【SS】しずく「千両役者」かすみ「三文小説」
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・アニメ時空です。
・栞子等のアニメ未登場キャラは登場しません。悪しからず。
・話の都合上、オリジナルのモブキャラが登場するので、苦手な人はブラウザバック推奨です。
・しずかすSS。アニメ13話でしずくとかすみが恋仲になったという前提。
以上、但し書きです。
書き溜めてませんのでゆっくり書いていく予定です。
よろしければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 かすみ「……歩夢せんぱい。一つ聞いてもいいですか?」
歩夢「……うん、いいよ」
かすみ「……歩夢せんぱいにとって、『恋人』って、どんな存在だと思いますか?」
歩夢「……そうだね」
歩夢「その人のためなら頑張れる。どんなことも乗り越えられる。そんな勇気を貰える人……かな」
かすみ「……やっぱり先輩って、ナチュラルに重くないですか?」
歩夢「そ、そうかな?ごめんね?」
かすみ「なんで謝るんですか。……ステキじゃないですか」
かすみ「自信を持ってそう言えるなんて、とってもステキだと思います」
歩夢「……」
かすみ「……今のかすみんは、恋人って何なのか、よく分かんなくなっちゃいました」
歩夢「かすみちゃん……」 恋人がいるかすみんの方がより現実的だからわからなくなっちゃうのかもね かすみ「だって……だってですよ」
かすみ「かすみんは……しず子じゃない人を、しず子だって思ってたんですよ」
かすみ「いくら演技が上手いからって、変装が得意だからって、そんなのも見抜けないなんて……しず子のこと、何も分かってないのと同じじゃないですか」
歩夢「……」
かすみ「かすみんがそこで気付いてて、おかしいなって思ってたら……しず子があんな目に遭わなかった」
かすみ「なのに、かすみんが何も見えてないから……何も疑わないでぺらぺら喋って……そしてしず子に辛い思いさせて……」
かすみ「そのくせ、かすみんがしず子を守るだなんて息巻いて……恋人面して……」
かすみ「こんなの、馬鹿丸出しじゃないですか…!」
歩夢「……ちがうよ、かすみちゃん」
かすみ「ちがくないです。……きっと、皆んな思ってるはずですよ」
かすみ「……しず子が可哀想だ、って」
かすみ「こんなやつに恋人面されてるしず子が可哀想だ、って」
歩夢「かすみちゃん!」 言いたくは無いが顔を見分けられないなんてお前の愛はその程度の愛なのかと突っ込む人もいるだろうから
その部分の描写をするのは偉い、かすみの気持ちも分かる メガネかけてたら別人に見える世界だしあり得なくもない気もする 歩夢「ダメだよ……可哀想だなんて、そんなこと言わないで……」
歩夢「だって、かすみちゃんは誰よりもしずくちゃんのこと考えてて、しずくちゃんのために行動して……」
歩夢「誰がどう見たって、かすみちゃんをダメだなんて思わないよ……」
かすみ「……もう、いいんです。歩夢せんぱい」
歩夢「え…?」
かすみ「明日の舞台が終わって、全部落ち着いたら、しず子にはっきり伝えるつもりです」
かすみ「かすみんは、しず子の恋人失格だって」
かすみ「しず子の恋人として、しず子の笑顔を守る資格がないって」
かすみ「しず子を幸せにする自信もないって」
かすみ「……別れようって、伝えます」
歩夢「……冗談、だよね……?」
かすみ「……かすみんは本気です」 いやいやいやそれをやったらしずくの心が破壊されるわ 歩夢「……なんで、」
歩夢「なんでそうなっちゃうの……!?」
歩夢「今のしずくちゃんを守れるのは、かすみちゃんだけなんだよ…!?」
歩夢「かすみちゃんがそばに居てあげなきゃ、誰がしずくちゃんを助けてあげられるの……!?」
かすみ「……」
歩夢「かすみちゃん……」
歩夢「自分が心底ダメなやつだって、何も信じられなくなる気持ちも分かる」
