夜。千歌と曜の二人を引き連れて遺跡へと向かう。
 しかし二人はちょっと出掛けるような感覚でいる為、改めて忠告する事にした。

梨子「二人とも。悪いけど、この先は命に関わるの。本当に危険なのよ?」

千歌「大丈夫! ほら、ボールいっぱい持ってきたし!」

曜「アタシはバット! 体力にも自信があるよ!」

梨子「……命を、落とすかもしれないの」

 梨子は本気で、二人に告げた。
 保障が無い事を。誰にも知られずに、終わりを迎える可能性を。

梨子「私は二人の命を守れるほど強くないし、責任を負えないの。だから……」

千歌「そんな場所に、一人で行こうとしてるんだよね?」

梨子「え、ええ。それが私の仕事だから」

千歌「ダメだよ」

 それは梨子自身の言葉よりも、強く、強く響いた。

千歌「誰にも知られずに死んじゃうなんて、辛いよ? 悲しいよ? でも、それを当たり前にするなんてもっと悲しいよ。危険だからこそ、誰かがいないとダメなんだよ」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「私は梨子ちゃんと知り合えて、本当に嬉しかった。だから、梨子ちゃんの事を見て見ぬふりなんて出来ないよ」

 その言葉に、千歌を見た。
 彼女の瞳は、逸らしたくなる位に真っ直ぐ向いている。

千歌「必ず一緒に、生きて戻る。それを一番に考えようよ」

曜「そうだね。アタシもそう思うよ」

 二人を見ると、全員で頷いた。
 覚悟は、二人とも。
 とっくに出来ていたのだ。
 行こう。遺跡へ。この内浦の秘宝を見つけ出すために。