【324】

 ビンと、食器棚にあったスプーンを持ちテーブルへと運ぶ。

 そしてフタを開けたあと、ジャムを掬(すく)い、手に移す。
 これを3度繰り返した。

 すぐさまイチゴの甘い香りが、鼻をくすぐる。


 「あっ…いい匂い…」

 思わず花陽さんが声をあげた。


 「舐めてみます?」

 俺はジャムの付いた指先を、彼女の口元へと、半ば強引に宛てがった。


 仕方ないなぁ…と苦笑いしながら
花陽さんが唇に付いたジャムを指で拭(ぬぐ)い、それをペロッと舐める。

 「うん、美味しいよ」

 花陽さんはにっこりと微笑んだ。