彼方「彼方誕編集」
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1、璃奈
2、しずく
3、かすみ
4、歩夢
5、愛
6、せつ菜(または、菜々)
7、エマ
8、果林
9、遥
0、侑
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>>4 内容選択(自由)
※注意事項
全て彼方との組み合わせ 彼方「こんなじゃ、全然手伝いになれてない……」
愛「いや〜……十分じゃないかな?」
彼方「愛ちゃん……」
愛「これ、追加ね〜」
愛ちゃんが持ってきた器とかを水につけて、
今ある分を洗いながら……一息つく
愛ちゃんはすぐに表に戻っていくことはなく、
背筋をぐっと伸ばしながら、手で顔を仰いでいた
彼方「そうかなぁ……」
彼方「何にも手伝えなかったよ〜……」 愛「そんなことないって」
愛「落ち着いてから手を付けてた洗い物が、今追加した分と少ししかないって時点で奇跡だから……」
「そうそう、近江さんはよくやってくれたよ」
彼方「あ、ありがとうございます」
「あんがとね〜、かなえっち」
彼方「か、かなえっち……?」
「近江彼方だから、かなえっち。いやならこのえっちにするけど」
彼方「えぇっと……お好きな感じで大丈夫です」
愛ちゃんだけじゃなくて
裏で一緒に働いていたみんなまで、喜んでくれて。
嬉しいけれど、ちょっぴり複雑
明日は用意も手伝えるくらいになれたらいいな。なんて、意気込みだけは十分
愛「手荒れ大丈夫?」
「あとでクリーム貸したげるよ」
彼方「え、そんな」
「良いから良いから、新人ちゃんお疲れ〜」
私よりも背の高い
果林ちゃんと同じかそれより上くらいの女の子
労ってくれるその子は、私よりも年下だった 彼方「……クリーム良いの借りちゃったなぁ」
愛「良かったじゃん!」
愛「カナちゃん、そこらへん結構甘いし」
彼方「甘い、かな〜?」
一応、ハンドクリームを使ってるし
荒れたままにならないように気を使ってはいる。
でも、愛ちゃん達みたいにしっかりしてるかって言われると……ちょっと迷う
見比べられると、
ちょっぴり年季が入ってしまっているかのように感じられちゃったり。
彼方「愛ちゃん的には、物足りない?」
バイト仲間となってる女の子が貸してくれたちょっと高そうなハンドクリーム
べたついたりしないし、
ほんのりとした石鹸の香りが優しくて。
そんな今の私の手は、それでもやっぱり愛ちゃんとは比べられない
愛「ん〜……正直に言っちゃっていいなら物足りないよね」
愛「もちろん、忙しいからって言うのは分かるけど……やっぱりもったいないよ」 愛ちゃんは私の手を軽く握って、揉む。
指で包むようにしながらの感覚は優しい感じ。
でもちょっと、こそばゆい
愛「まだ若いのに、ほら……こんなに皺っぽい」
彼方「んっ……」
愛「尿素系の含まれてるハンドクリームにした方が良いよ〜」
愛「普通の、ただの保湿効果だけとかだとどうにもならないだろうし」
愛「美容にはお金を使っても良いんじゃない?」
彼方「遥ちゃんには、良いのを使って貰ってるんだけどねぇ……」
それを言っちゃうと遥ちゃんに遠慮されちゃうから、
絶対に言わないけど。
スクールアイドルをすっごく楽しんでて、活躍もしている遥ちゃん
どちらに重きを置くかなんて、考えるまでもないよね
愛「愛さん的には、カナちゃんにも良いのを使って欲しいんだけどなー」
彼方「え〜?」
愛「料理してて思わない?」
愛「良い食材は、よりよく扱いたいってさ」 彼方「彼方ちゃん、良い食材なの〜?」
愛「そりゃもう、最高級じゃない?」
彼方「そっかぁ……」
彼方「………」
バイトの後の、暗くなりつつある帰り道
人気があったりなかったり
二人きりで歩いている夜
家までではないけれど、送ってくれる愛ちゃん
ふむ……
彼方「送り狼?」
愛「あはははっ、何それ!」
愛「愛さんが狼だって〜?」
愛「カナずきんちゃん、食べちゃうぞ〜?」
彼方「わ〜っ! 待って、待って!」 飛びついて来る愛ちゃんを避けられなくて、捕まっちゃう。
ぎゅっと抱きしめてくるその体は温かくて
私よりも大きくて。
彼方「危ないよ〜」
抱きしめ返しても抱き着いてるようにしか見えない気がして
腕を引っ込める
愛「っと……ごめんごめん」
彼方「別に良いけどねぇ」
彼方「そうそう」
彼方「次は、明日別のバイト入ってるから明後日かな〜」
愛「カナちゃんがいなくなったら困るなぁ……」
彼方「まだ一日だけだよ〜?」
愛「山積みの洗い物がない幸福感……カナちゃんならわかるでしょ?」
彼方「ん〜……」
彼方「そう言われると分かるかも〜」 1から100まで全部やっていた家のこと
でも、少し前から遥ちゃんにも手伝って貰うようになって
お料理で使った器具やお皿とかが他のことをやっている間に片付けられていたり
お洗濯の一部をやって貰えていたり……なんだり。
そんなちょっとしたことで、かなり救われていたりもして。
そう考えれば
洗い場に食器類が溜まっていないというだけであんなにも喜んで貰えたのもわかっちゃう。
愛「やっぱり、ピークが終わった後に洗い物が溜まってるとさ」
愛「どうしても溜息が零れちゃう子もいるみたいなんだよねー」
愛「それが今日は片付いてたから余裕も出来て」
愛「すぐに休憩入れたりして……ほんとよかったよ」
それが普通なんだけどね。と、困ったように言う愛ちゃん
人手が十分だったころは問題なかったのだろうけど
足りなくなっちゃったから、余計に苦しいのかも。
愛「時間帯ずらして貰ったりしてある程度調整してるけど……」
彼方「しわ寄せ来ちゃうよね〜」
急遽休みになった人がいたり、
突然辞めちゃう人がいないこともない今までのバイト
私も、しわ寄せの経験は身に覚えがある 愛「そうそう!」
愛「だから、みんなありがとってね」
愛「カナちゃん的には楽な仕事かもしれないけどさ」
愛「アタシ達からしてみれば洗い場専任もきつい仕事だから」
愛「あんまり無理、しないでいいからね?」
彼方「大丈夫〜」
心配してくれる愛ちゃん
あのハンドクリームを貸してくれた子達だって、
私のことを評価してくれて
そのうえでありがたいと思ってくれているからこそのもの。
だからこそもっと役立てるように頑張ろうって思っちゃうけど。
彼方「無理なんてしてないよ〜」
愛「ほんと〜?」
愛「あやっしいなぁ?」
彼方「ほんとだよ〜」
わざわざ下から覗き込む愛ちゃん
でもほんとに無理してないよ。
――愛ちゃん、よりは。
彼方「愛ちゃんこそ、無理してないかな〜?」
愛「愛さんは問題ないよ〜!」
愛「実家だよ? 実家!」
愛「大丈夫だって〜」
愛ちゃんは押し付けるように言い放って、歩いていっちゃう
ほんとかな……? ――――――
―――
彼方「えっホールスタッフ?」
愛「いやいやいや、ダメだって!」
愛ちゃんはスクールアイドルだってみんな知っていたけれど、
自分から周知してなかった私は普通の一般人……だったのに。
一緒にバイトしていた子が私のことを友達に話した結果、
私のライブを見ていたその子から流れて。
愛ちゃんと一緒にホール側をやってみないかって話が出てきちゃった。
名前が知られてきてるっていうのは、良いこと……かな〜?
ダブルスクールアイドルのもんじゃ焼き店
それって良さげじゃない? って賑わうほかの子達と、反対する愛ちゃん
愛「カナちゃんだよ? 邪まなお客さんが増えちゃうよ!」
彼方「邪ま……?」
「あー……」
彼方「なんで納得しちゃうかなぁ……」
そもそも、愛ちゃんが看板娘推してたのに
他の子からの推薦だとダメって言うのは、どうなんだろう?
彼方「そうだねぇ……邪まなお客さんは増えないと思うけど」
彼方「私、まだ全然仕事覚えられてないよ〜?」
なんて。
当たり前のことを言っただけなのに。
仕事覚えてない新人バイトからのドジっ子属性がつくんじゃないかって議論に発展しちゃった。 愛「ごめんねー……できれば裏だけで済ませてあげたかったんだけど」
彼方「ん〜ん。良いよ〜」
彼方「洗い場だけでしか働かないっていうのも、気になっちゃってたからね〜」
愛「その方が、カナちゃんには良いと思ってさー」
散々看板娘を推してきたのに? なんて
ちょっぴり意地悪を言ってみると
愛ちゃんは照れくさそうに笑って、誤魔化す
愛「人によってはさ、もんじゃとかのにおいがつくのが嫌だって人もいるんだよね」
愛「カナちゃんがそうだとは思ってないけど」
愛「そんなにおいついたら、遥ちゃんから引かれちゃうかもしれないし」
彼方「遥ちゃんは大丈夫だよ〜……」
彼方「それとも」
彼方「愛ちゃんは今の私のにおいの方が好きなのかな〜?」
愛「カナちゃんの匂いは良い匂いだから好きかなー……」
愛「彼方だけに!」
愛「なんて……あはははっ」
愛「……カナちゃんの長い髪が痛んじゃうよ?」 彼方「それを気にしてくれてたんだねぇ……」
彼方「でも、愛ちゃんもそれなりの長さじゃないかなぁ?」
愛「アタシは長いって言ってもせいぜいこの程度」
愛「でもカナちゃんはここまでくるでしょ?」
愛「纏めれば良いって言っても限度ってものがあるから」
どうにかできないこともないけど
それはそれで。なんていう愛ちゃん
手で私の髪をまとめながら、それっぽい形にして見せてくれる
少し唸って、
やっぱり……困ったように笑う
愛「カナちゃん、ゆるふわなくせっ毛でしょ?」
愛「それをまっすぐ下に下ろしてるだけだからさ」
愛「それをこんな風に纏めちゃうと……ほら」
彼方「ほら?」
愛「それなりに煽情的になる!」
彼方「えぇ……」
愛「えーなにその反応」
愛「カナちゃん、さては自分が異性の目を惹くって本気で思ってないな〜?」
愛「言っておくけど……カナちゃん、結構人気なんだからね?」 彼方「えへへ〜そうかなぁ?」
愛「だからホールには出したくないんだよー」
愛「カナちゃん、ここのっていうか……」
愛「飲食店の制服似合いすぎ」
愛「雰囲気も相極まって、堪らない人もいるって絶対!」
愛「ファンに目を付けられるね、間違いない」
愛ちゃん大絶賛な今の私
ホールスタッフ用の服に着替えて、鏡の前
愛ちゃんが言うほどかなぁ? なんて思うけれど
客観的には愛ちゃんが言うような感じなのかもしれないって思う。
愛「唾つけちゃうべきかなー?」
彼方「え〜? ダメだよ〜」 愛「女同士でもいけるって!」
彼方「こらこら〜」
愛「あはははっ、冗談冗談!」
愛ちゃんは高らかに笑いながら
私の左手を持ち上げて、手ごろなリングを薬指に嵌めた
愛「おぉ……これでちょっとトレン……トレイ持ってみて」
彼方「こう?」
愛「指輪見える感じで」
彼方「ん〜……こんな感じ?」
愛「………」
愛「……奥さん、パート大変っすね」
彼方「怒っちゃうぞ〜?」 愛「大人っぽいって意味なのにー」
彼方「そう感じられなかったのでだめで〜す」
愛「きっびし〜!」
愛「……」
愛「でも、カナちゃん大人の蠱惑感があるって言うか」
愛「えっちだよねぇ……かなえっちだけに!」
彼方「いやらしいなぁ……」
愛「あっはっはっは」
愛「ははっ」
愛「………」
愛「なんか変なのに目覚めそうだから、その目やめて欲しいかなー!」
愛「目、だけにー!」
笑ってごまかす愛ちゃん
別に睨んだりしてないし
普通にしてたはずなんだけどなぁ
見ちゃだめなら……なんて。
耳に口を近づけて……
彼方「愛ちゃんのえっち〜」
愛「っ!?」
愛「ず、っ……る!」
愛「カナちゃん……」
彼方「なぁに?」
愛「えっち、はれんち、このえっちは〜? かなえっちー!」
愛「次のライブのコール&レスポンスはこれに決定ってゆうゆに言っておくから」
彼方「それはだめ〜っ!」 ホールでの仕事は、思っていた以上に大変だった
来店してきたお客さんを座席へ案内したり
オーダー対応して、頼まれたものを運んで行ったり。
場合によっては、作ってあげたり。
レジの対応とか、お客さんが帰った後の清掃とか。
金額とかを覚えていないからレジ打ちまではさすがに出来ないけれど……
でも、それ以外だけでも十分にボリュームがあって。
彼方「はぁ……ふぅ……」
愛「カナちゃんお疲れさま〜」
愛「でも、あともうちょい頑張って!」
ぺしんっと肩を叩かれて顔を上げる
たった1日でへとへとになっちゃうホールスタッフの運動量
これが普通なのかな、それともここが特別なのかな
彼方「頑張るよ〜……」
愛「もうちょっとテンション上げて〜!」
彼方「ん〜……おぉ……」
崩れ落ちそうなのを責任感で塗り固めて、大きく胸を張って
彼方「いらっしゃいませ〜!」 彼方「ありがとうございました〜!」
最後のお客さん……ではないけど。
客入りも落ち着いてきて、ようやく一息。
愛「カナちゃんお疲れ様〜」
愛「休憩いこ、休憩」
彼方「そうだねぇ……」
愛ちゃん達と休憩に入って、他の人達と入れかわり
椅子に座って……そのまま休憩室の机に突っ伏す。
足も腰もなにも……限界ギリギリ。
彼方「はぅぅ……」
愛「あっはっはっは!」
愛「カナちゃん大丈夫〜?」
愛「今日、ウチ泊まってく?」
彼方「ううん、遥ちゃんが待ってるからねぇ……」
愛「そっかー残念……」 愛「ほんと、お疲れ様」
愛「初めての人は普通あそこまで動けないんだよー?」
愛「愛さんビックリしちゃったよ」
愛「同じくらい動こうとしてるんだもん」
ついつい頑張っちゃったって零す愛ちゃん
それにもついて来ようとするんだから。なんて……
愛ちゃんは私に向かって厚めの紙で風を送ってくれる
彼方「すずしぃ〜」
愛「研修期間なんだから、補佐程度でも良かったのに」
愛「………」
愛「カナちゃん、結構真面目だよね」 愛「……良ければ、だけどさ」
愛「いっそ、休業中のバイト辞めちゃってさ」
愛「こっちで、ずっとバイトしようよ……」
愛「あっ、いや……ごめん」
愛「それじゃ、真面目なカナちゃんは断固拒否るよね」
間違えた間違えた
そう繰り返す愛ちゃんを見ると、ちょっぴり寂しそうな表情
私はもうしばらくここでバイトさせて貰うけれど
でも、改装が終われば向こうに戻るつもりだから……かな?
学校でなら、会おうと思えば会えるのに。
愛「慣れれば、カナちゃんはあたしにも負けない戦力になってくれそうだし」
愛「お給料だって、その分弾んで貰えるだろうし」
愛「知り合いだからって忖度も何もなし、カナちゃんならここで上手くやってけるよ!」
彼方「ん〜……体力的な問題もあるからねぇ」
愛「……もんじゃとかのにおいがついちゃうけど」
彼方「あははっ」
彼方「この匂い、私は好きだよ?」
彼方「だって、ここが愛ちゃんの家なら」
彼方「それはつまり、これこそが愛ちゃんの匂いってことでしょ〜?」
愛「……そういうとこだよ……まったく」 彼方「ん〜?」
愛「そのとぼけた顔、演技だったら愛さん怒っちゃうぞ〜」
彼方「え〜?」
愛「……それで、どう?」
愛「このままここでバイトしてくれない?」
愛「正直、調理師とか栄養士の資格を取れるフードデザイン専攻のカナちゃんは」
愛「親友……って言っていい?」
彼方「言わせて〜」
愛「あははっ……ありがと」
愛「まぁ、親友の贔屓目を抜きにしてでも欲しい」
愛「栄養士や、調理師の資格持ってる調理スタッフがいるってさ」
愛「ウチみたいな飲食店では……ほら、やっぱ、信頼とか安心感とか」
愛「そういうのでめっちゃ強みになるんだよねぇ」
愛「なんでそんな資格持ってもんじゃ屋!? とかなるだろうけど……でもさ」
愛「お客様に満足して貰う上で、それ系の資格持ってる人って……かなり重要なんだよね」 彼方「なるほどね〜」
彼方「実はさ、スーパーでも似たようなこと言われたんだよねぇ」
彼方「総菜売り場ってあるでしょ?」
彼方「あれってお店の中で作ってるのもあって」
彼方「フードデザイン専攻なら、そっちに移らないかって」
愛「え……それで?」
彼方「ううん。断っちゃった」
彼方「そっちでやるには、時間が全然合わなくなっちゃうから」
落胆されちゃったけど
でも、時間が合わなくなっちゃったらバイト自体が出来なくなっちゃうから、仕方がない。
愛「それで、どう?」
愛「ウチのフードデザイン学科って一応、栄養学学んでれば栄養士資格が卒業でとれるでしょ?」
愛「それに飲食店実務を加えれば管理栄養士の資格まで取れるんだよね?」
彼方「ちょっと違うけどねぇ……」
彼方「栄養士としてバイトする必要があるから」
愛「そっか……じゃぁ厳しいかな?」
愛「ここで栄養士採用なら、大丈夫?」
彼方「ん〜……実はそこまで詳しく調べてないんだよねぇ」 愛「じゃぁさじゃぁさ!」
愛「ウチで栄養士採用できて」
愛「それで実務経験OKなら、考えてよ!」
彼方「そこまでしてくれなくてもいいんだよ〜?」
愛「いやいや!」
愛「ウチの店がが欲しいんだって!」
愛「いや……アタシが欲しいんだって!」
愛「今後、いつまでもこのお店を続けていくには」
愛「今のままじゃダメだと思ってる」
愛「古き良き。それも大事だけどさ」
愛「やっぱり改革は必要で……」
愛「でもアタシには栄養士とか向いてなかったし、もっと別のことを手につけなくちゃいけなくて」
愛「だから情報処理学科を選んじゃったんだけど……」
愛「だからこそ、ちゃんとした資格を持つことのできるカナちゃんが……」
愛「彼方先輩が欲しい!」 本当に真剣で
勢いだけじゃない思いがあって
だから……とても力強い
彼方「そっかぁ……」
彼方「うん……」
彼方「彼方先輩か〜……」
彼方「えへへ……」
いつもはカナちゃん呼びの、愛ちゃんからの本気の声
それはすっごく嬉しくて
私を信じてくれていて
私を頼ってくれていて
彼方「でも」
彼方「……本当に私で良いの?」
彼方「愛ちゃんが育ってきたこの場所が、無くなっちゃう可能性だってあるんだよ?」
愛「何もせずに失うよりも、抗いたいってあたしは思う」
愛「おばあちゃんだって……言いたくはないけど、いつまでもはいてくれない」
愛「安心させたいんだ。アタシにはこの人がいるって、一緒にこのお店を守ってくれる人がいるって」
愛「それが……カナちゃんだったとしたら、アタシは嬉しい」 彼方「………」
彼方「ふふふっ」
愛「何か変なこと言ったかなー?」
彼方「ううん、言ってない」
彼方「ただ、ただね……」
笑っちゃうのは失礼だけど
でも、これは別におかしくて笑ったわけじゃない
愛ちゃんの将来を委ねられるような
そんな大役を任せようとしてくれているからこそ……照れくさい
言っていいかな
言っちゃダメかな
そう思いながら、口は動いちゃって。
彼方「なんだか、プロポーズみたいだな〜って」
愛「えっ、あっ……あぁっ!?」
愛「ち、ちがっ……」
愛「いや、違わないけど違うって言うか!」
愛「アタシは別に……けど……あぁ……もう……」
愛「そうだよ!」
愛「そう……そう受け取って貰ったってかまわない」
愛「恋愛的な意味ではないけど……そう。出来たらあたしと……添い遂げて欲しい」 愛ちゃんはすっごく照れくさそう
でも、真剣さは変わらない
恋愛的な意味がないのはもちろんだけど
でも、大切なこの場所を一緒に守って欲しいって
彼方「そっかぁ……」
彼方「そこまで言われちゃうとね……えへへっ」
愛ちゃんが最初に左手の薬指に嵌めてくれたリング
ずっと外していたそれを、
意味ありげに、持ち上げてみせる
彼方「婚約指輪……受け取っちゃったし」
愛「渡した覚えないよ!?」
彼方「ご家族への挨拶もしちゃったし」
愛「してな……したけど!」
彼方「いいよ〜?」
彼方「愛ちゃんと、添い遂げても」
愛「え……ほんと?」 彼方「え〜」
彼方「こんな大事なことで嘘なんてつかないよ〜」
彼方「もちろん、考えるべきことはあるから……卒業してからになっちゃうけど」
彼方「ちゃんと考えて……力になれるように頑張るよ」
愛「カナちゃん……」
愛「ありがとー!」
愛ちゃんはすっごく嬉しそうに、抱き着いて来る
とっても重要な役割だから、
安易なことは言えないし
勉強だってもっと頑張らなきゃいけない
だから、まずはちゃんと学校を卒業してから
彼方「でも、それは私の気持ち」
彼方「周りを説得したり、ちゃんと……説得力のある実力をつけるのが先だからね?」
愛「ううん、それでもいい」
愛「……ありがと」
愛「アタシもこれから、もっともっと頑張るよ」
彼方「頑張りすぎて、倒れちゃだめだよ〜?」 カナちゃんにそれ言われちゃうか〜なんて
困り顔の愛ちゃん
でも、私は凄く近くで見てるから分かる
そんな時があったからこそ、分かる
彼方「おいで〜」
愛「え……?」
席を立って、
良さげな場所に座り込んで……膝を叩く
彼方「彼方ちゃんの膝、貸してあげるから」
彼方「ゆっくり休みなよ〜」
愛「……」
愛「ん……ありがと」
強がりを言わずに、愛ちゃんは私の膝を枕にして横になる 彼方「一緒に頑張ろうねぇ〜」
愛「そうだねー……」
愛「あ〜あ……どっちかが男の子だったら、結婚も出来たのになぁ」
彼方「そうだねぇ……」
彼方「私、寿退職を予定してるから、気を付けてね〜」
愛「え〜……」
彼方「嫌なら……私を惚れさせてみせてよね〜愛ちゃん」
愛「愛さんが惚れるんじゃ、ダメかな」
彼方「だ〜めっ」
冗談めかして、かわいい愛ちゃんの横髪を撫でてあげる
もうしばらくは、臨時のアルバイト
まずはそれを精一杯頑張ろう
それで――いつか。
なんて、ね
彼方「……彼方ちゃんも、ちょっとだけおやすみしよ〜っと」
まず、体力つけよう。
……なんて思いながら、目を瞑った case.9:愛とバイト 終了
ヒストリ
case1.果林 (洋服選び 5-32)
case2.璃奈 (菓子作り 45-102)
case3.歩夢 (クソゲー 118-151)
case4.菜々 (お勉強会 172-206)
case5.侑 (クリスマス 213-264)
case6.しずく(心中演技 275-341)
case7.エマ (年末年始 358-443)
case8.かすみ(バレンタイン 457-498)
case9.愛 (一緒にバイト 510-575) 次caseは後日
残りは遥だけなので、内容安価のみ 愛さんイケメンすぎて彼方ちゃんも惚れるわこんなん
あなたは最高です! もんじゃみやしたのこれからを2人で。素晴らしすぎる…
遥まで終わったら2周目突入してくれ 貴重すぎるかなあいありがとうございます……
好きな二人だけど全然絡みあるSSなかったので嬉しい 貴重すぎるかなあいありがとうございます……
好きな二人だけど全然絡みあるSSなかったので嬉しい これが天才なんだなあ
負担になるかもしれないけど、できれば全キャラの誕生日で全カプ描いて欲しい 少ないけどそのためにお金出したいくらい 俺の推しカプss描いてほしいわ >>589
んな無理言うな…こういうのは本人が書きたいものを書くから素晴らしいものになる
お前の推しカプはお前が書くんだぞ 短編集って銘打ってるからあれだが実質彼方カプ10作分だぞ
頼まれて書くもんじゃないもんじゃ やっと追いついたぜ
「私のジャンルに神がいます」って漫画あるけど、まさに俺らの心境そのものだと思うわ
特級らっかせい氏には感謝、尊敬、信頼の念を抱かずにはいられない かなあいめちゃくちゃ良かった
俺も彼方の発言を見る前から愛さんプロポーズかな?と思いながら読んでた
愛さんが彼方を大切に想う発言も多かったし、すごくエモかった キャラクターセレクトは遥固定
>>597 内容選択(自由)
※注意事項
彼方との組み合わせ 今までのcaseを夢で追体験して脳破壊され独占欲に目覚める遥ちゃん 彼方「遥ちゃん、何してるの〜?」
遥「あっ……えっと……」
初めは、
家に帰って来た時、遥ちゃんは私のクローゼットを漁っている程度の……
ほんの些細な事だったと思う
私と遥ちゃんのクローゼットは向かい合っているから
間違えることはないはずだけど
でも、ちょっとした勘違いとか
下着が入れ替わってるとか
そういうことがあっただけだって。
遥「何でもないよ……なんでも」
遥「………」
遥「お姉ちゃん、なんか。こう……」
彼方「ん〜?」
遥「こういうお洋服、持ってなかったっけ?」
私がとても買わないようなお洋服を着たモデルさんを見せてきたり
困った顔で、そうだよね……って、呟いたり。
――片鱗はあったと思う 突拍子もない行動はそれだけでなくて
璃奈ちゃんの家はどうだとか
ゲームはどうだとか
良く分からないことまで言うようになって
遥「お姉ちゃん待って」
彼方「遥ちゃ――」
学校に行こうとした私の腕を掴んで、左手を検める
彼方「は、遥ちゃんどうしたの〜?」
彼方「なんだか、怖いよ〜……?」
遥「………」
遥「指輪は?」
彼方「指輪って?」
遥「してたよね?」
彼方「え?」
遥「侑さんから貰った、指輪」
遥「お姉ちゃん……凄く大切にしてたから、知ってるんだよ?」
彼方「え? えっ?」
彼方「な、何言ってるのか分からないよ……?」 遥「え………」
遥「あれ……?」
遥「侑さんと、付き合ってるんじゃなかったっけ……」
彼方「侑ちゃんと私が?」
付き合う?
女の子同士なのに?
いや、それを差し引いたってそんな
何の脈絡もない……
彼方「付き合ってないよ〜」
遥「そう、だったっけ……」
彼方「……遥ちゃん大丈夫?」
彼方「今日、学校休む?」
遥「ううん。だい、じょうぶ……」
遥「ごめんねっ」
遥「最近……変な夢ばっかり見ちゃって……」
カラ元気な遥ちゃん
やっぱり休んだ方が良い
そう言った私を振り切って、遥ちゃんは学校に行って。
そうして。
その日の夜――小さな家の中に悲鳴が響き渡った 遥「お姉ちゃんっお姉ちゃんっ……お姉ちゃん……っ!」
彼方「よしよし……」
夜中に悲鳴を上げて飛び起きた遥ちゃんは
驚いて目を覚ましちゃった私に飛びついてきて
生きてるよね、死んでないよね。
なんて……なんだか怖いことを言いながら泣き出しちゃって。
彼方「大丈夫だよ〜……大丈夫……」
頭を撫でながら、優しく声をかけてあげて
寝付くまで一緒にいてあげる
彼方「今日は一緒に寝ようね〜」
遥「うん……」
遥「うんっ……お姉ちゃんと一緒にいる……」
抱き着いて来るお姉ちゃんは可愛いけど
でも、ちょっぴり。
嫌な予感がした >>601 最後から三行目修正
遥「お姉ちゃんっお姉ちゃんっ……お姉ちゃん……っ!」
彼方「よしよし……」
夜中に悲鳴を上げて飛び起きた遥ちゃんは
驚いて目を覚ましちゃった私に飛びついてきて
生きてるよね、死んでないよね。
なんて……なんだか怖いことを言いながら泣き出しちゃって。
彼方「大丈夫だよ〜……大丈夫……」
頭を撫でながら、優しく声をかけてあげて
寝付くまで一緒にいてあげる
彼方「今日は一緒に寝ようね〜」
遥「うん……」
遥「うんっ……お姉ちゃんと一緒にいる……」
抱き着いて来る遥ちゃんは可愛いけど
でも、ちょっぴり。
嫌な予感がした ――――――
―――
お昼休みになると、
スマホの振動が途切れては震え、途切れては震える
電話の相手はいわずもがなって言っちゃうとあれだけど……遥ちゃん
彼方「おぉぅ……」
家を出るときは手を握るどころか腕を組んできて
ギリギリまで私と一緒の道を歩いて……別れてからは、電話
授業の合間合間を狙い撃ちしたかのように連絡を送ってきて
お昼休みには、また電話
彼方「……もしもし?」
遥『よかった! も〜心配させないでよ!』
遥『あと少しでも遅かったら、そっち行こうと思ってたんだからね?』
彼方「遥ちゃん……ほんと」
彼方「彼方ちゃんは全然、平気だから」
彼方「夢占いだって、吉――」
遥『そんなの信じられないよ……』
遥『信じられない……無理……』
遥『やだ……お姉ちゃんがいなくなっちゃうなんて……嫌だよ……』 ラストとして最高のネタだな
遥ちゃんがこんなん見せられたらそりゃ脳が破壊されますね 彼方「遥ちゃん……」
遥ちゃんは、私が死ぬ夢を見た
ううん、ただ死ぬ夢ならよかったって言えるくらいに酷い夢だった
私と、しずくちゃんが一緒に
そう、心中してしまう夢を見たらしい。
だから気が気じゃない
遥『もしかして近くにしずくさんがいるの?』
彼方「いないよ〜」
遥『……ほんと?』
彼方「ほんとだよ〜」
遥『………』
遥『じゃぁ、スピーカーにして』
彼方「ここで……?」
教室だから、別に聞かれたら困るようなことは何もない。
電話相手がちょっと鬼気迫ってるというのが周りに知られかねないのを除けばだけど
遥『出来ない? させて貰えない?』
遥『なら、今すぐそっちに行くから』
彼方「分かった! 分かったからっ!」 仕方がなくスピーカーモードに切り替えると
あっという間に周囲の声が流れ込んでいく……と思う。
昼休み特有の雑談ばかりの音を、遥ちゃんはどう思ってるんだろう?
彼方「しずくちゃんはいないよ〜?」
遥『黙ってるだけかもしれない』
彼方「え〜?」
遥『……本当にいないよね?』
彼方「いないよ。大丈夫」
遥『そっか……』
信じていいんだよね?
遥ちゃんの口から零れる不安に
私は「大丈夫」としか返してあげられない
遥『信じる、からね』
遥『お姉ちゃんはいなくならないって』 遥ちゃんは明らかに普通じゃない
今までも、くっついてきてくれることは当たり前だったけど
ここまで……なんていうんだろう
ここまで強いのはおかしいもんね……
変な夢を見ちゃったのが原因だって言うのは、分かってるけど。
遥『……お姉ちゃん、私とずっと一緒にいてくれるよね?』
彼方「うん、もちろんだよ〜」
遥『先にいなくなっちゃったり』
遥『私の知らない、どこかに行っちゃったり』
遥『そんなこと……しないよね?』
彼方「う、うん……」
遥『……お姉ちゃんが一番好きなのは私だよね?』
遥『だから、一人にしたりしないよね?』
彼方「当然だよ〜……置いていけないよ」
今の遥ちゃんを一人にするなんて
見て見ぬふりするなんて……そんなこと、絶対に出来ないよ 彼方「電話切るよ〜?」
遥『どうして? しずくさんと約束があるの?』
遥『それとも侑さん?』
彼方「違うよ〜」
遥『……やっぱり、心配』
遥『そっち行こうかな』
彼方「学校があるんだからダメだってば〜」
遥『転校する』
彼方「こらこら……」
遥『じゃぁ、お姉ちゃんがこっちに来て』
遥ちゃんの声は、震えているようにも感じられて
強く突き放すなんて当然だけど出来るわけもない
彼方「今は電話で我慢しようよ」
電話料金……上がっちゃうのに……
なんとか、出来ないかなぁ ――――――
―――
遥「お姉ちゃん、帰るの?」
彼方「えっ」
同好会には休む連絡を入れて、
早く遥ちゃんのところに行こうと思った矢先
校門の前に立ち尽くしていた遥ちゃんに見つかっちゃって……
彼方「遥ちゃんのところに行こうと思って」
遥「……ほんとうに?」
遥「私、何も聞いてない」
遥「今日はバイトもないし、同好会の練習をする予定……だったよね?」
遥「なのに同好会を休んでどこかに行くの?」
遥「本当に、私のところにきてくれようとしたの?」
雰囲気が怖い遥ちゃん
私が何を言っても無駄そうな感じで、でも……私は胸を張って答えておく
だって、嘘じゃないから。
彼方「そうだよ。遥ちゃんのところに行こうとした」 遥「………」
遥「お姉ちゃんがそう言うなら……」
遥ちゃんは訝し気な表情を見せたけれど
すぐに笑って、雰囲気をがらりと切り替える
いつもの可愛い遥ちゃん
遥「……私、スクールアイドル辞めた」
彼方「そっか……」
彼方「……ん」
彼方「えっ!?」
遥「本当は学校もやめようと思ったけど……それはさすがに行き過ぎてるかなって思って」
とんでもないことを口走りながら
でも、いつも通りの愛らしさで
遥ちゃんにとってはとるに足らないことのように、笑っていて。
彼方「な、ななななな何言ってるのかな!?」
遥「何って……学校もやめて良かった?」
彼方「違うよっ!」
彼方「スクールアイドル……なんで……」
遥「だって……その分お姉ちゃんから離れることになっちゃうから……」
遥「その隙に何かあったら……私、耐えられないもん」 彼方「ただの」
彼方「ただの夢だよ……っ」
遥「お姉ちゃんは知らないから!」
彼方「っ……」
遥「あんなの、夢じゃないよ……」
遥「はっきり、覚えてるんだよ?」
遥「お姉ちゃんが侑さんと付き合って、私よりもそっちを優先していくようになっちゃったり」
遥「お姉ちゃんがだんだんと様子がおかしくなって」
遥「しずくちゃんには私がいなきゃダメなの。なんて言いながら……どんどん、壊れていって」
遥「それで、それで……最後には虹ヶ咲の校舎内で二人で自殺しちゃうの」
遥「冷たくなったお姉ちゃんの手、固くなったお姉ちゃんの身体」
遥「二度と開かない目と口」
遥「全部はっきり覚えてる! 今も、この手に感じるの……」
遥「怖い」
遥「怖いよ……嫌だよ……お姉ちゃん……っ……」
遥「私を置いていかないでよっ!」
遥「お願い……」
遥「お願いだから……」
遥「私を一人にしないで……」 エマ編は遥ちゃんも癒される内容だからなんとかそこまで耐えてくれ 放課後の校門前
この時間の校内では最も人の目がある場所で、号泣する遥ちゃん
縋りつかれる、私。
彼方「遥ちゃん……」
人目なんて気にしていない
遥ちゃんはそんな余裕なんてない
だって、一度は止めようとして
でも、私と一緒に続けていくと決めたスクールアイドルをこんなにもあっさり辞めちゃうんだから
遥「やだ……」
彼方「大丈夫だから」
彼方「遥ちゃんを置いてどこかに行くなんて絶対にありえないよ〜」
彼方「信じて?」
彼方「ね?」
遥ちゃんを抱きしめて、頭を撫でてあげる
周りの人たちが「修羅場」とか「禁断」とか
何か色々言ってるけれど……気にしてられない。
そんなことで恥じらって遥ちゃんを突き離したりしたら……本当に終わっちゃう気がして。 遥「約束だからね……」
彼方「うん」
遥「腕組んでていい?」
彼方「仕方がないなぁ……」
遥「今日一緒に寝てくれる?」
彼方「いいよ〜」
遥「明日も、明後日も……ずっと一緒にいてくれる?」
彼方「う〜ん……バイトがあるんだけど……」
遥「なら私も一緒にバイトする!」
遥「それが駄目なら、ずっと見てる」
遥ちゃんは全部本気
私が駄目だって言わないとバイトをするだろうし
それならそれでどこかから私を見つめてる 怖いけど、でも、本気
今日の夜また違う夢を見たら、この態度は変わるのかな
きっと……悪化しちゃう
彼方「……見てて良いよ」
スクールアイドル、やめた方が良いかな……
それで、バイトの時間早くして
遥ちゃんが遅くならないように……でも……
遥「お姉ちゃんとずっと一緒にいる」
彼方「も〜甘えん坊だなぁ」
遥「……嫌?」
彼方「そんなことないよ〜」
彼方「彼方ちゃんだって、遥ちゃんがいつか離れていっちゃうんじゃないかってドキドキだったからねぇ」
恋人が出来たり、
進学したり
結婚したり
何かがあっていつかは別れていくものだから
でもまさか、こんなことになるなんて思わなかった 遥「どこにもいかないよ」
遥「私、お姉ちゃんとずっと一緒にいる」
遥「……お姉ちゃんも、東雲に来てくれたらよかったのに」
遥「そうしたら、こんな不安になることもなかったのに」
違うかな
そう零した遥ちゃんはもっと強く私の腕にしがみ付いて来る
絶対に離さない
絶対に離れない
そんな意思を感じる遥ちゃんの力
遥「私がもっと勉強頑張って、虹ヶ咲に入学したらよかったんだよね」
遥「奨学金貰えるくらい」
彼方「そんなこと気にしなくていいのに〜」
遥「ううん。私が一緒に居たいの……居たかったの」
遥「だって……」
遥「今日一日……連絡が遅いだけで、電話に出てくれないだけで」
遥「死にそうなくらい、不安になって怖くて……気が気じゃなかった」
遥「転入はもう遅いから……私、就職も進学も。お姉ちゃんと一緒の場所にするね」
遥「二度と……間違えたりしないよ」 心中のときといい、壊れかけの人間の書き方がすごいすき
更新楽しみです 彼方「間違えてないよ……」
彼方「真剣に悩んで、相談して、考えて……それで決めたことなのに」
彼方「間違えたなんて、言っちゃだめだよ……」
遥「ううん、それだけ悩んでも間違えることだってあるんだよ」
遥「……お姉ちゃんのことが大事なら、死ぬ気で勉強してでも虹ヶ咲学園を選ぶべきだった」
遥「私は、逃げちゃったんだ」
過去を悔やみ、自分を憎み、
恨み言のように遥ちゃんは言葉を噛みしめる
そんな必要なんてないのに
そんなはずがないのに……なのに。
彼方「遥ちゃんのことを悪く言うのは、遥ちゃん自身だとしても許さないよ〜」
遥「………」
遥「じゃぁ……お姉ちゃんは私が傍に居ない方が良かったんだ」
遥「その方が嬉しいんだ……」
彼方「ち、ちがっ」
遥「やっぱり……私を置いていくつもりなんだ」
彼方「違うよっ……違うから」
彼方「ね……? 本当に、違うから……」 遥「だったらどうして、悪く言うのは許さないなんて言うの?」
遥「どっちの方が一緒にいられるのか考えたら」
遥「前の私が間違ってたのは明白だよね……」
遥「なのに、それを咎めちゃいけないって言うってことは」
遥「お姉ちゃんは一緒に居たい私が間違ってて、一緒にいられなくなった私が正しいって思ってるってことだよね?」
彼方「痛っ……」
遥ちゃんの腕を組む力が強くなって
組み敷かれているかのような感覚に、痛みが走る
足は止まって、俯きがちな遥ちゃんの見えない口から聞こえる声
怖い……
この遥ちゃんは、怖い
彼方「痛い……痛いよ、遥ちゃん……」
遥「私は、もっと痛かったよ」
遥「お姉ちゃんと会えない時間、話せない時間」
遥「連絡を返してくれるまでの時間、電話に出てくれるまでの時間」
彼方「痛っ……痛いってば……」
遥「ずっと……死にそうなくらい辛かったって、言ったよね?」
遥「その痛さは、腕を掴まれる程度じゃすまなかったよ……?」 遥「それなのに……お姉ちゃんは」
遥「痛いって……振り払うの?」
彼方「っ……」
彼方「振り払うわけ……ないよ〜……」
遥「なら、前の私は間違ってたよね?」
遥「今の私が正しいよね?」
遥「ねぇ……そうだよね?」
下から覗く遥ちゃんの瞳
心の奥底まで見ぬことしているそれは恐ろしくて
どうしても口が震えちゃって……声が出ない
すぐに答えなきゃいけないのに
はっきりしておかないといけないのに
あんなに悩んで、考えて
自分から東雲学院にすると言った遥ちゃんの笑顔を……否定したくないのに
否定しなければいけない逼迫感に湧きたつ心が、
タイムリミットのように細められる遥ちゃんの目を直視させてくれない
彼方「う……うん……」
遥「………」
遥「えへへっ、そうだよね」 遥ちゃんは怖い笑顔を浮かべながら、
握りつぶそうとしているみたいな力を緩めていって
そうして――
遥「しずくさんと一緒にいなかったっていうのは、嘘じゃないよね?」
彼方「え?」
遥「………」
遥「バイト先に、男の人いないよね?」
彼方「普通に居るけど……大丈夫」
彼方「誰にもそんな気ないよ〜」
遥「そうだと良いね」
遥ちゃんは少し冷たく言い返してくる
なんだか、変な感じ
距離は遠くなっていないのに
ちょっぴり離れちゃったかのような……
彼方「わた――」
遥「絶対に、離さないからね」
その笑顔は……目を閉じてもずっと、私を見てる感じがした 遥「あ、そうだ……」
遥「お姉ちゃん、スマホ出して」
彼方「えっと……何するの?」
遥「しずくさん達と何かやり取りしてないか確認しておきたくて」
彼方「してないよ!?」
彼方「練習の件でやり取りはしてるけど、でも、そんな……」
遥「なら、出してくれるよね?」
それなら大丈夫なんて遥ちゃんは言わない
ただ、それがあたりまえだと思っているかのように笑顔で、私に手を出してくる
スマホを出してって
今すぐ、渡してって
彼方「……信じてよ」
遥「えー?」
遥「信じてるから、お姉ちゃんが学校に行くのを止めてないんだよ?」
遥「疑ってたら、お姉ちゃんを学校とかバイトに行かせるわけないよ」
遥「も〜何言ってるんだか〜」 彼方「遥ちゃん、それは……」
遥ちゃんは、笑顔
それがどれだけのことかなんて、まるで思ってない
冗談のような口ぶりで、本気
内包している狂気が……今にも爆発しそうな感じがする
彼方「私を、家に閉じ込めるってこと?」
遥「閉じ込めるんじゃないよ」
遥「守るんだよ」
遥「だって、車が走ってて、人が歩いてて、どこかでは工事が行われてて」
遥「お姉ちゃんがいなくなっちゃう可能性が無限にある」
遥「そんな場所にお姉ちゃんを出しておくことが怖くて不安」
遥「だから……守っておこうかなって考えもあるんだ」
照れくさそうに笑う遥ちゃん
でも、その言葉は……
遥「けど、お姉ちゃんは外に出たい理由があって出るべき理由があって」
遥「だから、出ててもいいかなって思ってる」
遥「……なのに、お姉ちゃんが隠し事するなら」
遥「私に嘘をつくなら」
遥「もう……ずっと家にいて貰わなくちゃいけなくなっちゃう」
遥「それは、私もお姉ちゃんも幸せになれない。よね?」 彼方「………」
私を監禁しなくて済むようにしたいから……なんて、想いの込められた悲しそうな笑顔
おかしい
遥ちゃんが言っていることは普通じゃない
だけど、それを指摘したらダメな気がする
間違いなく幸せになれない
私を監禁して、それで守れるかもしれないけれど
でも首輪のついた私は、きっと遥ちゃんの好きな私じゃない
だから、遥ちゃんでさえも幸せにならない
彼方「そうだねぇ……幸せになんて、なれないと思う」
遥「だから、スマホ出して」
彼方「………」
彼方「……分かった。良いよ〜好きなだけ見て」
ポケットから出して、そのまま遥ちゃんに渡す
暗証番号は言うまでもなく解除されちゃったのは……もう言っても仕方がない 遥ちゃんは一通り操作をして、
普通のメールや、アプリのメッセージ、電話の履歴
何もかもを全部漁る遥ちゃん
そのまま自分の鞄の中に私のスマホをしまい込む
彼方「あっ……えぇっと……返しては、くれないの〜?」
遥「私が傍にいるのに、必要なの?」
彼方「あ〜……うん、要らないかもね〜」
彼方「充電して貰えれば、うん……」
遥「だよね」
遥「……学校も学年も違うから、無いとダメだけど」
遥「双子だったら、こんなの要らなかったのかな?」
彼方「どうかな〜……」
遥「以心伝心、第六感で感じ取れちゃったりするのかなぁ」
遥「えへへっ、私とお姉ちゃんも感覚共有みたいなの。出来たらよかったのにねっ」
彼方「そ、そうだねぇ……」
楽しそうに話す遥ちゃんは今までのようで……数秒前の不気味さとの違いに悪寒が走る ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています