私の目の前で、今にも消えていなくなってしまいそうなほどか細い女の子と、あの時私の背中を押して拳を差し出してくれた女の子は、やっぱり同じ女の子でした。

侑ちゃんや愛ちゃん、エマさんみたいに万人に笑顔を向けられる人なんてわずかで、私だってせつ菜ちゃんに嫉妬したことはずっと記憶に新しくて。

せつ菜ちゃんだって、その身に余る大きな野望を抱えて、万人の大好きを大切にしようとする人だけど。本当は、やっぱり私と同じ、人なんだって。

「せつ菜ちゃん」

そっと、私は肩を抱き寄せました。こつんと顔をせつ菜ちゃんの頭に寄せて、もう片方の手でせつ菜ちゃんの頭を撫でます。

私が出来得る限りの、優しい撫で方で。大丈夫だよって。私はせつ菜ちゃんの気持ち、全部受け止めるよって。

この地球に生きてる人みんなの大好きを護るという不可能に近い理想を抱え、叶えようとする人だって──やっぱり、私とおんなじヒトなんだって。

誰かを好きになるのが難しい時だって、絶対にあるんだって。

「私に教えてくれてありがとう。せつ菜ちゃんの気持ちが聞けて嬉しいよ」

「そんな、嘘です!」

私からばっと距離を取るせつ菜ちゃん。その両目は潤んでいて、私よりも小さなその体が、もっともっと小さく見えました。

こんなに小さな体で、それでも気丈に振舞っていた彼女を、私はどうしてもっと早く手を差し伸べられなかったんだろう。

「嘘じゃないよ。せつ菜ちゃん、私は侑ちゃんみたいに問題を解決したり、愛ちゃんみたいに状況を好転させることもできないけど……」

私に出来ることなんて、全然なくて。でも、辛い時に、貴女の気持ち、わかるよって。一緒に居てくれるに人がいることが……どれだけ心強いかは知っているから。