歩夢「相手にとって自分が重荷になってるんじゃないかって思い悩む気持ちも分かる」
歩夢「私にだって経験があるから。だから、そういう気持ちは分かるよ……」
歩夢「だけど……!」
歩夢「上手くいかなかったから全部終わりにしようだなんて、そんなの、ただ逃げてるだけでしょう…!?」 歩夢「お願い、かすみちゃん。もう一度、よく考え直して……」
歩夢「……自分を許してあげてよ」
歩夢「しずくちゃんを守ってあげてよ」
歩夢「自暴自棄にならないでよ……」
かすみ「……歩夢せんぱい」
かすみ「ごめんなさい。今日は帰って、頭冷やしてきます」
かすみ「明日の集合時間とか、また教えてください」
歩夢「……絶対来てくれるよね?」
かすみ「……はい」
歩夢「……うん、分かった。待ってるから」
━━━(回想)━━━
歩夢(昨日あんなことがあったんだもん……いつも通りに振る舞ってるけど、内心は荒んでるはず)
歩夢(かすみちゃん……) 「むむ〜っ?侑ちゃんから聞いてた集合場所は確かこの辺のはず〜……」
「あっ!みんな発見!おーい!」タッタッタッタッ
「って、ちょっと待ってってばエマ!」
愛「おっ、エマっち!カリンにカナちゃん!」
エマ「みんなお久しぶり〜!」
果林「…もう、ダメでしょエマ。人が沢山いるのに走ったりしちゃ。危ないでしょ?」
エマ「あっ…ごめんねぇ果林ちゃん」
彼方「そうだよエマちゃ〜ん。エマちゃん見失ったら果林ちゃんはぐれちゃ━━━
果林「彼方?」グイッ
彼方「ま、まだ何も言ってないよぉ〜…」
侑「うわあ、またこうして皆んなが集まるの、なんだかワクワクしちゃうね!」
璃奈「エマさん達が卒業して半年も経ってないのに、ちょっと不思議な気分……」
エマ「私たちも皆んなの顔が見られて嬉しいよ〜!」 果林「久しぶり……って言っても、電話やメールでちょくちょく連絡してたし、懐かしいって言えば大袈裟だけど」
果林「でも、こうやって皆んなの顔を見てると、なんだか安心してくるわね」
せつ菜「ですね!」
果林「……ところで、しずくと会うのは難しそうかしら?」
侑「……うん。しずくちゃんは今の時間だと、楽屋に入っちゃってるかな」
果林「……そう、残念。直接会って話できれば…なんて思ってたけど」
彼方「も〜う。果林ちゃんってば、何だかんだ世話焼きだよね〜」
果林「べ、別にそういうわけじゃ」
エマ「大丈夫だよ果林ちゃん。しずくちゃんへの応援、きっと届いてるはずだよ」
果林「……そうね。後はしずくの勇姿を見届けるだけね」
果林「ね?かすみちゃん」
かすみ「……」
果林「…? かすみちゃん?」
かすみ「!あっ、はい!そう、ですね!」
果林「もう、どうしたの?ボーっとしちゃって」
愛「もしかして、しずくのことで頭がいっぱいだった、とか!」
かすみ「ち、違いますよぉ!からかわないでくださーい!」
歩夢「…………」 ピンポンパンポーン
『皆様、大変長らくお待たせいたしました。これより、藤黄学院・虹ヶ咲学園・東雲学院・青藍高校の四校による、合同演劇祭、入場開始のご案内をいたします……」
ザワザワガヤガヤ
せつ菜「始まりましたね…!私たちも並びましょうか…!」
侑「うわぁ…もう行列になっちゃってる…」
愛「去年の倍……いや、倍以上って感じかぁ。しずくちゃん目当てで来た人も相当いるだろうしねぇ」
かすみ「…………」
プルルルルルル
かすみ「?」パッ
かすみ「……!」
かすみ「ご、ごめんなさい!皆さん先に行っててください!」ダッ
侑「え?かすみちゃん?」
かすみ「必ず開演までには間に合わせますので!」
タッタッタッ
侑「あっ…行っちゃった」
せつ菜「電話を持ちながら慌てて走っていきましたが、何か急用でしょうか?」
歩夢「……」 歩夢もかすみのことを簡単に話しちゃうわけにはいかないだろうしあとは見守るしかないのかな タッタッタッタッ
かすみ「はあ、はあ……」
かすみ「……」スッ
