オドオドした少女
「花丸ちゃん。あ、あの……」

おっとりした図書委員
「ルビィちゃん? どうかしたの?」

 髪を左右に結わえた小柄な子が、図書委員に話し掛けた。
 図書委員は花丸、という名前らしい。
 そして小柄な子は……梨子の聞き間違いでなければルビィという名前のよう。
 ルビィは梨子をジッと見て、酷く怯えているようだ。
 困った顔に見えたのか、花丸が梨子に向かって話し掛ける。

花丸「すみません。ルビィちゃん、人見知りなので」

ルビィ「ご、ごめんなさい……」

 何も悪い事はしていないのに、謝られてしまった。
 梨子はいえいえ、とだけ言って目的の書物を読むことにした。
 この内浦には豊穣をもたらす土地神ーー水神様がいるらしく。
 あらゆる災厄、特に水難事故から人々を救ったとされている。
 しかし一度、その神の怒りにより壊滅の危機に瀕した事もあるとか。
 そのため毎年夏は、海で祭りが行われているようだ。
 海の神様を奉り、鎮める為。

ルビィ「………………………」

花丸「ルビィちゃん?」