鞠莉「からさいっぱい、元気いっぱい」
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鞠莉「辛いカレーが食べたい」
曜「ん?」
鞠莉「とびっきり、から〜いカレーが食べたいの」
曜「そうなんだ」
鞠莉「ええ」
曜「…」
鞠莉「…」
曜「…作ろっか?」
鞠莉「そう言ってくれると思ったわ♪」 ――――――――
◆渡辺家、キッチン
曜「それでは本日のリクエスト、辛口カレーを作っていきたいと思いまーす」
鞠莉「よろしくおねがいしマース!で、まずはどうするの?」
曜「基本的にはいつも通りだよ。野菜を切って、お肉に下味をつけて、って感じだね。ジャガイモと人参のピーラー、お願いできる?」
鞠莉「任せて!」
曜「私はお肉を下準備しちゃうね」 鞠莉「できたわ。このままカットしちゃってもいい?」
曜「やってもらえると嬉しいけど、切り方は覚えてる?」
鞠莉「ノープロブレム、多分!」
曜「んー、力強い『多分』だったけど…ノープロブレムの方を信じる!」
鞠莉「大丈夫よ。包丁で切るときはにゃんこの手、忘れてないわ」
曜(切り方ってそっちのこと?あ、いい感じに包丁を使えてるから大丈夫そうだね)
鞠莉「終わったら、玉ねぎもやっておくわね」
曜「うん、お願い!私はお米を研いじゃうね」 鞠莉「出来たわ、見てもらえる?」
曜「はーい。おっ、大きさも均一でいい感じ!鞠莉ちゃんに任せて大正解だね」
鞠莉「曜のレクチャーがいいからよ」
曜「いやいや、鞠莉ちゃんの頑張りのおかげだって」
鞠莉「ありがと、おだて上手さん」
曜「どういたしまして、褒められ上手さん」
鞠莉「ふふっ、なにそれ」 曜「さてさて。ご飯は早炊きにセットしたし、具材の準備も出来たところで」
鞠莉「お鍋の出番ね!」
曜「と、行きたいところなんだけど」
鞠莉「違うの?」
曜「今日はレンジを使ってみようかなって」
鞠莉「レンジ?何をするの?」 曜「野菜をレンジで過熱するんだ。一から煮込んでると、火が通るまで時間がかかっちゃうからね。その手間を短縮しようってわけなんだ」
鞠莉「ふーむ、いわゆる時短テクニックってやつね」
曜「その上、レンジを使ってる間は別のこともできるしね。使った調理器具を洗ったり、次の工程を先取りしたり、これで作業効率が大幅アップ!いろんな場面で使えるから、覚えておくと便利だよ」
鞠莉「ブラボー!まさにご家庭の知恵ね!」
曜「やり方は簡単。切った野菜をそれぞれ耐熱容器に入れて、ふわりとラップをかけてっと。はい、鞠莉ちゃん」
鞠莉「イエース!電子レンジの中に、ヒドゥン・シャドウ・スネーク・ハンズ!」
曜「相変わらずハマってるみたいだね、そのフレーズ」 鞠莉「ダテにお料理動画を見てないからね。加熱は何分くらい?」
曜「んー、4分くらいかな。この後でまた煮込むしね」
鞠莉「りょーかい!」
曜「ほい、その間に洗い物終了っと」
鞠莉「いつ見ても手際がいいわね」
曜「鞠莉ちゃんが色々やってくれるからだよ。おかげで段取りがとってもスムーズなんだ、大助かり!」
鞠莉「曜…今のすごく可愛かったから、ハグしてもいい?」 曜「だーめ。今はお湯沸かしてるから」
鞠莉「むぅ、ダメって言われてもハグしちゃうわよ」
曜「わっ、危ないよ」
鞠莉「心配ご無用、これは安全配慮ハグだから」
曜「なにそれ。えへへ」
鞠莉「ふふっ」
チーン 鞠莉「幸せな時間にも終わりは来るものデース」
曜「まだまだ。見せ場はこれからだよ」
鞠莉「そうね。まずは野菜をレンジから取り出して…あつっ!」
曜「鞠莉ちゃん!?」
鞠莉「へ、平気よ。なんともないわ、蒸気の熱さにびっくりしただけで」
曜「本当?大丈夫?」
鞠莉「もちろん。心配しすぎよ」 曜「念のため冷やした方がいいよ、そうしよう?」
鞠莉「曜…」
曜「ボウルは…あった。はい、水を張ったから、手を入れて」
鞠莉「んっ…」
曜「痛くない?」
鞠莉「冷たくて気持ちいいわ。ごめんね、注意が足りなかったかも…」 曜「謝らないで、私が気付けばよかったのに…ちょっと見せて」
鞠莉「ん…」
曜「よかった。火傷はしてなさそうだね。痛みは?」
鞠莉「無いわ、強がりじゃなくて、本当に。だから一緒に料理、続けてもいい?」
曜「うん!ただし、より一層の安全配慮でね。ケガなんてしちゃったら、せっかく頑張った料理も、美味しく食べられなくなっちゃうもん」
鞠莉「ちゃんと気をつけるわ。ところで、曜」 曜「ん?」
鞠莉「えっと、いつまで手を握ってるのかなって」
曜「へっ?あ、ああっ、ごめん!なんかつい、夢中で…!」
鞠莉「ふふっ、やっぱり曜って可愛い」
曜「よ、よしてよ。そんなんじゃないし」
鞠莉「ね、ハグしていい?」
曜「しない、しませんっ、今は料理の時間です!」
鞠莉「真っ赤になっちゃって。食べる前からご馳走さま、ってね♪」
曜「うーっ…ほ、ほら、料理再開だよ!美味しいカレーのために頑張るよ!」
鞠莉「はーいはいっ」 曜「えっと、どこまでいったっけ…そうだ、野菜に火を通したんだったね。ここからはお鍋の出番だよ」
鞠莉「油を入れて、馴染んだら中に野菜を入れるのよね」
曜「うん。まずは玉ねぎから、油ハネに注意してね」
鞠莉「具材を入れるのには、決まった順番があるの?」
曜「人にもよるけど、私は玉ねぎから入れるんだ。その後にじゃがいも、人参、お肉って順かな」
鞠莉「オーケー。それじゃ、こほん――ヒドゥン・シャドウ・スネーク・ハンズ!んー、このジューって音、お料理してるって実感が湧いてくる」
曜「確かに。匂いや見た目もだけど、音って大事だよね。あ、とか言ってる間に、いい感じに油が回ったみたいだよ」 鞠莉「いつもより玉ねぎがくたっとするのが早い気がする。これがレンジ効果なのね」
曜「そういうこと。続いて他の野菜も順番に――」
鞠莉「ヒドゥン・シャドウ・スネーク・ハーンズ!」
曜「いいね!全体に油が回ったところで、最後にこちらのお肉の方を、どうぞっ!」
鞠莉「はい、お鍋にぽいっと」
曜「えっ?ねえ、なんで潜影蛇手しなかったの?」
鞠莉「えっと、なんか連発するのも違うかなって」
曜「だああ、いきなりブレーキかけるからびっくりしたよ。突然飽きが来たのかと」 鞠莉「何事も大切なのはノリとテンポよ」
曜「うーん、まあ、リズム感が必要っていうのはわからなくもないけど」
鞠莉「それで、次はお鍋に水を入れるのよね」
曜「あ、うん。ヤカンにお湯湧いてるから、それを使って」
鞠莉「これも時間短縮テクニック?」
曜「そうだね。後は煮込んで、アクを取り除いていくよ」 鞠莉「私にやらせて。よっ、と」
曜「おー、アク取りも上達したね」
鞠莉「アク取りだけに、マリーの中のギルティも取り除かれないかしら。アク取りだけに」
曜「ノリノリだね。アクが取れたら、具材の火の通りを確認するよ。お箸を入れてみて、スッと通ればおっけーだね」
鞠莉「ん、大丈夫そう!」
曜「そしたら、いよいよルーを入れるよ。一旦火を止めて」 鞠莉「火を止めて、と」
曜「そこに小さく割ったルーをぽいっと入れて、溶かしていくんだ。溶け残りがないようにしっかりね」
鞠莉「お味噌をとくみたいに、おたまと菜箸でやったほうがいい?」
曜「ああ、その方が確実だね」
鞠莉「なら、やってみるわ」
曜「ふーむ」
鞠莉「どうかした?」 曜「鞠莉ちゃん、仕事が丁寧だよね」
鞠莉「そう?」
曜「鞠莉ちゃんの料理方法って、自己流っていうか独特っていうか…まあ率直に言えばシャイ煮のときは予測不可能感がすごいけど、教わったことには忠実っていうか」
鞠莉「ゆくゆくはアレンジしてみたいけど、まずは基礎を身につけないことには始まらないわ。そこをないがしろにしたら、レクチャーしてくれた曜にも失礼だし…ねえ、どうして笑ってるの?」
曜「そういうところ、鞠莉ちゃんだなって」
鞠莉「どういう意味?」
曜「そのままの意味だよ。嬉しいんだ、すごく」
鞠莉「そう?ならいいけど。はい、ルーが溶けたわ。この時点で見た目は完璧ね、美味しそう!」 曜「いつもなら微調整して終了だけど、今日は辛いのをリクエストだから、もう少し手を加えていくよ」
鞠莉「辛さを出すために、具体的にはどうするの?」
曜「カレースパイスを入れていくんだ。スパイスにはガラムマサラとかレッドペッパーとか、色々と種類があるけれど、今日は市販のブレンドされてるやつを使うよ」
鞠莉「へえ、そんな便利なものがあるんだ」
曜「これは調理中だけじゃなくて、盛り付けたカレーにちょい足ししても辛さの調節が出来るタイプなんだ」
鞠莉「小さく持ち運びもしやすくて、善子が愛用してそうね」
曜「実際そうだって言ってたよ、善子ちゃんのおすすめなんだって。後はこれを煮込んでいけば…ほら、匂いが辛そうになってきた」 鞠莉「本当だ、すごくスパイシー。さすが辛いもの好きの善子のご推薦、間違いなさそうね」
曜「だねー。でも、んー…」
鞠莉「どうかした?」
曜「いや、今回も善子ちゃんに声かけたんだけど、やんわりと断られちゃってさ」
鞠莉「そうだったの?」
曜「辛いカレーを作るんだって話したら、初めは乗り気な感じだったんだけど『やっぱり遠慮しておくわ』って」
鞠莉「辛いものと言えば、善子の得意分野なのにね」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています