【SS】しずく「千両役者」かすみ「三文小説」
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・アニメ時空です。
・栞子等のアニメ未登場キャラは登場しません。悪しからず。
・話の都合上、オリジナルのモブキャラが登場するので、苦手な人はブラウザバック推奨です。
・しずかすSS。アニメ13話でしずくとかすみが恋仲になったという前提。
以上、但し書きです。
書き溜めてませんのでゆっくり書いていく予定です。
よろしければ最後までお付き合い頂けると嬉しいです。 >>1
うるせえカス
ハーメルン(笑)でやってこい👎 書き溜めてないにしても1レス分ぐらいは前もって書いとけよ 【春】
【虹ヶ咲学園】
【演劇部 部室】
「……えー、以上で、今年度の演劇部部長に就任しました、私からの挨拶とさせていただきます」
部長「それでは、新1年生の皆さんも居ますので、ここで各々の自己紹介の時間とさせていただきます」
部長「それじゃあまずは、新2年生からお願いします。名簿順で行くと……」
部長「桜坂さん。お願いします」
しずく「はい」
ザワザワ
しずく「新1年生の皆さん、初めまして。国際交流学科2年の、桜坂しずくです」
ザワザワ
「ねえ、あの人が桜坂しずくさんだよね……スクールアイドルの……」
「去年の合同のときの主演やってた人だよね…」
「その時は1年生だったのにすごいよね……演技も歌もやばかったし」
ザワザワ
部長「ほら、1年生たち。ざわざわしないでください」 しずく「あはは……」
部長「ごめんなさい、桜坂さん。続けてください」
しずく「はい。……知ってる人もいるかもしれませんが、私は演劇部のほかに、スクールアイドル同好会でも活動しています」
しずく「今年は去年以上に、スクールアイドルの活動を通して、自分のお芝居をより深く、より高く、とことん追求していきたいと思ってます」
しずく「皆さんと一緒に、どんなお芝居を作り上げていけるか。楽しみで楽しみで仕方ありません」
しずく「新1年生の皆さん、よろしくお願いします」ニコッ
パチパチパチパチ
「あ〜推せるなあ…桜坂先輩……」ヒソヒソ
「こら。いくらスクールアイドルやってるからって、先輩を推せるとか言うもんじゃないでしょ」ヒソヒソ
「しょうがないじゃん。そう思わなかった?」ヒソヒソ
「まあ…桜坂先輩は魅力的なのは確かだけど……」ヒソヒソ
部長「そこ、さっきから私語が多いですよ。慎みなさい」
「す、すみません」
部長「……」チラッ
しずく「……?」
部長「……はい。じゃあ、次は━━━━ 【スクールアイドル同好会 部室】
ガチャッ
しずく「━━━遅くなりました!」
歩夢「あ、しずくちゃん。お疲れさま」
侑「お?演劇部の方は終わったみたいかな?」
しずく「はい。今日はオリエンテーションということで、この一年間の活動の説明と、部員の自己紹介で終わりました」
侑「そっかそっか、お疲れしずくちゃん」
しずく「ありがとうございます。ところで……」キョロキョロ
侑「?」
歩夢「?」
しずく「他の皆さんは……?」
歩夢「うーん。もうそろそろ、帰ってくる頃じゃないかな?」
ガチャッ
歩夢「あ、ちょうど来たみたい」
「いや〜はははw、新1年生の呼びかけ、想像以上にきちぃ〜w」
「これだけ沢山の活動団体があれば、人が分散されるのも仕方ない。根気あるのみ」
「ここはやっぱり!去年のようにソロライブをするべきではないでしょうか!一番の広告になると思います!」 歩夢「愛ちゃん、璃奈ちゃん、せつ菜ちゃん。お疲れさま」
侑「その感じだと、どうやら手応えは薄いっぽいね…」
愛「うーん、全く無いわけじゃないんだなぁ〜これが」
愛「去年のSIF見に来たって娘も居たし、スクールアイドルって名前に反応する娘なら、結構いるんだけどね〜」
璃奈「スクールアイドルが好きって聞いて、好きって答える人は多い」
璃奈「でも、スクールアイドルやりたいかって聞いたら、断られるのがほとんどだった」
璃奈「璃奈ちゃんボード『しょんぼり』」
せつ菜「……確かにスクールアイドル文化に関しては、ステージに立つ人よりも、ファンとして応援する人の方が圧倒的に多いのが現状です」
せつ菜「多くの才能や努力が求められ、そのハードルを考えると、他の部活動以上に、部員集めが難しいのは仕方ないのかもしれません……」
歩夢「そっかぁ、そうだよね……」 侑「……まぁまぁ!そんなに気に病むことないよ!」
侑「今日はまだ初日!虹ヶ咲は生徒が沢山いるわけだし、その中に『スクールアイドルやりたい!』って娘はきっといるはず!」
侑「私たちが楽しく活動してれば、興味持ってくれる娘が絶対いるはずだもん!」
歩夢「…ふふっ、そうだね」ニコッ
愛「こういうの向こうから来るのを待つしかないからな〜。さっきりなりーも言ってたけど、根気あるのみ!だよね〜ホントに」
せつ菜「それじゃあ皆さん!この後の時間を使って、ファンの皆さんがスクールアイドルをやりたくなるような作戦でも立てませんか!」
愛「おっいいじゃ〜ん!作戦会議!」
せつ菜「まずは言い出しっぺの私から行きましょう!……ずばり、『ゲリラライブでスクールアイドルは最高ですアピール大作戦』です!」
歩夢「せつ菜ちゃん、さっきからライブやりたいだけじゃあ……」
せつ菜「バレましたか!」
\ どっ /
しずく「……」
しずく「……あの、璃奈さん」
璃奈「?」
しずく「その……かすみさん、どこ行ったか知ってる?確か璃奈さんたちと一緒に宣伝に回ってるって、聞いてたんだけど……」 璃奈「……」
しずく「璃奈さん?」
璃奈「かすみちゃん、すっかり忘れてた」
しずく「璃奈さん!?」
愛「あれ〜?しずく〜、もしかしてもしかして、愛しのかすかすが居なくて寂しかったりして〜?」
しずく「かすかすじゃなくてかすみさんです!もう!茶化さないでください!」