スマホ画面『桜坂しずく』プルルルルルル
かすみ「……しず子」
ピッ
『……もしもし、かすみさん?』
かすみ「……どうしたの、しず子」
『ごめんね、今、大丈夫かな?』
かすみ「……うん、大丈夫」 『…………』
かすみ「……しず子?」
『……やっぱり、かすみさんの声きいてると、安心するな』
かすみ「……!」ドキッ
『もう少しで本番なんだけどね。今すっごく、緊張してる』
『きっと、今日までに色々なことがあったからだと思う』
かすみ「……ほんとだよ」
かすみ「色々なことがありすぎて、かすみんも目回ってるから」
『うふふ、そうだよね』
『だからかな?舞台の上にあがるのに、こんなにドキドキしてるの初めて』
『だから……かすみさんの声を聞きたくて、電話しちゃった』
かすみ「……そっか」
かすみ(……嬉しい。すっごく嬉しい)
かすみ(嬉しいはずなのに……あいつの顔がちらつく……)
かすみ「……ねえ、しず子」
『?』
かすみ「……しず子は、本当にしず子なんだよね?」 本番前のしずくにこんなこと聞いちゃうなんてかすみも相当思い詰めてそう 『……? 私は私だよ……?』
かすみ「……じゃあ、かすみんとしず子、どっちから告白したか覚えてる?」
『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?私からだもん』
かすみ「いつ?」
『去年のスクールアイドルフェスティバルの最中』
かすみ「どこで?」
『タイミングってこと?ヒーローショーが終わって、ベンチで一休みしてる時』
かすみ「……」
『合ってるでしょ?』
かすみ「……うん。全部あってる」
『……そんなこと聞いて、どうしたの?』
かすみ「……ねえ、しず子」
かすみ「しず子は、かすみんのこと、好き?」 『…………』
かすみ「……ごめん、しず子が今一番大事な時に、変なこと聞いて」
『…………もう』
かすみ「……しず子、怒ってる……?」
『……笑顔がステキなところ』
かすみ「…え?」
『表情豊かで、人懐っこくて、ワンちゃんみたいなところ』
『自分が一番かわいいって信念に真っ直ぐで、負けず嫌いで、努力家で、』
『自己中心的で生意気な人に見えるけど本当は人一倍優しくて、』
『私が挫けそうになった時は、すぐ駆けつけてくれて私を勇気づけてくれる』
『そんなあなたのことが好きです』
『━━━桜坂しずくは、誰よりも一番、中須かすみを愛しています』 作者のミスじゃなかったらこのしずく偽物だよな
>>192でかすみがしずくに告白したと言ってるんだから もうちょい待って指摘しないとミスじゃなかったらけっこうな邪魔してるぞ >>365
作者の記憶違いによるミスです……大変失礼しました
>>362の訂正です
誤『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?私からだもん』
正『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?かすみさんからでしょ』
一番間違えちゃいけなきゃ肝心な場面なのに申し訳ありません…
ご指摘ありがとうございました! やっぱりミスだったか
甘々な感じの描写だったからミスなのかなと思ったんだよ
応援してるぞ 雰囲気壊れるから訂正じゃなくて
>>362から書き直してほしい 応援ありがとうございます
せっかくなので>>362から書き直します
从cι˘σ ᴗ σ˘* 再掲だよしず子 『……? 私は私だよ……?』
かすみ「……じゃあ、かすみんとしず子、どっちから告白したか覚えてる?」
『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?かすみさんからでしょ』
かすみ「いつ?」
『去年のスクールアイドルフェスティバルの最中』
かすみ「どこで?」
『タイミングってこと?ヒーローショーが終わって、ベンチで一休みしてる時』
