千歌「モンスターハンター!」
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海に面したその村は、一夜にして炎に包まれた
原因はただ一つ、一匹の火竜だった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
「吠えた……炎が来るぞ!!」
「下がれ!全員火竜から距離を取るんだ!!」
「おい!ハンター以外と子供は白き竜の祠のある島まで避難させろ!!」
人里に迷い込んだ竜は、その場を破壊し、灰塵と化す“災害”となった
「お父さん、お母さん……どこ……?」
呻くように呟く少女の周りでは業火が立ち上っていた。
海風で湿った木造の建物は白い煙を上げて燃え盛り、戦火は逃げ遅れた齢そこそこの少女を容赦なく包み込む。
「ぜんぶ、ぜんぶ…燃えちゃった」
「うぅ、みんな……どこへ行ったの…?」
「おねえちゃん……」 善子「……行くわよ、千歌、梨子。ここに立っているだけで、状況は悪化していく一方だわ」
梨子「……ええ、そうね。でも……」
不意に森の中に爆音が響き渡った。鈍く、不快な音だった。
「ガァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
こちらを観察するように凝視していたイビルジョーが突如、吠えた
頭を大きく持ち上げ、己の存在を遠くまで知らしめる強大な咆哮だった。
果南「何時までも睨み合っていてくれない、か」
千歌「……果南ちゃん!」
果南「千歌!早く行きな!」
千歌「絶対、絶対助けに来るから!」ダッ 果南「……全く、往生際が悪いんだから」
ダイヤ「それはお互い様でしょう?この期に及んでこんな怪物と戦おうとしてるんですから」
果南「……まあね。でも、死ぬつもりで残ってくれた訳じゃないよね?」
鞠莉「もちろんデース!ま、こんな大物と相対するとは思わなかったけどね」
ダイヤ「あの島にはやることは山の様にあるんですから……ここで倒れてなんかいられないですわ」
果南「そうだね……それじゃあ」
ダイヤ「……ええ」
果南「行くよ!ダイヤ!鞠莉!」
ダイヤ「私が指示します!お二人はそれに合わせて!」
鞠莉「OK!背中は任せて!」 「グオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
凶暴竜の突進が三人へと襲い掛かる。体を横にして、辺り一面を薙ぎ払う様にタックルを繰り出す。
ダイヤ「ハァッ!!」
ダイヤは盾を前に出し、正面から構える。そこに、金属製の盾にイビルジョーの太く、奇形の様に肥大化した尻尾が盾を掠める。
その衝撃だけでダイヤは遠くへと投げ飛ばされる程大きく仰け反った。
ダイヤ「ッ…!……図体通りの威力という訳ですね…」
イビルジョーの一撃で、ダイヤの盾は歪んだ。
多くの大型モンスターの攻撃をものともしなかった盾を、凶暴竜の一撃はいとも簡単に変形せしめた。
果南「よっと……危なかった…!」
果南はタックルの瞬間、地に転がり、イビルジョーの脚の下の隙間をすり抜ける 果南「ダイヤ…!大丈夫!?」
ダイヤ「だ…いじょう…ぶですわ……でも、あまり受け続けていると、盾が握れなくなるかもしれません」
果南「……分かった。なるべく私が引き付けて回避するようにする」
鞠莉「私も出来るだけ頭を撃って援護するわ!!」
ダイヤ「……了解です」
「グルルル………」
凶暴竜が再度こちらに狙いを付ける。その目は獲物を狙う野生の獣の目だった。
再度三人は、自分の背丈を優に超える巨大な生物に向けて臆することなく武器を構える。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
大地の主、イビルジョーは吠えた。
その地を震わせる爆音こそが、この大自然における“狩り”の新たなる狼煙だった。 おつおつ
イビルジョー乱入かよ…環境不安定だったのか あの金ゴリラに並ぶ位置付けのやばいやつ来ちゃったねえ 【島】
花丸「リオレウスは追い詰めた。けど乱入者が現れて、鞠莉ちゃん達が殿になって三人を逃がしてくれた……と」
善子「ええ……そうね」
ルビィ「……おねえちゃん……」
千歌「……ごめん」
ルビィ「……ううん、千歌ちゃん達は悪くないよ」
曜「ねえ、そのイビルジョーってやつ何なの? リオレウスを仕留めるなんて、どれだけ強いの?」
梨子「………まともに戦って、勝てる相手だとは到底思えないわ」
千歌「花丸ちゃん、イビルジョーについて、知ってる事を教えて欲しい」
花丸「まさか…!千歌ちゃん、倒そうと!?」
千歌「……私は鞠莉ちゃんから、自分達で考えて、行動しろって言われた。倒すにしても、逃げるにしても、まず知るとこから始めないと」
花丸「…………わかったずら」 花丸「恐暴竜イビルジョー。弱点属性は龍、雷」
花丸「ギルドから発行されている資料なんかだと『食物連鎖の頂点』だとか書かれていている事が多いけど……マルは少し違うと思うずら」
花丸「イビルジョーは全身の殆どを筋肉で覆われているずら。当然、筋肉が多いって事は体の燃費は悪いんだけど、その圧倒的力と体躯で全ての生き物をねじ伏せて、捕食することでその体を維持してる。」
花丸「普通なら、何でも食べなきゃ維持できないほど燃費が悪い体を持つ生物なんて絶滅するはずずら。全ての獲物を餌になんてしていたら食物連鎖の理をモロに受けてあっという間に滅ぶはずずら」
千歌「でも、実際に……」
花丸「うん、イビルジョーは極寒の雪山にも灼熱の火山でも、ありとあらゆる場所に移動して、全てを喰らいつくして生きながらえているずら。
花丸「地球上全ての場所において、イビルジョーは食物連鎖から逸脱した怪物だと、マルは思うずら」 花丸「餌は、生物全て。このままじゃあの森は生物がまともに住める森じゃなくなるずら」
ルビィ「で、でも、今までだってイビルジョーが出た場所があるんだよね。まさかそういうところから生きものが居なくなったって訳じゃない……よね?」
花丸「イビルジョーが出た場所は、言うなれば砂漠のような更地になるずら。餌が無くなってイビルジョーが去った後、僅かに残った生きものたちが何年もの歳月をかけて少しずつ再生していくことで元の形へと戻って行くずら」
花丸「森自体はその再生の時をじっと待てばいいんだけど……それには長いスパンが必要ずら、その期間はオラ達が蓄えて耐え凌げる期間かと言われると……」
曜「まともに生物が住めなくて、その危険度となると行商人の人どころか人自体寄り付かなさそう…となると」
花丸「正直どちらにせよ……マル達の生活は八方塞がりずら」
千歌「……倒そう、私達で。それしかないよ」 善子「何言ってるの千歌!?まともに戦って勝てる相手じゃないっていうの、アンタだって見たでしょ!!」
千歌「でも、でも!!」
善子「あのリオレウスだって、この村の力を結集して、ようやく押し戻せるくらいなのよ!そんな相手をペシャンコに押し潰す相手なんて勝てるわけないでしょ!!」
梨子「ちょ、ちょっと……善子ちゃん…」
善子「それに、有効な攻撃手段だって無いわ。雷撃弾は全部鞠莉が持ってるし、リーチ的に攻撃が届きそうな果南だって居ない……」
善子「わたしだって…イヤよ…逃げるのなんて…でも、ここで私達が食べられたりしたら、鞠莉達がもっと浮かばれない……」
ルビィ「……善子ちゃん」
千歌「……鞠莉ちゃんが言ってたの『この島で私はずっと生きていたい』って。私達の元々住んでた村は燃えちゃったけど、新しくおかえりって言ってあげられる場所がここだから、守らないとって」
千歌「私は、この島でみんなと一緒に平和に楽しく過ごしたい。また皆でゆったりと、落ち着いた生活が出来るならそれでいい」
千歌「でも…!!そこには、鞠莉ちゃんと、ダイヤさんと、果南ちゃんが居ないと意味が無いの!!!」
パサリ 曜「……千歌ちゃん、なんか落ちたよ」
善子「行商人のお婆さんがくれたお守りね、中身は龍殺しの実だって」
千歌「(龍殺しの実……って確か)」
千歌「ねえ!!花丸ちゃん、イビルジョーって龍属性が弱点って言ってたよね!!」
花丸「え、う、うん……そうだけど……千歌ちゃん、もしかして!?」
千歌「龍殺しの実って滅龍弾になるよね!? それも、とびきり特大の威力の!!」 滅龍弾
文字通り龍殺しの力を秘めた、属性弾
その性能は他の属性弾と一線を画す。
当たれば、その龍封の力絶大であり。有効に使えば古龍級の生物にすら深い傷を与えることが出来る。
高威力、高貫通性能、高反動。ハイリスクハイリターンを地で行く弾丸だ。
ただし、そんな威力の代物は、何の考えも無しに扱えるものではない。
善子「ちょ、ちょっと待ちなさい!滅龍弾なんて、扱えるボウガンこの村に無いわよ!実際に私のアルデバランも撃てないし」
曜「いくらなんでも、今から滅龍弾が装填できるボウガンなんて……ちょっと作れないよ」
花丸「あれは……古代技術で作られた物をを復元したりした、特別なボウガンしか使えない弾ずら……鞠莉ちゃんが持ってたやつなら撃てたかもかもだけど……」
千歌「………鞠莉ちゃん、の…ボウガン…?」
千歌「ちょっと…待ってて!すぐ戻って来る!!」ダッ
ルビィ「あっ…千歌ちゃん!!」 戻ってきた千歌の手に有ったのは、一丁の木製のボウガンだった
千歌「はぁ……はぁ……どう?これなら撃てる?」
曜「ええと……うん、これなら撃てると思うけど……」
梨子「……曜ちゃんも知らないようなボウガン、どっから持って来たのよ」
千歌「これはユクモ霊弩……鞠莉ちゃんが、昔自分で作ったって教えてくれたの…!」
花丸「……確かにこれで、手元にある龍殺しの実で作れる滅龍弾を当てさえすれば、倒しきれなくても有効打にはなるかもしれない」
善子「滅龍弾ってものすごく曲がるのよ!!動き回る相手に撃ったってまともに当たる代物じゃないわ!!」
花丸「それは……確かにそうずら」
千歌「鞠莉ちゃんは、このボウガン私にくれるって言ってた。だから、私が撃つ。」
善子「はぁ!?千歌、アンタ何言って…!」
千歌「……私の作戦を聞いて欲しい」 ──────────────────────
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善子「……本気?それって、あなたが一番危険な目に会うのよ?」
千歌「本気も本気だよ、こうでもしれないとあの怪物に勝てない」
梨子「でも、大丈夫なの…?その作戦には、ハンターの私達だけじゃなくて、そうじゃない三人も巻き込むことになるけど……」
曜「何言ってるの梨子ちゃん、私達だってこの島の人間なんだから。もうとっくに関係者だよ」
ルビィ「ルビィも、頑張って……少しでも役に立つよ!」
花丸「……正直、この作戦が成功するかどうかは分からない。成功したとして、倒せたり、撃退が出来るかも分からないずら」
千歌「…………」
花丸「でも、マルはこれでいいと思う。この作戦にかけてみる価値が、マルは有ると思うずら」
花丸「何より、鞠莉ちゃん達を置いてこれからずっと逃げて生きるよりは、何倍もマシずら」
千歌「花丸ちゃん……」 千歌「早速準備しよう!少しの時間だって無駄には出来ない!花丸ちゃんは弾の調合、曜ちゃんはこのボウガンの調整をお願い!」
千歌「梨子ちゃんと善子ちゃん、二人は疲れているだろうし休んでて!それと、ルビィちゃんはちょっと来て!」
ルビィ「え、わ、分かった!」
梨子「あ、ちょっと!千歌ちゃんはどうするのよ!」
善子「そうよ、千歌も疲れているでしょう!」
千歌「私ちょっと行くところあるから!それじゃ!」ダッ
花丸「あ、行っちゃったずら」
曜「ああなったら千歌ちゃんは聞かないよ……さて、大急ぎで準備しないと…なんて言ってもこの鞠莉ちゃんのボウガンと、久々に自分の銃も出してこないといけないしね!」
善子「大丈夫なの曜?いくら元ハンターとはいえ……いきなりボウガン持って実戦だなんて」
曜「まあ、自信があると言ったら嘘になるけど……でも、やるしかないから!じゃあ私鍛冶場に行ってくる!」
梨子「すごいね、あんなに暗い空気だったのに、すぐにみんなが出来る事を見つけて前に進んでる」
花丸「それが、千歌ちゃんの凄い所ずら」
善子「……そうね、本当に思うわ」
花丸「さて、と……マルも滅龍弾を作らないと。なにせ、一発も無駄に出来ないずら」 【島 山頂】
ルビィ「ホントに登るの…?休んでおいたほうがいいんじゃ……」
千歌「時間的に休憩は出来るし……それに、この作戦、最後は神頼みだと思うから。お願いはしておこうかなって」
ルビィ「……分かった、頂上までじゃあ案内するね!」
千歌「ありがとう、ルビィちゃん!」
千歌「はっ……ほっ……」
ルビィ「すごいね千歌ちゃん、よく登ってるルビィでも少ししんどいのに……」
千歌「えへへ……ハンター本格的にやるってなった時、果南ちゃんに散々扱かれたからね。モンスターと相対するには、まずはモンスターが倒れるまで立って、武器を振り回せないといけないって」
ルビィ「モンスターと……これから、ルビィ達も立ち向かうんだよね、モンスターの、それもとびっきり強いのと」
千歌「普段ハンターじゃない曜ちゃんにハンターをして貰うだけじゃない、花丸ちゃんとルビィちゃんにも援護を頼む事になる……そうでもしないと、チカの作戦は成り立たない」
千歌「ごめんね、普段ハンター達じゃないルビィちゃん達も出て貰う事になって」
ルビィ「ううん……やるよ。それが、千歌ちゃんが見つけた道なんでしょ?」
千歌「ルビィちゃん……」 ルビィ「さ、着いたよ、千歌ちゃん」
千歌「白き竜の祠……ここまで登ったの、久しぶりかも」
ルビィ「お祈りしよっか」
千歌「……うん」
よく手入れされた祠は、昔と変わることなくそこに有った
手を合わせ、二人は頭を垂れる。願うは、再びの安寧。それと、仲間の無事。
ポツ……ポツ……ポツ……
ルビィ「ひゃっ!……水…?」
二人が下山しようとした時、空を黒雲が覆った。上を見上げると、額の上に大粒の滴が勢いよく降りて来る。
千歌「…………雨だ」
濁った色になった天から、雨が降り注いだ
降り注ぐ雨の勢いは次第に大きくなり、吹き下ろす様な勢いの風も鳴り始める
それが天運を齎す慈雨となるか、厄災を運ぶ荒嵐となるか
この時はまだ、誰にも分かっていなかったのだった 【島 対岸の森】
千歌「天気が悪いけど……行こう」
善子「……そうね、こればかりは待ってられないわ」
梨子「それに、雨はイビルジョーの体温を下げるから、悪い事ばかりでは無いわ……」
曜「うっわ、緊張する……試し打ち以外でボウガン撃つの何年振りだろ……」
花丸「リオレウスと交戦したのがここから北なら、イビルジョーはなるべくそこから離れたがらないはずずら」
ルビィ「どうして…?」
花丸「イビルジョーは大喰らいずら。リオレウスほど大きな獲物、それも体温が下がりやすい雨の中、何としてでも逃す手はないはず……」
千歌「よし、行こう……!!戦って、未来を掴むんだ!!」
「「「「「オー!!!」」」」」 数刻前に火竜と交戦した場所から北へ数百メートル行った先、森の中程に聳え立つ山の麓に、“それ”はいた
「グルルルルルルル………」
足元には、火竜の死体が転がされている。両の翼はもぎ取られ、体はズタズタに引き裂かれ見るも無残な姿に変わり果てていた
おそらく、火竜を仕留めた場所からここまで引き摺って来たのだろう、その事からもこの恐暴竜の凄まじい膂力が伺える
ルビィ「お姉ちゃん達が…いない…?」
梨子「上手く撒いた……と、思いましょう」
千歌「この作戦は先手必勝……気付かれる前に突撃しよう」
曜「気を付けてね、一番危険なのは千歌ちゃんだから」
千歌「……分かってる」
花丸「…………」ブルブル
善子「ずら丸、震えてるわよ……」
花丸「……大丈夫、オラだってやれるずら。今まで倒れているとこしか殆ど見た事無かったけど、モンスターの生態は頭に入っているはず……だから、やれるずら」
梨子「花丸ちゃん……」
千歌「よし、行くよ」 千歌「私が前に出る!!曜ちゃん梨子ちゃん善子ちゃんは射撃の準備、ルビィちゃんと花丸ちゃんはアイテム構えて待機!!」
「ゴァオオオ………!!」
千歌は、盾を捨てていた。片手剣の利点である攻防一体という特徴をかなぐり捨て、腰に小刀一本を仕込むだけとしていた。
そして、右の手で抱えるのは、木製のボウガン
千歌「曜ちゃん、お願い!!」
曜「了解!!!」
曜の手に抱えられた得物は、クリムゾンシーカー。雪山に住むギギネブラの亜種、電怪竜ギギネブラの力が込められた軽弩だ。 このライトボウガンにはある特徴がある。
まずリロード速度、反動が共に劣悪だ。弾を撃つ時も、弾を込める時も、共にモンスターに対して大きな隙を晒す事となる。
また、その繰り出される弾の威力も高く無く、一人で狩りに出ようものならまともに戦うことが出来ないだろう。
曜「当たって!!!お願い!!」
曜が引き金を引く。雨粒を払い除け、銃口から弾が打ち出される。
何故、このボウガンを曜が作ったのか。何故このボウガンを、一世一代のこの場において担ぐ事にしたのか。
それは、このクリムゾンシーカー唯一にして最大の特徴。
発射された弾は、一発じゃない。連続して、途切れる事無く銃口から飛び出すのは麻痺毒の込められた特殊弾!!!
麻痺弾速射
機構段階で弾に合う様に構造を整える事により、凄まじい速さでの連射を可能とする。
人による細やかなカスタムが可能な軽弩にのみ許された射撃技術!
モンスターを縛ることに特化した、パーティプレイに特化した拘束手段! 「グ……オ………」
曜「当たった!」
とめどなく連射された弾は麻痺毒をイビルジョーの体へと流し込み、体の自由を奪った。外傷に強いイビルジョーといえども、体の内部に注入される毒には成す術がない
千歌「ありがとう曜ちゃん!」
着弾を確認すると同時に、千歌は前へ出る
千歌が立てた作戦は、至極単純な物だった
撃てばその威力故に、強く曲がってしまう滅龍弾。無計画に撃てばまともに当たることなく、先に材料である龍殺しの実が切れてしまう。
千歌「(前、ドスジャギイと戦った時は、目を瞑っちゃった……けど、今ならみんなに背中を任せられる。その勇気が、私にはある!!)」
なら、曲がる前に当てればいい。“曲がるだけの距離”弾が進む前にイビルジョーへと当ててしまえばいい
之即ち、零距離!
イビルジョーの懐まで潜り込み、片の手で支えていたボウガンの引き金を今、引き絞る!!
放つのは、一撃必殺の龍封の力!!すべてを滅する、魔の弾丸!!!
千歌「これでも……食らえぇぇ!!!」 千歌「(当たって、お願い!)」
千歌は、その弾丸が進むのが、まるでスローモーションの様に見えた。
それは、まさしく窮鼠の一撃。小さな生物である人間が、時に神と同一視される龍へと向けた、意趣返しの痛烈な一撃!!
「ゴオォォォォォォォ!!!!!!!」
放たれた弾丸は、恐暴竜の皮膚を貫通し、肉を裂いた。込められた龍封の力を、その巨大な体躯を揺るがす程に叩き込んだ!!!
善子「やった……!」
梨子「よし、だいぶ効いてるわ!」
「ガアァァァァ……!!!!」
しかし、貪食の恐王はそれだけで仕留められるほど、やわな生物ではない。
龍封の力に怯み、仰け反ったイビルジョーは、そのままの勢いで自らの体を捻じ伏せ、突撃を行ってくる。自らの膂力を活かし、猛然と突撃を繰り出してくる
目標は、千歌。場所は目と鼻の先、イビルジョーが数歩進めば、小さな人間など跡形も無く吹き飛ばされてしまう
そして捨て身の特効を行った千歌は、その攻撃範囲から抜け出すことが出来ない
千歌「……ッ!」
自らの何倍もの体躯を誇る巨大な龍の突進が、今一人の少女へと襲い掛かる!!! ルビィ「そうはさせないよ!!」
突進が直撃する、ほんの数秒前。イビルジョーと千歌の間で、一筋の閃光が炸裂した
リオレウスを狩る際に、余らせた閃光玉だ。それが今、ルビィの手から離れ、地に着く前に破裂し、視界を埋め尽くす程の光を放つ。
花丸「そいやっ!!!」
間髪を入れず、花丸も閃光玉を投げる。
武器を扱う事の出来ない二人は投擲物を適切なタイミングで投げる為に待機していた。
連続して炸裂する閃光玉。その光は、懐へと潜り込んだ千歌が、態勢を立て直すのに十分な時間を稼いだ。
「ガァァァァァ!!!!!!」
視界を潰され、攻撃の目測を外され、イビルジョーは怒りを表にする
ハンターとしての基本戦略、ヒット&アウェイ。その回避の部分を仲間に託し、自らはひたすら特攻する事こそが、千歌の秘策だった。 千歌「よし!さらにもういっちょ!!!」
花丸「千歌ちゃん!イビルジョーの右脇腹、他の古傷に比べて新しい!きっと、果南ちゃん達が付けた傷だと思う、だから、そこを狙って!!!」
千歌「分かった、ありがとう花丸ちゃん!!」
至近距離で閃光が炸裂したからか、目がチカチカする。少しでも距離感を、間違えれば、少しでも足止めが遅れれば、千歌の体はあっという間に吹き飛ばされてしまうだろう
それでも、再び前に進まなければならない、全ては勝利の為に!
梨子「せやっ!!」
善子「ほらっ!!!こっちにも居るの、忘れんじゃないわよ!!!」
善子の愛銃、アルデバランから複数の弾が同時に射出される
滅気弾速射。これも、アルデバランの秘めた能力の一つだ
滅気弾は、モンスターのスタミナを奪う弾で、普段の狩りでは滅多に使わない弾だ。
そこそこのサイズのモンスターなら、体力など気にすることなくアルデバランは散弾で蜂の巣に出来るからだ。
しかし、手元の滅龍弾を全て恐暴竜に叩き込むのが先か、それとも他の五人による弾幕が崩れるのが先か
この我慢比べのような持久戦において、疲れを誘発する滅気弾は無類の強さを誇る!!! 「オォォォォォ…………!」
矢と銃弾の雨を頭に食らった恐暴竜は大きく態勢を崩した。
イビルジョーは元々、細い脚に太い胴体というアンバランスな体を自らの筋力で強引に支えている。
よって、梨子と善子による頭部への集中砲火に耐え切る事が出来ず、バランスを大きく崩してよろめいた。
さらに、足元が降りしきる雨でぬかるんでおりすぐに態勢を立て直す事が出来ずにいた。
善子「しめた!千歌、頭に当たったわ!今がチャンスよ!」
合図を受け、再び千歌はイビルジョーの懐へと潜り込む。狙うは、右脇腹。三人が作り出してくれた、巨竜という途方もない生物からこじ開けた、一点の綻び!
正真正銘、最後の一発。ラストバレット。龍を穿つ、必殺の一撃
それが今、木製のライトボウガンから放たれる!!!!!
千歌「これで、最後だぁぁ!!!!!!!!!!」
千歌が放った滅龍弾は、イビルジョーの脇腹を捉え、腹部を貫通し、その本体へと絶大なダメージを負わせた 「ゴガァッ…!!!ガァァァ!!!!!!」
弾丸を急所へと食らったイビルジョーは大きく怯んだ。その巨大な躰で、立っているのが精一杯の様子だった。
体を雨で冷やされ、動きも鈍っていた。基礎体温が高いイビルジョーは熱を失えばまともに活動が出来ない。
善子が放った滅気弾も、その体内のエネルギーを奪うことに一役買っていた。
善子「あんだけ体に銃弾貫通しといて生きてるなんて……正真正銘のバケモノね」
花丸「口元から涎が落ちてる……スタミナ的にはあと一歩なんだろうけど」
千歌「はぁっ……はぁっ……」
曜「千歌ちゃん、滅龍弾は…?」
千歌「はぁっ……もう、これで……使い切っちゃった」
ルビィ「ルビィの閃光玉も、あと一個しかない……」
「ガァァァァァァァ!!!!!」」
その時、イビルジョーが吠えた。大地を踏みしめ、地が振るえる程の轟音で咆哮した。
しかし、次の恐暴竜の行動は攻撃では無く、向きの反転だった。
警戒して武器を構える少女達に尾を向け、先に続く坂道へと向かって走り出していく。
野に生きる獣として、生命の危機を察知しての逃亡だった。 ルビィ「逃げたよ…!」
善子「どうする……引き分けにする?正直、もうこっちは持ってる駒全部出し切ったわよ、出て行ってくれるならそれでいいと思うわ」
花丸「ダメずら!」
善子「……どうしてよ」
花丸「あっちは山道に繋がってるずら!あっちに逃げたら、またいつかは森へ降りて来るずら!!!」
千歌「……行こう!今ならまだ何とかなるかもしれない!」
雨はその勢いを増していた。吹きすさぶ風は、嵐の如き突風となって吹き荒れた
遠くから、雪崩の如き音が聞こえてきた。おそらく山の反対側で土砂崩れでもあったのだろう。
先へ進むほど雨はその速度を増し、風はまるで体を切るかの如き速さで体へと襲い掛かって来た。
六人は流れ落ちる水でぬかるんだ道を、残された巨大な足跡を元に追いかけていった 【山頂】
山の頂にて、恐暴竜はその様子を一変させていた。
体は、赤く変色し、筋肉の膨張により生々しい古傷が体表へとよりハッキリと浮かび上がっていた。
体の内側から裂けた血管から体液が染み出し、黒光りした体表へと流れ落ちる
口からは黒い煙を吐き出しており、内臓から、龍の力が溢れ出していた
梨子「あれは……?」
花丸「イビルジョーの怒り状態ずら!」
曜「怒り状態…?」
花丸「イビルジョーは生命の危機や外敵による侵略による脅威が迫ると、精神の興奮に同調して全身の筋肉を膨張させるずら!体に着いた古傷がそれにより更にイビルジョーの体に激痛を走らせて、誰にも手が付けられない暴走生命体となるずら!!」
善子「そんなの…ムチャクチャじゃない!」
ルビィ「あれでも、イビルジョー……あっち向いているよ?」
千歌「確かに……というか、なんかいる…?」 イビルジョーが威嚇していたのは、千歌達に対してでは無く山頂の中心に対してだった。
そこには、竜が居た。
翼も使わず、羽ばたかず、ただその場にて浮遊する“白き竜”が居た
風が、その竜から吹き荒れていた。雨が、その頭上から降りてきていた。存在するだけで、世の理に触れる、圧倒的な存在がそこには居た。
千歌「あれは…?」
花丸「知らない…あんなの見たこと無いずら!何もしないで浮いてるとか、物理的にあり得ないずら!!」
曜「ねえ、ルビィちゃん……あれって果南ちゃんが前言ってた……」
ルビィ「うん……“白き竜”」
梨子「うそ…だとしたら……」
善子「少なくとも……只者では、ないわね」 “白き竜”はその場に佇んでいる。体を蜷局の様に巻き、只その場に浮遊している。
「ガァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
その様子を見て、先に行動を起こしたのはイビルジョーだった。口元に登る黒煙を、勢いよく白き竜へと吐き出した。龍の力を秘めた、特大の一撃。
全ての物を怒りと共に破壊しつくす、恐暴竜としての渾身の一発
暴虐の限りを尽くした、イビルジョーから繰り出される最大にして最強の一撃!!!! しかし、白き竜はその場から動くことなく、その攻撃を受け止めた。
純白の体には傷一つなく、少したりとも身動ぎすることなくそこに在り続けた。
まるで“なにもなかった”かのようにその場にて優雅に佇んだ
「……………………コォォォォ……………」
白き竜へと、風が集まって来る。糸の如き風が束になり、全てを吹き飛ばす轟風となりて竜の体へと取り込まれる
“白き竜”が嵐の中心へと変化していく。体を折り曲げ、その場に在る全てを呑み込む厄災へと、その身を変貌させていく!!
その姿はまさしく、嵐の化身だった
ルビィ「ひゃあああああ!!!!」
善子「ちょっと!!!洒落になって無いわよ!!!!」
花丸「木に掴まって耐え凌ぐずら!!!」
曜「この風の勢い、木も抜けちゃいそうなんだけど!!!」
花丸「その時はその時ずら!!!」
梨子「いいから!早く掴まりなさい!みんなで固まるわよ!!!」
「ガァァァァァァァァ!!!!」
千歌「………!!!!」 千歌「ごめん、ちょっと行ってくる!!」ダッ
善子「はぁ!?アンタ馬鹿なの!?死にたいの!?」
梨子「千歌ちゃん!!!戻りなさい!!!」
曜「千歌ちゃん!!!!」
千歌「(私達が狩りに出たのは、この村を、私達の島を守るため……その為に、倒さなくちゃいけない相手がいる)」
千歌「(ここで、逃げちゃいけない、臆しちゃいけない。鞠莉ちゃんに頼まれた、『みんなを導いて』って。だから、私がやらないと)」
大地を踏みしめ、白き竜から遠ざかる様に走り出した恐暴竜に向けて千歌は風を切り、一心不乱に走り出す。
剣を握り、地を駆ける。持てる全ての力で足を回し、全速力で接近する!
千歌「(あの暴風の中心にイビルジョーを叩き込めれば、今度こそ!)」
全ては、不意の一撃の為に!
千歌「これでも、くらええぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」 懐から取り出した小剣を、恐暴竜の足首へと突き立てる!!!
通常なら、掠り傷を負わせるほどの軽い一撃。しかし、不意を突かれた今の状況においてそれはイビルジョーにとって致命傷となった
「グガッ!!!!」
ただでさえバランスの悪い体、突風が吹いている中足元を狙い撃ちされたイビルジョーは均衡を崩し、嵐の中心へと吸い込まれていく。
崩れ去ったバランスを立て直す事も敵わず、イビルジョーは白き竜の元へとまるで吹き飛ばされる様に吸い込まれていく
「ギァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」
吹きすさぶ風が、纏う嵐が、恐暴竜の頭を、腹を、八つ裂きにした。
凄まじい勢いの風が、山頂の大地ごと、その場に在った物全てを切り刻み、呑み込む。
千歌「(ごめん、みんな……私、やったよ」
嵐は、竜を、少女を、辺りにある全てを等しく呑み込んでいく。
残る力を一撃に叩き込んだ千歌は、力なくその場に倒れ伏した。 「千歌!!!」
不意に、手が差し伸べられた。千歌の手のひらより一回り大きい、優しく温かい掌。
千歌の体を掴み“巨大な大剣を地面へと突き刺して”この轟風に耐えている
その手が今、地に伏した千歌を引き上げ、立ち上がらせる!
千歌「かなん……ちゃん……?」
果南「無茶しすぎだとか……とにかく説教は後にするから、今は少しでもいいから踏ん張りな!!」
千歌「………うん!!」
二人の少女は、身を寄せ合い、暴風に備えた。突き立てられた大剣にしがみつき、必死に吹き荒れる暴風に抗おうと地面へ食らいついた。
「コオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
嵐を巻き起こし、大地を捲り上げ、白き竜は天へと舞った。その姿は、羽衣を纏って舞い踊る天女の様でもあり、その場に居るだけ悉くを破壊し尽くす厄災であった。
全てを捻じ伏せ、吹き飛ばし、薙ぎ払う天災を巻き起こし、やがてその姿を……天空へと暗ました。
ほんの少し前まで辺り一帯を吹き荒れていた風は止まり、延々と降っていた豪雨もピタリと止んだ。
雲が流れ、天から光が差した。七色の大きな虹が、地平線の端から、青く広がる大空へとかかっていた。
海と潮風の村に再び、太陽が顔を覗かせた瞬間だった。 【数日後】
鞠莉「さあ、飲み物は行き渡った?」
曜「もう、お腹ペコペコだよー!食べていい?」
ダイヤ「あと音頭とるだけだから、もう一分くらい待ちなさいな」
果南「いやしかし、豪華な料理だねぇ」
花丸「サラダ、スープ、ごはんに、パンまで、それにおかずが山の様にあるずら」
ルビィ「こんなの…滅多に出た事ないのに……」
梨子「いいんじゃない……のかな、一応祝勝会な訳だし」
善子「そうよ!祝いの席なんだから、華やかじゃないと!」
千歌「鞠莉ちゃん!もうお腹が背中とくっついちゃうよー!」
鞠莉「オウ、ソーリー!では、改めまして……」
鞠莉「ちかっち達の輝かしい勝利と、この村の平和を祝して……乾杯!」
「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」 曜「うん、このタンシチュー美味しい!」
鞠莉「しっかり食べておくのよー?なにせ、明日からおかず、二品は減るくらいは覚悟しとかないと」
果南「リオレウスの死体はイビルジョーが殆ど食べちゃって使えるとこが無い、イビルジョーの死体も嵐でバラバラに吹き飛んだと……ホント、得る物は一つも無かったねえ……」
ダイヤ「オマケに私と果南さんは体の具合からして当分狩りに出られないと……」
果南「まあー……ちょっと無理しすぎたよね」
千歌「千歌に無理すんなって言っておいて自分が一番ボロボロだったじゃん!」
果南「まあ、それはそれということで」
千歌「適当に流さないでよ!」
ダイヤ「まあまあ実際、果南さんが前に出てくれたおかげで、私と鞠莉さんはこの程度の怪我で済んでる訳ですし」
鞠莉「それはそうね……というか、モンスター素材が何も得られなかったお陰で、本当にうちの村の財政は本当に火の車デース!明日から超節制生活しないと」
梨子「その割には……今日のごはんは豪華ですね」
曜「ふぉんとひっぱいだね………うむっ……」
善子「飲み込んでから喋りなさいよ」
ダイヤ「それは……この村を危機から救った、千歌さんと、皆さんへの労い、ですわ」 千歌「そんな……私何も……」
鞠莉「またまた〜!まさか私の部屋に置いておいたボウガンが秘密兵器になるなんて、思いもしなかったわ!」
千歌「でも、私皆が居なかったら何もできなかったし……そもそもイビルジョーの前にも立てなかったと思う」
果南「そんな『みんな』を動かすの結構大事だと思うけどね。ほら、ダイヤみたいに」
ダイヤ「な……なんでそこで私を出すのですか!?」
果南「別にー? お、このスープ、濃い味ついてて美味しいね!何だろ……魚介味?」
花丸「あ、それ……ルビィちゃんが釣って来たお魚で取った出汁使ってるから……どうずら、 いい味でしょ?」
梨子「え……ルビィちゃんって釣り出来たの!?」
ルビィ「鞠莉ちゃんが……今後本当にご飯に困るかもって言ってたから曜ちゃんに習い始めたんだ」
善子「……明日から、マジで節制生活なのね」 鞠莉「そんな訳で、明日から極貧生活だけど……でも何より、ここには九人そろってる!私はこれが、何よりの収穫だと思うの!」
ダイヤ「ええ、そうですね……」
果南「まあ、小物作りに釣りと、期待の稼ぎ頭も居ることだし何とかなるでしょ!」
ルビィ「ええ!?それってルビィの事!?」
梨子「ルビィちゃんにたかるのは……ちょっと人として……」
花丸「マ、マルも小物作り手伝うから…!」
曜「私も狩り出るよー!果南ちゃんとダイヤさんの武器の調整をしないとなると、時間が余りそうだしね!」 ──────────────────────
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鞠莉「ねえねえ、ちかっち」
千歌「ん…?あ、鞠莉ちゃん。どうしたの、台所なんかに来て」
鞠莉「ちょっと、お水が欲しくてね……それより、ちかっち話があるの」
千歌「……何?鞠莉ちゃん」 鞠莉「私、前に言ったじゃない。みんなを導いて欲しい。って」
千歌「……うん、覚えてる」
鞠莉「ちかっちは、立派にその役目を果たしてくれた。ルビィ達だけじゃなくて、私達の事もしっかりと手を引いてくれた」
鞠莉「私達がこうして、この島に居られるのもちかっちのお陰よ……だから、ありがとう」
千歌「鞠莉ちゃん……」
鞠莉「これから、こういう苦難だったり、危険な事が無いとは限らない。何が起こるか分からないのが人生だから」
鞠莉「もしかしたら、もっと大変な事が、もっと苦しい事があるかもしれない。生活だってどうなるか分からない」
鞠莉「そんなことになったら、私が何とかする。精一杯考えて、精一杯行動する。だから、そんなの時にはちかっちにも…みんなに、力を貸してほしいの」
千歌「そんなの、みんないい、って言うに決まってるよ」 千歌「だって……曜ちゃんも、梨子ちゃんも、花丸ちゃんも、善子ちゃんも、ルビィちゃんも、ダイヤさんも、果南ちゃんも」
千歌「そして……私も!この村の事、大好きだもん!鞠莉ちゃんも、そうでしょ?」
鞠莉「ええ、もちろんよ!」
千歌「大好きな村で、みんなで一緒に暮らしたい、その為に今までも、これからも、頑張るよ!」
鞠莉「流石ちかっち、頼もしいわね!」
鞠莉「差し当たって……さっきも言ったけど、文字通りこの村はすっからかん!ちかっちにも明日からどんどん狩りに出てもらうわよ!」
千歌「………うん、任せて!私、強くなったから!」
鞠莉「ふふっ……ホント、頼もしいわね」 鞠莉「じゃあ、戻りましょっか。早くしないとお肉のいい所持ってかれちゃう」
千歌「……そうだね、お腹いっぱい食べないと!」
「ちかちゃーん!タンシチュー無くなっちゃうよー!」
「あー!ずるい、今行く!!!」
肉の焦げた匂い、煮込まれ、溶けた野菜の芳醇な香りが辺りに広がる
昇る煙に、肉の脂の香りが染み付いている。
宴の明かりを残して、夜は更けていく。
何かに追われる事の無い、のんびりと、しかし騒がしい時間がそこには流れていた
これが小さな、九人の少女が暮らす海辺の村を襲った事件の顛末と
彼女たちの新たな未来の幕開けであった
おわり 【ハンター】
千歌…駆け出しハンター。村が危機に直面し、戦力揃わない村の為自らが戦うことを決意する。
ハンターカリンガ→ロアルドスクロウ(3rd)
ユクモ霊弩【弾雨】(3rd)
果南…村一番のハンター、大剣の使い手。中型〜大型のモンスターを一人で狩る技術を持つ。ただ、防具が殆ど揃わない中での狩猟は危険なので大型の狩猟は滅多に行わない。
角王剣アーティラート(2ndG)
善子…ライトボウガンの使い手。果南に次ぐ実力。1.被弾しない事2.誤射しない事3.使う弾を正確に判断すること4.当てる事。それらを心に、冷静を信条に戦っている。堕天使語録を呟くのはルーティーンとして冷静さを失わない為。
ド級弩アルデバラン(3rd)
梨子…弓の使い手。都のギルドのハンターだった。命を張ることが怖くなり、都からでて西へ西と旅を続けていた所をこの村へ流れ着いた。天性のセンスにより、類稀な弓のコントロール技術を持つが、体力が無い為長期戦に向かない。
ファーレンフリード(3rd)
ダイヤ…ランス、ガンランスの使い手。狩猟関係でのリーダーであり、狩りに関する計画を立てる。現地での指揮を執り、大型モンスターの狩猟においては盾役になる。元々ガンランス使いだったが、火薬を多く使い村の財政に響くので使用をやめた。
バゼルミニアド(MHW)
鞠莉…村長。財政管理や自給自足の指揮、仕事の割り振り、外部との交渉を一手に引き受ける。また、ある程度の戦闘もこなすことが出来る。
大神ヶ島【出雲】(3rd)
【非ハンター】
曜…武器職人。小さいころから武器マニアで、その知識を生かしてハンターから転向した。火事の際、巨大なギルド産の武器図鑑を持って逃げており、それを基に武器を自己流で作成している。
(クリムゾンシーカー(3rd))
ルビィ…手芸、モンスター素材の加工を主に行う、こうしてできたアクセサリーや装飾品等を交易で売り払い、村は財政を賄っている。また、炊事洗濯を花丸と共に中心になって行っている。
花丸…本で得たモンスター知識で狩りの助言を行う。また、時折ハンター達の狩りに付いてきて調査や解体を行う。ボウガンの弾や、戦闘中に使用するアイテムは基本的に花丸が加工したもの。 乙
本格的なパロでモンスターの描写がしっかりしててよかった 円満だけど流石に続きは無理だよね
書き物してる人みたいな読み応え、是非また機会があれば見たい!完走乙 おつおつ
もう少し読んでみたいけど綺麗に終わったから贅沢言わん…面白かったぞ
ちょっと一狩り行ってくるわ 一気に読んでしまった
次々現れる強敵にドキドキしっぱなしだったよ
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