愛「あはは、ごめんごめん〜つい。かすみんでしょ?」
愛「チラシ配ってる時は、確かに愛さんたちと一緒に居たんだけど、気付いたら居なくなってたんだよね〜」
せつ菜「携帯も繋がりませんし、連絡も取れなかったので、もしかして先に部室に戻ってるのではと思って来てみたのですが……」
しずく「まさか……」
ピポパ
しずく「……」
侑「…しずくちゃんって、かすみちゃんのことになると、動きが機敏になるよね」ヒソヒソ
歩夢「それだけ、かすみちゃんのこと心配してるんじゃないかな」ヒソヒソ
しずく「……」
プルルルル
『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるまたは電源が入っていないため……』ツーツー
しずく「やっぱり、スマホの電源切れてるんだ…。もう、あの人ったら……」 愛「かすみんって結構スマホ見てくれないイメージあるよねー」
しずく「はい。そうなんです」プンプン
しずく「電源が落ちてたり、メール送っても読んでくれなかったり……たまにスマホ自体を忘れてくることもありますから」
愛「ふーん。じゃあ、夜とか休みの日とか、かすみんと電話で話したいと思っても、あんま出来ない感じ?」
しずく「いや、そんなことないですよ。むしろお家にいる時の方が、かすみさんと電話できる気がしますね」
愛「ええ?そうなの?なんか意外」
しずく「前にかすみさんも言ってたんですけど、家だとついダラけてスマホいじってることが多いから、すぐ反応できるそうです」
愛「そっかー、それじゃあ夜でも休みでも安心だ」
しずく「私としては、宿題に手をつけてほしいところなんですけどね……あまりうるさく言うと、かすみさん機嫌を損ねちゃうので」
愛「へー、何て言ってくるの?」
しずく「いつものかすみさんですよ。『もー!今のかすみんはしず子とお話ししたいんだから、勉強勉強言うのやめてよー!』みたいな」
愛「へぇ〜」ニヤニヤ
璃奈「璃奈ちゃんボード『ひゅーひゅー』」
歩夢「はわわ///」
侑「いや〜、しずくちゃんもかすみちゃんも、仲良しなんだね〜」
しずく「……は!///」 しずく「あ、愛さん!誘導しましたね!///」
愛「何の話〜?愛さんはただ、かすみんのこと聞いただけだけど〜?」ヒュー
しずく「もう///はぐらかしたってダメですよぉ///」
愛「ふーん。じゃあストレートに聞かせてもらうと、しずくはかすみんとどんな話してるのさ?」
しずく「へえっ!?///そ、そんなの言えるわけないじゃないですか!///」
愛「ええ〜?もしかして、ここじゃ口に出せないような、いやらし〜こと話してるの?」ニヤニヤ
しずく「ち、違います!///私とかすみさんはまだそういう関係ではないですから!///」
愛「『まだ』?まだってことは、いずれはそういう仲になりたいって考えてるわけだ」ニヤニヤ
しずく「や、や……///」プシューッ
ワチャワチャワチャ
璃奈「愛さん、悪い顔してる」
侑「かすみちゃんが居ないタイミングでしずくちゃんを狙い撃ちする……愛さんったら人が悪いなあ〜」
歩夢「あはは…2人とも楽しそうだね…」
せつ菜「仲睦まじくて何よりです!」ペカーッ
ガチャッ
「ちょっとーーー!?なんで皆さん、かすみんのこと置いてっちゃうんですかーーー!?」
侑「あ、噂をすれば何とやらだ」
かすみ「かすみん、あーんなに頑張って宣伝してましたのにーー!」 璃奈「かすみちゃんごめん。部室にもう戻ってると思ってこっち来たら、まだ帰ってきてなくて、かすみちゃんの話題はそのままフェードアウト」
かすみ「りな子ひどくない!?」
愛「でもでも、何回も連絡したのに返事してくれなかったかすかすも、ひどいっちゃひどいぞ〜?」
かすみ「だぁからぁ!かすかすじゃなくて、かすみんです!……電話については、その、充電がなくなっちゃいまして……」
せつ菜「まあ、無事で何よりです!で、収穫の方はどうでした!?」
侑「そうそう!どうだった!?」
かすみ「あー……それがですねぇ……」
せつ菜「それが?」
侑「が?」
かすみ「…………」
璃奈「……?」
歩夢「……かすみちゃん?」
しずく「……まさか、何もなし?」
かすみ「……ぐっふっふっふっふ」
かすみ「なぁーんとぉ!見学希望者1人、確保しましたーーー!」
せつ菜「うおおおおおおおお!!!やりましたねえっ!!!」
侑「流石だよぉ!!!でかしたかすみちゃん!」ガバッ
かすみ「ぎゃぁっ!?だ、抱きつかないでください!///!侑先輩〜〜〜///」
しずく「……」ムッ
璃奈「しずくちゃん、どうどう」
しずく「べ、別に!ムッとなんてしてませんから!」
歩夢「◉」
愛「歩夢、どうどう」
歩夢「◉」
愛「なんか言ってよ。愛さん怖いよ」 ━━━━━━
━━━━━
━━━
【下校時間】
【帰り道】
かすみ「あ"〜づがれだぁ〜」トボトボ
しずく「声、汚くなってるよ、かすみさん」スタスタ
かすみ「だってだって、人がわんさかいる中、学校中を練り歩いたんだよ?もうクタクタですよぉ〜かすみん…」
しずく「…予想はしてたけど、うちぐらいの規模の学校だと、勧誘は一筋縄じゃなさそうだね」
かすみ「そうだよぉ!さんざん走り回って、やっと1人確保できたんだからぁ!」
かすみ「そういえば、しず子の方はどうだったの?」
しずく「演劇部の方?そっちは、今日のオリエンテーションの様子だと、例年とほぼ同じ部員数は集まりそうかな」
かすみ「えー!ずーるーいー!」
しずく「ずるいって言われても……」 しずく「でも、もしかしたら今年はいつもより多いかも」
かすみ「あ、そうなんだ」
しずく「……自分で言うのも恥ずかしいんだけど、私目当てで入部を決めた娘が多いみたいで」
かすみ「……しず子目当て?」ムカッ
しずく「うん。オリエンテーション終わった後も、私のところに寄ってくる娘も結構いたし」