かすみ「……」
『合ってるでしょ?』
かすみ「……うん。全部あってる」
『……そんなこと聞いて、どうしたの?』
かすみ「……ねえ、しず子」
かすみ「しず子は、かすみんのこと、好き?」 『…………』
かすみ「……ごめん、しず子が今一番大事な時に、変なこと聞いて」
『…………もう』
かすみ「……しず子、怒ってる……?」
『……笑顔がステキなところ』
かすみ「…え?」
『表情豊かで、人懐っこくて、ワンちゃんみたいなところ』
『自分が一番かわいいって信念に真っ直ぐで、負けず嫌いで、努力家で、』
『自己中心的で生意気な人に見えるけど本当は人一倍優しくて、』
『私が挫けそうになった時は、すぐ駆けつけてくれて私を勇気づけてくれる』
『そんなあなたのことが好きです』
『━━━桜坂しずくは、誰よりも一番、中須かすみを愛しています』 かすみ「……!しず子……」
『……かすみさんは?』
かすみ「…え?」
『かすみさんは、私のこと、好き?』
かすみ「……うん。好きだよ」
『私のどんなところが好き?』
かすみ「……そんなの、選べっこない」
かすみ「全部。しず子の全部が好き」
かすみ「上手く言葉にできないけど……しず子のどんなところも好き」
『……嬉しい。ありがとう、かすみさん』 ドクンドクン
かすみ(……かすみん、こんなに高揚しちゃってる)
かすみ(胸の鼓動が速まって)
かすみ(顔が紅潮して)
かすみ(身体中が火照って)
かすみ(しず子のこと以外、考えられなくなってる)
かすみ(好き)
かすみ(しず子のことが好き)
かすみ(大好き)
かすみ(ずっと、しず子の隣にいたい)
かすみ(しず子の恋人として、しず子の幸せにしたい)
かすみ(……だけど)
かすみ(しず子は、本当に幸せになれるのかな)
かすみ(かすみんが他の誰かだったら、しず子はこんな辛い目に遭わずに済んだのかな)
かすみ(━━━本当に、このままでいいのかな) かすみ「…………」
『……かすみさん?』
かすみ「……あ、ご、ごめん」
『……やっぱり、今日のかすみさん 、なんかおかしいよ』
かすみ「お、おかしくなんかないよ」
『うそ。絶対おかしい。いつものかすみさんじゃないもん』
『どうかしたの?』
かすみ「……何でもないよ」
『何でもなくない』
『かすみさんにとっては些末な事かもしれないけど、私にとっては一大事なんだから』
『長くなってもいいよ。まだ開演まで時間あるから』
かすみ「ダメだよ……しず子は今、本番前の一番大事な時で
『こんくらいで演技に支障きたさないから。モヤモヤしたまま舞台に上がる方が支障きたすよ』
かすみ「…………」
『お願い、かすみさん。何があったの?』 かすみ「……かすみんは、しず子の恋人失格なの」
『…どうして?』
かすみ「……かすみんがおバカだから」
かすみ「部長さんがしず子に変装してても、気付けないような大バカだから」
『え…?』
かすみ「かすみんがあそこで気付いてたら、しず子が辛い思いしないで済んでたのに」
かすみ「それなのに、しず子を守るなんて……大バカもいいとこだよ……」
『えっと、ごめん、かすみさん……』
『どういうこと……?』
かすみ「……昨日、判明したの」
かすみ「写真を貼り付けた犯人は、演劇部の部長さんだったの」
━━━━━
━━━━
━━━
かすみ「……っていうのが、かすみんとしず子の秘密を知ることができたトリックだったの」
『……信じられない』 かすみ「……そう、だよね。しず子も幻滅するよね」
かすみ「恋人の顔も区別できないなんて━━━」
『違うよ、かすみさんじゃない。信じられないのは……部長の方』
かすみ「え…?」
『かすみさんを侮辱するような真似をして……』
『そんなの絶対に許せない……』
かすみ「し、しず子……?」
『かすみさん、今日の舞台しっかり見てて』
『本物の桜坂しずくを、魅せてあげる』
『最大限のしず子パワーを届けてあげる』
『嫌な記憶は、上から丸ごと塗り潰してあげる』
