夜の内浦の街を、彼女は駆け抜けていく。
 風が、不安を煽るようにざわつく。
 そのざわつきも、もう慣れてしまっていた。

梨子「よし。着いた」

 そこは、今日から通い始めた場所。
 浦の星女学院。
 既に調査報告を受けていた、校舎裏の山へと入っていく。

梨子「確か、この辺りに反応があったはず……」

聞き覚えのある少女の声
「何してんの?」

梨子「!?」

 突然話し掛けられて、梨子は思わず身構えた。
 そこにいたのは、千歌ちゃんーー高海千歌だった。
 いつからそこにいたのか。
 探す事に夢中で、尾行されている事に気付かなかった。
 完全に、梨子のミス。

千歌「なんか、凄い装備してるけど……何か探してるの?」

梨子「えっと、これはーーきゃあ!?」

千歌「うわわわわっ!? じ、地震!?」

 どう説明すればいいのか。そう思った矢先に起きた地震。
 少しの間とはいえ、立つことすらままならない程の大きな揺れ。
 完全に治まったのを確認してから、辺りを見回す。

千歌「うわっ!? 何アレ!?」

 千歌が叫ぶ声で振り向くと、そこには大きな裂け目が。
 奥深くまで続く、入り口が姿を見せていた。

梨子「これって……!」