梨子「あっそうだ曜ちゃん!」

梨子「午後も空いてるわよね?……はいこれ」ガサゴソ

曜「……なにこれ、映画のチケット?」

梨子「そう。本当は大学の友達と行こうって思ってたんだけど、どうにも予定が合わなくて……」

梨子「だから代わりに、付き合ってくれるかしら?」

………





曜(結局、言われるがままについてきてしまった……)

梨子「映画、意外と面白かったわね。劇伴のメロディが綺麗で、感動しちゃった」

曜「うん……」

曜(……わからない。自分は楽しめていたのかどうか)

曜(なんせ娯楽という娯楽はこの二年間ほとんど触れていなかったし、ただ食べることと寝ることを繰り返していた日々だ。楽しいなんて感情は、とうの昔に捨ててしまった)

梨子「あのクライマックスシーンは反則よね〜、思わずキャッって言葉が出ちゃうとこだったわ」

曜「そうだね……」

曜(それでも……)

曜(なんでだろ……悪い気分では、なかったな)