千歌「モンスターハンター!」
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海に面したその村は、一夜にして炎に包まれた
原因はただ一つ、一匹の火竜だった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
「吠えた……炎が来るぞ!!」
「下がれ!全員火竜から距離を取るんだ!!」
「おい!ハンター以外と子供は白き竜の祠のある島まで避難させろ!!」
人里に迷い込んだ竜は、その場を破壊し、灰塵と化す“災害”となった
「お父さん、お母さん……どこ……?」
呻くように呟く少女の周りでは業火が立ち上っていた。
海風で湿った木造の建物は白い煙を上げて燃え盛り、戦火は逃げ遅れた齢そこそこの少女を容赦なく包み込む。
「ぜんぶ、ぜんぶ…燃えちゃった」
「うぅ、みんな……どこへ行ったの…?」
「おねえちゃん……」 >>98
triG
3DS一番最初のやつで水中戦が特徴的
チャチャとカヤンバがお供になる 千歌「鞠莉ちゃんの武器、部屋に置いてあった銃じゃないんだね」
鞠莉「ええ、あれはもうインテリアみたいなものだからね。こっちのはちょっとしたものよ〜!」
果南「あれっ、というか私は?」
ダイヤ「あなたは別の仕事がありますから、そこに行って貰います」
果南「……ふーん、まあいいけど」
ダイヤ「私と梨子さんで、しばらくの間ルドロスの素材集めも兼ねて狩りをしてきました、おそらく逃げ出した数匹の伝令が伝わって、ボスが出る頃合いかと」
鞠莉「後は狩るだけって訳ね!早速行きましょう!!」 【島から南西に進んだ地 海辺】
ダイヤ「居ましたわね……」
善子「ルドロスの五倍……下手したら十倍のサイズね」
「クキュルル………」
千歌「……怒ってる?」
鞠莉「群れが荒らされて、気が立ってるみたいね……みんな、気を付けて」
梨子「ロアルドロスの中でも、あれはかなり大きいわね……相当大きい群れの主かも」
ダイヤ「みなさん、行きますわよ!」 水獣・ロアルドロス。大型化したルドロスの雄個体であり、何十匹にも及ぶ群れの長である
その特徴として目に入って来るのは、ルドロスと比べてあまりにも巨大な躰と、頭から後ろ足まで続いている黄色の鬣(たてがみ)。
実はこの鬣は既に死んだ細胞で出来ており、枯れた細胞膜のみとなった繊維状の構造が水を吸い取り、ロアルドロスの長時間の陸上での行動を可能としている。
ダイヤ「それぞれ、所定の位置に!」
ダイヤの号令と共に、ロアルドロスの前へと進み各々の配置に着く。
一番前に千歌、一歩後ろに下がってダイヤ、その後ろに梨子、善子、鞠莉。一見するとアンバランスな配置だがこれにはダイヤの考えが有った。 千歌「せやっ!!!!」
小刀で一撃。弱点である鬣を切り落とす様に攻撃する。
頭の横にある鬣は狙いやすく、攻撃した後引きさがりやすい。
また、鬣を切り落とすことはロアルドロスの陸上での行動力を鈍らせることに繋がる。総じて、ヒットアンドアウェイを行うには都合の良い部位だった
もちろん、身を刻まれて、モンスターは黙ってはいない。生物としての本能である痛みが、闘争心という名の炎に薪を焼る!
「キキャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
辺り一帯に鋭く、甲高い音でロアルドロスは吠えた。
体を横向きにし、細長い体を転がすように攻撃を繰り出す。自らの重量を活かした、ボディプレスのような重い一撃だ
圧倒的質量、圧倒的迫力!!辺りを呑み込むような蹂躙が千歌を押し潰さんと襲い掛かる!!!
千歌「ひっ…!」 ダイヤ「させませんわ!!!!」
ガキン!
その突進を見て、ダイヤは前に出た。
自分の背丈の何倍もある巨体を、金属の盾一枚を地面に突き刺し、攻撃を防ぎきって見せる。タックルの勢いが、ロアルドロスの質量が、そのまま襲い掛かって来る。
金属の盾が、革の手袋越しでも食い込んでくる。指が軋み、体を刺すような痛みが全身を貫く
それでも、この手を離すわけにはいかない
ダイヤ「うぐっ……千歌さん、手筈通り下がって次の準備を」
千歌「了解!、ダイヤさん!」 ここで、水辺に不穏な空気が漂う
ロアルドロスは水生生物であり、陸上で音を出すことに長けてはいない。なので、咆哮自体にそれほどの音圧は無く、人間にそれほど影響は無い……が
「……………」
「……………」
梨子「やっぱり、花丸ちゃんが言った通りまだ潜んでいたわね、ルドロスが。さっきの咆哮で招集かけられたみたい」
鞠莉「おーし、二人共、行くわよ!」
善子「言われなくても!千歌、ダイヤ、下がってなさい!」 一瞬の隙を突いて前衛から、千歌とダイヤが退く
善子「せいやぁぁッ!!!!」
こと掃討に置いて、善子の持つアルデバランは最強の威力を誇る。
放つ散弾が、ルドロスの皮に傷を付け、肉を切り裂き、動きを鈍らせる!
善子「ふふっ……我が魔銃の前にしては、いかなる魔物も塵芥の様に消し飛ぶ他無いわ!!」
そして止まった的と化したルドロスを、梨子がひとつひとつ、潰す様に的確に仕留めていく
梨子の得物、ファーレンンフリードは矢を定点に当てることに特化した武器だ。引き絞り、放たれた矢がルドロスの腹を、頭を、胴を、一体一体的確に捉え、射抜いていく!!
梨子「喋ってないで弾撃ちなさい!そんなに余裕ないでしょう!」
善子「わ、わかってるわよ!!」 鞠莉「おー、二人共調子いいわね!じゃあマリーも行くわよ〜」
鞠莉の持つ武器は「神ヶ島」と呼ばれる軽弩だ。
外見は原始的な銃の構造をしていて、かつての火縄銃の様な外見をしている
これは、火山から出土した錆びた塊を安値で買い取り、曜に小遣いを渡して磨き上げさせた物だ。それ故、この村に在る武器の中で、最も安価な物となっている
だが、この安価な銃が、実は高い性能を秘めている。
その最大の特徴は、ある弾を撃てること
鞠莉「悪いけど……消し飛びなさい!!!」
鞠莉によって宙へと放たれた弾丸は勢いを失い、地面へと落下する……が
その刹那、辺りを焼き尽くす様な爆発が着地点から吹きあがる!!!!! 拡散弾
弾丸の雛形に、火薬を限界まで詰めて作られた、小型爆弾の様な弾だ。威力は絶大、だがそのとり回しの悪さに、使いこなせるハンターは数多くは居ない。
その放たれた弾丸が数多ものパーツに分解され、その全てが破片という名の刃となって辺り一面に襲い掛かる!!!!
「ギィィィィィィィ!!!!!!」
「ギャッ!!」
放つ!放つ!放つ!
鞠莉「ファイヤー!!!」
ブランクを感じさせない、流れる様な動きで鞠莉は弾を込め、すぐさま放つ。
肉を裂き、地面を焼く。圧倒的威力だった。
ルドロスは、水辺にすむ生物故、熱に強くない。よってこの攻撃は致命傷となる
破片により切り裂かれて生き残った僅かな個体も、その全てを焼き尽くす熱量に怯え、逃げ帰って行った 拡散弾は、言うなれば小型の手榴弾の様な物で現代技術で作成されるボウガンでは扱えるものは少ない。
しかし、半ばオーパーツのような鞠莉の銃でなら使うことが可能だった
神ヶ島。
圧倒的火力と広範囲の掃討力を持った、まさに古代兵器の様な代物だった
「コキュ……ルルルル………」
鞠莉「うーん、クリティカルヒットって感じね!間違いなく!」
梨子「ええ、爆破の中心のロアルドロスにはかなり効いてるみたいですし」
善子「群れも概ね散ったし………うん、楽勝ね!」
ダイヤ「油断しない事!手負いの獣こそ何をするか分からない、一番恐ろしいですわ」
千歌「……うん、気を引き締めて行こう」
ダイヤ「各自、次の配置へ!!これより、止めを差しに行きますわ!!!」
「「「「了解!!!」」」」 これいーぞこれ!
普通のゲームやラノベとはまた違った感じの戦闘で描写も上手いしいーぞーこれ!!楽しみ ──────────────────────
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【島の対岸付近の森】
ルビィ「うんしょ、うんしょ……曜ちゃん、カラの実はこれくらいかな?」
曜「そうだねえ……これでも十分だと思うけど、鞠莉ちゃんも使うとなると予備用としてもう少し必要かな」
花丸「ふう、いくらでもあるといえ何百個と集めるのは疲れるずら……ルビィちゃん、ずっと休憩無しですごいずら」
ルビィ「ふふっ……ルビィはお姉ちゃん達みたいに戦えないし、こういうことしか力になれないから」
果南「そんなことないんじゃない?ルビィが作るモンスター皮で作ってくれるポーチやらブローチやら、ウチの結構な稼ぎ頭だよ」
ルビィ「それは…果南ちゃん達がモンスターを狩って来てくれるからだよ」
果南「じゃあ、私達もルビィは立派に加工してくれるから初めてお金に出来る、からってことで」
ルビィ「もう……ふふっ」
果南「もちろん、花丸も助かってるよ?私だけじゃ中型モンスターは解体できないし」
花丸「むー……なんだかついでに褒められた感じずら」 曜「そういえば、なんで果南ちゃんこっちの採取組なの?珍しいね」
果南「あー……一応護衛って事らしいよ」
ルビィ「護衛?」
果南「いつもはこの三人で行って、なんかあったら元ハンターの曜が守るって感じじゃん?でも、ダイヤが言うには、もうそうもいかないらしいんだよね」
花丸「…………火竜が、何時出てもおかしくないって事?」
果南「そうそう、この前千歌と善子が襲われたみたいに、何時どこで火竜が襲ってくるか分からない」
ルビィ「…………」
果南「ま、来たら私が何とかするけどね!その為に私居る訳だし」 ルビィ「果南ちゃんは、リオレウスと戦ったことあるんだよね……つい最近」
曜「火竜ってそんな強いの?」
果南「強い強い、『空の王者』は伊達じゃないよ。正直、この前軽症で済んだのは、奇跡って位」
ルビィ「でも……そんな相手、やっぱり危ないよ」
花丸「……ルビィちゃん?」
ルビィ「やっぱり…戦わずに、火竜が居る間だけ食料を貯めて、島に籠るのって出来ないのかな」 果南以外の三人はハンターではない。自分で、戦う術を持ち合わせない。そのことが恐怖をより加速させる。
自分が知ってる中で、一番強い果南ですら、勝つどころか逃げるのが精一杯の怪物。そんな怪物が目の前の森に居るかもしれない。
自らが手出しできない物への脅威への恐怖はひとしおだ。
ルビィ「……戦ってないルビィが言うのは無責任かもしれないけど……やっぱりみんなが心配だよ」
曜「ルビィちゃん……」
花丸「…………」
四人の間に重い沈黙が流れる。沈み込んだ気持ちは、簡単には浮かび上がってこない。黒く、煤で淀んだ空気に全身纏わりつかれている様だ そんな空気を割ったのは果南だった
果南「ちょっと、違う話しよっか……三人は、古龍って知ってる?」
ルビィ「こりゅう……?」
花丸「通常のモンスターの規格を逸脱した能力を持つモンスターで、ずっとずっと昔から生きていて『天災』とも呼ばれる程の力を持っているずら」
果南「そう、それこそ並大抵の人数じゃ手出しできないほどの力を持った、ね。存在するだけで、辺りに被害を及ぼすクラスの化け物、それが古龍……」
花丸「モンスター図鑑にも、最後に少しだけ載ってるだけずら」
曜「そんな強いのに、少しだけなの?」
花丸「古龍が……人間が戦う物じゃないからずら」 花丸「歩くだけで火山が噴火する、泳ぐだけで渦潮が起こる……普通に、生物として生きているだけで辺りに破滅を齎す『天災』ずら」
果南「島の頂上にある『白き竜の祠』……これは知ってるでしょ?と、いうかルビィなんかはよく登ってるわけだし。実はあれも古龍を祀った物らしいよ」
曜「私もこの前登ったよー!」
果南「あ、やっぱりあの時曜も一緒に行ってたんだ」
花丸「頂上までの道程……思い出しただけで足が震えるずら……」
ルビィ「あはは……」
果南「で、それなんだけど……私見たことあるんだよね、その白き竜ってやつ」
ルビィ「え!?ほ、ほんとなの!」
花丸「でも、それって……」
果南「うん、今まで誰にも言ってないんだけどね」 果南「かなり昔……まだ善子がハンター本格的にはやってない頃かな?あの頃は、ちょうどダイヤと鞠莉が村のことにかかりっきりの頃で、私が八人分の獲物を集めなくちゃいけなかったんだけど……」
花丸「今聞くと果南ちゃん大変ずら……」
果南「あはは、まあ大人の手が無かったからね。で、その頃島の近くでもの凄い勢いの嵐が続いてね、家が吹き飛ぶどころか……島の土砂が全部落ちて来るんじゃないかって位の土砂降りだったんだ」
果南「当然そんな様子だから狩りも出来ない、でも当時は貯えなんて無いからお腹がすいて……泣いちゃったりした子もいたかな」
果南「そんな様子だけど、鞠莉やダイヤは『果南が怪我したらこの島で食料を取れる人がいなくなる』って言って狩りをさせてくれなくてね……きっと、ダイヤ達が正しい判断なんだろうけど」
曜「果南ちゃん……」
果南「でも泣いてるみんな見たら……なんか我慢できなくて、北の方にある山へ、夜中こっそり抜け出して狩りに出かけたんだ」
果南「そこで見たんだ……『白き竜』をね」 ──────────────────────
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果南「(何この風!?肌が切れる!!痛い!)」
果南「(ここまで体力使って収穫ゼロは流石に……しんどいかも…。ダイヤの言う通り大人しくしておけばよかったかなあ……)」
果南「ん……山頂に、何か……いる?」
「…………………………………………」 果南「(デカい……なのに、なにもせずに浮いてるし、この嵐も物ともしていない……」」
果南「いや、そうじゃない……風を物ともしていないんじゃなくて……もしかして……」
果南「(“あの龍から嵐が出ている!?”」」
「……………………………ォォ」
果南「…………ヤバ、見つかった……かも」 曜「それで、その後どうなったの!?」
果南「まあその後結局、心臓バクバクで走って逃げきれたんだけど……今思うとアレ、古龍の類だなーって思ってね」
花丸「確かに、嵐を起こせるなんて……古龍レベルずら……」
果南「と、まあ、話は長くなったど……要するに言いたいことは」 果南が、ルビィの頭をくしゃりと撫でる。
横結びで整えられた髪が、少し乱暴な果南の手の動きでかき乱される
ルビィ「わわっ……果南ちゃん、くすぐったいよ」
果南「確かにリオレウスは強い、でも古龍ほどでは無い。神様みたいにどうしようもないヤツらと違って違ってしっかり力を合わせればきっと勝てる……!」
果南「だから、お姉さん達に任せておきなさいな」
ルビィ「果南ちゃん……」
曜「おっ、流石果南お姉ちゃん、頼もしいでありますな!」
果南「まったく、からかうんじゃないよ、曜」 花丸「待って!……みんな、そこに何か……」
ガサガサ……ガサガサ……
うず高く繁茂する草木を揺らす音が、次第に大きく、近くなって来る。
無秩序に茂り、張り巡らされた枝を折り、走り抜ける音が辺りに通る。大地を踏み荒らす粗暴な主が近づいてくる気配が、どんどん色濃くなっていく
そして、音の主は姿を現した
「キイィ……キイィ……!!」
花丸「あれは…ドスランポスずら!」 果南「それぞれ、目線を反らさずに右後ろに下がって離れて!私が左に引き付ける!曜は二人を守って!」
曜「了解であります!」
ルビィ「果南ちゃん……!」
不安そうな目で果南の背を見つめるルビィ。
しかし、それに素っ気なく果南は振り返って答える。
果南「言ったでしょ?お姉さんに任せておけって、それにこれくらいの相手に負けたりはしないって」
ルビィ「果南ちゃん…気を付けてね」
果南「もちろん、傷一つなく帰って来るよ」
花丸「ルビィちゃん、行くずらよ!!」
ルビィ「……うん」 果南「さて……と」
果南は、脇に立てかけておいた自らの得物に手をかける
『角王剣・アーティラート』黒と白。捻じ曲がる二種の角竜の角を織り交ぜた、長大な大剣。
重量、威力、リーチ。村においてどころか、都まで出向いたとしてもこれほどの一品には出会えないほどの名品だ。
高価な素材である角竜の角を、曜が丹念に削り、剣の域まで創り上げたまたとない一刀だった。
「キィ……!クルル……」
果南「キミ、食べるとこ少ないんだよねえ……たぶん帰れば群れの家族も居るみたいだし、いつもなら適当に流して見逃すんだけど……」 身の丈以上の長さの有る長剣を、果南は両の手だけで悠々と支える。
村で最も出来の良い剣を任されている果南は、最も強い。
天性の運動センス、戦闘における判断力、勘。全てにおいて高い水準で身に付いていた。
果南「でも、さ」
ドスランポスの周りには、普段なら居るはず子分はおらず、果南と彼の間には、森の喧騒と潮風だけが流れていた。
果南は上段に構え、足を一歩前に進めた。足で強く大地を踏みしめ、肩を支点に全体重を使って剣を支える。
これこそが、アーティラートの力を最大限に引き出す構えであり、果南が最も得意とするスタイルだ。
この剣の間合いに入った時点で叩き潰すという、意思の表れ。
守りを捨て、攻撃にのみ特化した一撃必殺の捨て身の構え!
果南「ウチのかわいいかわいい末っ子たちが怯えてるんだ。悪いけど、その命頂くよ」 ラスボス多分アマツマだよね…
そこまで書くのかな?期待 ワールドしかやった事ないけど楽しんで読んでる、軽い解説でイメージしやすい
モンハンの世界への敬虔な畏れというか、等身大の人間との対比が伝わる!
完走してくれー 千歌「はぁっ!!!!せやっ!!」
「ギァッ…!!」
ロアルドロスの取り巻きを掃討した後、千歌は再びモンスターへと肉薄した。
攻撃が当たる距離まで近づき、攻撃が当たれば即座に離脱する。深くまで踏み込んでしまった場合は焦らず、簡易的な盾でその場を凌ぎ、落ち着いてその場を切り抜ける。
剣士としての基本的戦法。繰り返されるヒット&アウェイ戦法により、ロアルドロスの鬣はその中に湛えていた水の大半を失った。
群れの長としての格を示す立派な姿は、今や見る影もない。頭部を覆う鬣の体積は元の十分の一以下になり、本来の機能を殆ど果たすことが出来ていない。 ダイヤ「この状態のロアルドロスは水弾が撃てないはずです、ガンナーの三人は容赦なくやって下さい!」
鞠莉「オッケー!じゃんじゃん撃つわよー!」
善子「的が大きいと助かるわね〜。こうも連射するとなると疲れるけど……」
ダイヤの指令により、後衛による一斉射撃が行われた
今のロアルドロスは遠距離攻撃が出来ない、こうなれば鞠莉達にとってはただの的に過ぎない。
目標は生物共通の弱点である、頭。強く引き絞られた弓が、高速で射出された弾丸が、疲労を滲ませるロアルドロスへと容赦なく襲い掛かる!
梨子「こんなの、地獄の千回空撃ちに比べたらなんてことないわよ……せやぁっ!」
「ギァォァァァァ……!!!」
強く引き絞り、思い切り、放つ。風牙竜の腕棘で作られた梨子の弓、ファーレンフリードにより放たれた矢はその一矢一矢が重く、鋭い。
三人は文字通り、ロアルドロスに向け蜂の巣になる程の弾丸の雨を途切れることなく浴びせ続ける! ─────だが、ロアルドロスもただ無防備で的になる筈も無かった
「キャアァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
ダイヤ「……! 来ますわよ!」
ロアルドロスは最後の力を振り絞り、後衛に向け猛攻を仕掛ける!
慣性により自らの体を転がし、そのまま突進を放つ。自らの長大な体を活かした、リーチ、威力共に絶大な技。
海岸沿いに生える低木をなぎ倒し、辺り一面を蹂躙する。その迫力は、水辺の生態系の上位に位置する者の意地だった。
周囲の地面を抉り取る様な破壊力を纏い、三人へ向かって襲い掛かる!!! しかし、それもダイヤの読みの範囲内だった。
鞠莉達とロアルドロスを結ぶ直線状、その中間地点には初めに一度戦線を離脱した千歌が仕掛けた罠が仕込まれていた
そして突進中のロアルドロスは、皮肉にもその威力を支える重量により、地面に埋め込まれた“あるもの”を深く、押してしまう!
「キュァァ……ァ…!!!」
電撃が走ったかの様な鈍痛が、体を絡め取るようにして、拘束する。千歌により仕込まれた罠はロアルドロスの体中の筋肉を、一時的とは言え完全に機能停止にまで追い込んだ!
千歌「へへん!チカの罠にかかったね!全員総攻撃!!」 鞠莉「チャンスよ!撃って撃って撃ちまくるわよ!」
善子「言われなくても!」
梨子「ここで仕留め切りましょう!!」
シビレ罠
使い捨ての工具の中に生きたままの雷光虫を詰め、それにより増幅した高電圧の電撃でモンスターを拘束する対大型モンスター用拘束罠だ
動力源が虫とはいえ、その威力は巨大なモンスターでさえ全く抵抗出来ないほどの威力を誇る
ダイヤ「せやッァァァ!!!!」
ガンナーの邪魔にならない横からダイヤはランスにより胴体を狙う
ダイヤの得物は、爆鱗槍バゼルミニアド。金属の槍に爆鱗竜バゼルギウスの力を込めた、長槍だ
そのリーチ抜群な一撃が拘束を受けたロアルドロスの無防備な足へ、腹へと容赦なく突き刺さる
その一撃、一撃に埋め込まれた爆鱗竜の爆裂の力が上乗せされ、多大なる破壊力となる! 千歌「これで、トドメだぁ!!!」
同じく胴体に向けて、千歌は突進した
金属刀による再び、胴への一撃。盾を投げ捨て、両の手で握った剣を深くロアルドロスの体へと突き立てる
無防備な相手に対してのみ可能な、限界まで肉薄しての体重を乗せた深く、鋭い刺突!!
「キァァァァァ!!!!!!!」
拘束からの前面からの集中砲火、側面から腹への斬撃に成す術も無く、ロアルドロスはその身を地面へと横たえた。 鞠莉「うん、パーフェクトゲームって感じ、完全勝利ね!」
ダイヤ「ええ、今回は予定通り連携が取れていました。皆さん、お疲れ様です」
梨子「はぁっはぁっ……撃ちっぱなしで、流石に……疲れたかも」
千歌「早く帰ろう!私、お腹空いちゃった」
鞠莉「まだよ、流石にこのサイズの得物はそのまま持って帰れないから……ここで解体しないと」
善子「えー今から?」
鞠莉「そんなこと言ったって、ここに一端置いておくわけにはいかないし…今やらないと」
善子「はぁ……わかったわ」
ダイヤ「では、まず尾と胴と頭に分けましょう。梨子さんは体力的に厳しいのでしたら……運搬用の船を島から持って来るのと、もう帰って来ていたら、花丸さんを呼んできて貰えますか?」
梨子「分かりました、ちょっと行ってきます」
ダイヤ「ゆっくりでいいですよ、どうせ解体には時間がかかりますし」 鞠莉「ねえねえ、ちかっち」
千歌「なあに? 鞠莉ちゃん」
鞠莉「今日のあなた、とてもいい動きだったわ。この調子で……みんなを導いて欲しい」
千歌「導くなんてそんな…でも、ありがと」
鞠莉「……さ、解体早く終わらせちゃいましょう。私、久しぶりに狩りに出たからお腹空いちゃった!」
千歌「うん、そうだね! 」
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── 【島の対岸付近の森】
「……」
果南「ふう……」
胴体と首が真っ二つに切り離された獲物の横で、一仕事終えた果南はその場に腰を下す。
鳥竜から流れ落ちる血液は、既に潮風で乾き、固められていた。
果南「さてと、花丸達呼んで来ないと……と、言ってもそんな経ってないから遠くには行ってないだろうけど」
果南「(にしても……妙だね)」 ランポスやジャギィらの鳥竜種は本能として群れを作るものだ。それを、群れからはぐれたランポスならまだしも、よりにもよってその群れの長であるドスランポスが一匹で襲ってくる事は、本来あり得ない事だ。
果南「(このドスランポス、ずいぶんと興奮してた……私らサイズの侵入者を見つけて追い払おうとするにしては……少し過剰すぎる)」
果南「(よっぽどエサが無いのか、何かに追われて来たのか…)」
果南「(それとも、その両方か……」」
果南「なんにせよ、もうあんまり時間無いのかもなあ……」 【後日】
善子「どうしたのよ、また急に全員集めて」
鞠莉「今日集まって貰ったのは、また皆に話があるからなの」
梨子「話って……まさか、火竜の……?」
鞠莉「ええ、単刀直入に言うわ。私達はこれから『火竜』狩りを遂に実行するわ」
千歌「……!」 曜「待って!千歌ちゃんの剣もついさっき完成したばっかで、まだ馴染んでるとは言えないし……それに……」
鞠莉「今すぐにという訳じゃないわ。でも、いつになるかは分からない。……勿論、曜の言いたいことは分かる。私達の準備は不十分と言わざるを得ない。突貫に突貫を重ねた準備をを積み上げているだけ……」
曜「なら!もう少し待って、万全な状態で行かないと!」
鞠莉「でもね、そうも言ってられなくなったのよ」
果南「この前、花丸とルビィと曜と四人でいたとき、ドスランポスが襲って来たでしょ?」
花丸「……みんなで、カラの実を拾っていたときだね」 果南「あのドスランポスが単独で行動していた事、かなり興奮していたこと。それらを考慮すると……きっと、リオレウスに追われて来たんじゃないかって思うんだ」
果南「どちらにせよ、あんなことが度々あるなら、正真正銘私達は島に缶詰めになる。それに、ここまで来ると火竜が下手したら島まで飛んでくる可能性だって無い訳じゃない」
ダイヤ「リスクと可能性を天秤にかけて、今回の決断をしました。現段階の戦力を固めて、ぶつければ、おそらくリオレウスも倒すことが出来ると……私は考えています」
鞠莉「パーティは果南、ダイヤ、梨子、善子、ちかっち、そして私。村のハンター全員、総力戦よ」
鞠莉「出立は『火竜』を発見次第、メンバーを集めて戦闘行動へと移るから作戦開始はいつになるか分からないわ。今回もアイテムを使うけど……それはまた、出立する時説明するわ」
鞠莉「……以上、各自、来たる時までに気持ちと武器の準備をしておくように」 久々にモンハンしたくなったじゃねーか
3DSのXX引っ張ってくるか… 【島 裏側】
千歌「はぁっ!!!!せやっ!!」
花丸「あ、千歌ちゃん」
千歌「花丸ちゃん? どうして島のこっち側へ?」
花丸「ちょっと調べたい事があってね……千歌ちゃんは剣の練習?」
千歌「うん、新しい剣も貰って、早く体に馴染ませないといけないからね!」
花丸「でも、どうして島の裏側に?今の時間なら鞠莉ちゃんもダイヤさんも見てくれると思うけど……」
千歌「鞠莉ちゃんも、ダイヤさんも……リオレウス討伐の計画に忙しそうだし、それに……」
花丸「それに?」
千歌「頑張ってるの、見られるのって……恥ずかしくない?」
花丸「……ふふっ」
千歌「あー!今笑った!!!」 花丸「でも、しっかり頑張る千歌ちゃんは偉いと思うずら」
千歌「ありがとう、でもね……これはきっと、普通の事なんだよ」
花丸「普通……ずら?」
千歌「私達がまだ戦えない頃、果南ちゃんが獲物も狩ってくれてくれて、私達が食べさせてくれた」
千歌「果南ちゃんだけじゃない。鞠莉ちゃんが外の村や商人さんとの交渉、ダイヤさんが村全体の指揮をしてくれてた、全然生きていけないような私達を、歳があんまり違わないのに必死に生かしてくれた」
千歌「鞠莉ちゃんにそのことを言ったらさ、『普通』なんだって言われちゃった。それぞれが出来る事をしてみんなで生きていくのが、村なんだって」
千歌「だからさ、私もまだまだ果南ちゃんや善子ちゃんには遠く及ばないけど……出来る事をして必死に足掻くのが、生きるって事なのかなって思ったんだ」
花丸「千歌ちゃん……」 千歌「もちろん、花丸ちゃんのモンスターの知識にもすごい助けられてる!それが無かったら、私達そもそもどこに住んでるか分からないから、モンスター見つけられないし!」
花丸「ふふっ……オラの知識は曜ちゃんと同じで趣味の延長線上だよ。でもみんなの助けになってるなら、嬉しいずら」
花丸「オラは外で狩りをしたりしないから、ハンターやってくれるみんなに悪いなって……きっと心の奥底で思ってたんだと思う……おらの知らない間、みんなが怪我したりしたら、どんなに怖いだろうと、思ったりもした」
千歌「……」
花丸「でも、千歌ちゃんの話を聞いてちょっとだけ元気出たずら。おらも、おらに出来る精一杯の方法でみんなをサポートするずら!」
千歌「そっか、なら良かった!」
千歌「そういえば、花丸ちゃんの調べものって何なの?」
花丸「あ、そうずら、大きいカラ骨なんか流れ着いてなかったずら?」
千歌「カラ骨かあ……見た限りだと海には木の葉くらいしか浮いてなかったけど……」
花丸「そっかあ……じゃあ、また商人さんが来てくれてたら聞いてみるずら」 花丸「ロアルドスクロウ、だっけ?剣、ピカピカずらね」
千歌「もちろん、曜ちゃんが仕立ててくれた新品だもん」
花丸「曜ちゃんだけじゃないずら、おらもサイズに合う様に皮や水袋をカットしたずら、体の内側の大水袋を取り出すの大変だったんだよ?」
千歌「あー……そっか、ごめんね、花丸ちゃん」
花丸「ふふっ……いいよ、マルは出来る事をやっただけずら」
花丸「だから……マル達の分も、とは言わないけど、ピカピカに仕上げたその剣で立派に仕事を果して欲しいずら」
千歌「花丸ちゃん……うん、チカ頑張ってくるね!」 【島の対岸】
鞠莉「通常弾とトラップツール、後素材玉をあるだけ下さいな」
善子「あ、あと……確か砥石も在庫が怪しかった気がするわ、千歌の武器は急ごしらえだから切れ味が落ちやすいって曜も言ってたし」
行商人「そんなに派手な買い物をするってことは、ついに狩りに出るのかい?」
鞠莉「ええ、ここ一帯の安全はもう無いに等しい、そう考えたので討伐に踏み切ることにしました」
行商人「そうかい……なんだか、勇ましく思う気持ち半分、心配なのが半分だよ……」 鞠莉「今もここまで来るのは危険な事は重々承知のはず……それなのに来てくださって、ほんとうに感謝してます」
行商人「なに、あんたたちの事は勝手に孫の様に思っておったからのお……」
鞠莉「ふふっ、そうですか……嬉しいです」
行商人「今まで話した事は無かったけど……わたしの息子もハンターでね、ギルドお抱えで親としても鼻高々でねえ……」
善子「ギルドのハンターって……それ、超エリートじゃ!?」
行商人「若いうちから家を出て都で働いていたんだけどねえ……今日に実家に帰って来て『命があるかわからない任務に行く』って残して……それっきりじゃ」
行商人「砂を泳ぐ巨竜だったか、なんだったか……とにかく、それっきり息子は帰らぬ人になった」 行商人「おっと、これから狩りに行くって人に年寄りの辛気臭い話をしてすまないねえ」
鞠莉「いえ…そんなことないです」
善子「……お婆さん!」
善子「私達は死なないから!絶対火竜を倒して、また安心して来てもらえるようにするから!」
鞠莉「善子の言う通りです、そもそも、また来てもらって火竜の素材を買い取って貰えないと買ったとしてもウチの村の財政は火の車デース!」
行商人「あらあら……ふふっ、これはまた来ないとねえ……」 行商人「そうだ、年寄りのつまらない話につきあわせたお詫びにこれをあげようかねえ」
善子「これは……実?」
行商人「龍殺しの実。使いどころが限られるし、物騒な名前だから安値の物なんだけど……今のお前さん達には縁起物になるじゃろ」
鞠莉「ふふっ……そうですね、ありがとうございます」
行商人「さて……この実は九つあげるからお守り代わりにするといい、なんでもある街では茶にするなんても聞いたことあるねえ」
善子「えっ……これをお茶に?」
行商人「ええ、作り方は忘れてしまったがなあ……まあ、またそれも調べて来るからそれまで持っといてくれ」
鞠莉「ええ、皆にわたしておきます」
行商人「それじゃあ、そろそろ行くかのお……」
鞠莉「わかりまして、道中、くれぐれもお気をつけて」
行商人「茶の作り方、仕入れておかないとねえ…また来たら教えるわい」
鞠莉「ふふっ……ええ!それまでしっかり持っておきます」 【森 深部】
果南「……梨子、何か聞こえる?」
梨子「ううん……今のところ、火竜の声とか、羽ばたきらしきものは何も……」
果南「そっか、荒れてるモンスターの出具合からしてこの辺りに火竜が縄張り張ってるのは間違いないとは思うけど……」
梨子「ええ、もうちょっと探してみましょう」
果南「そうだね、もうちょっと北の方も探してみようか」 梨子「…………」
果南「梨子って、耳良いんだよね、声だけじゃなくて羽ばたきまで聞き分けられるくらいだから」
梨子「ええ、以前楽器やってたので……それで少し」
果南「楽器…? それってピアノとか?」
梨子「そうですね、後ビオラなんかも少々。小さいころから家に先生が来て習ってて」
果南「ふーん……でもさ、ハンターになったんだよね? それも都のギルドなんて超一流の」
梨子「やめて下さいよ、私はギルドから逃げ出してきた身なんです。一流だなんて全然です」
果南「そういえばさ、梨子ギルドから来たってのは知ってるけど……その辺の話、詳しくは聞いてないかも」
梨子「……面白い話じゃ、無いですよ」 梨子「私の家は割と裕福で、楽器然り習い事は何でもさせてくれたんです、私が『やりたい!』って言ったら、なんでも」
梨子「私の父はハンターで、それに憧れて私もやってみたい、って言ったんです。それで、ハンターの養成所の試験を受けに行ったんです、ある程度特訓はしたとは言え、殆どお試し感覚でした」
梨子「そこで、思いの外いい成績が出ちゃったんです、楽器を弾くときの感覚が、弓に役立ったみたいで」
果南「楽器と……弓?それってなんの関係が?」
梨子「ピアニストって、ピアノを弾くとき、いちいち鍵盤は見ないんです、指の感覚だけで力加減と諸々の微調整をする能力が、私には備わってたみたいなんです」
梨子「目測で撃って的が当たる感覚がどうにも気持ちよくて、私は弓にのめり込みました。最初の方は力不足で弦が引けなくて速度が足りなかったけど、それも訓練して直しました」
梨子「そして養成所に通い、めでたくギルドお抱えのハンターになった訳なんですが、そこで、ちょっと外でのクエストを受けただけで命を張るのが怖くなって……それで逃げてきたって訳です。情けない話でしょう?」
果南「そんなもんだよ、みんな。怖くないハンターなんて、一人も居ないよ」
果南「私だって、何回も死にかけた。ダイヤと鞠莉には内緒にしてたけど、最初の頃なんて数えきれないくらい命の危機があった……」
果南「でもそんな恐怖を、私も梨子も乗り越えて頑張ってる。だって実際梨子は今私の隣に居て、ハンターとして外に出てるから……でしょ?」
梨子「果南さん……」 梨子「ごめんなさい、私の昔話なんて聞かせて、更に慰めて貰っちゃって」
果南「ううん、梨子の昔を知れたから、面白かったよ」
梨子「もう、次は果南さんの昔話の番です!私だけ話す羽目になるなんてずるいです!」
果南「うーん……そうは言っても殆ど昔の事なんて話しちゃってるからなあ、千歌たちとずっと暮らしてきた訳だし」
果南「あ、そうだ、これはとびっきりの話なんだけど……」
梨子「……ストップです、果南さん」
果南「え、そんな昔話聞きたくなかった!?正直この話そこそこ自信あったんだけど……」
梨子「違います果南さん、向こうに“ヤツ”がいます」
果南「……!」 「クルル……………………」
グチャ、グチャ。
鋭く生えそろった牙が、肉と骨を食いちぎる音が遠巻きに聞こえて来る
大型の草食モンスター、アプトノスの頭を足で押さえ、腹の中身を捌き、喉の中へと流し込んでいく。
食物連鎖。食う者と食われる者の姿がこの場面でありありと浮き彫りになっている。
絶対的捕食者、リオレウスがそこには佇んでいた。
果南「あれは、食事中?」
梨子「やっぱり、この辺を縄張りにしてるみたいですね」
果南「そうだね……あっ!飛んでいく」
梨子「……獲物を置いて行きましたね、一応調査しに行きましょうか」 梨子「うっ……」
果南「やっぱ、モンスターが食べると潰れ方がグロいね……大丈夫?」
梨子「いえ……大丈夫です、続けましょう」
果南「たぶんだけど、リオレウスはまたこの獲物を食べる気だと思う」
梨子「え? なんでそんなことわかるんですか?」
果南「まだこの肉が結構残っているってのもあるんだけど……ほらここ、アプトノスの肝臓が残ってるんだよ」 果南「肝臓……まあ、モンスターのキモは肉食のリオレウスにとって貴重な栄養源なんだけど……。だけどこれはそれをまだ食べてない。それが単に取ってあるのか、子供が居てその為に残してるのかは分からないけど、捨てるって事は無いと思う」
梨子「ホントだ……よくそんな事知ってますね、内臓の事なんて」
果南「私の獲物は花丸がよく解体してくれるからね。花丸、待ってる間私が暇してるのを気遣っていろんな話してくれるんだ」
梨子「とりあえず、この場から離れて島へ戻りましょうか、このまま居たらリオレウスが返って来ないとも限らないですし」
果南「そうだね……急いで帰って、ダイヤ達に伝えないと」
果南「……狩りの時間だ、って」 【島 集会所】
ダイヤ「今から半刻前、果南さんと梨子さんからリオレウスを見つけた、との報告がありました」
ダイヤ「また、火竜は獲物の大部分をその場に置いて去っており、今後戻ってくる可能性が高いと思われます」
鞠莉「私とダイヤで相談した結果、前準備が十分出来る条件だと判断したから……これより、リオレウス討伐作戦を開始するわ」
千歌「火竜、討伐……」
善子「いよいよ、って感じね」 ダイヤ「戦法は予定通り、果南さんと私が前衛、千歌さんと梨子さんが遊撃部隊、善子さんと鞠莉さんが弾幕による後方支援、ですわ」
梨子「……リオレウスはアプトノスの肉の大部分を食べ残してました、戻って来るのにそれほど時間は無いかもしれません、向かうなら、今すぐ向かうべきかと」
ダイヤ「……だ、そうですので質問等、無ければそのまま出発しますが……皆さんどうですか?」
果南「今回の相手は被弾したら洒落にならないから、とにかく身を守るのを徹底する、懐に入りすぎない……それが一番大事かな」
果南「あと、正面には絶対立たない事。火球が当たったりしたら、それこそ大変な事だからね」
千歌「……」
鞠莉「よし、じゃあ行きましょう…気を付けなければならない相手だけど、位置が分かってるこの機を逃す手は無いわ」
ダイヤ「それでは、皆さん気を引き締めて。これを、この村の最終決戦と心得るように!!」
「「「「オー!!!!」」」」 島の対岸から森の中を歩く事十数分。果南と梨子の先導で辿り着いた場所には、空の王者がその場に鎮座していた。
ダイヤ「静かに…居ますわ」
辺りに、バラバラになったアプトノスから昇る血の匂いが漂っている。これだけの血の匂いを流しても肉食の獣が現れないのは、そこに生態系の頂点が居るからだ
その場に舞い戻っていた火竜は、辺りを警戒しながら食事の続きを行っている。自分の体長近くある大型のアプトノスの肉を、まるごと食べつくす勢いで貪りつくす
「グルル……」 ダイヤ「いきますわよ、各自準備を」
ダイヤ「(5……4、3……)」
ダイヤが片手を挙げて合図をすると、各々が首を静かに縦に振った
広げた五本の手の指を一本ずつ折りたたんでいく。それこそが、突撃へのカウントダウン。
誰もが、息を飲んだ。正真正銘、これが火竜との決着となるだろう。
ダイヤ「(2……1……)」
これまで、様々な準備を行ってきた。万全とは言えなくとも、可能な限りの備えをしてきた。
その成果が、今この一瞬に掛けられている。
ダイヤ「ゼロッ……!!!!」
その指がすべて折りたたまれた時、彼女たちの姿は藪の中から飛び出していた! ダイヤ「各々所定の配置に!果南さん、前に出過ぎないように気を付けて!」
果南[言われなくても分かってる!!!」
果南は素早く走って近づき、持ち上げた重剣を振り下ろす!!先手必勝、出会い頭の隙にかけた渾身の一撃を今放つ!!
果南「せああっ!!!!」
「ガアァッ……!」
が、鋭い一撃は空を掠めた。その一撃が頭に触れるより先にリオレウスは空へと飛び立ったのだ。
その大きな体を、悠々と翼で浮かし、天空を自由に舞う。それこそ、まさに空の王者の姿だった
果南「ああ!もう!!!」
ダイヤ「果南さん、イラつかない!」
果南「分かってるってば!」
野に住む獣の感覚は鋭い、少しの殺気を感じ取り素早く危機を回避する。
それが、何十年と生きている竜なら尚更の事だった。 果南とダイヤが最前。少し後ろに千歌、更に少し離れて善子、鞠莉、そして最後に梨子。
先に決めた通りの陣形に全員が並び立つ
ダイヤ「まったく……ガンナーの三人、お願いします!!」
善子「任せなさい!」
善子、鞠莉の弾丸、梨子の矢が空を飛ぶリオレウスに向けて放たれる
重力に逆らって放たれた弾丸は本来の威力を発揮出来てはいないものの、傷を与えるには十分な精度だ
火薬で爆発的加速を付けられた弾が、リオレウスの翼膜の一部に風穴を開ける!!!
「ガッ……ガアアアアアアアアアアア!!!!!!」
鞠莉「これでもくらいなサーイ!!」
鞠莉が放つのは、雷撃弾。雷光虫の力を込めた火竜リオレウスが忌み嫌う属性の弾だ。
距離が離れている事により勢いが殺され、弾本体が火竜の体に通らなくとも、込められた雷撃の力が的確にダメージを蓄積させていく!! ダイヤ「効いています、そのまま!」
梨子「……わかりました!」
戦いの最中、梨子が一瞬目を瞑る。指の感覚を鋭敏にし、強く弦を張り構える。
狙うは上空、リオレウスより更に上。自らの頭上をはるかに超える天へと向けて、梨子は矢を放つ。
曲射
複数の矢を上空に放ち自然落下で獲物へと突き刺す事でダメージを与える高難易度の技だ
放物線を描きながらぐんぐんと上へと向かう矢は、ある一点でその動きの向きを変える。今まで自らの動きを鈍らせていた重力を味方に付け速度を増して下へ下へと高速で向かっていく。
矢の真下に在るのは、空を舞う火竜の姿。落下の速度そのままに、その鋭い矢が、守る物の無い無防備な背中に襲い掛かる!!!!
「ガァッ!!!!」
千歌「当たった!」
梨子「やった…!」
梨子が放った矢の塊は、まるで飛ぶ鳥を射止めるように、リオレウスの背中を正確無比に捉えた 「グルル……!!」
果南「あれは……!」
ダイヤ「……! マズイ、皆さん!構えて!」
火竜が空中で背を反り、息を吸い込んだ。口には腹から登って来た赤の光がチラチラと零れる。
それこそが、この火竜リオレウス最大の武器を使用する序章だ。
体内に存在する火炎袋に空気という名の薪を加えて放つ、絶対必殺の一撃。
その姿は、辺り一面を焼き付き尽くす、地獄の業火。その威力は、太陽の如き圧倒的火力。
驚異的な速さで再生するとはいえ、自らの喉を焼いてしまうほどの驚異的な熱量を持つ。
火竜の双眸が地に立つ千歌達を捉える。火竜は食事を邪魔され、気が立っていた。彼女達は文字通り、竜の逆鱗に触れたのだった。
リオレウスは地上に向けて、腹の底から火炎弾を放った。小さな流星の如き熱球は地面にて炸裂し、辺り一帯、全てを完全に焼き尽くす!!!
ダイヤ「くっ……ああああああああああ!!!!!!」 ダイヤは最前線に立った。
巨大な盾を前に地面に力いっぱい突き出し、火竜から放たれる巨大な火炎を自ら受け止める。
爆風で手が痺れる、少しでも手を緩めれば盾諸共、全てが吹き飛ばされてしまうだろう。それほどの威力が盾越しでも感じられた。
しかし、ダイヤは決して手を緩めない。後ろに立つ皆を守る為、この狩りに勝つため、そして何より生き残るために!!!!
熱で盾が歪んでいる。盾の握り手からは全面から伝わって来た熱が握りしめた手を焼く。それでも、逃げるわけにはいかない。逃げたら、後ろの皆が無事では済まないから。
果南「ダイヤ!」
千歌「ダイヤさん!!」
ダイヤ「だ、いじょうぶ……私にまかせておきなさい……」
自分が弾き飛ばされれば、後ろに居る果南と千歌に真っ先に被害が及ぶ。
最大戦力である果南、この作戦の要である千歌、火竜の討伐においてこの二人を失うことは絶対に有ってはならない。
そして何よりも……仲間を失うことは絶対に嫌だ。
ダイヤ「いっ……ああああああああああ!!!!!」 ダイヤ「はぁっ……はぁっ……」
炎が過ぎ去っても、ダイヤは立っていた。息も絶え絶えで、体のあちこちがあまりの熱に焼けてしまっていても、そこに立っていた。
まだ、もう一仕事ある。この村の司令塔として、号令を掛けなければ。
息を大きく吸って声を張る。
ダイヤ「今です、千歌さん!!」 千歌「まかせて!!!ダイヤさん!!」
その言葉を言い終わる前に、千歌は盾の内側から飛び出す
大火炎を放った火竜は首を振り、硬直していた。火炎を放ち、焼けた喉の部位の再生を待っているのだろう
千歌「これでも……くらえっ!!!!!!!」
ポケットから取り出した、光り輝く球体をリオレウスの眼前に向けて投げつける。
閃光玉。強烈な光を浴びせて、対象の視界を奪う道具だ。 閃光玉を使用する際には幾つかリスクが存在する。
まず、そもそもの話、眼前にぶつけなければ、目つぶしにはならない。視界に入れられなければ雷光虫を利用した強烈な光源もただの光に過ぎない。
それに、激しい光はハンターの視界をも遮ってしまう。背を向ければ光を回避できるが、それは即ちモンスターにも背を向ける事となり大変危険だ。
さらに、視界を奪われたモンスターは、大きく暴れる事もある。目が見えない状態で荒れ狂った獣の近くに居ることは間違いなく死を意味する。
しかし、今、この扱いの難しい閃光玉を使う条件は整っていた。
リオレウスは炎を出したことにより硬直している。火炎で狙っていた地に向け、頭を大きく落としている。
ガンナーの三人は、予め距離を取っており閃光玉の範囲内に居ない。そして前衛の二人もダイヤの盾の後ろに隠れられる範囲内に在る。
即ち、今が好機!
千歌「いっけえええええええええ!!!」
炸裂した閃光玉から、辺り一帯を染め上げるほどの光が迸る。
空の王者。時には太陽とも同一視される気高き竜の目の前に一つの輝きが炸裂した!!! 「ガァァァァァ……!!!!!!」
呻き声をあげて、火竜は地へと落ちていく。視力を失い、地鳴りを響かせて地へと叩きつけられた。
ダイヤ「全員、総攻撃です!!!!!」
果南「地に落としちゃえば……こっちのもんだもんね!!」
槍の一刺し、剣の一振りが頭部に集中する。火竜最大の弱点、最も衝撃に弱い部位に斬撃を集中させる
善子「そこで……倒れてなさい!!!」
予め横に回った善子はスコープを覗き、地面に投げ出した脚に狙いをつける。的確に、弾を放ちダメージを蓄積させていく。
リオレウス程の大型モンスターにもなると自らの体重を支える為に足にかなりの負担が掛かっている。足を狙撃していれば、簡単に立ち上がることは出来ない。
梨子「はぁっ……!!!」
大空を見上げた梨子は再度上空へ矢を放つ。前衛を巻き込まない翼へと狙いを定め、矢を空へ。
大きな放物線を描き、加速しきった弾丸が上空で分裂し、空の王者の翼を文字通りもぎ取っていく!!!
さらに、上空にはもうひとつの影。
千歌「これでおわりだあああああああああああ!!!!!!!!」
最後の一撃、飛び上がった千歌の獲物のよる鋭い一撃は、全生命の弱点である頭蓋を正確に捉えた!!! 千歌「はぁっ……はぁっ……!」
「…………………ガ………ッ………!」
果南「やった……!?」
梨子「いや……まだ、みたい」
梨子の言葉通り、攻撃を中断して離れたハンターの面々の前で、火竜はゆっくりと立ち上がった
「グォォ………ガァッ……!!!」
鞠莉「流石に…しぶといわね……」
善子「でも、もうこいつボロボロよ、翼も使い物にならなさそうだし」
ダイヤ「……気を付けなさい、言ったでしょう?手負いの獣が一番恐ろしいですわ」
千歌は火竜を見つめたままポケットを弄り、もう一度の閃光玉を取り出す。ルビィ達が材料を大量に調達してくれていたおかげで、十分な余裕が有る
千歌「ここはもう一回閃光玉を……」
投げようとした……その時、ぐらり、と千歌達の足元が揺らぐ 千歌「わわっ!……何この揺れ!?」
果南「……みんな、揺れに気を取られず前に集中して、いつ襲ってくるかわからないから」
ダイヤ「これは……地震……ですかね?」
善子「いや…にしてはこの揺れは……近すぎる……というか、どんどん近づいて来てるわ!?」
次の瞬間火竜の立っている大地を、あたりを包み込むほどの巨大な影が覆った
みるみるうちにその影は大きくなり、地割れの如き轟音と共に火竜の体を叩き潰した
“それ”は上空からその巨体を現した。しかし、この怪物に翼は無かった
その巨体は、火竜より遥かに大きい。
ぬらぬらとした黒光りする緑色の鱗を隆起した筋肉で作られた体に纏っていた。
胴体まで裂けたかの様な巨大な口。したたり落ちる唾液は強酸性なのだろう、地面に転がっているボウガンの弾が、いとも簡単に酸で溶けだしていた。
一言で形容するなら”悪魔”だった。
その在り方の異様さ、そして生命としての強靭さは、たった一度の跳躍で押し潰された火竜の姿を見れば、ありありと伝わっていた。 梨子「火竜を潰してくれてラッキー……とは言ってられる場合では、なさそうね」
果南「……あれは…!」
千歌「……果南ちゃん?知ってるの…?」
果南「凶暴竜、イビルジョー。別名を健啖の悪魔。獲物は……生きるもの全て」
梨子「あれは相手にしちゃダメな類のヤツよ…!」
千歌「でも、もうこんなに目の前まで来られたら…逃げられないよ!」
善子「私が遠巻きに散弾を撃つから、その隙に逃げなさい!散弾なら狙い付けなくても逃げながら当てられる!」
果南「いや、そんなものじゃアイツはたぶんビクともしない。ヤワな攻撃なら、するだけ無駄だよ」
善子「だったら…どうすればいいのよ!」
果南「……………私達が、ここに残って相手する」 梨子「へ……?」
千歌「私達……って?」
ダイヤ「私と鞠莉さん、ですわ。そうでしょう、果南さん?」
果南「うん、本当は私一人でなんとか出来ればいいんだけど…流石にちょっとキツいから盾と後衛は一人欲しいかな」
鞠莉「非常時にはね、私達が殿を務めるって決めてたの。みんなには内緒だったけどね」
果南「リオレウスが私達に襲い掛かるのは、私達が縄張りに立ち入る“侵入者”だから、追い立てるの」
果南「でも、イビルジョーは違う。私達の事はただの小さな生き物で“食物”なんだよ。このままだと、みんな食べられちゃう」
千歌「でも…!いくら二人が強くても、危険な事は変わりないよ!そんなことしたら、果南ちゃんとダイヤさんが!」
果南「もうこれしか方法が無いんだよ!!」
千歌「…………ッ!」 千歌「かな…ん…ちゃん…?」
果南「いい?三人は帰って、今の状況と場所を残ってる三人に伝えて」
鞠莉「私にも、こいつをどうすればいいか分からない。でも、あなた達みんなで考えれば道が開けるかもしれない。もし、絶対に敵わないと判断したのなら、逃げるだけでも構わない」
鞠莉「とにかく、自分達で考えて、自分達で未来を決めるの。そうすれば、例え後悔しても前に進めるから」
千歌「……鞠莉ちゃん」
鞠莉「だからとにかく逃げて、ちかっち。そして生きるの。生きれば、未来があるはずだから」 善子「……行くわよ、千歌、梨子。ここに立っているだけで、状況は悪化していく一方だわ」
梨子「……ええ、そうね。でも……」
不意に森の中に爆音が響き渡った。鈍く、不快な音だった。
「ガァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
こちらを観察するように凝視していたイビルジョーが突如、吠えた
頭を大きく持ち上げ、己の存在を遠くまで知らしめる強大な咆哮だった。
果南「何時までも睨み合っていてくれない、か」
千歌「……果南ちゃん!」
果南「千歌!早く行きな!」
千歌「絶対、絶対助けに来るから!」ダッ 果南「……全く、往生際が悪いんだから」
ダイヤ「それはお互い様でしょう?この期に及んでこんな怪物と戦おうとしてるんですから」
果南「……まあね。でも、死ぬつもりで残ってくれた訳じゃないよね?」
鞠莉「もちろんデース!ま、こんな大物と相対するとは思わなかったけどね」
ダイヤ「あの島にはやることは山の様にあるんですから……ここで倒れてなんかいられないですわ」
果南「そうだね……それじゃあ」
ダイヤ「……ええ」
果南「行くよ!ダイヤ!鞠莉!」
ダイヤ「私が指示します!お二人はそれに合わせて!」
鞠莉「OK!背中は任せて!」 「グオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
凶暴竜の突進が三人へと襲い掛かる。体を横にして、辺り一面を薙ぎ払う様にタックルを繰り出す。
ダイヤ「ハァッ!!」
ダイヤは盾を前に出し、正面から構える。そこに、金属製の盾にイビルジョーの太く、奇形の様に肥大化した尻尾が盾を掠める。
その衝撃だけでダイヤは遠くへと投げ飛ばされる程大きく仰け反った。
ダイヤ「ッ…!……図体通りの威力という訳ですね…」
イビルジョーの一撃で、ダイヤの盾は歪んだ。
多くの大型モンスターの攻撃をものともしなかった盾を、凶暴竜の一撃はいとも簡単に変形せしめた。
果南「よっと……危なかった…!」
果南はタックルの瞬間、地に転がり、イビルジョーの脚の下の隙間をすり抜ける 果南「ダイヤ…!大丈夫!?」
ダイヤ「だ…いじょう…ぶですわ……でも、あまり受け続けていると、盾が握れなくなるかもしれません」
果南「……分かった。なるべく私が引き付けて回避するようにする」
鞠莉「私も出来るだけ頭を撃って援護するわ!!」
ダイヤ「……了解です」
「グルルル………」
凶暴竜が再度こちらに狙いを付ける。その目は獲物を狙う野生の獣の目だった。
再度三人は、自分の背丈を優に超える巨大な生物に向けて臆することなく武器を構える。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
大地の主、イビルジョーは吠えた。
その地を震わせる爆音こそが、この大自然における“狩り”の新たなる狼煙だった。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています