彼方「彼方誕編集」
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9、遥
0、侑
>>2 キャラクターセレクト(上の1〜0からのみ)
>>4 内容選択(自由)
※注意事項
全て彼方との組み合わせ 果林「ねぇ彼方……今度、お洋服階に行かない?」
彼方「ん〜?」
果林ちゃんは手に持っていたファッション系の雑誌を閉じると、
おもむろにそんなことを言い出した。
彼方「どしたの急に〜」
果林「彼方って、あんまり洋服に関して興味なさげというか」
果林「着こなしがちょっとずぼらに見えるのよ」
彼方「え〜……?」
果林「いつもいつも、はだけてるじゃない」
彼方「あぁ……」
言われてみなくても、確かに
あれはファッションの一つだよ。と言ったら果林ちゃんはきっと顔をしかめるだろう。
もちろん、肩を見せたりなんだりっていうのはあるけれど、
私のは別にそんな高尚な考えのあるものでもないし……
彼方「あれ、お母さんのおさがりだから。ちょっと大きいんだよねぇ……」 全部が全部そう言うわけじゃないし、
本当のことを言うと、普段着ているのは別におさがりでも何でもなくて
彼方ちゃん的に、体をきつく締められるような洋服が苦手というか。
果林「だったらなおさらよ」
果林「高校生……ううん、もう大学生にもなるっていう年ごろなのに」
果林「そんなにも無頓着でどうするの?」
彼方「えっと……」
果林「はぁ……もう、今日の放課後空いてる?」
溜息をつく果林ちゃん
ファッションの雑誌は近くのテーブルに放られて
空いた手が、横になってる私の頭を撫でてくれる 彼方「今度じゃなかったの〜?」
果林「そんな調子なら早い方が良いじゃない」
彼方「えぇ〜……」
彼方「おさがりっていうのは嘘――」
果林「良いから。予定あるの? ないの?」
彼方「寝る予――」
果林「無いのね」
彼方「ん〜……今日はバイトもないから大丈夫だけど」
果林「なら、行きましょ?」
珍しく……もないかもしれないけど、
やや強引な果林ちゃんは私が渋々頷くのを見ると、「決まりね」とちょっぴり嬉しそうに笑う
普段はしっかり者のお姉さんのようなポジションにいる果林ちゃんだけど
笑顔はやっぱり、可愛らしいもの……なんて。
口にしたら怒られる
彼方「良いよ〜」
彼方「デートしてあげる〜」
だから、強引なお誘いには冗談半分で答えておく 果林「で、デートって……」
果林「やだ……何言ってるのよ」
果林「別にそういうつもりじゃないのに……」
別に誰かとお付き合いしたことがない人だって、デートという言葉くらい知ってる。
それはもちろん果林ちゃんもそうで、
急激に頬を赤らめていく様は、とっても可愛らしい
可愛らしいから、ついついもう少し。なんて思ってしまう
彼方「え〜?」
彼方「彼方ちゃんは、デートだって思ったのになぁ?」
果林「もぅ……何言ってるのよ……」
手でパタパタと仰いで自分に風を送る果林ちゃん
耳まで真っ赤な凛々しい子
彼方「かわいいよ〜? 果林ちゃ〜ん」
果林「ふざけたことを言うのはこの口かしらねぇ?」 彼方「ひゃひんひゃ……」
頬を抓まれて、声が歪になっていく。
それでも果林ちゃんには分かっているようで、
怒ったように見せかけているだけの笑顔を浮かべながら、私の頬を弄ぶ
果林「あんまり余計なこと言うと、このまま持ち上げていっちゃうわよ?」
彼方「ん〜っ!」
果林「まったくもう……かわいいなんて……」
ぺちぺちと降参の合図を摘まむ手に送ると、
果林ちゃんはすんなりと解放してくれて……背けざまに呟く
からかっているだなんだって言いつつ、
ほんのちょっと嬉しそうに口元が綻ぶのが見えてるよ。
……なんて。
ちょっと言ってみたくなる
果林「私は読者モデルもやってるのよ?」
果林「どちらかと言えば綺麗でしょう?」
彼方「別に、綺麗と可愛いが混在してても良いんじゃないかなぁ?」 果林「そう……?」
果林「かわいい……かしら……」
彼方「かわいいよ〜?」
果林「そう……」
私を見ることもない果林ちゃんは、
今度は否定もせずに、気恥ずかしそうにしながら……小さく笑う
可愛いよりも綺麗と言われたいなんて言いながら、
可愛いって言ってあげると嬉しそうにする
そんなところが、可愛いんだよ?
って、ついついついげきしたくなって……飲み込む
これ以上は、膝から突き落とされそうだし。
果林「彼方だって、可愛いわよ?」
果林「でも、ふとした時……私には彼方が大人びて見えるわ」
果林「私にはない美しさを彼方は持っているのよ」
果林「だからこそ……」
彼方「ねぇ、彼方」
果林「どんなに綺麗な宝石だって、曇らせたままじゃもったいないって思わない?」 さっきまでのほんわかとした空気感を払拭するような真面目な果林ちゃんの声
だからこそ……。と、途中まで言いかけたのは何だったのだろう。
彼方「ん〜……そうだねぇ」
彼方「果林ちゃんにとって、彼方ちゃんは宝石なのかな〜?」
果林「……っ」
驚いた顔を見せる果林ちゃんだけど
今の話の流れでそう思わないほど、私は鈍感でもない。
果林ちゃんにとって、私が宝石ほどに価値があるのだとしたら……
それはとっても……。
彼方「勿体ないよね〜……曇ったままは」
果林「だから、洋服を買いに行きましょ」
果林「読者モデルとしてのメンツをかけて、最高の服を選んであげる」
彼方「うん」
彼方「よろしくね〜」
宝石
私は果林ちゃんにとって、どんな宝石なんだろうか。
ちょっぴり、気になる。 ノレcイ´=ω=)可愛い果林ちゃんはもっと広めるべきだぜ〜 ――――――
―――
同好会での練習を終えて、果林ちゃんと一緒に寄り道をする。
どこかに行くのかなんて訝し気なみんなには、内緒のお買い物
いや、デート
少しばかり機嫌がよく感じるのは、気のせいじゃない
彼方「秘密にしなくても良かったんじゃないかな〜?」
果林「ふふっ。いつもと違う彼方の姿を見せたときのみんなの反応、気になるでしょ?」
彼方「確かに〜」
彼方「綺麗なのか、可愛いのか」
彼方「いつもとあんまり変わらないのか〜」
果林「絶対に変わって見えるに決まってるわ」
果林「綺麗か、可愛いかは……そうね」
果林「彼方がどっちを目指したいかなんだけど……」 果林ちゃんは考え込むようにそう言って、
私は……と、私が言いたいことを言うよりも前に切り出した。
果林「やっぱり、彼方には綺麗になって貰いたいわ」
果林「彼方は普段の仕草は可愛らしい所があるし」
果林「美人な彼方がちょっと抜けてるところがあるって、ギャップがあっていいじゃない?」
彼方「ん〜?」
果林「……何よ」
彼方「べつにぃ?」
果林ちゃんだって、普段は美人さんなのに抜けてるところがある
そんなギャップがあるって分かっているのかいないのか。
彼方「……あ、待って」
果林「なに?」
彼方「道違うよ〜こっち」
果林「え……あっ……」
彼方「んふふ〜」
果林「わ、笑わないでよっ」
果林「無駄に広いのがいけないんだからっ」 彼方「果林ちゃんのそういうところが、ギャップなんだよねぇ〜」
彼方「かわい〜」
果林「もう……からかわないでって言ってるでしょう?」
彼方「本当にかわいいって、思ってるんだけどなぁ」
そう言って、果林ちゃんの手を握る
恋人とか、そう言うのじゃなく
ただただ、友人としての手の繋ぎ方
果林「ちょ、ちょっと!」
彼方「果林ちゃんが迷子にならないように、彼方ちゃんが手を握っておいてあげる〜」
果林「馬鹿にしてるでしょ……」
彼方「してないよ〜」
普段は凛々しい果林ちゃん
でも、実は方向音痴な一面もあったりして。
彼方「手を繋ぐ理由になるなら、良いんじゃないかな〜?」
果林「子供っぽくて、ちょっと……あれだけれど」
そう言う果林ちゃんは、でも……手を離さなかった。 果林「えぇっと……」
いくつかの専門店が入っているショッピングモール
番号で振り分けられている案内図を二人で覗き込む
果林ちゃんはどれにするべきかと悩まし気で。
真剣なその横顔は……
大丈夫、果林ちゃんだって大人っぽいよ〜……って、思わされる。
それが私のためだっていうのは
ちょっぴり。
ううん、とっても……気分が良い
彼方「ここは〜?」
果林「そこ、確かメンズのお店よ?」
果林「ボーイッシュが良いって言うなら、まぁ……別に良いけど」
彼方「えー……」
果林「冗談よ。ボーイッシュって言ったって別にメンズじゃ……まぁ、それは良いんだけど」
彼方「……ボーイッシュ彼方ちゃん爆誕する?」
果林「しないわよ」
即断だった。 とりあえず、
適当なお店を見に行こうっていう話になって、ウインドウショッピングを楽しむことにした私達。
普段は立ち寄りもしないような少しブランド力のある洋服店に入ってみる
彼方「うぇっ……」
果林「まぁ、見るだけでもいいでしょう?」
彼方「うん」
果林「心配しなくても、私だって……」
こんなお店のは易々と買えないわよ。と、
お店の人には聞こえないように果林ちゃんは言う。
私がいつも行くようなお店の人とは違って、
若干、品定めされているように感じるのは、気のせいだろうか。
彼方「ひぇぇ……」
トップス一着で十時間くらいの給料が飛んでいきそうな値段の物もある。
これは、怖い。 果林「これなんて、彼方に似合うんじゃないかしら?」
彼方「ほんとにぃ〜?」
ラメ糸で編まれたピカピカのシャツ
明らかに派手で、
私には似合っていないように感じるそれを合わせるように胸の前に持って行ってみると、
果林ちゃんは、似合ってるとも似合わないとも言わずに、笑った
果林「ふっ……ふふふっ……ごめんなさいっ……」
彼方「か〜り〜ん〜ちゃ〜ん〜?」
果林「だ、だって……ふふふっ……」
きらきらと輝くメタリックシャツ
胸元のブランドロゴは違う色の輝きを放っている
彼方「果林ちゃんが買ってくれるなら、着てあげても良いよ〜?」
果林「えっ、無理よ。無理!」
彼方「じゃぁ果林ちゃんも合わせてみてよ〜」
果林「え〜……」 果林「うわぁ……」
彼方「あはははっ」
果林ちゃんがライブで着ていたのもきらきらしていて綺麗だったけど
今合わせているのは、キッラキラで
読者モデルとして活動している果林ちゃんにとっては
顔をしかめるくらいに、最悪なものらしい
でも、私からしてみると
果林ちゃんが絶対にしないような格好は、面白い
彼方「似合ってるよ〜?」
果林「冗談やめてよね」
果林「あぁでも……彼方が買ってくれるなら、着ても良いわよ?」
彼方「………」
果林「待って待って無言でお財布を検めないで!」
果林「ネタに生活費かけるのは駄目よ!?」 別に貧乏でお金が待ったくないわけでもないから、
買おうと思えば買えるんだけど……
でも、確かに冗談に命懸けるのはちょっと問題かもしれない。
彼方「冗談だよ〜」
彼方「でも、先にからかってきたのは果林ちゃんだよねぇ〜?」
果林「……悪かったわよ」
果林「………」
果林「ほら、場所変えましょ」
果林ちゃんはお店の人の目を気にして、
洋服をさっと元に戻すと、私の手をちょっとだけ強引に引っ張っていく
彼方「ふふっ」
果林「何笑ってるのよ」
彼方「べっつに〜?」
本当にデートみたい
とか
ウインドウショッピングって、やっぱり楽しいとか
色々だよ〜。なんて笑ってみると
果林ちゃんは困ったように笑った 果林「やっぱり、こういうお店の方が選びやすいわよね」
彼方「そうだねぇ……」
ブランドとしては少し落ちるけれど、
でも、決して悪くはないお洋服のお店
トップスとスカートを選んだって、さっきのギラギラしたシャツ一枚分のお金でお釣りが返ってくる
果林「彼方って私服だとロングスカートが多いけど……ミニは履かないの?」
彼方「制服が似たようなものだしねぇ」
果林「ジーンズとかも履かないわよね……」
彼方「こう……ぎゅーって締め付けられる感じが好きじゃないんだよね〜」
果林「そう……」
洋服は、どちらかと言えば遊びがあるサイズの方が好ましい
その方がゆったり着られるし、拘束感がないから
果林「なら、こういうのはどうかしら」
彼方「ほうほう……」
そう言って果林ちゃんが持ち出してきたのはシャツワンピース
ボタンタイプで、腰のあたりでベルトを巻いたりするのが一般的らしい
彼方「似合うかなぁ?」
果林「試着してみたら?」
彼方「ん〜してみよっかな〜」 試着室を借りて、着てみる。
鏡の前で自分でチェックしてみると、なんだかちょっと違う感じがしなくもなくて
彼方「どうかな〜?」
果林「ん〜……」
果林ちゃんはとっても真剣に私を見て、
服の裾の辺りを摘まんだりして、
悩んで悩んで……私の体を見定めて。
彼方「か、果林ちゃん?」
ちょっぴり恥ずかしくなって名前を呼ぶと、
果林ちゃんははっとしたように顔を上げた
果林「ここ、もう少し余裕持たせた方が良いわ」
果林「ぴっちりしてると……ほら、彼方の胸が強調され過ぎる」
彼方「………」
彼方「やだも〜果林ちゃんのえっち〜」
果林「はっ!? なっ……何言ってるのよっ……」 果林「バカなこと言ってないで、ほら……」
果林ちゃんに調整して貰ってから見て見ると……なるほど。と思う。
さっきよりもベルトは少し上に引き上げられて、
ベルトの上に多少の遊びを持たせた分、裾は上がっちゃってるけれど、
ウエストが細く見える感じになる
ベルトから首にかけての余裕もあるから、
ぴっちりと胸の形が出るようなこともない
彼方「おぉ〜さっきよりましになった〜」
果林「でしょう? 」
彼方「どうどう〜? 似合う?」
果林「似合ってるっていうか……やっぱり……」
彼方「やっぱり?」
果林「……かわいいわね」
果林ちゃんのほんのりと赤い、はにかんだ笑みが目に焼き付く
可愛いとは誰のことを言ってるのか
そんなの、果林ちゃんのことなんじゃないかって……言いたくなる。
言いたくなるだけで、言えない。
彼方「……果林ちゃんのお洋服も、選ぼうよっ」
いつもと違った ” あの子 ” が見られるお洋服選び。
それに舞い上がっちゃってる私達は、多分きっと。
本当に――デートをしているんだろう。
彼方「……なんて」
もう少しこのままを楽しみたくて、私は心の内にしまい込んだのだった。 case.1:果林と服選び 終了
※途中から名前欄入れ忘れました
※次のcaseは明日安価します。 高級らっかせいさん、マジで毎回神SSをありがとう
…これ、まさか全員分やってくれる感じ? やってくれそうな感じね
そうじゃなくても彼方誕生日SS少なかったから嬉しいわ 1、璃奈
2、しずく
3、かすみ
4、歩夢
5、愛
6、せつ菜(または、菜々)
7、エマ
9、遥
0、侑
>>40 キャラクターセレクト(上の1〜0からのみ)
>>42 内容選択(自由)
※注意事項
全て彼方との組み合わせ 最近、璃奈ちゃんのクラスメイトで、
私達同好会のファンでもある、焼き菓子同好会の子達がよくよくお菓子を持ってきてくれるようになった。
殆ど毎日持ってきてくれるお菓子は、
いつもいつも違った見た目、違った味、違った種類と……とても趣向を凝らされていて
同好会のみんなも大喜び。
そんなある日のこと
お昼休みにいつも使っている外のベンチに行くと、先客がいた。
彼方「璃奈ちゃん、珍しいね〜」
璃奈「彼方さん……待ってた」
彼方「私を?」
璃奈「そう……えっと……美味しいお菓子の作り方を教えて欲しい」
単刀直入
けれどちょっぴり怖気づいたような切り出し方をしてきた璃奈ちゃんは
困った顔をしている。ように見えた。 彼方「お菓子か〜」
璃奈「ダメ?」
彼方「ううん、ダメじゃないけど、お菓子なら歩夢ちゃんの方が得意な気がするけど……」
璃奈「そう、だけど」
璃奈「でも……なんていうか……」
璃奈ちゃんと歩夢ちゃんは仲が悪いとかそう言うのはないはずなので、
頼みにくいとかいうわけではないのだろう。
普通科と情報処理学科で距離はあるけど、多分それも関係はなくて
彼方「少し、変わったお菓子が作りたいのかな〜?」
ありふれたお菓子ではなく、
こう、もう少し趣向を凝らした感じの。
そう言ったのを作りたいって言うなら、
確かに、歩夢ちゃんよりも私向きかもしれない
なんて。
璃奈「うん……」
璃奈「ちょっと、面白いのが作ってみたい」 一概に面白いお菓子と言われてもちょっぴり困ってしまう。
面白いお菓子なんて物は世の中にたっくさん出回っているので
そのレパートリーに困るわけではないけれど
ある程度こういうのが作りたいっていうものが欲しかったり。
彼方「どんなものが作ってみたい〜?」
璃奈「同好会……えっと、焼き菓子同好会の人たちが普段作らないようなやつ」
璃奈「ユニークなのがいい」
彼方「ん〜……」
焼き菓子同好会の子達は、
クッキーなどの焼き菓子をかなり作り慣れている感じがしたし
マドレーヌとか、ウエハースなんかも作ってきていた。
だとすると、焼き菓子は避けるべき
それでいてユニークなもの、かつ、そこまで難しくないものと言えば。
いや……一人では難しいかもしれないけど。
彼方「ケーキ、作ってみる?」
璃奈「ケーキ……作れるの?」
彼方「クリスマスとか、遥ちゃんの誕生日とか。お祝いの時は彼方ちゃんの手作りだよ〜」 璃奈「なら作る……作ってみたい」
彼方「そしたらどんなものを作るか考えよっか〜」
ユニークなものってなると、
一見ではケーキには見えないものだったり
ケーキだって分かるけれど面白い見た目……切り株とか本とか。
そう言うのがあると思う。
けれど、あんまりにも難しいものにすると作れないかもしれないから……
璃奈「ケーキ……」
璃奈「丸いのは普通だから、三角形とか」
彼方「丸、三角、四角とか、形は多分どれもありふれてるんだよねぇ」
彼方「丸か四角の方が、飾りつけを綺麗にしやすいよ〜」
璃奈「なら……」
考え込む璃奈ちゃんは、悩みに悩んで解決しないのか、
ふと息を吐くと、傍に置いてあったボードを持ち出して。
璃奈「璃奈ちゃんボード[ ̄へ ̄]」
彼方「あっ」
璃奈「悩まし――」
彼方「それだ〜っ!」 璃奈「え? えっ?」
彼方「璃奈ちゃんボードだよ〜」
彼方「璃奈ちゃんボードを模したケーキを作るの」
彼方「大きく一つの顔にするか」
彼方「四角いケーキの上にチョコとかで枠をいっぱい作って、たくさん作るとか」
彼方「そういうのはまた別として」
彼方「璃奈ちゃんボードケーキ……どうかな〜?」
焼き菓子同好会の子達は、璃奈ちゃんのこと気に入っているし、
ライブ中のあのボードとかだって好きだったはず。
なら、璃奈ちゃんボードはきっとウケがいいはず。
璃奈「璃奈ちゃんボード……」
自分のボードを見つめる璃奈ちゃんは
ちょっぴり考え込んで……軽く頷いた
璃奈「……良いと思う」
璃奈「彼方さん、凄い」
彼方「全然凄くないよ〜璃奈ちゃんがボードを出さなかったら考えつかなかったからねぇ」
彼方「じゃぁ、璃奈ちゃんボードケーキで決定で良い?」
璃奈「うん……宜しくお願いします」 >>32
ここで彼方ちゃんが来てた形の服好きなんだよね
そういう絵出してくれないかなって思ってる 璃奈「璃奈ちゃんボードケーキ」
璃奈「いろんな顔の物を作ってみたい……」
璃奈「バリエーションが豊富の方が、見せた時に良い反応が貰えそう」
彼方「おぉ〜いいねぇ」
それを食べて貰う相手のことを考えるっていうのが、一番大事なんだけど
璃奈ちゃんはもう、そんなことは分かり切ってるみたい。
表情はあんまり変わっていないように見えても、
ワクワクしてるっていうのが、伝わってくる。
彼方「それなら、出すときはカットケーキみたいに、小さくカットした状態で選べるっていうのが良いかも〜」
璃奈「なるほど……」
璃奈「カットしてから顔を書けば、崩れちゃったりもしにくい」
彼方「そうそう」
彼方「それに、顔だけじゃなくてフルーツのせたりとかも出来るよ〜」 璃奈「それなら果物も選ばないと……」
璃奈ちゃんはそう言うと、
私の方をちらっと見て……何かを言おうとしたのか、
小さな手がきゅっとボードの端を握る
璃奈「あの、彼方さん」
彼方「ん〜?」
璃奈「その……」
言いたいことは、分かる。
先んじて良いよ。って言ってあげることもできる
それは多分、璃奈ちゃんが望んでいることだけど
でもきっと、望んでもいないことだろうから……待ってみる。
璃奈「い………」
璃奈「……一緒に、買い物して欲しい」
璃奈「私だけじゃ、上手く買い物出来ないと思うから……」 璃奈ちゃんだって買い物くらいはできるだろうけど、
どれがいいか、どれが必要なのか、何を買えばいいのか。
初めて作るものだろうから、不安があるのかもしれない
彼方「いいよ〜」
彼方「いつにする〜?」
璃奈「じゃぁ……今日時間あったら」
璃奈「家で練習して」
璃奈「早ければ明日、学校の調理場借りて作ろうと思う」
彼方「そうだねぇ……クリームとか使うと日持ちしないから……」
彼方「でも、本番は来週とかにして、今週は練習でもいいんじゃないかな〜?」
璃奈「なら、土曜日……彼方さんの時間が欲しい」
璃奈「私と一緒に買い物して……作り方教えて欲しい」 彼方「土曜日ねぇ……」
彼方「うん、大丈夫だと思うよ〜」
璃奈「本当? 無理してない?」
彼方「大丈夫だよ〜」
いつまでに作れるようにならないとダメとかいうのはなさそうだけど、
難しいようなら、作って日持ちさせれるものにして
気長に出来るもの2するというのも悪くはない
彼方「もしあれなら、やっぱりクリームとかフルーツは使わずに――」
璃奈「ううん、やってみたい」
璃奈「大丈夫、彼方さんを太らせたりしない」
彼方「何を言ってるのかな〜?」
それはもう、意気込みを露わにするかのような表情……に見える璃奈ちゃんの頬をむにっと抓む
まぁ、気にしてはいるけど。
でも、それはそれこれはこれ。
彼方「なら、練習は小さめに作ってみる〜?」
璃奈「うん、そうする」
彼方「ほかにも考えることはあるし」
彼方「作るケーキの構想を立てよ〜」 >>1の女子力が高くてビビる
なんで服とかお菓子の話をこんなに広げられるんだ…… ああいうのが良いかな、こういうのが良いかな
そんな話をしていると、時間が過ぎていることを忘れちゃう。
表情は大きく変わらなくても
楽しんでるって分かる璃奈ちゃんはとっても可愛らしく見える
それはまるで、妹のように。
璃奈「……こんなもので良い?」
彼方「ふむふむ〜」
彼方「綺麗にまとめたねぇ……」
璃奈ちゃんは授業でもないのに、
話した内容を綺麗にノートに纏めてるなんて……凄いなぁ
もしかしたら、璃奈ちゃんにとってはこれも授業なのかもしれない。
彼方「これで大丈夫だよ〜」
彼方「これだけしっかり纏められるなら」
彼方「すぐに作れるようになりそう」
璃奈「ディスカッション……ううん、ただ、彼方さんのと話すのが楽しかっただけ」 璃奈「彼方さんが優しく教えてくれるから」
彼方「そんなに煽てたって、ケーキのレシピくらいしか出ないよ〜?」
璃奈「十分……」
璃奈ちゃんはそう言うと、
思い出したようにメモを脇に置いて私を見る
璃奈「普段はここで寝てることがあるって、せつ菜さんに聞いた」
彼方「あぁ、だからか〜」
彼方「ここで璃奈ちゃんに会ったことなかったよね〜」
璃奈「そう。だから……」
璃奈ちゃんは自分の膝を叩く
エマちゃんがやるようなその仕草は……そう、膝枕の合図
璃奈「使って?」 彼方「い、いやいやいや!」
彼方「ダメだよ〜」
璃奈「脂肪が足りない?」
彼方「彼方ちゃんと璃奈ちゃんでは差があるからねぇ」
彼方「足を痛めちゃうよ〜」
璃奈「そっか……」
璃奈「ごめんなさい」
彼方「ううん、大丈夫」
彼方「璃奈ちゃんが美味しいお菓子を作ってくれるだけで」
彼方「彼方ちゃんは嬉しいよ〜」
璃奈ちゃんの膝枕は魅力的だけど
それはもうちょっと大きくなってからじゃないと難しい
だから残念だけど、気持ちだけ。
彼方「美味しいケーキ、作ろうね〜」
璃奈「うん……頑張る」 ――――――
―――
[土曜日]
そうしてやって来た土曜日
いつもよりも少し早い時間に起きて、家事を片付けてから家を出る。
本当はゆっくりしようと考えていた土曜日だけど、
璃奈「彼方さんっ」
彼方「おぉ〜う〜」
でも、こういうのも悪くはないなぁ……って、思う。
土曜日のお昼に約束をして、
待ち合わせをして……気付いたほうが声をかける
彼方「かわいい服だねぇ」
璃奈「彼方さんも、いつもより大人っぽく見える」
彼方「そう〜?」
くるって回ると、
璃奈ちゃんはそうしてると可愛く見える。と、無表情の中で笑った 璃奈「今日はお願いします」
彼方「お姉ちゃんに任せなさ〜い」
お休みの日に璃奈ちゃんと二人きりで出かけるというのは初めてだったけれど
でも、悪くない気分だった。
いつもは、隣にいる遥ちゃん
それが、今日だけは璃奈ちゃん
目線も、歩く速さも、かけてくる声も言葉も違う。
璃奈「……彼方さんと私」
璃奈「ほかの人からはしまいに思われてるのかな?」
彼方「ん〜……どうだろう」
背丈はともかく、髪質も色も瞳も違う。
姉妹というよりは友達だと思われるきがするけど……多分、璃奈ちゃんが求めてるのは違う
彼方「どちらかというと親戚じゃないかな〜」
彼方「遊びに来た従妹とお姉ちゃん」
璃奈「従妹……でも、良いな……」 ぼそりと呟かれた璃奈ちゃんの声
聞いて欲しかったのか、
ただ、零れ置落ちてしまっただけなのか。
考える間に、璃奈ちゃんは先に進めて……
璃奈「私、一人っ子で……親戚もあんまり……」
璃奈「だから、彼方さんが従姉だったらなって……少し思う」
璃奈「ううん」
璃奈「本当にお姉さんだったなら、すっごく良かったんじゃないかって、思う」
彼方「璃奈ちゃんが妹だと、それはそれで得面白そうだね〜」
彼方「遥ちゃんとも仲良くできそうだし〜」
あんまりゲームの話とかはしないけど、
遥ちゃんは、璃奈ちゃんが興味を持ってるようなことにも興味を持ってくれる子だから。
きっと、仲の良い姉妹になったんだろうなぁ……
璃奈「……お姉ちゃん」
彼方「えっ……」
璃奈「今日だけ……お姉ちゃんって、呼んでみても良い?」 かすみちゃんなら悪ふざけ、しずくちゃんなら演技の練習か何か。
そんな話を真剣に切り出した璃奈ちゃんだったけれど、
すぐに自分の言葉を恥ずかしがってか、
璃奈ちゃんボードの代わりとでもいうかのように鞄で顔を隠す
璃奈「ごめんなさい……言ってみただけ」
彼方「………」
彼方「良いよ〜?」
彼方「私のこと、お姉ちゃんって呼んでも良いよ?」
彼方「別に減るものじゃないし、嫌な事でもない」
彼方「むしろ、嬉しいよ〜」
遥ちゃんが聞いたら、ちょっぴりむくれそうな気がするけど
でも、可愛い妹は何人いたって困らない
なんて――それこそ遥ちゃんがむっとしちゃう
けれど、
一人っ子の璃奈ちゃんが姉妹を経験してみたいなら、
その相手に私を選んでくれたなら、
それは、とってもありがたいことだと思う。
だから……受け止める
彼方「お姉ちゃんでも、お姉さんでも、姉さんでも、姉貴でも、姉御でも」
彼方「好きに呼んで〜」 璃奈「お姉ちゃん……って、呼んでいい?」
彼方「うん」
璃奈「じゃぁ……お姉ちゃん……」
表情はあんまり変わらない
けれど、その言葉を噛みしめているかのような声は、
笑みを浮かべているにも等しい緩みが感じられる
私をお姉ちゃんと呼ぶこと
それで璃奈ちゃんが喜んでくれると、私まで嬉しく感じられる
彼方「なに〜?」
璃奈「……っ……」
璃奈ちゃんは鞄の中に入っていたボードを引っ張り出すと、
それで顔を覆う
璃奈「璃奈ちゃんボード[^-^]」
璃奈「返事をされると……少しドキドキする」 私は遥ちゃんに言われ慣れてるけれど、
他の人……璃奈ちゃんに言われ慣れてるわけもなくて、ちょっぴりむず痒い
璃奈ちゃんも似たようなものらしくて
照れくささを感じるその声は、私には向けられることもなくどこかに消えていく
彼方「………」
少し、考える。
これは軽率な事なんじゃないかって
でも、別に姉妹では普通のことで
友達同士だって普通のことで
だからそう……今日限りの姉妹なら別に悪いことじゃないと、考えて。
璃奈「あっ……」
彼方「行こっ?」
璃奈ちゃんの手を握る。
遥ちゃんとしているように、当たり前に。
璃奈ちゃんは数歩だけ躓くように遅れたけれど
すぐに隣に並んでくれた
ちらちらと向けられる視線……そして、手を握り返される感触
それを感じて
璃奈ちゃんが喜んでくれていたらいいなと考えながら、顔を見ることはなかった ――――――
―――
彼方「お邪魔しま~す」
璃奈「私達しかいないから、気にせず上がって」
彼方「は〜い」
予め買うものは決まっていたこともあって、
さっと買い物を済ませて、璃奈ちゃんのおうちへと移動
以前来た時にも思ったけれど……やっぱり、立派に広いおうちだ
彼方「そしたら、イチゴはとりあえず冷蔵庫入れておこうか」
璃奈「うん」
璃奈ちゃんはメロンやパイナップルなども使ってみたいと言っていたけれど、
スーパーに缶詰が売っていなかったメロンだけは準備の手間を考えると、難しい
予めカットされていたものを使うのなら良いけれど、
カットされているものもコンビニでは売ってないから……当日は厳しい
そうして選ばれたのが、
パイナップル、みかん、桃、イチゴの四種類の果物
イチゴ以外は缶詰を利用して、イチゴだけはそのまま売ってる方を使うということにした。
彼方「よぉし〜やっていくよ〜?」
璃奈「うん」 璃奈「……お姉ちゃん、まず何をしたらいいの?」
璃奈「クリーム? クレープ生地? それとも、スポンジ?」
彼方「そうだねぇ」
彼方「先に言っちゃうと、クレープ生地を先に作るよ〜」
彼方「スポンジ部分は寝かせずに作ってそのまま焼きの工程に入るけど」
彼方「今回作るスポンジ部分は、さらに広く薄くだから過熱する時間が短いから比較的早く終わっちゃうからね〜」
璃奈「分かった……」
璃奈「えっと……」
璃奈ちゃんは自分で書いていたメモを取り出して、
必要な材料を袋から出していく
一つ一つ確かめながら取り出す姿には真剣さが感じられて、
元々手を抜く気はなかったけれど……もっと、しゃっきりしようと思わされた。
彼方「バターは冷蔵庫入れずに出しておいていいよ〜」
彼方「必要な分を切り取ったら冷蔵庫に入れよう」
璃奈「常温で少し柔らかくする……?」
彼方「そう。そのあと湯煎でもう少し溶かすけど、冷蔵庫から出した直後よりは楽になるからねぇ」 基本的に私は横から指示を出すだけで、
作るのは璃奈ちゃんというのが今回のやり方。
流れとしては
1、クレープ生地作成
2、スポンジ作成
3、クリームを作成
4、クレープ生地を焼く
5、スポンジとクリーム、クレープ生地を合わせて完成
という予定。
クリームはチョコクリームを作ったりとか色々あるけど……。
彼方「そしたら、璃奈ちゃん」
彼方「まずは薄力粉をカップに入れよう」
彼方「容量は……小さめだから80くらいで」
璃奈「薄力粉……」
中サイズの薄力粉の袋を取り出して、袋を開ける
料理用の測りの上に置いたカップに入れて量ってから
それをさらに粉ふるいへと移し替えてボウルに振るっていく 彼方「良いよ〜ゆっくり、丁寧にやればいいからね〜?」
璃奈「うん……」
薄力粉がはかりの周囲に零れたり、
少なからず粉が舞って咳き込んだりと……
ちょっとした事故もありながらも、順調に進んでいく
彼方「薄力粉を振るったボウルに砂糖と、卵は2つ」
璃奈「……砂糖と、卵……」
璃奈「砂糖入れてから混ぜる前に卵?」
彼方「そうだねぇ……卵を入れてから混ぜる方で良いかな」
璃奈「わかった……」
メモを確認しながら材料を用意していたように、
都度都度聞きながら、璃奈ちゃんは段階を踏む。
凄く丁寧で、真剣な姿は可愛らしくも……かっこよく見える
これは多分……私だけが知ることの出来た璃奈ちゃんだ >>80
最近Twitterで聞いたんだが、即興で書き上げるタイプもまあまあ居るみたいやで 彼方「そしたら牛乳をとぽとぽとぽ〜って」
璃奈「うん」
洗い物がどんどん増えていくのも気にせずに、
正確に作る為と新しい計量カップを用意して、牛乳を注いでいく
彼方「100くらいで良いよ〜」
璃奈「100……そしたら……生地もどきに入れて混ぜる」
彼方「うんうん。良い感じだねぇ」
璃奈「んっ……んっ……」
だんだんと弾力の出始めてくる生地を、
小さな手で一生懸命に璃奈ちゃんは押し込んでいく
彼方「手伝おうか〜?」
璃奈「だい、じょうぶ……っ」
少しつま先立ちになって、
押し込みながら前傾姿勢になって、また戻って……
彼方「無理しないようにね〜」
璃奈「あ……」
汗を浮かべ始める璃奈ちゃんの額を、ハンカチで拭う
彼方「ここまでは順調に来てるから、大丈夫だよ〜」 粉が残ったり、だまにならない様にしっかりと混ぜ合わせて……生地は完成
ラップをかけて、それを冷蔵庫へと入れて少し寝かせる
璃奈「ふぅ……」
彼方「お疲れ様〜」
璃奈「あっ……洗い物っ」
彼方「良いよ良いよ〜何もしてないのもむずむずしちゃうから〜」
璃奈ちゃんが生地を作っている間に、洗い物を片付けていく
また使うことにはなると思うけど、
これをさらにため込んでいった後の大変さは、身に染みてるから。
璃奈「あり、がとう……」
彼方「どういたしまして〜」
彼方「でも、今はお姉ちゃんだから気にしなくて大丈夫だよ〜?」
璃奈「お姉ちゃん……」
璃奈「……うんっ……お姉ちゃん……」
最近は遥ちゃんと二人で料理することもあるから……思う。
こういうのも、楽しいって。 彼方「そうしたら、次は土台……」
璃奈「スポンジ部分……」
彼方「そう。これがしっかりしているかどうかでケーキが直立するか崩れ落ちるかが決まるよ〜!」
彼方「形が歪だったりすると、盛り付けに偏りが出ちゃったりもするから」
彼方「でも、ちゃんと丁寧にやってる璃奈ちゃんなら、大丈夫〜」
彼方「型に、オーブン用のシートを敷いて〜」
璃奈「このくらい?」
彼方「ううん、型からはみ出るくらいがいいかな〜」
璃奈「………こう?」
彼方「うん、そのくらい」
彼方「そしたらまた、薄力粉の出番だよ〜」
クレープ生地を作るときに一緒にやっておいても良いけれど
今は教える時だから、一つ一つ丁寧に お菓子作り詳しすぎワロタ
ケーキ丸々なんて作ったことないわ すげえ人だマジで 彼方「振るい終わったら、バターとかを湯煎するためにお湯を沸かそう」
璃奈「うん……」
スポンジを作る分の薄力粉を量って、粉ふるいで軽く振るって用意しておく
そうしたら、次に常温で溶かしておいたバターをさらに湯煎するためのお湯を沸かせる
彼方「お湯が沸くまでに、卵と砂糖を混ぜるよ〜」
璃奈「手の方が良い?」
彼方「ううん、ここはハンドミキサーで大丈夫」
ボウルに卵と砂糖を加えて、ミキサーで混ぜていく
彼方「その調子その調子」
璃奈「ミキサーの振動で骨が震える……」
彼方「ずっと握ってると疲れちゃうんだよねぇ……」
彼方「ん〜……そうしたら、そのボウルのまま湯煎しつつもう一回混ぜて〜」 璃奈「この速度で平気?」
彼方「一番早いの〜」
璃奈「わかった……ん……」
璃奈「……ん゛ん゛ん゛ん゛……」
ハンドミキサ―を高速に切り替えた途端、
璃奈ちゃんの口から飛び出てくる濁音の連続
表情と動きは真面目な分、それはとっても――
彼方「あはははははっ、璃奈ちゃっ……だめっ……それは……!」
彼方「あはははっ!」
璃奈「……楽しい……」
嬉しそうに零した璃奈ちゃんは、
最初ほど緊張もしていないようで……少しだけ余裕が感じられる
うん、良い感じ
料理は楽しくやらないとね〜……でも、
今のは狡いよ〜っ! 彼方「あるい程度温かくなったら、湯煎を止めていいよ」
璃奈「……このくらい?」
彼方「うん、そう。もう外して平気」
璃奈「そしたらバターを湯煎する?」
彼方「そうだねぇ。バターを湯煎しつつ、もう一回生地を軽く混ぜよっか」
バターを湯煎して溶かしながら、
人肌程度に温まった生地のもとをもう少しだけ混ぜていく
そうしたら、振るった薄力粉の出番
彼方「薄力粉を生地の上にまんべんなく広げちゃおう」
璃奈「まんべんなく……」
彼方「緊張しなくても、混ぜるから少し重なってたりしても大丈夫」
璃奈「わかった」
そのあとは、ハンドミキサーからゴムベラに切り替えて、少しだけ混ぜる 璃奈「ミキサーじゃダメ?」
彼方「遊ぶからだ〜め」
璃奈「ごめんなさい」
彼方「あははっ、本当はミキサーだと混ぜ過ぎちゃうからダメなだけだよ」
彼方「ゴムベラでゆっくり、本当に軽く混ぜるだけで良いの」
璃奈「そうなんだ……」
彼方「本当に、数十回混ぜる程度で良いよ〜」
それが終わったら、
生地の内、ほんの少し……計量カップの半分ほどを溶かしたバターと混ぜ合わせる
璃奈「バターの良い匂いがする……」
彼方「バターだけなら舐めても大丈夫だよ?」
璃奈「ううん、平気」
彼方「なら、今混ぜたものと、混ぜてない生地を合わせて……」
彼方「また、さっきと同じくらい軽くかき混ぜて」 彼方「そして、ここで型に流し込む〜」
璃奈「型に流し込む〜」
少しとろとろしているまだ液体の生地が、
長方形の型の中に流れ込んでいく。
生地のほんのりと甘さを感じる匂いは美味しそうだけれど、
人によってはお腹を壊すので、推奨は出来ない
彼方「今回は、璃奈ちゃんが私の指示通りに計量してやってくれたから大丈夫だけど」
彼方「普通のお料理とか、味見しないと大変な事になっちゃうからね〜」
璃奈「うん……知ってる……」
一度地獄を見た。とでもいうかのような璃奈ちゃんは、
ゴムベラを使って型の中に全部流し込む
璃奈「これで、オーブンで焼く」
彼方「その前に空気を抜かないと」
彼方「こう、少し上から2回3回くらい落とすんだよ〜」
璃奈「なるほど……」 彼方「それじゃ、オーブンにゴ〜っ」
彼方「余熱で温まってるから、火傷に気を付けて」
璃奈「うん……わっ……」
空気を抜き終わったら、
あらかじめ180℃で余熱しておいたオーブンに入れて160℃で20分ほど、焼く
彼方「その間にクリームを作ろう」
璃奈「チョコレートは湯煎しないの?」
彼方「するよ〜少し残しておいて、砕いたのを粉末として振りかけるのもやってみる?」
璃奈「やってみるっ」
チョコレートを湯煎するのは、バターと違って都度都度混ぜたりすることが多いので、後回し。
先に普通のクリームを作る
もちろん、既製品の生クリームを使う。 彼方「生クリームに、砂糖とバニラエッセンスを加えて」
璃奈「……このくらい?」
彼方「砂糖はお好みかな〜? 今回の量からして、大さじ半分くらいがちょうどいいと思うよ」
璃奈「ならそうする……」
彼方「チョコレートは甘さ控えめで良いの〜?」
璃奈「うん。甘いのと、そんなに甘くないのを作りたい」
彼方「おっけ〜……なら、それで混ぜちゃおうか」
彼方「残した生クリームはチョコレートの方に使おう」
普通の生クリームの方は、そのくらいで十分
あとはチョコレートの方
もう一度お湯を沸かした鍋に、細かく刻んだチョコレートを入れたボウルを浮かせる
彼方「ゴムベラでゆっくり、混ぜつつね〜」
璃奈「わかった……」
彼方「良い感じに液体になったら教えて」
彼方「洗い物しちゃうから」
璃奈「うん……お姉ちゃんお願い」
彼方「まかせなさ〜い」 そうして、溶かしたチョコレートに、
残しておいた生クリームを少しずつ混ぜ合わせていけば……チョコクリームの出来上がり。
彼方「ちょっと味見してごらん」
璃奈「ん……美味しい」
璃奈「お姉ちゃんも……」
彼方「ぁ〜ん……」
璃奈ちゃんから差し出されたチョコクリームを乗せたスプーンに口をつける。
甘さ控えめなビターなチョコの味わいが残っているクリームは
ほろ苦くて、美味しい
彼方「うん、じょうでき〜」
璃奈「やった……」
璃奈「あとは、クレープ生地を焼く?」
彼方「うん、冷蔵庫から生地を取り出して〜」
璃奈「……クッキ―生地みたいになると思ってたのに……」
彼方「クレープのは液体だよ〜」
彼方「もちろん、ちょっぴりぷにぷにした感じにはなってるけどねぇ」
彼方「手でやったのは、その方が良いからだから」 彼方「フライパンを温めて、キッチンペーパに油を染み込ませて塗ろう」
璃奈「かけるのじゃだめなの?」
彼方「薄く油を塗りたいから、ペーパーでやった方が良い感じなるんだよ〜」
璃奈「なるほど……」
彼方「そしたら、おたまの……半分くらいだね」
彼方「それをフライパンに広げるように垂らして……そうそう」
中火でゆっくりとクレープの生地を焼き上げていく
ミルクレープだったら、一番上は全体を覆えるようにとか……だけど。
今回は長方形だから、サイズを大きく変えたりする必要がないのもポイント
彼方「次の焼く前に、もう一度油を塗った方が良いよ〜」
璃奈「うんっ」
そうして、2枚分くらいのクレープ生地を焼き上げるころに、スポンジケーキが焼き上がる。
彼方「クレープ中断して、スポンジを出そう」 璃奈「綺麗な色……」
彼方「うんっ、良い感じ」
彼方「熱いからその手袋は絶対に外したりしたらだめだよ?」
璃奈「うん……これをどうするの?」
彼方「もう一度、数十センチ上から落として空気を抜くんだよ〜」
彼方「重いし熱いからゆっくり」
そうして、型ごと二回ほど落して空気を抜いたら、
型とオーブン用のシートを外して、網の上で少しだけ冷ます
彼方「そしたらまた、クレープ生地焼いちゃおう」
璃奈「忙しい……」
彼方「大丈夫、慌てなくて平気だよ〜」
璃奈ちゃんに落ち着いてもらって、
そこからまた少し時間をかけてクレープ生地を焼き上げて……
彼方「はい、デコレーション前までかんせ〜い!」
璃奈「やっと……」
璃奈「疲れた……」 成し遂げたというようなため息をつく璃奈ちゃん
確かに、慣れないことをやっていくのは凄く疲れただろう。
璃奈「これに、本当は洗い物もやらなきゃいけなかった……」
璃奈「ありがとう、お姉ちゃん……」
彼方「どういたしまして〜」
彼方「あとはクリームとクレープをスポンジの上に重ねて」
彼方「カットしてから、フルーツを乗せたり、クリームで顔を書いたりするんだよ〜」
フルーツを乗せたりしてからでもいいけれど、
それだとカットが難しくなるから、先に生地とクリームを重ねるだけにする。
璃奈「あと少し……頑張る」
彼方「その調子〜」
彼方「デコレ―ションは彼方ちゃんも手伝うね〜?」
璃奈「うん……」
そうして……
初の璃奈ちゃんボード&フルーツ載せのチョコとバニラ風味のケーキが完成した 璃奈「完成……!」
彼方「おめでと〜」
璃奈「ありがと……美味しいケーキが出来たと思う」
彼方「じゃぁ、さっそく食べてみよっか〜」
璃奈「あっ……待って」
彼方「ん?」
璃奈「……あ〜ん……」
璃奈ちゃんは私が取るのを阻止した璃奈ちゃんから差し出されるケーキ
一口で食べられる程度の大きさだから……
そのまま、美味しくいただく
彼方「ぁ〜む……」
璃奈「どう……かな?」
彼方「んっ……ん〜っ、良いよ。すっごく美味しい」
彼方「璃奈ちゃんも、あ〜ん……」
璃奈「ぁ……ぁ〜んっ……」
璃奈「美味しい……っ」 彼方「良かった〜」
璃奈「自分で作ったとは思えない……」
彼方「作ったんだよ? 璃奈ちゃんが」
彼方「レシピを見て、自分で頑張ったのと似たようなものだよ〜」
璃奈「ううん、違う」
璃奈「一人じゃなかった」
璃奈「お姉ちゃんが……彼方さんがいてくれた」
璃奈「ずっと話しかけてきてくれて」
璃奈「ちょっぴりふざけてみたら楽しそうに笑ってくれて……」
彼方「璃奈ちゃん……」
畳みかけるように紡がれた言葉は不意に途切れて
璃奈ちゃんは袖で目元を拭う。
璃奈ちゃんだって、料理をすることができる。
でも、きっと。
それは一人やっていたことで
自分のためにしかやってこなかったことで……だから
私が一緒にいるというのが、嬉しいのだろう。
璃奈「……ありがと……楽しかった……」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています