? 泣きそう)
果林「私、もう帰っていい?」
彼方「え、せっかくだから晩御飯をご馳走させて〜」
果林「嫌よ! 帰る! 帰らせて! もう巻き込まないで!」タタタタタタタタッ 遥「果林さん、気を使ってくれたのかな?」ギュッ
彼方「果林ちゃん優しいから……そうかも」ギュッ
彼方「……ごめんね遥ちゃん」
彼方「遥ちゃんに愛想つかされたんじゃないかって不安で」
彼方「彼氏いるなんて嘘ついて気を惹こうとして」
遥「ううん、私こそごめんね」
遥「私から行くばかりで、もしかしたらお姉ちゃんに愛されてないんじゃないかって勝手に不安になって」
遥「押してダメなら引いてみようって……少し冷たく接しちゃって」
彼方「ううん、彼方ちゃんが遥ちゃんを受け入れるばっかりで主張しなかったのが悪かったんだよ〜」
彼方「遥ちゃんが来るなら任せてあげようって……自分から行くの我慢しちゃってたから」
遥「そんなことないよっ……私がお姉ちゃんの我慢に気づかずにグイグイしちゃってたのが悪いよっ」
遥「……もう」
――ギュッ
彼方「えへへ〜」
彼方「初めから、果林ちゃんに相談して、こうしておけばよかったねぇ」
遥「うん……お姉ちゃん。好き」
彼方「私も、遥ちゃんのこと好きだよ」 遥(でも、今回のことがあったからこそ)
遥(お姉ちゃんがすごく、私のこと好きだって分かった……)
遥(でも、それとおんなじくらいに私もお姉ちゃんが好きだって分かった)
遥(姉妹なんかじゃない……ずっと深くて強い好きって気持ち)
彼方(怖かったし、不安になった)
彼方(でもだからこそ自分の中でどれだけ遥ちゃんが大切か分かった)
彼方(どれだけ好きなのかがわかった)
彼方(そんな自分と同じように泣いたりする遥ちゃんの気持ちがうれしかった)
彼方(果林ちゃんが遥ちゃんも好きなはずって言ってくれなかったらあそこで勇気を出せなかったかもしれない)
彼方「……」
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには好きな人がいるんだ」
遥「……そっか」
――チュッ
彼方「!」
遥「えへへ……」
遥「お姉ちゃん、実はね? 私にも好きな人がいるんだ」 終わり。
ただの痴話喧嘩、果林さんには申し訳ないことをしました。 エマと姫乃に尋問される
目の前で姉妹のイチャイチャを見せつけられる
果林にとって最悪の一日だと思う 果林さんが胃を痛めてると可哀想と思うと同時にちょっと興奮する 愛さんとかなら振り回されてもヨカッタネーしてくれそうだけどそこまで割り切り上手くないのに下手に相談できるオーラ出しちゃってる果林さんが悪い 果林さんは仲間想いの優しい先輩だったってことだよきっと
乙でした面白かったです ―――――
――
果林(もう、最悪だったわ)
果林(彼方は本当に死ぬ勢いだったし)
果林(丸く収まってくれたなら、それはそれでよかったといえばよかったけれど……)
ガチャッ
果林「開いてる……?」
果林(合鍵持ってるのはエマだけど……)
果林「エマ?」
タタッ
エマ「果林ちゃん、お帰りなさい」
果林「今日は掃除の必要はないはずだけど……どうしたの?」
エマ「あっと……そのね?」
エマ「昨日は、果林ちゃんに悪いことしちゃったなって思って」
エマ「果林ちゃんが男の人とお付き合いすることは何の問題もないのに」
エマ「私、全然知らなかったって思って……つい、変な風に迫っちゃったでしょ?」
果林「良いわよ。気にしないで」
エマ「うん……彼方ちゃんからも連絡あって」
エマ「二人のことでいろいろあって果林ちゃんが巻き込まれたってことはもうわかったよ」
エマ「でもやっぱり果林ちゃんには……悪いことしちゃったから、ちゃんと謝りたいの」 エマ「果林ちゃん、ごめんね?」
果林「……いいわよ。もう」
果林「誤解が解けたならそれで」
エマ「ありがと……」
果林「……昨日も言ったけれど」
果林「私は、別にモデルを本業として活動してるわけじゃない」
果林「スクールアイドルではあるけど、本当のアイドルのように恋愛禁止みたいな縛りがあるわけでもないし」
果林「……けど」
果林「だからと言って、男性とお付き合いするつもりがあるのかと言われれば」
果林「それは首を横に振るわ」
果林「今の環境が好きだし、今の関係が好きだし、今手にしているもので……正直に言うと精いっぱい」
果林「あれもやりたいこれもやりたい、でもしっかりと突き詰めたいって……そう思うと」
果林「これ以上、自分の手に負えないものを背負うなんて、まっぴらごめんだわ」 果林「だから」
――果林ちゃんって、女の子同士で恋愛しちゃうタイプだったんだ
果林「……なんて」
エマ「……うん、わかってるよ」
ナデナデ
果林「……エマ」
エマ「昨日は言えなかったけど」
エマ「……大丈夫、わかってるよ」
果林「何をわかってるのよ。もう」
エマ「……」
エマ「ん……えへへ」
エマ「何が分かってて欲しい?」
果林「……」
果林「そうね」
果林「……今して欲しいこと。とか」 エマ「え〜?」
エマ「ん〜……」
エマ「あっ、膝枕……かな?」
果林「エマには、私が彼方にでも見えてるの?」
エマ「そうだよねっ」
果林「でも……」
果林「まぁ」
果林「……」
果林「ちょっと、彼方の気持ちが知りたいかも」
エマ「……じゃぁ、してもいいの?」
果林「私が聞く方でしょ」
果林「エマの膝を借りるんだから」
エマ「でも、ベッドもお部屋も果林ちゃんのだからやっぱり、私がしてもいいのかなって言うべきじゃないかな?」
果林「ふふっ、じゃぁどうぞ」
エマ「ありがと〜」 ……ポスッ
果林「……」
エマ「どうかな〜」
果林「……いいと思うわ」
果林「……」
ナデナデ
エマ「……眠れそう?」
果林「彼方ほど寝つきがよくないから」
エマ「そっか」
果林「……」
果林「まぁ……彼方の気持ちなんて、知りようがないわよね」
エマ「彼方ちゃんは彼方ちゃん、果林ちゃんは果林ちゃんだから」
エマ「私も、彼方ちゃんの気持ちを考えたことはあっても」
エマ「それを知れたなぁ……って、思ったことはないかなぁ」
果林「なに? エマも膝枕されたいの?」
エマ「ん〜……そういうわけじゃないけど」
果林「……」
果林「特別に、してあげてもいいわよ」 エマ「どうして?」
果林「せっかくだから、やってあげる側の視点から考えてみようかと思って」
エマ「そっかぁ」
エマ「……」
エマ「じゃぁ」
エマ「ちょっとだけ……お願いしてもいい?」
果林「ええ」
ギシッ
キシッ
ポフッ
ポスッ....
エマ「……なんだか変な感じがする〜」
果林「そうね」
ナデナデ
果林「……どう? 彼方の気持ち、わかりそう?」
エマ「ん〜」
エマ「えへへ……わからないかなぁ」 果林「でしょうね……」
エマ「……」
エマ「でもね」
果林「ん?」
エマ「でも……」
エマ「少しは、わかるかも」
エマ「……ちょっとだけ」
エマ「少しだけだけどね〜」
果林「そう……」
ナデナデ
果林「それは、よかったわ」
エマ「……ねぇ、果林ちゃん。彼方ちゃんと遥ちゃんは、ずっとあのままでいられるのかな」
果林「さぁ? 正直、あのままでいてくれないと私が困るけど」
エマ「……卒業したら、もう巻き込まれないかもしれないのに?」
果林「………」
――卒業
果林「そうとは、限らないから」
エマ「……」
エマ「それもそうだねぇ……」
エマ「お疲れ様、果林ちゃん」
果林「ほんとよ」
――卒業したら、もう
果林「……」
果林「はぁ……」
果林「ねぇ、エマ……少し、話を聞いてくれる?」 劇場版 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
朝香果林最悪の1日 刺殺される危険を冒してでも茶番に付き合ってくれる果林さん ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています