【316】

 「イッちゃいました?」


 俺の問い掛けに、花陽さんは肩で息をしながら、こくりと頷いた。


 「それは良かったです。でも…ダメじゃないですか…そんなに大きな声を出しちゃ」


 「…はぁ…はぁ…それは…無理だよ…ふぅ…ふぅ…無理…はぁ…はぁ…」


 「次は…手を解放してあげますから…ちゃんと約束守ってくださいね」

 そう言って俺は、花陽さんの腕に乗せていた足を降ろす。


 ちょっとした拘束から解放され、自由を獲た両腕をプラプラとさせながら、彼女が「ふぅ〜…」と大きく長い息を吐いた。


 それから、一呼吸遅れて「…つ…ぎ?…」と訊き返してきた。


 「もちろん。これで終わりな訳ないじゃないですから」


 「…そ、そうなの?…」


 どういう意味の「そうなの?」なのだろう?

 できれば「まだ、してくれるの?」という期待を込めた言葉であって欲しい。