かすみ「……分かった」
『じゃあ、またね』
プーブープー
かすみ「…………頑張れ、しず子」 よく考えたらしずかすがイチャコラして何が悪いんだ
部長このやろう馬鹿野郎 >>389
節子、それこのSSやない、女優しずくとアイドルかすみの方や とくに似てないような。単に専ブラで両方見てて誤爆しただけじゃない 二つとも追ってるけどどっちも続きが気になるという点では似てる あれはこっちの部長と違って現実に近いものがありそうで嫌な気分になるし更新遅いからさっさと切ったな
そのうち思い出して完結してたら読むかもしれんが 【劇場会館 客席】
校内アナウンス『……ご案内いたします。間もなく、四校合同演劇祭、虹ヶ咲学園の部が開演となります。携帯電話をお持ちの方は……』
侑「……かすみちゃん、まだ来ないね。大丈夫かな……」
璃奈「遅れてきた時はいつものかすみちゃんだったけど、電話に出る時は表情が険しかった」
せつ菜「愛さんが『あたしが入口で待ってるから大丈夫』と言ってましたので、かすみさんがはぐれる心配はないと思いますが……」
歩夢「……」
タッタッタッ
「急げ急げ〜!間に合わないぞかすかす〜!」
「待ってください愛せんぱあい!速いですってば!あとかすみんです!」
せつ菜「あっ!来ました!」
侑「よかったぁ」ホッ かすみんも電話切れた時点ではまだ自分に納得した感じでもないのかな 愛「せーふ!いや〜危なかった!」
かすみ「はぁ、はぁ……だからって飛ばしすぎですよぉ……」
せつ菜「お二人がなかなか見えないのでどうなるかとヒヤヒヤしてしまいましたよ」
璃奈「かすみちゃん、長電話だったけど、どうかしたの?」
かすみ「え!?ま、まぁ、どうもしてないよ!だいじょぶだいじょぶ!」
璃奈「…そう。ならいいけど…」
かすみ「り、りな子は心配性なんだから〜、あはは…」
歩夢「……」
侑「まあ何はともあれ合流できてよかったよ。そろそろ始まるし、席つこっか」
せつ菜「そうですね!」
かすみ「かすみんは〜、侑せんぱいのお隣に座っちゃいま〜す!」
歩夢「……じゃあ私はかすみちゃんの隣かな」 ちょうど続きが。無言が続いてた歩夢が久しぶりに喋った 歩夢「……ねえ、かすみちゃん」ヒソヒソ
かすみ「?」
歩夢「さっきの電話の相手って……しずくちゃん?」ヒソヒソ
かすみ「……」
歩夢「……しずくちゃん、なんだよね?」
かすみ「……そうですよ」
歩夢「……昨日のこと、伝えたの?」
かすみ「……はい」
かすみ「部長さんが犯人だった事と、その手口、犯行理由もしず子に教えちゃいました」
かすみ「……本番前に、そんなこと言っちゃいけないのは、かすみんも分かってましたけど……」
歩夢「……昨日、私に言ってた、かすみちゃんの気持ちは、まだ伝えてないの?」
かすみ「……はい」
歩夢「……そっか」 別れる意思まで伝えてたらさすがにしずくちゃんでも影響出そうだし、そこで電話切れて良かったね。舞台どうなるのか楽しみ 歩夢「……考え直してほしい、なんて言うつもりはないよ」
歩夢「冷たいかもしれないけど、これはかすみちゃんとしずくちゃんの、二人の話だから」
かすみ「……」
歩夢「……でも、横槍を入れさせてもらえるなら」
歩夢「今日、しずくちゃんが舞台に立てたのは、かすみちゃんが一生懸命支えてくれてたから」
歩夢「しずくちゃんの恋人がかすみちゃんじゃやかったら、今日の舞台にしずくちゃんは居なかったかもしれない」
歩夢「そんなこと思いながら、これから始まる舞台の上のしずくちゃんを、見守ってあげてほしいな」
かすみ「……歩夢せんぱい」
ブーーー
『お待たせいたしました。ただいまより、虹ヶ咲学園の部、開演となります』
歩夢「……お節介、終わり。始まるみたい」
かすみ「……はい」
『演目は、『楼門五三桐』二段目の返し「南禅寺山門の場」です』 かすみ「……」
かすみ(舞台は青い幕が下りています)
かすみ(開演した……はずですよね?)
かすみ(幕が開かれる気配がありません)
かすみ(もしかして、しず子に何かあったんじゃ━━━)
ベンッ♪
かすみ「!」
ベンッベンッベンッ♪
ベンベンベンベンベンッ♪
ベンッ♪
かすみ「これは……三味線……?」
侑「だね。まさに歌舞伎って感じだよ」
ベンベンベンベンベンッ♪
侑「迫力ある音色だね。かっこいい」
かすみ「皆さん、聞き入ってますね……」
かすみ(あいかわらず幕は閉まったままですが…)
ベンッベンッベンッ♪
ベンッベンッ♪
ベンッ♪
…………
かすみ(幕が開かないまま……三味線の演奏が……終わっちゃいました)
バッ
かすみ(!) youtubeで楼門五三桐見て何となく雰囲気は掴めた かすみ(幕が一気に下がると、舞台の全貌が見えてきました)
かすみ(極彩色の門のてっぺん……を模した大きなセットが立っています)
かすみ(乱れ舞うは桜吹雪)
かすみ(そしてその真ん中に座している、豪華絢爛な衣装をまとった、セットをも上回る存在感を放つ人物━━━石川五ェ門)
かすみ(ただそこにいるだけなのに)
かすみ(この場を我が物顔で支配するかのように━━━)
しずく「…………」
かすみ(━━━桜坂しずくは、舞台上に君臨していました)
「しずくー!」
「しずくちゃーん!」
かすみ(ここにいる誰もがこの光景を楽しみにしていた事でしょう)
かすみ(客席がワッと沸き立ちます)
かすみ(会場が熱気に包まれる中、しず子の第一声への期待が高まっているのを肌で感じます)
しずく「…………ああ」
しずく「なんて絶景でしょう」
しずく「絶景じゃありませんか」 かすみ(しず子の第一声は、かすみんたち観客を大きくどよめかさせました)
しずく「この春の眺めが千両ばかりとは」
しずく「小さいこと小さいこと」
かすみ(普段のしず子とは大きくかけ離れた、獣の咆哮のような、勇ましく強かな口上でした)
しずく「この五右衛門からすれば」
しずく「まるで万両、万々両」
「よっ!千両役者ぁっ!」
かすみ(本物の歌舞伎のように、勢いのある掛け声が、ここぞというタイミングで入ります)
かすみ(会場の空気は更にしず子に支配されていきます)
しずく「日は西に傾いて雲と棚引く桜花」
しずく「茜く輝くこの風情」
しずく「なんて麗らかな眺めじゃあ、ありませんか」
「しずくさんっ!」
「千両役者ぁっ!」
パチパチパチパチパチ
かすみ(名口上の終わりとともに、あちらこちらから放たれる掛け声)
かすみ(地響きのように鳴りやまない歓声)
かすみ(溢れんばかりの万雷の拍手)
かすみ(まさに、圧巻です)
かすみ「……すごい。すごいよ、しず子」 その声。
その表情。
その立ち振舞い。
そのどれもが、あまりにも力強くて。
生命力に、満ち溢れていて。
いつも隣に居るしず子とは、まるで別人のように感じてしまいます。
かすみ「しず子……」
だけど、確かにそこに居るのはしず子で。
あの時、かすみんに弱い自分を曝してくれたしず子で。
あの時、かすみんに髪飾りを渡してくれたしず子で。
あの時、かすみんの告白を受け入れてくれたしず子で。
あの時、かすみんを抱き締めて、キスしてくれたしず子で。
あの時、かすみんだけに涙を見せてくれたしずの子で。
かすみ「声、聞こえたよ……」
かすみんの、最愛の人で。
かすみんの、自慢の恋人で。
かすみんを、必要としてくれる人で。
かすみんは、これからも、あなたの恋人であり続けたい。
かすみんの心に、消えかけていた炎を、あなたが再び灯してくれるから。
生命力を━━━希望を、届けてくれるから。
その美しき声と共に。 上から丸ごと塗り潰してあげるっていうのはこういうことか 「石川や」
かすみ「!」
かすみ(しず子だけだった空間に、別の人物が姿を現します)
かすみ(あれが石川五右衛門の敵役……真柴久吉)
かすみ(そして演者は━━━あの部長さん)
部長「浜の真砂は尽きるとも」
かすみ(豪華絢爛な衣裳のしず子とは対照的に、部長さんは質素な服装を着ています)
かすみ(……存在感は圧倒的にしず子の方が上)
かすみ(そのはずなのに)
部長「世に盗人の 種は尽きまじ」
かすみ(あの部長さんからも、ブラックホールのごとく吸い寄せられるような、そこ知れぬ不気味な存在感を放っています)
かすみ(しず子の存在感が、周囲を熱狂させる「炎」に例えるなら、)
かすみ(周囲を凍てつかせるような、部長さんの存在感は、「氷」と言ったところでしょうか) しずく「…………まさか、真柴久吉」
部長「巡礼、ありがとうございます」
しずく「…………」
ダンッ
かすみ(山門の屋上に座するしず子が立ち上がり、力強く足を柵に掛けます)
しずく「真柴、久吉」
部長「…………」
かすみ(上から部長さんを睨むしず子)
かすみ(下からしず子を見上げる部長さん)
かすみ(これが、有名な「天地の見得」の場面です)
しずく「……」
部長「……」
かすみ(しず子扮する五右衛門は、親の仇である真柴久吉に対して、憎しみの炎を燃やすように、強く睨み付けます)
かすみ(一方、部長さん扮する真柴久吉は、そのことを知りません。涼しい顔で、五右衛門を見下しています)
かすみ(台詞の応酬もなければ豪快なアクションもない。それなのに、)
かすみ(二人の睨み合いに、観客席の皆さんは息を呑んで見守っています。目が放せません) ベンッ♪
ベンッベンッベンッ♪
ベンベンベンベンベンッ♪
かすみ(鳴り響く三味線の音)
かすみ(お互いを睨み合い、微動だにしない二人の舞台に、幕が閉まっていきます)
かすみ(しず子の前を幕が横切る、その時━━━)
しずく「…………」チラッ
かすみ「!」ドキッ
しずく「…………」ニコッ
かすみ(今、一瞬しず子と目があって、微笑ってくれたような━━━)
ベンベンベンベンベンッ♪
パチパチパチパチパチ
ベンッベンッベンッ♪
パチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチ
ベンッ♪
パチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチ
かすみ(幕切れを告げる三味線と、割れんばかりの拍手)
かすみ(この臨場感は、かすみん達のライブとひけをとらないくらいです) 歩夢「……すごかったね。しずくちゃん」
かすみ「はい……」
かすみ「……歩夢せんぱい」
歩夢「?」
かすみ「……かすみん、不安でした」
かすみ「しず子、かすみんに話してくれたんです」
かすみ「舞台なんてもういいって」
かすみ「電源が切れちゃったって」
かすみ「電源を入れ直すのが、面倒だって」
歩夢「……うん」
かすみ「かすみんは何とかしず子を勇気づけようとしましたけど……今日までずっと、不安だったんです」
かすみ「しず子が、舞台に戻れるのか」
かすみ「かすみんの言葉が、しず子に届いたのか」
かすみ「しず子の恋人として、かすみんは無力なんじゃないかって」
歩夢「…………」 かすみ「でも、今日の舞台を見て……分かったことがあるんです」
かすみ「しず子は、こうして舞台に戻ってこれた」
かすみ「……かすみんのおかげだなんて言いたいわけじゃありません」
かすみ「侑せんぱいや皆さん、それに一番は、しず子自身の力で、舞台に復帰できたんだと思います」
かすみ「かすみんの力は1割くらいです」
歩夢「……1割だなんて、自己卑下し過ぎだよ」
かすみ「いえいえ、そのくらいですよ」
かすみ「……でも」
かすみ「たとえ1割でも、かすみんの言葉がしず子の支えになってくれたなら、それだけで嬉しい」
歩夢「……」
かすみ「かすみんは無力なんかじゃなかったって」
かすみ「しず子の恋人として、しず子に必要とされているって」
かすみ「そう思えるんです。今のかすみんは」
歩夢「……そっか」 かすみ「……今って、しず子、裏にいるんですかね?」
歩夢「う、うん。だと思うけど……」
ガタッ
かすみ「かすみん、今の気持ち、伝えてきます」
かすみ「別れようなんて、かすみん、間違ってました」
かすみ「頑張り屋さんのしず子を、恋人として、その特等席で、ずっと応援したい」
かすみ「そう伝えてきます」
歩夢「……!うん、頑張って」
かすみ「行ってきます!」
━━━━━━
━━━━
━━━ 【虹ヶ咲学園 楽屋前 廊下】
部長「……ふぅ」
「素晴らしい劇だったよ」
部長「……!」
「『山門』の出来映えは、石川五右衛門役の演者の力量に大きく左右される、独演に近い演目だ」
「並みの演者では見るに耐えられないだろう……しずくのような例外を除いてね」
「桜坂しずくという、うちの切り札を最大限に活かせる舞台として最適だ。つまり、題材選びがに優れていたわけだ」
部長「……」
「君の真柴久吉役も見事だったよ。衣装が質素で、台詞も少ないけど、五右衛門の放つ存在感に匹敵しなくちゃいけない」
「石川五右衛門以上に難しい役だからね」
部長「……ありがとうございます。部長」
「よしてよ。今の部長は君だろう?」
旧部長「私はもう、部外者同然さ」
部長「……」 旧部長「とりわけ良かったのは、最後の天下の見得」
部長「…………」
旧部長「あの説得力……リアリティーはかなりのものだった。仇敵である久吉と対峙した五右衛門の敵意……その憎悪が、観客のこっち側にも伝わってきた」
旧部長「まるで、しずくが本当に君のことを憎んでるかのような」
部長「…………!」
旧部長「私が在籍してた頃のしずくは、怒るとか、憎むとか、そういった演技はまだ改善の余地のある子だった」
旧部長「今日の彼女は、当時の彼女から想像もできない、見事なまでに怒りを表現できていた」
旧部長「どんな演技指導をしたんだろう? 気になるなぁ」
部長「……私は特別なにもしていませんよ。彼女の名演技は彼女による賜物です」
部長「なんせ彼女は『千両役者』ですからね」
旧部長「……ふーん、千両役者ねぇ」
旧部長「君の桜坂しずく評は、『大根役者』だったんじゃなかったっけ?」
部長「……!」 このためにあんなことしたという部分もあるのかな。だとしたら部長も演劇キチすぎるね 部長の悪行をお見通しとか旧部長の強者感えぐい
29秒のバリタチ女呼ばれるだけある 部長「どうしてそのことを……」
部長「まさか、同好会の人達があなたに喋って……」
旧部長「ああ、やっぱり君だったんだ」
旧部長「今回の一連の騒動を引き起こしたのは」
部長「……!鎌をかけた、わけですか」
旧部長「そう。私は演劇部の皆んなから話を聞いて、当てずっぽうで言ってみただけだよ」
旧部長「同好会? 何のことか、さっぱりだね」
部長「……嘘です。演劇部の部員のうち、ことの真相を知ってる人なんか居ないはずです」
部長「彼女達の話を又聞きしただけで、私を怪しいと思ったなんて、エスパーでもない限り不可能です」
旧部長「そうだろうね。普通の人間なら、そんな結論にはまず至らない」
旧部長「普通の人間ならね」
部長「…………」
旧部長「私は分かるよ。同業者だから」
旧部長「演劇に携わる人間だから、君の気持ちが手に取るように分かるんだよ」 旧部長「さて、せっかくだし、君の一連の行動に対する私なりの解釈を、この場を借りて聞いてもらおうかな」
旧部長「まず、犯行動機」
旧部長「去年の虹ヶ咲学園の好評を受けて、今年の演劇部部長である君は、去年を超える出来の舞台を目指そうとしていた」
旧部長「どうすれば去年を越えられるのか、君は考えに考えて……」
旧部長「桁違いの人気を誇る桜坂しずくに依存するという結論に至った」
部長「…………」
旧部長「となれば舞台の題材も、桜坂しずくが最も目立つことができるような作品が望ましくなる」
旧部長「そこで君は、『山門』が最適だと睨んだ……が、ある問題があった」
旧部長「桜坂しずくは怒りの演技が苦手だった、ということだ」 旧部長「『山門』の主役、石川五右衛門は、親の仇である真柴久吉に対して、激しい憤怒を向けている人物だ」
旧部長「物語終盤の『天地の見得』の場面も、五右衛門の強い憎しみがその背景にあるわけだからね」
旧部長「その点にかんして、五右衛門を演じるにあたって、桜坂しずくは力量不足だった」
旧部長「じゃあ、どうすればいいか。君はその演技指導を考えて、一つの結論に至った」
旧部長「簡単な話さ。桜坂しずくが君に怒りを覚えて、君が真柴久吉役を演じれば、桜坂しずくは五右衛門の憤りを追体験できる」
旧部長「だから君は、今回の事件を起こした」
旧部長「桜坂しずくから怒りを買うために、君は彼女のことを調べあげ、恋人の存在に目をつけた」
旧部長「恋人を捨てるように部長命令でも出せば、彼女から憎まれるのは当然のこと」
旧部長「そんなシナリオを目論んでいた……が、ここで思わぬ誤算が生じた」
旧部長「桜坂しずくが恋人の方を優先し、自主的に降板したからだ」 やり方はともかくしずくちゃんがこれで一皮むけたことは確かなのか これいい話風にしてるけど、やってること栞子やランジュと変わりないよな
人のためだからって本人に嫌がらせするの ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています