鞠莉「からさいっぱい、元気いっぱい」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
曜「だーめ。今はお湯沸かしてるから」
鞠莉「むぅ、ダメって言われてもハグしちゃうわよ」
曜「わっ、危ないよ」
鞠莉「心配ご無用、これは安全配慮ハグだから」
曜「なにそれ。えへへ」
鞠莉「ふふっ」
チーン 鞠莉「幸せな時間にも終わりは来るものデース」
曜「まだまだ。見せ場はこれからだよ」
鞠莉「そうね。まずは野菜をレンジから取り出して…あつっ!」
曜「鞠莉ちゃん!?」
鞠莉「へ、平気よ。なんともないわ、蒸気の熱さにびっくりしただけで」
曜「本当?大丈夫?」
鞠莉「もちろん。心配しすぎよ」 曜「念のため冷やした方がいいよ、そうしよう?」
鞠莉「曜…」
曜「ボウルは…あった。はい、水を張ったから、手を入れて」
鞠莉「んっ…」
曜「痛くない?」
鞠莉「冷たくて気持ちいいわ。ごめんね、注意が足りなかったかも…」 曜「謝らないで、私が気付けばよかったのに…ちょっと見せて」
鞠莉「ん…」
曜「よかった。火傷はしてなさそうだね。痛みは?」
鞠莉「無いわ、強がりじゃなくて、本当に。だから一緒に料理、続けてもいい?」
曜「うん!ただし、より一層の安全配慮でね。ケガなんてしちゃったら、せっかく頑張った料理も、美味しく食べられなくなっちゃうもん」
鞠莉「ちゃんと気をつけるわ。ところで、曜」 曜「ん?」
鞠莉「えっと、いつまで手を握ってるのかなって」
曜「へっ?あ、ああっ、ごめん!なんかつい、夢中で…!」
鞠莉「ふふっ、やっぱり曜って可愛い」
曜「よ、よしてよ。そんなんじゃないし」
鞠莉「ね、ハグしていい?」
曜「しない、しませんっ、今は料理の時間です!」
鞠莉「真っ赤になっちゃって。食べる前からご馳走さま、ってね♪」
曜「うーっ…ほ、ほら、料理再開だよ!美味しいカレーのために頑張るよ!」
鞠莉「はーいはいっ」 曜「えっと、どこまでいったっけ…そうだ、野菜に火を通したんだったね。ここからはお鍋の出番だよ」
鞠莉「油を入れて、馴染んだら中に野菜を入れるのよね」
曜「うん。まずは玉ねぎから、油ハネに注意してね」
鞠莉「具材を入れるのには、決まった順番があるの?」
曜「人にもよるけど、私は玉ねぎから入れるんだ。その後にじゃがいも、人参、お肉って順かな」
鞠莉「オーケー。それじゃ、こほん――ヒドゥン・シャドウ・スネーク・ハンズ!んー、このジューって音、お料理してるって実感が湧いてくる」
曜「確かに。匂いや見た目もだけど、音って大事だよね。あ、とか言ってる間に、いい感じに油が回ったみたいだよ」 鞠莉「いつもより玉ねぎがくたっとするのが早い気がする。これがレンジ効果なのね」
曜「そういうこと。続いて他の野菜も順番に――」
鞠莉「ヒドゥン・シャドウ・スネーク・ハーンズ!」
曜「いいね!全体に油が回ったところで、最後にこちらのお肉の方を、どうぞっ!」
鞠莉「はい、お鍋にぽいっと」
曜「えっ?ねえ、なんで潜影蛇手しなかったの?」
鞠莉「えっと、なんか連発するのも違うかなって」
曜「だああ、いきなりブレーキかけるからびっくりしたよ。突然飽きが来たのかと」 鞠莉「何事も大切なのはノリとテンポよ」
曜「うーん、まあ、リズム感が必要っていうのはわからなくもないけど」
鞠莉「それで、次はお鍋に水を入れるのよね」
曜「あ、うん。ヤカンにお湯湧いてるから、それを使って」
鞠莉「これも時間短縮テクニック?」
曜「そうだね。後は煮込んで、アクを取り除いていくよ」 鞠莉「私にやらせて。よっ、と」
曜「おー、アク取りも上達したね」
鞠莉「アク取りだけに、マリーの中のギルティも取り除かれないかしら。アク取りだけに」
曜「ノリノリだね。アクが取れたら、具材の火の通りを確認するよ。お箸を入れてみて、スッと通ればおっけーだね」
鞠莉「ん、大丈夫そう!」
曜「そしたら、いよいよルーを入れるよ。一旦火を止めて」 鞠莉「火を止めて、と」
曜「そこに小さく割ったルーをぽいっと入れて、溶かしていくんだ。溶け残りがないようにしっかりね」
鞠莉「お味噌をとくみたいに、おたまと菜箸でやったほうがいい?」
曜「ああ、その方が確実だね」
鞠莉「なら、やってみるわ」
曜「ふーむ」
鞠莉「どうかした?」 曜「鞠莉ちゃん、仕事が丁寧だよね」
鞠莉「そう?」
曜「鞠莉ちゃんの料理方法って、自己流っていうか独特っていうか…まあ率直に言えばシャイ煮のときは予測不可能感がすごいけど、教わったことには忠実っていうか」
鞠莉「ゆくゆくはアレンジしてみたいけど、まずは基礎を身につけないことには始まらないわ。そこをないがしろにしたら、レクチャーしてくれた曜にも失礼だし…ねえ、どうして笑ってるの?」
曜「そういうところ、鞠莉ちゃんだなって」
鞠莉「どういう意味?」
曜「そのままの意味だよ。嬉しいんだ、すごく」
鞠莉「そう?ならいいけど。はい、ルーが溶けたわ。この時点で見た目は完璧ね、美味しそう!」 曜「いつもなら微調整して終了だけど、今日は辛いのをリクエストだから、もう少し手を加えていくよ」
鞠莉「辛さを出すために、具体的にはどうするの?」
曜「カレースパイスを入れていくんだ。スパイスにはガラムマサラとかレッドペッパーとか、色々と種類があるけれど、今日は市販のブレンドされてるやつを使うよ」
鞠莉「へえ、そんな便利なものがあるんだ」
曜「これは調理中だけじゃなくて、盛り付けたカレーにちょい足ししても辛さの調節が出来るタイプなんだ」
鞠莉「小さく持ち運びもしやすくて、善子が愛用してそうね」
曜「実際そうだって言ってたよ、善子ちゃんのおすすめなんだって。後はこれを煮込んでいけば…ほら、匂いが辛そうになってきた」 鞠莉「本当だ、すごくスパイシー。さすが辛いもの好きの善子のご推薦、間違いなさそうね」
曜「だねー。でも、んー…」
鞠莉「どうかした?」
曜「いや、今回も善子ちゃんに声かけたんだけど、やんわりと断られちゃってさ」
鞠莉「そうだったの?」
曜「辛いカレーを作るんだって話したら、初めは乗り気な感じだったんだけど『やっぱり遠慮しておくわ』って」
鞠莉「辛いものと言えば、善子の得意分野なのにね」 曜「代わりにスパイスのこととか、色々とアドバイスしてくれたんだ。タイミングが悪かったのかな」
鞠莉「なにかと忙しい子なのよね。今日も新しいゲームがどうとか、夜は配信するんだーとか言ってたし」
曜「そっか…また3人でお料理したいね」
鞠莉「次も誘ってみましょう。今度は善子の都合も聞きながら、ね」
曜「うんっ!」
鞠莉「うふふっ。さて、そうこうしてる間に、カレーも良い感じになってきたんじゃない?」
曜「いよいよ大詰めだね。どれどれ、味見してみよっか。あむっ」
鞠莉「辛い?」
曜「んー、思ったほどでは…あ、あー」 鞠莉「曜、反応がぎこちないわよ」
曜「んんっ、大丈夫。辛さが遅れてやってくる感じだね、後引く辛さっていうか。なかなか美味しくできたと思うよ」
鞠莉「それじゃあ」
曜「うん!船乗りカレー、辛口バージョンの完成だよ!」
鞠莉「お疲れ様!他になにかすることはある?」
曜「ご飯もちょうど炊けたところだし、後はサラダくらいだね。すぐ用意しちゃうから、鞠莉ちゃんはリビングで待っててよ」
鞠莉「最後まで手伝うわ、私だけ休んでるわけにはいかないもの」
曜「んー。なら、テーブルを拭いて、飲み物用意しておいてくれる?」
鞠莉「了解デース!」
曜「お願いねー。…ふふっ、元気が出てきたみたい。さて、私はもう一仕事しちゃおうかな。えっと、ミキサーはたしかこの辺に――」 ……………………………………
曜「では改めまして。今日は船乗りカレー辛口バージョンと、冷たい麦茶で優勝していきたいと思います」
鞠莉「いつものカレーとは雰囲気が違うわね。色も匂いも、辛そうな感じがする」
曜「味も辛いよ、間違いなくね」
鞠莉「楽しみだわ。では、いただきまー…」
曜「あ、ちょっと待って。カレーを食べる前に、ヨーグルトを飲んでおいた方がいいよ」
鞠莉「どうして?」
曜「ヨーグルトが胃の中で膜を作って、辛味成分の刺激から守ってくれるんだ。いきなり辛いのを食べたら、お腹がびっくりしちゃうからね」
鞠莉「ふふっ、なるほどね」
曜「ん、何かおかしかった?」 鞠莉「いえ、飲むヨーグルトがあるのはどうしてかなって思ってたんだけど。そういうことだったんだなって」
曜「そりゃあね。体に合わないものを食べて調子悪くなったりしたら、元も子も無いもん」
鞠莉「曜は優しいのね」
曜「意外と刺激的かもよ、鞠莉ちゃんほどじゃないと思うけど、なんてね?」
鞠莉「まあ、言ってくれちゃって。うふふっ」
曜「えへへっ。それじゃ、ヨーグルトを飲んだところで」
ようまり「いただきまーす」 鞠莉「ではでは、さっそく――んっ!」
曜「辛さはどうかな?」
鞠莉「んー、思ったよりもだいじょう…待って、来たわ、か、辛いのが…!」
曜「わわ、麦茶飲んでっ」
鞠莉「ん、んっ――ふぅ、ありがとう。冷たい麦茶がよく合うわ」
曜「もしかして、辛くしすぎちゃった?」
鞠莉「辛さがワンテンポ遅れて来たから驚いたけど、大丈夫。これよ、まさしくこういうのが食べたかったんだわ」
曜「気に入ってもらえた?」 鞠莉「ええ。食べたらね、辛さが体を駆け巡るの。でも、ただ辛いだけじゃなくて、しっかり美味しい。さすが曜のカレーね」
曜「良かった!でもさ」
鞠莉「ん?」
曜「どうして今日は、辛いのが食べたい気分だったの?」
鞠莉「…ん。元気が欲しかったから、かな」
曜「元気…?」
鞠莉「実はね。今日はなんだか、天気だけじゃなくて、仕事も心もどんよりな感じだったから。切り替えたいって言うか、刺激が欲しい気分だったの」 曜「やっぱり、そうだったんだ」
鞠莉「…気付いてたの?」
曜「なんとなくね、そんな気がしたんだ」
鞠莉「そっか…ふふ、美味しい料理の前じゃ、嘘はつけないわね」
曜「鞠莉ちゃん、ここ最近ずっと忙しそうだったもんね」
鞠莉「仕事柄、どうしてもね。でも、このカレーの…いいえ、カレーと曜のおかげで元気が出てきた。いつもありがとうね」
曜「お礼なんて。私は鞠莉ちゃんに喜んでもらえたら、それが嬉しいんだ」
鞠莉「曜…」
曜「へへっ、今日はいっぱい食べてパワーチャージだよ!おかわりも沢山あるからね!」 ――――――――
鞠莉「ふぅ、美味しかったぁ」
曜「お腹いっぱい、体もポカポカだね」
鞠莉「絶品だったわ、辛くて美味しくて大満足。やっぱり幸せね、こういうのって」
曜「ふっふっふ。ご馳走さまにはまだ早いよ」
鞠莉「?」
曜「実はね、もう一つお楽しみが残ってるんだ」 鞠莉「お楽しみって、どんな?」
曜「それは見てのなんとやら、ってね。待ってて、すぐ準備しちゃうから!」
鞠莉「あ、食器くらい自分で片付けるから」
曜「いいのいいの、台所に行くついでだし。ゆっくりしててね!」
鞠莉「あ…もう、気を遣わなくていいのに。それにしても、お楽しみって何かしら」
ギューン…
鞠莉「あら?機械の音がする。なにかが回転してるみたいな…」 曜「お待たせー。はい、どうぞ」
鞠莉「わ、可愛い…!」
曜「いちごのスムージーだよ、凍らせたいちごを、牛乳やヨーグルトと混ぜて作ったんだ。即席だから、なんちゃってだけどね」
鞠莉「さっきの音は、これを作ってたからだったのね」
曜「よく冷えてるから、カレーで熱くなった体にちょうどいいと思うよ」
鞠莉「いただくわ。んーっ、美味しい!冷たくて、ほんのりと甘くて」
曜「カレーの後だから砂糖は控えめにしてみたんだけど、これは正解だね」
鞠莉「ええ、まるで体の中から染み込んでいくみたいで。優しい味…本当に素敵だわ」
曜(鞠莉ちゃん、いい顔してる。元気になってくれて、本当によかったよ) ……………………………………
◆善子の部屋
prrrr…prrrr…ピッ
善子「はい。大丈夫よ、ちょうど落ち着いたところだから。カレーは上手くいったかしら」
善子「そう、それは何よりね。スムージーも?ふふっ、いいアイデアね。あとヨハネ」
善子「良いのよ。お役に立てたのなら、辛いもの好きの冥利に尽きるわ。て、照れてないわよ、もうっ」
善子「泊まっていくのね。まあ、そうだと思ったけど。ええ、明日は一緒のバスね」
善子「だからヨハネよ。ええ、二人で仲良くね、朴念仁さん」
善子「なんでもないわ、こっちの話。ふふっ、おやすみなさい。いい夢を、ね」
終わり 全弾撃ち尽くしました。ホットでスパイシーなカレーようまりでした。
第2回ようまりなかよしマッチの開催おめでとうございました。残り1日頑張りましょう。
↓のお料理ようまりの続きです。
曜「お料理がしたい?」鞠莉『イエース!』
https://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1578788780/
↓は前に書いたものです。よろしければ併せてお願いします。
鞠莉「半分の優しさと」
https://fate.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1584664627/
ありがとうございました。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています