【SS】しずく「千両役者」かすみ「三文小説」
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・アニメ時空です。
・栞子等のアニメ未登場キャラは登場しません。悪しからず。
・話の都合上、オリジナルのモブキャラが登場するので、苦手な人はブラウザバック推奨です。
・しずかすSS。アニメ13話でしずくとかすみが恋仲になったという前提。
以上、但し書きです。
書き溜めてませんのでゆっくり書いていく予定です。
よろしければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 侑「じゃあ、どうしてあなたは、しずくちゃんの恋人がかすみちゃんだって知ってたんですか?」
部長「……どうしてって」
部長「━━━私がその写真を隠し撮りした、目撃者だから」
部長「そう言えば、納得してくれるかな?」
侑「……」
部長「そうだよ、高咲侑さん。君の読みは正解だ」
部長「私が写真を撮り、そして掲示板に貼り付けて、この騒ぎを起こした」
部長「いわゆる犯人ってやつだよ」
侑「……今回の事件の全貌を、教えてください」
部長「教えるって言ったって、君は全て分かってるんじゃないのかい?」
侑「あなたの口から聞きたいんです」
部長「……分かったよ。全部話そう」 部長「どこから話せばいいのか悩ましいけど……じゃあ、犯行動機ってやつから話そうか」
部長「私がどうしてこんな騒動を引き起こしたのか」
部長「答えは至ってシンプル。桜坂しずくを今回の舞台から降ろしたかったからだ」
部長「もう少し正確に言うなら、私の理想とする舞台に対して、彼女の存在があまりにも大きくなり過ぎていて、もはや障害となっている━━━そう判断したからだ」
部長「誤解してほしくないのは、別に桜坂さん本人を嫌っているわけじゃない」
部長「彼女の演技は群を抜いていて、その存在感は人を惹きつける何かがある。演劇に対する積極的な姿勢はプロ顔負けだ」
部長「お世辞でもなんでもなく、私は桜坂さんを素晴らしい役者だとおもっている」
部長「ただし」
部長「桜坂しずくを囲っている取り巻きは、私は好きじゃない。彼女に対する過大評価には、時として吐き気がする」
部長「演劇の奥深さも知りもしないで、桜坂しずくしか見えていない連中を、私は愚かしいと思っている」
部長「『千両役者』だなんて、虫唾が走る」 部長「桜坂しずくに対する熱狂が」
部長「絶賛の声が」
部長「鳴り響く万雷の拍手が」
部長「私たちの舞台にズカズカと土足で入り込んでいるように思えてならなかった」
部長「……屈辱だった」
部長「私としては、そんな上辺じゃなく、私たちの本当の実力で勝負したいと思っていた」
部長「とりわけ、この合同演劇祭では」
部長「だから、桜坂さんにはこの舞台に要らないと判断した」
部長「しかし彼女は舞台に上がってしまった」
部長「上がってしまった以上は、引きずり下ろすしかないでしょう?」
部長「ただ、今の演劇部内では彼女のフォロワーも多い。降板するに相応しい理由が無ければ、反発もなむないだろう」
部長「だから、その理由を作る必要があった」 部長「私は桜坂しずくの急所を探した」
部長「しかしこれがなかなか見つからない。ある程度の過去を掘り下げてみても、使えそうなものは何もなかった」
部長「言いがかりで降板の理由を作るしかない。そう思いかけていたその時……」チラッ
かすみ「……!」
部長「中須さんと桜坂さんが話してる様子を見て、私は察した」
部長「さっき君たちは、自分たちの関係は同好会の内でしか知らないと言ってたね?」
部長「確かに普通の人間には誤魔化せるかもしれない」
部長「でも、そんな演技は、私のような演劇畑の人間には通用しないんだよ」
部長「表情や声、ジェスチャーの微妙な変化」
部長「確信したよ。この二人には友情以上の関係性にあると」
部長「そしてそれが、桜坂さんの急所につながると」
部長「利用できると考えた」 まだ部長が言った「世に盗人の〜」が明らかになってないな
誰が何を盗んだのか これでしずくがさらに覚醒すれば舞台の質も上がるし、どっちに転んでも舞台キチの部長の勝ちなのかもしれない 部長「演劇部の花形・桜坂しずくには恋人がいて、その事実を隠していた」
部長「一騒ぎあってもおかしくない。話題性としては十分だ」
部長「もちろん、彼女を非難する声ばかりじゃない」
部長「……というより、彼女を非難する声なんてほとんど聞かない」
部長「それもそうだ。言ってしまえば、高校生がお付き合いしていた、それだけの話なのだから」
部長「相手は誰なんだろうとか、恋人ならどこまで済んでるんだろうとか、ここ一週間そんな話題ばかりだ」
部長「ただ、私としては、周りがどう思おうが、そんなのはどうでもよかった」
部長「桜坂しずく本人」
部長「彼女だけが、彼女自身の行いに罪悪感を覚えてもらえれば、それだけでよかった」
部長「だから、そういう風に誘導した」
部長「罪の意識を植え付けた」 部長「ファンを捨てるか、恋人を捨てるか。その二者択一を桜坂さんに迫った」
部長「本来なら、そもそもそんな選択をする必要もないのは誰がどう見たって明らかだ」
部長「恋人と別れなきゃいけない理由なんて、私がそれっぽいことを言ったに過ぎない」
部長「助かったよ。彼女が内罰的な性格でね」
かすみ「……そうやってしず子をいじめて、何が楽しいんですか」
部長「楽しくはないよ?こっちだってやりたくてやってるわけじゃない」
部長「桜坂さんの降板のためには彼女の絶望的状況を演出する必要があった」
部長「だからそうしたまでだよ」
かすみ「……部長さん。あなたは最低です」
部長「そう思ってもらえたなら、演出家として冥利に尽きるよ 部長「犯行動機はそんなところで十分かな」
部長「次は犯行そのものについて説明するしておこうか」
部長「と言っても、そんな大したことじゃない。さっき君たちが説明した通りだ」
部長「桜坂さんたちの様子をカメラに収めてから、インタビューの記事が掲示される日に合わせて、プリントアウトした写真を貼り付ける」
部長「写真を貼り終えたら、あとは機を見計らって桜坂さんを部室に呼ぶ」
部長「それだけのことだからね」
部長「強いて挙げるとするなら写真を貼り付けるタイミングかな。誰も見てない時間を狙うなら、もう早朝しかなかった」
部長「あぁそうそう。今回の件で、新聞部は一切関わってないから、そこは安心していいよ。生徒会長」
菜々「……そうですか」
侑「……部長さん。ひとつ質問があります」
部長「?」 侑「しずくちゃんとかすみちゃんがデートしている写真の撮影者はあなたですよね?」
部長「そう。私だよ」
侑「お聞きしたいのは、先ほどの話の中で挙がった、待ち合わせの写真についてです」
侑「二人はいつどこでデートするかは、私たち同好会メンバーさえも知らない、二人だけの秘密でした」
侑「そうだよね?かすみちゃん」
かすみ「……はい。デートのことは、先輩たちには誰にもお話してません」
かすみ「待ち合わせの場所も、お昼休みや下校時間にしず子とこそこそ話したり、夜中に家でメールしたり、」
かすみ「しず子と二人だけの約束でした」
侑「なのに、あなたは、どうしてこの写真を撮ることができたんですか?」
侑「あなたが仰ってたように、たまたま目撃したから、なんですか?」
部長「……いや、違うよ」
侑「……知ってたんですか」
部長「そう。君たちがいつどこでデートするのかは、予め知っていた」
部長「だから私は最初から、君たちのシャッターチャンスを待ち構えることができた」
部長「じゃなかったら、あんな狙ったような写真、撮れっこないだろう?」 開き直りすぎだろ
犯人役を演じてる気分で気持ちよくなってるのかな この部長さんは役者の人気が上がって役者目的で見に来る人が増えたらその都度降板させていくのかな かすみ「そんなの、ありえないです!」ガタッ
かすみ「しず子にしか話してないんですよ!」
かすみ「なんで部長さんが知ってるんですか!」
部長「……明日の合同演劇祭」
かすみ「……?」
部長「私たち虹ヶ咲学園の演目は、『楼門五三桐』の二段目の返し「南禅寺山門の場」……通称では『山門』と呼ばれている」
部長「15分という短さでありながらも、歌舞伎のエッセンスが詰まった濃密な内容でね。数ある演目の中でも特に人気が高いんだ」
かすみ「……急に何言ってるんですか?」
部長「虹ヶ咲版における『山門』……つまり明日の合同演劇祭では、本来の主演は桜坂さんだった」
部長「ただ、彼女は降板になった。明日の舞台の上にその姿は居ない」
部長「じゃあ、彼女の代役として誰が舞台に立つのか。誰が石川五右衛門役を15分間演じ切るのか」
部長「中須さんは気にならない?」
かすみ「気になりませんよ!そんなの、どうでもいいです!」
かすみ「変なこと言ってないで、さっさとかすみんの質問に━━━
部長「私だよ」
部長「私が石川五右衛門役を演じる……いや」
部長「『石川五右衛門役を演じる桜坂しずく』を演じる」
部長「別に難しい話じゃない」
部長「桜坂しずくを演じたことは、もう経験済みだからね」
かすみ「………え?」 かすみ「い、今なんて……」
部長「桜坂さんを演じたことがある、そう言ったんだよ」
部長「まあ厳密に言えば、演技というより変装に近いかな」
かすみ「へ、変装……?」
部長「もちろん、長時間の継続した演技は難しい。流石に労力がいる」
部長「正体がバレることなく一日中デートするなんて至難の業だ」
部長「ただ、15分くらいなら、今の私からすれば難しい話じゃない」
部長「ちょうど━━━お昼休みの時間━━━くらいだからね」
かすみ「…う、嘘だ」
かすみ「だって、かすみんの隣に居たのは、確かにしず子で、」
部長「……ねえ、中須さん」
部長「こないだ君が作ってきたコッペパン……たしか新作と言ってたっけか」
部長「あれは少し、塩コショウが強すぎるんじゃないかい?」
かすみ「……!!」 かすみ「な、なんで、そのこと」
部長「なんでって、私が試食したからさ」
かすみ「嘘だ」
部長「嘘じゃない」
部長「ところで、さっき君はこう言っていたのを覚えてるかい?」
部長「『待ち合わせの場所も、お昼休みや下校時間に話したり、しず子と二人だけの約束でした』って」
部長「改めて聞くけど」
部長「待ち合わせの時間を知っているのが、中須さんと桜坂さん以外に知りようがない」
部長「本当にそう言い切れるかい?」
かすみ「……じゃあ、本当のしず子は、」
部長「稽古に励んでたんじゃないかい?部長の私に何度か申し出があったよ」
部長「『お昼休みの時間、演劇部の練習室を使わせて下さい』って」
かすみ「そ、そんな……」 侑「……つまり」
侑「しずくちゃんが昼休みの時間に稽古場にいることを知っていたあなたは、しずくちゃんに変装してかすみちゃんと接触した」
侑「そこでデートの情報を聞いて、待ち合わせの時間と場所を引き出した」
侑「そしてデート当日、聞いていた情報を頼りに、シャッターチャンスを窺っていた」
侑「……そういうことで合ってますか」
部長「二人が予定通りに来てくれたときは安心したよ」
部長「二人に異変を勘づかれて、あるいはちょっとした気まぐれで」
部長「前日の夜にメールで変更の連絡でもされたら、私の計画は台無しだったからね」 部長とキスとかしてなくてよかった
してたらあsの漫画みたいな胸糞になる所だよ かすみ「……テーです」
部長「?」
かすみ「あんたは!!サイっテーです!!」バッ
━━━パチーンッ
部長「……」ヒリヒリ
侑「か、かすみちゃ…
かすみ「あんたの顔なんか二度と見たくありません!失礼します!」ガチャッ
侑「…!かすみちゃん!」
愛「かすかす!」
歩夢「わ、私、追っかける!」ガチャッ
バタンッ
侑「かすみちゃん……」
璃奈「…………かすみちゃん、目が赤くなってた」
璃奈「相当ショックだったんだと思う」
侑「……部長さん。話があります」
部長「……ふう、なんでしょうか」
侑「二点、お願いがあります」 侑「まず一つ目ですが……」
侑「かすみちゃんとしずくちゃんに謝ってください」
侑「あの子たちの心を弄んだあなたの罪は、あまりにも重い」
侑「二人に対して誠意ある謝罪を要求します」
部長「……もう一つは?」
侑「……明日の合同演劇祭ですが、」
侑「桜坂しずくの、石川五右衛門役への再登板を要求します」
部長「……桜坂さんを出せと?」
侑「そうです」
侑「彼女を舞台に立たせる。それが二つ目のおねがいです」 自分が代役じゃなく変装したしずくとして立とうというのが恐ろしい 部長「……もし、その要求に応じないとしたら?」
侑「あなたの犯したことを全て暴露します」
部長「…………」
侑「脅迫じみた真似が卑怯なのは分かってます
侑「同好会の仲間を……私にとって本当に可愛い後輩を、こんなに辛い目に遭わせたんです」
侑「これくらいの報いは……受けてください」
部長「……」
侑「逆に、この二つの要求に応じてくださるなら……今回の件は不問にします」
侑「……どうしますか。部長さん」
部長「…………」
部長「……分かりました」
部長「要求を飲みましょう」 侑「……ありがとうございます」
侑「中川生徒会長、今日ここでお話ししたことは内密にお願いします」
侑「時間を割いていただいて、あと、話の場を設けていただいて、ありがとうございました」
菜々「……いえ、礼には及びません」
菜々「校内で起きた問題の解決に取り組むのが、生徒会長の務めですから」
部長「……それにしても」
部長「よく、あの情報量から私が犯人だと断定できましたね。高咲さん」
侑「……私一人でたどり着けたわけじゃありません」
侑「皆んなで意見を出し合って、話し合って、何度も手詰まりになりながら、ここまで来ることができました」
侑「……同好会の皆んながいなければ、きっと泣き寝入りするしかなかったでしょう」
部長「……いつから、私が怪しいと予想してたんですか?」 侑「……犯人の狙いがしずくちゃんに集中していたので、犯人はしずくちゃんのことを快く思わない人物だと考えました」
侑「そこから浮かび上がる犯人像として、三つの可能性がありました」
侑「一つ目が、しずくちゃんのファン」
侑「今まで応援してたのに裏切られた。しずくちゃんに対する好意がそのまま敵意として裏返った。という可能性」
侑「二つ目は、かすみちゃんのファン」
侑「自分の推しが桜坂しずくに奪われた。一種の嫉妬心がしずくちゃんへの敵意になった。という可能性」
侑「そして三つ目は、しずくちゃんのアンチ」
侑「つまり、二人の関係を知る前から、しずくちゃんに対して悪感情を抱いていた。という可能性」
侑「もちろん、しずくちゃんは誰かに憎まれたり恨まれたりするような子じゃない。最初は私もその線はないと思ってました」
侑「ただ、しずくちゃんの演劇の才能は、同業者から嫉妬を買っていてもおかしくない」
侑「そんな意見が出てから私は、演劇部が怪しいんじゃないかって、そう思うようになりました」
部長「……それは何故?」
侑「ただの直感ですよ。というより、祈りみたいなものです」
侑「━━━スクールアイドルが好きな人に悪い人は居ない。そう信じたかったからですよ」 恋人ばれたから降板とか冷静に考えると無茶だから疑われても仕方ないね 今回は他の子にチャンスやりたいから辞退してくれすまんなで良かったんじゃないかと
結局しずくに化けて出るならしずくで客寄せしてるわけで何がしたいんだろうな >>325
演劇キチだからしずくちゃんの力を誰よりもわかってるのかもね 1です
更新滞ってしまい申し訳ありません
今夜には続き更新できると思います
この物語の結末までお付き合い頂けると嬉しいです
よろしくお願いします ━━━━━
━━━━
━━━
【翌日】
【四校合同演劇祭 会場】
ガヤガヤガヤガヤ
「ねえねえ!虹ヶ咲の主演、やっぱり桜坂さんらしいよ!」
「え!?そうなの?!」
「突然降板になったって、前に聞いたけど……」
「私もそう聞いてたんだけどね?話聞いた限りだと、降板ってのはデマだったっぽい!」
「マジ?ちょ〜楽しみじゃん!」
「でも桜坂さん、恋人のことについて何か言うのかなぁ?」
「流石に言わないんじゃない?今の今まで完全黙秘してるんだし」
「そもそもこの一週間、桜坂さんしばらくお休みが続いてたらしいからね」
「そうそう。降板って話、信じちゃってたよぉマジで」
ガヤガヤガヤガヤ
侑「……しずくちゃんの話題で持ちきりだね」
歩夢「……うん」 璃奈「やっぱり、しずくちゃんの恋人のことで、皆んな関心があるみたい」
愛「んー、でも、全員が全員、しずくを役者失格だなんて思ってはないでしょ?」
愛「たとえば愛さんも、芸能人の熱愛報道とかついつい耳に入れちゃうけどさー、隠してたから酷いだなんて思わないもん」
歩夢「そうだよね……。不倫とか浮気だったら、話は別かもしれないけど」
侑「……全員が全員しずくちゃんの敵じゃない」
侑「そのことを、しずくちゃん本人が分かってくれてたらいいんだけど……」
愛「……いやあー、しっかし遅いなあー、かすみん」
愛「もう集合時間とっくに過ぎてるってのに」 歩夢「……かすみちゃん」
侑「……歩夢。昨日のかすみちゃん、大丈夫そうだった?」
歩夢「……えっとね」
「遅くなりましたぁー!」
歩夢「!」
かすみ「はぁ、はぁ、……かすみん、登場です!」
愛「遅かったじゃーんかすかすぅ、心配したんだぞぉ?」
かすみ「だからかすみんです!……心配かけちゃって、ごめんなさいです」
璃奈「良かった。かすみちゃん、来ないかもって不安だったから」
かすみ「ちゃんと来るに決まってるじゃん!今日はしず子の晴れ舞台なんだし!」
かすみ「かすみんが応援に行かなきゃ、しず子がしょんぼりしちゃいますからねー」
ワイワイワイ
侑「なんだ。かすみちゃん、平気そうだね」
歩夢「……うん」 歩夢「……」
━━━(回想)━━━
【昨日】
【生徒会室前 廊下】
歩夢「待ってかすみちゃん!」タッタッタッタッ
かすみ「……」スタスタ
歩夢「待ってってば!」ガシッ
かすみ「……どうしたんですか、歩夢先輩」
歩夢「どうしたって……」
かすみ「しず子を明日の舞台に立たせてもらう話はし終わったんですか?」
歩夢「……それは侑ちゃん達が今きっと話してるはず」
歩夢「抜け出してきたの。かすみちゃんが心配だったから」
かすみ「……かすみんは大丈夫ですよ。心配無用です」
歩夢「……嘘。今のかすみちゃんを放っておけないよ」 かすみ「……歩夢せんぱい。一つ聞いてもいいですか?」
歩夢「……うん、いいよ」
かすみ「……歩夢せんぱいにとって、『恋人』って、どんな存在だと思いますか?」
歩夢「……そうだね」
歩夢「その人のためなら頑張れる。どんなことも乗り越えられる。そんな勇気を貰える人……かな」
かすみ「……やっぱり先輩って、ナチュラルに重くないですか?」
歩夢「そ、そうかな?ごめんね?」
かすみ「なんで謝るんですか。……ステキじゃないですか」
かすみ「自信を持ってそう言えるなんて、とってもステキだと思います」
歩夢「……」
かすみ「……今のかすみんは、恋人って何なのか、よく分かんなくなっちゃいました」
歩夢「かすみちゃん……」 恋人がいるかすみんの方がより現実的だからわからなくなっちゃうのかもね かすみ「だって……だってですよ」
かすみ「かすみんは……しず子じゃない人を、しず子だって思ってたんですよ」
かすみ「いくら演技が上手いからって、変装が得意だからって、そんなのも見抜けないなんて……しず子のこと、何も分かってないのと同じじゃないですか」
歩夢「……」
かすみ「かすみんがそこで気付いてて、おかしいなって思ってたら……しず子があんな目に遭わなかった」
かすみ「なのに、かすみんが何も見えてないから……何も疑わないでぺらぺら喋って……そしてしず子に辛い思いさせて……」
かすみ「そのくせ、かすみんがしず子を守るだなんて息巻いて……恋人面して……」
かすみ「こんなの、馬鹿丸出しじゃないですか…!」
歩夢「……ちがうよ、かすみちゃん」
かすみ「ちがくないです。……きっと、皆んな思ってるはずですよ」
かすみ「……しず子が可哀想だ、って」
かすみ「こんなやつに恋人面されてるしず子が可哀想だ、って」
歩夢「かすみちゃん!」 言いたくは無いが顔を見分けられないなんてお前の愛はその程度の愛なのかと突っ込む人もいるだろうから
その部分の描写をするのは偉い、かすみの気持ちも分かる メガネかけてたら別人に見える世界だしあり得なくもない気もする 歩夢「ダメだよ……可哀想だなんて、そんなこと言わないで……」
歩夢「だって、かすみちゃんは誰よりもしずくちゃんのこと考えてて、しずくちゃんのために行動して……」
歩夢「誰がどう見たって、かすみちゃんをダメだなんて思わないよ……」
かすみ「……もう、いいんです。歩夢せんぱい」
歩夢「え…?」
かすみ「明日の舞台が終わって、全部落ち着いたら、しず子にはっきり伝えるつもりです」
かすみ「かすみんは、しず子の恋人失格だって」
かすみ「しず子の恋人として、しず子の笑顔を守る資格がないって」
かすみ「しず子を幸せにする自信もないって」
かすみ「……別れようって、伝えます」
歩夢「……冗談、だよね……?」
かすみ「……かすみんは本気です」 いやいやいやそれをやったらしずくの心が破壊されるわ 歩夢「……なんで、」
歩夢「なんでそうなっちゃうの……!?」
歩夢「今のしずくちゃんを守れるのは、かすみちゃんだけなんだよ…!?」
歩夢「かすみちゃんがそばに居てあげなきゃ、誰がしずくちゃんを助けてあげられるの……!?」
かすみ「……」
歩夢「かすみちゃん……」
歩夢「自分が心底ダメなやつだって、何も信じられなくなる気持ちも分かる」
歩夢「相手にとって自分が重荷になってるんじゃないかって思い悩む気持ちも分かる」
歩夢「私にだって経験があるから。だから、そういう気持ちは分かるよ……」
歩夢「だけど……!」
歩夢「上手くいかなかったから全部終わりにしようだなんて、そんなの、ただ逃げてるだけでしょう…!?」 歩夢「お願い、かすみちゃん。もう一度、よく考え直して……」
歩夢「……自分を許してあげてよ」
歩夢「しずくちゃんを守ってあげてよ」
歩夢「自暴自棄にならないでよ……」
かすみ「……歩夢せんぱい」
かすみ「ごめんなさい。今日は帰って、頭冷やしてきます」
かすみ「明日の集合時間とか、また教えてください」
歩夢「……絶対来てくれるよね?」
かすみ「……はい」
歩夢「……うん、分かった。待ってるから」
━━━(回想)━━━
歩夢(昨日あんなことがあったんだもん……いつも通りに振る舞ってるけど、内心は荒んでるはず)
歩夢(かすみちゃん……) 「むむ〜っ?侑ちゃんから聞いてた集合場所は確かこの辺のはず〜……」
「あっ!みんな発見!おーい!」タッタッタッタッ
「って、ちょっと待ってってばエマ!」
愛「おっ、エマっち!カリンにカナちゃん!」
エマ「みんなお久しぶり〜!」
果林「…もう、ダメでしょエマ。人が沢山いるのに走ったりしちゃ。危ないでしょ?」
エマ「あっ…ごめんねぇ果林ちゃん」
彼方「そうだよエマちゃ〜ん。エマちゃん見失ったら果林ちゃんはぐれちゃ━━━
果林「彼方?」グイッ
彼方「ま、まだ何も言ってないよぉ〜…」
侑「うわあ、またこうして皆んなが集まるの、なんだかワクワクしちゃうね!」
璃奈「エマさん達が卒業して半年も経ってないのに、ちょっと不思議な気分……」
エマ「私たちも皆んなの顔が見られて嬉しいよ〜!」 果林「久しぶり……って言っても、電話やメールでちょくちょく連絡してたし、懐かしいって言えば大袈裟だけど」
果林「でも、こうやって皆んなの顔を見てると、なんだか安心してくるわね」
せつ菜「ですね!」
果林「……ところで、しずくと会うのは難しそうかしら?」
侑「……うん。しずくちゃんは今の時間だと、楽屋に入っちゃってるかな」
果林「……そう、残念。直接会って話できれば…なんて思ってたけど」
彼方「も〜う。果林ちゃんってば、何だかんだ世話焼きだよね〜」
果林「べ、別にそういうわけじゃ」
エマ「大丈夫だよ果林ちゃん。しずくちゃんへの応援、きっと届いてるはずだよ」
果林「……そうね。後はしずくの勇姿を見届けるだけね」
果林「ね?かすみちゃん」
かすみ「……」
果林「…? かすみちゃん?」
かすみ「!あっ、はい!そう、ですね!」
果林「もう、どうしたの?ボーっとしちゃって」
愛「もしかして、しずくのことで頭がいっぱいだった、とか!」
かすみ「ち、違いますよぉ!からかわないでくださーい!」
歩夢「…………」 ピンポンパンポーン
『皆様、大変長らくお待たせいたしました。これより、藤黄学院・虹ヶ咲学園・東雲学院・青藍高校の四校による、合同演劇祭、入場開始のご案内をいたします……」
ザワザワガヤガヤ
せつ菜「始まりましたね…!私たちも並びましょうか…!」
侑「うわぁ…もう行列になっちゃってる…」
愛「去年の倍……いや、倍以上って感じかぁ。しずくちゃん目当てで来た人も相当いるだろうしねぇ」
かすみ「…………」
プルルルルルル
かすみ「?」パッ
かすみ「……!」
かすみ「ご、ごめんなさい!皆さん先に行っててください!」ダッ
侑「え?かすみちゃん?」
かすみ「必ず開演までには間に合わせますので!」
タッタッタッ
侑「あっ…行っちゃった」
せつ菜「電話を持ちながら慌てて走っていきましたが、何か急用でしょうか?」
歩夢「……」 歩夢もかすみのことを簡単に話しちゃうわけにはいかないだろうしあとは見守るしかないのかな タッタッタッタッ
かすみ「はあ、はあ……」
かすみ「……」スッ
スマホ画面『桜坂しずく』プルルルルルル
かすみ「……しず子」
ピッ
『……もしもし、かすみさん?』
かすみ「……どうしたの、しず子」
『ごめんね、今、大丈夫かな?』
かすみ「……うん、大丈夫」 『…………』
かすみ「……しず子?」
『……やっぱり、かすみさんの声きいてると、安心するな』
かすみ「……!」ドキッ
『もう少しで本番なんだけどね。今すっごく、緊張してる』
『きっと、今日までに色々なことがあったからだと思う』
かすみ「……ほんとだよ」
かすみ「色々なことがありすぎて、かすみんも目回ってるから」
『うふふ、そうだよね』
『だからかな?舞台の上にあがるのに、こんなにドキドキしてるの初めて』
『だから……かすみさんの声を聞きたくて、電話しちゃった』
かすみ「……そっか」
かすみ(……嬉しい。すっごく嬉しい)
かすみ(嬉しいはずなのに……あいつの顔がちらつく……)
かすみ「……ねえ、しず子」
『?』
かすみ「……しず子は、本当にしず子なんだよね?」 本番前のしずくにこんなこと聞いちゃうなんてかすみも相当思い詰めてそう 『……? 私は私だよ……?』
かすみ「……じゃあ、かすみんとしず子、どっちから告白したか覚えてる?」
『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?私からだもん』
かすみ「いつ?」
『去年のスクールアイドルフェスティバルの最中』
かすみ「どこで?」
『タイミングってこと?ヒーローショーが終わって、ベンチで一休みしてる時』
かすみ「……」
『合ってるでしょ?』
かすみ「……うん。全部あってる」
『……そんなこと聞いて、どうしたの?』
かすみ「……ねえ、しず子」
かすみ「しず子は、かすみんのこと、好き?」 『…………』
かすみ「……ごめん、しず子が今一番大事な時に、変なこと聞いて」
『…………もう』
かすみ「……しず子、怒ってる……?」
『……笑顔がステキなところ』
かすみ「…え?」
『表情豊かで、人懐っこくて、ワンちゃんみたいなところ』
『自分が一番かわいいって信念に真っ直ぐで、負けず嫌いで、努力家で、』
『自己中心的で生意気な人に見えるけど本当は人一倍優しくて、』
『私が挫けそうになった時は、すぐ駆けつけてくれて私を勇気づけてくれる』
『そんなあなたのことが好きです』
『━━━桜坂しずくは、誰よりも一番、中須かすみを愛しています』 作者のミスじゃなかったらこのしずく偽物だよな
>>192でかすみがしずくに告白したと言ってるんだから もうちょい待って指摘しないとミスじゃなかったらけっこうな邪魔してるぞ >>365
作者の記憶違いによるミスです……大変失礼しました
>>362の訂正です
誤『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?私からだもん』
正『……もう、覚えてるに決まってるでしょ?かすみさんからでしょ』
一番間違えちゃいけなきゃ肝心な場面なのに申し訳ありません…
ご指摘ありがとうございました! やっぱりミスだったか
甘々な感じの描写だったからミスなのかなと思ったんだよ
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