かすみ「……」ムカムカムカムカ
かすみ「……ふ、ふーん、しず子ってば、そんな有名人なんだ」
しずく「有名人ってほどじゃないよ。やっぱり、スクールアイドルやってるのが大きいのかな?」
しずく「その縁もあって去年の合同演劇祭で主演に抜擢させてもらってるし」
かすみ「…ま、たしかに?あの時のしず子はカッコよかったもんね。みんな惚れちゃうのも無理ないよ」
しずく「ふふっ、ありがとう」
かすみ「…………」
しずく「……かすみさん?」
かすみ「……なに?」
しずく「ひょっとして……妬いてる?」
かすみ「はあ!?///や、妬いてなんかいませんけど!?///」 >>4
この程度のモブキャラでガタガタ抜かすとかどうかしてる しずく「妬いてるじゃん」クスクスッ
かすみ「やーいーてーまーせーんー!///」プクーゥ
しずく「顔、真っ赤っかだよ?」
かすみ「うるさいっ!///」
しずく「ふふっ、かすみさん、耳貸して」
かすみ「…?」スッ
しずく「……安心してかすみさん♡どんな人に言い寄られても、私はかすみさん一筋だから♡」
かすみ「……///」プシューッ
しずく「ね?♡」
かすみ「……し、しず子ってさ、よくそういうこと、平気で言えるよね?///」
しずく「えぇー、恋人なんだから、このくらい言えないと。それに、かすみさんも、あの時そうやって言ってくれたじゃん」
━━━しず子のこと、好きじゃないって言う人がいるかもしれないけど
━━━私は、桜坂しずくのこと、大好きだから!
かすみ「いや!あの時は、まだしず子とそーゆー関係じゃなかったし!それにあの時は、落ち込んでるしず子を励まそうと思って
しずく「そうなの?えー、じゃあ、今は私のこと大好きじゃないのかあ……しずくは悲しいなぁ〜…」
かすみ「分かった分かった分かった!かすみんだって言えるもん!だからさっきみたいに耳貸して!」
しずく「はーい♡」 かすみ「……かすみんも、しず子のことだいすきだから…!///」ボソボソッ
しずく「……♡」
かすみ「……ね、これでいいでしょ?」
しずく「ごめんなさい♡よく聞き取れませんでした♡」
かすみ「はあ!?///」
しずく「あの時みたいに大きな声で堂々と言ってくれないと聞き取れません♡」
かすみ「ぐぬぬ〜!完ッ全におちょくってきてる〜!」
しずく「で?♡ 今のかすみさんは私のこと大好きしまゃないんですか?♡」
かすみ「……のこと、だい、……に決まってるじゃん……///」ボソッ
しずく「ん?♡」ニコニコ
かすみ「しず子のことだーい好きに決まってるじゃん!///」
しずく「わあ、嬉しい♡ありがとうかすみさん♡」
かすみ「もう、しず子のバカ…バカバカバカ……///」 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しずく(こうして、高校2年生となった桜坂しずくの学園生活は幕を開けました)
しずく(演劇部では、去年以上に舞台の上に立つ出番が増え、また、大役を任されることも多くなりました)
しずく(演技力の優劣を決めるのは難しいですが、ことお客さんからの人気に関しては、桜坂しずくは部員の中でも頭一つ……いや、頭二つ抜けてると風の噂で聞きました)
しずく(桜坂しずくが舞台に立つと客席が熱を帯びるようにワッと湧く)
しずく(桜坂しずくが唄えば万雷の拍手が鳴り響く)
しずく(桜坂しずくを目当てに人が舞台へと吸い寄せられる)
しずく(手前味噌になってしまいますが、桜坂しずくの熱狂的な人気は、私自身も肌で感じ取っていました)
しずく(そんな私に対して━━━きっかけは新聞部の校内新聞の見出しでしょうか?━━━次のような異名が生まれ、いつの間にか定着してしまいました)
しずく(『千両役者・桜坂しずく』と)
しずく(……いかんせん大袈裟が過ぎるとは思いますが。旧部長に知られたら笑われるに違いありません) しずく(一方、スクールアイドル同好会は、相変わらずと言いますか……平常運転という感じです)
しずく(春の頃は新1年生を何としてでも呼び込もうとあの手この手で勧誘しましたが、5月を過ぎた頃からは勧誘の熱気が冷めていきました)
しずく(ただ、同好会内の空気が沈んだとか、澱んだかと言えばそんなことはなく、むしろ『これで勧誘とか気にしないで私たちのやりたいことできるね!』感で包まれてました)
しずく(……所属している私が言うのもなんですが、同好会の皆さんは…何というか…マイペースな人たちが多いと思います。良い意味で)
しずく(ちなみにかすみさんが確保してきた見学者の子も結局は入部ならず。しょげているかすみさんをなでなでしてあげました)
しずく(……かすみさんとの恋人関係。そう、それだけは去年の私たちとは大きく異なる点と言えるでしょう)
しずく(といっても、私たちの関係を知ってるのは同好会の皆さんだけ。部外の人達からは『仲の良い友達』という認識で留まっている━━━)
しずく(━━━はず、でした)
しずく(言ってしまえば、私のその認識の甘さが、これから語られる一騒動の発端になったのだと、私は今更ながら思います)
しずく(だからこれは、自業自得の物語で)
しずく(業と罪と傷とと罰の物語で)
しずく(今となっては笑うことしかできない、独りよがりな物語です)
しずく(その全てを白日のもとに晒しましょう)
しずく(その出鱈目な喜劇を、歌舞いてみせましょう)
しずく(駄文ばかりの小説に、お付き合いいただきましょう)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ というわけで導入部分となります
続きは今日の夜に書きます
更新速度は牛歩のごとくスローペースになると思いますが、気長にお付き合いいただければと思います
余談ですが井口と常田は出ませんのでご容赦ください 【夏】
【虹ヶ咲学園】
【スクールアイドル同好会 部室】
侑「そういえばしずくちゃん、そろそろじゃない?」
しずく「? そろそろ、と言いますと?」
侑「合同演劇祭。たしか去年の今くらいの時期だったでしょ?」
しずく「あ!侑先輩、覚えて下さってたんですか!」
侑「当たり前じゃんか〜。しずくちゃんの大舞台の立ち姿は、今でも鮮明に覚えてるよ〜」
しずく「ありがとうございます…!嬉しいです…!」
侑「今年もやるの?」
しずく「もちろんです!今年もやります!それもパワーアップして!」
侑「……パワーアップ?」
しずく「そうなんです!去年は藤黄学院との合同演劇祭でしたが、今年はそこに東雲学院・青藍高校の2校が加わった、全4校の合同演劇祭となったんです!」 愛「4校!ずいぶん思い切ったことするね〜」
しずく「去年の合同演劇祭の反響を受けて、今年は東雲と青藍からの参加希望があったそうです」
せつ菜「なるほど!たしかに去年の舞台はどちらとも大盛況でしたからね!」
歩夢「それで、今回はしずくちゃん達がやるのはどんな演目なの?」
しずく「実は今回なんですが……4校とも『日本の古典演劇のリバイブ』というテーマ縛りがありまして…」
せつ菜「日本の古典演劇のリバイブ……ですか?」
しずく「はい。どういうことかと言いますと……能や歌舞伎の演目には必ず題材の元となったお話があるんですが、そのお話の魅力を今の人にも分かりやすく伝えられるように、現代劇としてアレンジして発信する、という趣向ですね」
せつ菜「なるほど!面白そうな試みですね!」
愛「で!しずく達は何やんの?」
しずく「私たちが選んだのは、『楼門五三桐』の二段目の返し「南禅寺山門の場」━━━通称『山門』ですね」
愛「ああ、石川五右衛門じゃん!」
侑「ええ!?愛さん分かるの!?」 ◇◆◇◆◇◆◇◆
桜坂しずくの作品解説コーナー♡(やらしい声)
侑「ねえ、しずくちゃん。その『山門』って、一体どんなお話なの?」
しずく「はい♡ お話しましょう♡」
しずく「まず、『楼門五三桐』は歌舞伎の演目でして、伝説の大泥棒・石川五右衛門と、当時の権力者にして五右衛門の仇敵・真柴久吉、この二人の対立を全五幕を通して描かれている、長編の時代物となります」
しずく「ただ、その全五幕が通しで上演されるようになったのはつい最近の話で、それまでは全五幕の中でも特に人気の高かった場面が繰り返し演じられるのがほとんどでした」
しずく「それが先ほどお話した、二段目の返し「南禅寺山門の場」という場面になります。名前が長いので、通称『山門』と呼ばれるようになりました」
侑「ふーん。どういう場面なの?」
しずく「ここの場面は15分という短い上演時間でして、端的に言えば、石川五右衛門が自分の仇敵が真柴久吉であることを知り、その久吉と初めて相対する場面となります」
しずく「上から五右衛門が、下から久吉がお互いを睨み合う時間は『天地の見得』と呼ばれる名場面なんですよ?」 しずく「ただ、その名場面と負けない知名度を誇るのが、五右衛門のとあるセリフだと思います。もしかしたら、セリフだけだったらどこかで聞いたことあるのではないでしょうか?」
侑「へえ、どんなセリフなの?」
しずく「いいんですか?♡ では……おほん」
絶景かな、絶景かな。
春の眺めは値千両とは、小せえ、小せえ。
この五右衛門の目からは、値万両、万万両。
もはや陽も西に傾き、誠に春の夕暮れの桜は
とりわけ一入一入。はて、うららかな眺めじゃなぁ。
侑「あー!なんか聞いたことあるよ!」
しずく「今のセリフは、石川五右衛門が京都の南禅寺山門で満開の桜を眺めながら高らかに詠みあげているシーンで出てくるんですが、それが冒頭部分なんですよね」
侑「へぇー!初っ端からインパクトあって、観てる人もワクワクするのも分かるよ!」
しずく「そうなんです!石川五右衛門という強烈なキャラに相応しい名セリフから始まり、宿敵の久吉と天地の見得をはりあう名シーン、そこに豪華絢爛な大道具や外連も相まって、歌舞伎の醍醐味が凝縮された演目なんです!上演時間15分なのが信じられません!」
侑「し、しずくちゃん、一旦おちついて」
しずく「そうだ! 今度、侑先輩も本物の歌舞伎に一緒に観に行きませんか!?大丈夫です!歌舞伎というと古い・難しい・高尚というイメージがあるかもしれませんが、今は歌舞伎のことがよく知らない人でもお話の面白さが理解できるように創意工夫が施されており
侑「しずくちゃん!?しずくちゃーん!」
桜坂しずくの作品解説コーナー、終わりです♡(やらしい声)
◇◆◇◆◇◆◇◆ 歩夢「話を聞いてると面白そう!だけど……歌舞伎のあの動きとか声の出し方を覚えるのって、いくら演劇部の人でも大変そう……」
しずく「そうですね……歌舞伎の立ち振る舞いは一朝一夕で身につくものじゃないので、そこは難しいと思います」
愛「でも、歌舞伎を単に物真似するってわけじゃないんでしょ?」
しずく「そうなんです。今回はどちらかというと歌舞伎の演目の元ネタにフューチャーして、歌舞伎に馴染みのない若い人でも楽しめるような、そんな演劇が作れたらと考えてます」
しずく「ただ、歌舞伎の要素も上手く残したいとは思ってるので、そこは部員の皆さんとアイデアを出して試行錯誤してるところですね……」
せつ菜「大丈夫です!去年の『荒野の雨』を作り上げた演劇部の皆さんなら、きっと素晴らしい演劇が出来上がるに違いありません!」
しずく「!ありがとうございます!」
せつ菜「五右衛門役のしずくさんが舞台の上で名口上を発してる姿が目に浮かびます!」
しずく「ええ!?」
侑「あれ?しずくちゃん、今年も主役演じるんじゃないの?」 しずく「ま、まだ決まってるわけじゃないので、オーディションもこれからなので……」
愛「えー?でも、もうこの大役はしずくで確定してるっしょー。なんせ、千両役者の元ネタみたいなもんだよ?」
しずく「もう愛さん…!それ、恥ずかしいからやめてくださいって、言いましたよね!///」
愛「え〜いいじゃん格好良くて」
せつ菜「しずくさんは主役のオーディションに参加するつもりはないんですか?」
しずく「……私としては、もちろんオーディションを受けたいです」
しずく「これまでにない大役ですし、今年は4校での合同なのでその規模を考えると……役者の端くれとして、受けたくないわけありません」
しずく「ただ……私は去年の合同演劇祭でも主役をいただきました。そんな私が今年も主役をやりたいなんて、流石に欲張りが過ぎるんじゃないかと思いまして……」
しずく「だから……今回のオーディションは、出ようかどうか、迷ってます」
歩夢「しずくちゃん……」
侑「……欲張りだなんて、そんなことないと思うけどな」
しずく「え…?」 侑「だって、しずくちゃんはお芝居が好きだってことも、お芝居のためならどんな努力を惜しまないことも、皆知ってるもん」
侑「そんなしずくちゃんなら、今年も大役を演じたい!って考えるのはおかしくないし、むしろ普通じゃないかな?」
しずく「侑先輩……」
せつ菜「そうですよ!そこでしずくさんが遠慮する必要はないと思います!」
せつ菜「もしそこで何か言う人が居たとしても、しずくさんの演技力で黙らせてやればいいだけです!」
しずく「せ、せつ菜さん……」
愛「あーんしーんせい、しずくぅ!」ガバッ
しずく「きゃっ/// 愛さん!?」
愛「しずくにはアタシたちが居るからだーいじょーぶ!愛さん、文句言わせないよ〜!」
愛「『さんもん』だけに!」
しずく「……ん?……あ、なるほど」
歩夢「ふふっ、答えは出せそう?しずくちゃん?」
しずく「歩夢さん……はい、出せました!」
しずく「私、今年も主演オーディションに出ます!」 ガチャッ
かすみ「かすみん!買い出しより戻って参りました〜」
璃奈「もどりましたー」
侑「二人ともお帰り。買い出しありがとね」
かすみ「このくらいお安いごよっ……」
かすみ「ってぇ!なーんで、愛先輩がしず子に抱きついてるんですかぁ!」
愛「あれ?あ〜あははwいや、しずくがかすかすが居なくて寂しがってたからつい〜w」
しずく「へえ!?な、何言ってるんですか愛さん!///」
かすみ「かすかすじゃなくてかすみん━━━じゃなくて、とっととしず子を離してください!このドロボ〜!」
愛「にひひwほれほれ〜剥がしてみんしゃいw」
かすみ「ぐぬぬぬぬぬ〜…!」
しずく「あはは……」
璃奈「あ、そういえば聞いたよ、しずくちゃん。今度、合同演劇祭やるって」
しずく「……あ、うん。そうなの」
璃奈「今年も主演はしずくちゃん?楽しみ」
しずく「…うん。まだオーディション始まってないから分かんないけど、主演になれるように頑張るね」
璃奈「しずくちゃんなら、きっと大丈夫。璃奈ちゃんボード『ファイトっ』」
しずく「ありがとう、璃奈さん」ニコゥ 千両役者の歌詞が『21章の桜坂しずく』にしか見えない風潮、ほんと凄い。もっと広まって欲しい。
https://sp.uta-net.com/song/294603/ ━━━━━━━
━━━━━
━━━
【演劇部 部室】
部長「……そうですか。桜坂さんも主演オーディション、参加されるんですね」
しずく「はい。よろしくお願いします」
部長「……確かに、『千両役者』桜坂しずくという役者にとって、今回の五右衛門役はまさにうってつけの大舞台ですからね」
しずく「あの、その名前であまり呼ばないで貰ってもいいですか?その…恥ずかしいので……」
部長「ああ、そうなんですか。すっかり気に入ってると思ってましたけど」
しずく「なに言ってるんですか……名前負けもいいところですよ」
部長「そうですか?少なくとも、私は桜坂さんにピッタリだと思ってますが」
しずく「……そうですか」
しずく「あの……部長、少し聞いてもいいですか?」
部長「どうぞ」 しずく「部長は今回の演目に、どうして『山門』を選んだんですか?」
部長「別に大した理由はありませんよ」
部長「4校ともテーマが『日本の古典演劇のリバイブ』という縛りが設けられてたこと」
部長「1校あたりの上演時間が短いこと」
部長「その中でも他の学校よりインパクトを残したいこと」
部長「そういった色んな要因が重なって、それに最も適していると思ったのが、『楼門五三桐』二段目の返し「南禅寺山門の場」だった、というだけです」
しずく「……なるほど」
部長「まさか、桜坂さんの舞台として私があてがった、とでも思ってたんですか?」
しずく「い、いえ!そういうことでは━━━
部長「いくら『千両役者』と称えられてるからって、それは少し自意識過剰じゃないですか」
しずく「……はい、すみません、でした」
部長「……質問は以上ですか?主演のオーディションの日にちなどついては、また決まり次第、連絡しますので」
しずく「……大丈夫です。ありがとうございました」
ガチャッ
「桜坂さん、いますかー?」 >>66
例の演劇部部長(通称22秒先輩)は、公式からの言及はありませんがリボンの色からして3年生なのでは?と推測しております
このssでは、22秒先輩は無事卒業し、代変わりして新3年生の誰かが新部長に就任したという設定です 今ちょろっと調べたら「22秒の女」ではなく「29秒の女」でした
失礼しました
では続けます しずく「?……あっ」
しずく「かすみさん、どうしたの?」
かすみ「……さっき、演劇部の人たちに聞いたら、今日の稽古はもう終わったって言ってたから……」
しずく「待っててくれたんだ。ありがとね、かすみさん」
かすみ「別にしず子待ってるのは全然へーきだけど……」チラッ
部長「……」
かすみ「ごめん。話しあるみたいだったら、かすみん外で待ってるから」
しずく「うんうん。話はもう済んでるから大丈夫だよ」
かすみ「そ、そっか」
しずく「……それじゃあ、部長。お先に失礼し━━━「桜坂さん」
部長「本演目の『山門』の主役は石川五右衛門ですが、五右衛門の最期はもちろんご存知ですよね?」
しずく「……えっと、確か……釜茹での刑によって公衆の面前で処刑された……ですよね?」
部長「……そうです。あなたも気をつけてくださいね」
しずく「……?」
部長「何でもありません。お疲れ様でした」
しずく「……はい、お先に失礼します。お疲れさまでした」
バタンッ
部長「…………石川や浜の真砂は尽くるとも」
部長「世に盗人の種は尽くまじ」 発癌性の方の部長はレズレイプしてくるだけだけどこっちの部長はなんか怖いな 1です
急な用事があり更新が滞ってしまい申し訳ありません
今日の夜に続き書きます しずく「待たせちゃってごめん。行こう、かすみさん」
かすみ「うん」
かすみ「今の人って、演劇部の部長さんだよね?」
しずく「そうだよ。3年生で、私と同じ国際交流学科なんだ」
かすみ「ふーん……なんか、前の部長さんとは全然ちがうね。雰囲気」
しずく「そう…だね。前の部長は、みんなの憧れの先輩って感じだったけど、今の部長は、みんなが恐れる先輩って感じだから」
しずく「もちろん悪い人じゃないんだよ?真面目だし、頭も良いし、演技指導も的確だし。ただ━━━」
かすみ「ただ?」
しずく「━━━あの人自身がお芝居してるところ、見たことないんだよね。私」
かすみ「……かすみん達でいうとこの、侑先輩みたいな?」
しずく「え?」
かすみ「ほら、侑先輩ってスクールアイドル同好会だけどスクールアイドルじゃないでしょ?」
かすみ「それと同じことなんじゃないかなーと思って」
しずく「うーん……そうなのかなぁ」
しずく「……かすみさんにだから言うけど、実はね、部長とはあんまりお話したこと、ないんだよね」
かすみ「そうなの?」
しずく「うん……なんというか、考えすぎかもしれないけど、向こうから壁を張られてる気がするんだよね」
かすみ「……ふんーん」 かすみ「しず子の考えすぎなんじゃない?」
しずく「だといいけど……」
かすみ「変に考えたってしょうがないじゃん。合う合わないは誰にでもあるんだしさ」
しずく「…まあ、そうかもね」
かすみ「それに、かすみんとしてはぁ、そっちの方がいいかなぁって」
しずく「え?なんで?」
かすみ「だって……前の部長さんは、めちゃくちゃしず子と距離近かったじゃん!」
かすみ「何回かすみんとしず子の間に割り込んできたと思ってんのさ!」
しずく「あぁ……。まあ、あの人はああいう人だから……」
かすみ「忘れもしないよ!かすみんがしず子と同好会のことで大事な話してるって時にさ!
━━━「しずく、行こ」(アニメ2話)
かすみ「ムキーっ!あん時の澄まし顔〜!かすみんの方をチラッと見てさ、しず子も待たないでとっとと立ち去っちゃってさ!」
しずく「か、かすみさん、どうどう。落ち着いて」
かすみ「しず子もしず子だよ!かすみんと作戦会議してたのに、あっさり付いていっちゃってさ!」
しずく「え、えぇ……、今更そんなこと言われても……。ごめんなさい……」 かすみ「……最初、しず子って、部長さんのことが好きなのかなって思ってた」
しずく「え?どうして?」
かすみ「……かすみんは好きじゃないけど、顔は格好いい系だし、背も高いし、しず子には優しそうだったし」
かすみ「それにしず子も、部長さんと喋ってる時、普段と違う感じだったし……」
しずく「……うーん」
しずく「確かに、前の部長は私のこと気にかけてくれてたし、私も部長をよく頼りにしてたけど」
しずく「でも、それはあくまで部活の先輩と後輩の関係。恋愛とはまた違うよ」
かすみ「……じゃあ、恋愛として、誰かを好きになったのは……かすみんが初めて?」
しずく「そうだね。私、今までずっと演劇しか興味が無かったから、恋愛とは無縁だったかな」
かすみ「…………ふーん。そっかそっか。かすみんが初めてなんだぁ」
しずく「口元、にやけてるよ。かすみさん」
かすみ「ふぇ?な、なんのこと?」
しずく「隠し切れてませんよ?」 かすみ「だって、相手が初めて好きになった人が自分って、なんか嬉しいじゃんっ」
しずく「そう?私は別に気にしないよ?」
かすみ「かすみんが昔は別の人が好きだったとか、誰かと付き合ったことがあったとしても?」
しずく「うん。だって、かすみさんは私を選んでくれたわけだし」
しずく「今こうして恋人になってるだけで、私は嬉しいから」
かすみ「……しず子はズルいよ。そういうこと、平気で言えちゃうのが」
しずく「かすみさんも言ってくれていいんだよ?」
かすみ「……この流れで言えるわけないじゃん!///」
しずく「ふふっ♡照れてるかすみさんもかわいいよ♡」
かすみ「バカ///バカしず子///」
しずく「♡」
しずく「……ねえ、かすみさん」
かすみ「……なに?」
しずく「次の週末、どこかお出かけでもしない?」 かすみ「お出かけって、デートってこと?」
しずく「うん。……ダメかな?」
かすみ「いやいや!かすみんは全然大丈夫!たぶん予定ないはずだし、予定あっても何とかして空けるから!」
しずく「嬉しい。ありがとう、かすみさん」
かすみ「……でも、珍しいね。しず子の方から、デートのお誘いだなんて」
しずく「そう?」
かすみ「そうだよ。いつもデートしようって言ってるのってかすみんじゃん」
しずく「……そうかもね」
かすみ「何かあったの?」
しずく「……来週から、合同演劇祭に向けてのオーディションが控えてるんだけどね」
しずく「私、参加するからには主演を張りたいの」
しずく「だから、これから普段以上にお稽古に励んで、猛特訓しなくちゃいけないから、同好会の方に顔を出せなくなっちゃうと思うの」
しずく「こうやって、かすみさんと一緒にいる時間も、十分に取れないと思う」
かすみ「しず子……」
しずく「だから、二人で一緒に居られる時間に目いっぱいかすみさんと過ごせたら、オーディションも本番も、私、頑張れるかなって」
しずく「だから……その……」モジモジ
かすみ「……も〜しょうがないな〜」
かすみ「分かった!来週、かすみんがしず子に、かすみんパワーをう〜んと注入してあげる!」
かすみ「だから、絶対オーディション受かって、本番成功してよね!」
かすみ「約束!」
しずく「……うん。ありがとう、かすみさん」
━━━━━━━
━━━━━
━━━ 【デート当日】
【お台場 某所】
しずく「……」チラッ
『かすみさん : ごめん!ちょっと遅刻する!』
しずく「まあ、いつものことだけど」ハァ
「遅れてごめーん!」
しずく「やっと来た」
かすみ「待った?」
しずく「待った」
かすみ「そ、即答……」
しずく「かすみさん。遅刻癖、そろそろ直そうか?」
かすみ「ごめんって……。今日はかすみん、朝寝坊しちゃって」
しずく「早寝早起き、だよ。夜遅くまで起きてちゃダメって言ってるでしょ?」
かすみ「だって……今日のデートのこと考えてたら、しず子の顔ばっか浮かんできて、寝ようとしても眠れなくて……」
しずく「うっ……」
かすみ「許して……くれる……?」
しずく「……しょうがないなあ。今日のところは不問にするけど、次はそうはいかないんだからね?」
かすみ「よしっ!」
しずく「!?」
かすみ「というわけで、今日はしず子とデート!存分に楽しもーう!」
しずく「ちょっとかすみさん!絶対反省してないよねそれぇ!?待ちなさーい!」 かすみ「と、その前に」
しずく「?」
かすみ「しず子……その服なんだけどさ〜」
しずく「え?」(参照画像 https:////i.imgur.com/LjnMiOA.jpg )
しずく「な、なんか、おかしかった?」アタフタ
かすみ「派手すぎ!そんな格好で外歩いてたら、みーんなしず子の方を見るに決まってるじゃん!」
しずく「ふぇえ!?」
しずく(そう言われてみれば、今日のかすみさん、帽子に眼鏡もしてて、いつものかすみさんらしくない服装…)
かすみ「もー」(参照画像 https:////i.imgur.com/0w422Ph.jpg )
かすみ「しず子わかってる?今日はお忍びデートなんだから、そんな目立つ格好じゃすーぐバレちゃうじゃん!」 しずく「ご、ごめん……でも、お忍びデートって言葉を私たちが使ってるだけで、要は私とかすみさんが2人がお出かけでしょ?」
しずく「傍から見れば同じグループの娘たちが一緒に遊んでるようにしか見えないし、まさか私たちが恋人だなんて思わないだろうし、そこまで隠そうとしなくても……」
かすみ「……はぁ〜。だからしず子はスクールアイドルの自覚が足りてないんだよ〜」
しずく「……むぅ。どういう意味?それ」
かすみ「いい、しず子?たとえばこれで外を出歩いて、町ゆく人がしず子を見たら、こうなるわけだよ」
『え?あれって虹ヶ咲のスクールアイドルの娘じゃない?』
『本当だ!中須かすみちゃんと桜坂しずくちゃんだ!本物だ!』
『どうしようどうしよう!声かけちゃう?声かけちゃう?』
『声かけるだけならいいよね!ついでにサイン貰っちゃうか!』
かすみ「というようにね」
かすみ「かすみんもしず子も、スクールアイドルとして活動してる以上、ファンはどこにいてもおかしくないって常に自覚しなきゃいけないの」
しずく「……まあ、まさにそんな感じで外で声をかけられた経験はあるから否定しないけど」 かすみ「そりゃあ、突然ファンに声を掛けられても笑顔で対応できなきゃスクールアイドル不合格だよ?」
かすみ「そんなのかすみんだって分かってるけど……今日は別。だって、こないだ━━━」
━━━ しずく「だから、二人で一緒に居られる時間に目いっぱいかすみさんと過ごせたら、オーディションも本番も、私、頑張れるかなって」
かすみ「━━━そう、しず子が言ってくれたんだから、私は今日の二人っきりの時間を大切にしたい」
しずく「かすみさん……」
かすみ「誰の視線も感じたくないし、誰にも邪魔されたくない」
かすみ「今日は、みんなのスクールアイドルかすみんじゃなくて、桜坂しずくの恋人として━━━中須かすみとして過ごしたいの」
しずく「……ごめん、私の考えが甘かったよ」
しずく「確かに私たちは、もうただの女子高生じゃないんだもんね」
かすみ「そうだよ〜。それにしず子は、演劇の方でも顔が知られてるわけだし?」
かすみ「だから━━━!」
しずく(そう言って、かすみさんは自分の帽子を突然私に被せました)
しずく「きゃっ」ボスッ
かすみ「とりあえずは、かすみんの帽子、しず子に貸したげる!」
かすみ「どうするしず子ぉ?これからのデートだけど、まずはしず子の帽子選びに、かすみん行きつけのお店にでも行こっか?」
しずく「……もう。相変わらず強引なんだから」クスクス ◇◆◇◆◇◆◇◆
━━━それから私たちは、思いつくままに、気の向くままに、あちこちを練り歩きました
かすみ「ねえ〜しず子ぉ。これなんかぁいい感じじゃない?」
しずく「…!確かに……いいかも」
かすみ「でしょでしょ〜?」
━━━去年の合同演劇祭やSIFを経た私たちは、想像以上に大きな存在になっていて
しずく「あ、いいニオイするね。クレープかな?」
かすみ「食べる?」
━━━プライベートな時間を持つことも、貴重な時間になりつつあって
かすみ「うわ!ここゲームセンター出来たんだ!入ってみようよぉ、しず子!」
しずく「ほんとだね。来るの初めてかも」
かすみ「せっかくだし何かで勝負しようよぉ。負けた方がジュース奢りね!」
しずく「え〜?しょうがないなあ〜」
━━━だからこうやって、誰の視線も気にしないで過ごせる時間が、本当に久々で
しずく「あ!あそこの犬カフェ!こないだ本で紹介されてたんだよ?」
かすみ「ふーん、そうなんだ」
しずく「ちょっと休憩していかない?」
━━━あなただけを見て、あなただけと話せて、あなただけを想うことができる、今この時間が本当に愛しくて
しずく「かすみさん、これからどうしよっか」
かすみ「うーん……とりあえず、駅の方を向かいながら、それから考えよっか」
しずく「そうだねっ」
━━━ずっと続けばいいのに、なんて、つい考えてしまいます
◇◆◇◆◇◆◇◆ 【駅前】
かすみ「電車の時間、大丈夫?」
しずく「うん。まだ30分くらい後だから」
かすみ「そっか。じゃあ……そこのベンチでも座ろうよ」
しずく「うん」
かすみ「よいしょっと… あ"〜あ"る"ぎづがれだぁ〜」
しずく「かすみさん、またオジさんになってるよ」クスクス
かすみ「だって今日、朝からずーっと歩いてたじゃん」
しずく「そうだね。私もこんなに歩いたの久々だよ」
かすみ「かすみんもひさしぶりぃ……あぁ〜……」
かすみ「……ねえ、しず子ぉ」
しずく「なに?かすみさん」
かすみ「今日、どうだった?」
しずく「え?」
かすみ「今日のデート。楽しかった?」
しずく「……うん。すごく楽しかったよ」
しずく「楽しすぎて、これで今日はお別れしなきゃいけないのが、私つらいよ」 かすみ「しず子……」
しずく「帰らなきゃいけないのは分かってるよ?でも、これでもうしばらく、かすみさんとこういうこと出来ないと思うと……」
しずく「やっぱり帰りたくないよ……」
かすみ「……も〜」
ギュッ(しずくの右手を、かすみの左手が握る)
しずく「……!か、かすみさん!?」
かすみ「うわっ。しず子の手ぇ冷たっ」
かすみ「かすみんの手、あったかいでしょ?」
しずく「う、うん……暖かい、けど……」
かすみ「なんであったかいと思う?」
しずく「えっ…?私よりもかすみさんの方が基礎体温が…」
かすみ「ぶっぶーっ!不正解〜」
かすみ「分からないのしず子ぉ〜?」
しずく「むぅ……じゃあ正解は?」
かすみ「正解は〜、かすみんがあったかいのは、かすみんパワーがみなぎってるから!でした〜」
しずく「……なに?」
かすみ「ちょっとぉ!何言ってんだコイツみたいな顔するのやめてよ!」 かすみ「前に言ったでしょ?『かすみんがしず子に、かすみんパワーをう〜んと注入してあげる』って」
しずく「あ……うん」
かすみ「今日一日しず子と一緒に居る間、かすみんパワーをず〜っと送ってたつもりだったんだけど」
かすみ「しず子、まだ足りてなさそうだったから」
しずく「…………」
かすみ「だから……しず子の手を握って、かすみんパワー注入して、あっためてあげよーかなと思って」
しずく「……うん。かすみさんのパワー、すごく感じてるよ」
しずく「すごく暖かくて……体も心もポカポカしてきちゃうよ……」
かすみ「しず子……」
しずく「かすみさんの優しさに……私、もっと甘えたい……」
(がさつに握っていた手を、指を絡めるように繋ぎ直す)
かすみ「……!///」ドキッ
しずく「こうしたら、もっとかすみさんのパワー、感じられる…かな?///」ドキドキ
かすみ「ど、どうだろ?しず子、どう?///」ドキドキ
しずく「うん……///さっきよりも、かすみさんのが、すごく伝わってくるよ///」ドキドキ
かすみ「そ、そっか///ならよかった///」ドキドキ しずく「……///」ドキドキ
かすみ「……///」ドキドキ
しずく「……ねえ、かすみさん///」
かすみ「な、なに?しず子///」
しずく「その……」
しずく「キ……したい……///」
かすみ「……へ?」
しずく「だから、………ス……したいな///」
かすみ「こ、声ちっちゃいよしず子///」
しずく「だから!」
しずく「かすみさんと!キ……キス……したいです……///」
かすみ「……き、きすって……こ、ここで……?///」
しずく「うん…///ダメ……かな?///」
かすみ「こんなとこで…誰かに見られたら……///」
しずく「だいじょーぶ///今日一日、誰からも声かけられなかったでしょ?///」
しずく「せっかくのお忍びデートだもん……///中途半端なところで……帰りたくない///」
かすみ「……もー///しず子の甘えんぼ……///」
しずく「かすみさん……///」 かすみ「……///」ドキドキ
かすみ(うわぁ…///しず子、すっごく切なそうな表情……///かわいい……///)ドキドキ
しずく「……///」ドキドキ
しずく(かすみさんのお顔って…見てるだけで安心する……///優しくて…柔らかくて…大好き……///)ドキドキ
かすみ「……しず子、目つむって///」
しずく「う、うん///」
かすみ「……いくよ、しず子///」
しずく「……うん。来て、かすみさん///」
かすみ「ん……///」
しずく(かすみさんの手、あっつい……///)
しずく(その温もりが伝ってきて、私の身も心もすっかり火照ってしまっています…///)
しずく(もっともっと、かすみさんと暖まりたい……///)
スッ
しずく(あ、かすみさんの気配が━━━)
かすみ「……んっ♡」チュッ
しずく「んっ♡」
しずく(あっつい……♡火傷しちゃいそう……♡)
チュッ…♡
しずく(かすみさんの熱が、パワーが、━━━かすみさんの大好きが、どくどく流れてきます♡)
かすみ「しず子…♡」
しずく「かすみさん…♡」
チュッ…♡
しずく(私も大好きだよ、かすみさん━━━♡)
━━━━━
━━━━
━━━
ザッ
「…………『千両役者』も、所詮は女ですか」
パシャッ 一旦ここまでにします
続きは今日の夜書きます
今、構想全体のうちどの辺にいるのか端的に申し上げると、ジェットコースターで頂上まで登った所になりますかね
最後までお付き合いいただけると嬉しいです ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています