花丸「ねぇ、運命ってあると思う?」
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〜あらすじ〜
善子の態度の変化に違和感を覚えた花丸は
ダイヤの協力で善子が花丸を殺さないために一週間を繰り返していることを聞き出すことに成功する
しかし、運命から逃れるための情報も手立ても用意できないまま時間だけが過ぎていく
そんな中、切っ掛けを作るべきだと考えたダイヤは
その命を代償として花丸を生存させることに成功する
ダイヤの賭けにより生き残ることに成功した花丸は
ダイヤを死なせない正しい終わり方を迎えるために善子と協力し
人形呪術が怪しいと考え【人形蔵】で【人形による世界】が形成されている可能性を見つける
そしてその情報と、果南との合言葉を胸に二人は次の世界(一週間前)に向かう
戻った花丸たちは人形蔵のことを確認し、
花丸自身も知らない【誰か】と幼少期に一緒に人形蔵にいたという情報を入手する
調査による遅刻の通学路でルビィと出会ったことをきっかけに
果南達三年生そしてルビィの協力を得て、
一緒に居た誰かがルビィであること、今生きている世界が【ルビィの世界】であることを知る
そして、【ルビィの世界】は花丸を救うために作られ、
戻るには人形を依り代としたルビィを殺す必要があるとルビィ自身から言われた善子は
葛藤の末に【ルビィの世界】を破壊したのだった ダイヤ「どう?」
花丸「……否定、する意味もなさそうだね」
善子(花丸はダイヤから視線を落とす)
善子(すぐ傍に居る私にだけ見える下ろされた握り拳の震え)
善子(死ぬことを受け入れるくらいに守り通したかったこと……)
善子(その確信を、ダイヤは私の代わりに突いた)
善子(私が悪くならないよう、自分の考察として)
花丸「そのルビィちゃんについて、マル……私がどう考えていたのは知りようがないけど」
花丸「それ以外の人を救う目的があったのは事実ずら」
花丸「……どうせ、気付いてるんでしょ?」
善子「花丸……」
善子(花丸の悲しそうな笑顔に言葉が詰まる)
善子(気づいてた……そう言ってどうなるのか)
善子(気づかなかったなんて嘯いて意味があるのか)
花丸「そっか」 タイトルのセリフが善子ではなく花丸になってるのって今後の展開を示してるんよな?
続きはよ 花丸「そう、私は善子ちゃんを助けるために呪術を用いた」
花丸「突然だった、本当、これが運命なんだって……」
花丸「宿命なんだって強く印象付けるかのような、呆気なさだった」
花丸「交通事故だよ」
花丸「善子ちゃんは、マルの目の前で車に轢かれたんだ」
ダイヤ「……なぜ、そこで救おうと動いたの?」
ダイヤ「交通事故なんて、突然起きるのはいつだって誰にだってそう」
ダイヤ「今だって、世界のどこかで――」
花丸「そのくらい解ってるずら!」
花丸「解ってる……解ってても、諦められないことだってある」
花丸「私はそこで諦められなくて、諦めなくて済む方法を見つけちゃっただけ」
善子「花丸……」
花丸「その結果、私がその身代わりになるのだとしても」
花丸「善子ちゃんが無事でいてくれるなら……それでよかった」
花丸「なのに、私の呪術の先で、そのルビィちゃんって女の子がさらに壁を作ったのに」
花丸「善子ちゃんは……」
花丸「ここから先は地獄だよ」
花丸「私の世界の善子ちゃんは、呪術なしに死の運命を背負うほどに運がない」
花丸「それでも、私を助けたいって思う?」
善子「……聞くまでもないことでしょ」 善子「私が死ぬ運命だったなら、それでいい。そこまで戻る」
善子「そうすれば、花丸は助かるんでしょ?」
花丸「助からない。善子ちゃんを喪うなら、国木田花丸を救うことなんて出来ない!」
善子(この世界の花丸を見たのは短い記憶)
善子(けれど、果南達の驚いた表情が、それが意外なことだと示す)
善子(感情的な花丸は、泣きそうだった)
善子(それはそうだ。せっかく助けた私が、結局死のうと言うんだから)
善子(でも、それは花丸も同じなのよ)
善子(助けて、助けて、それでも失って)
善子(ようやく手がかりを掴んで辿り着いたこの世界で、花丸は死んでも良いって言う)
善子「私だって、花丸がいない世界なんて考えられない」
善子「ほかの世界で私がどうだったのかは知らない」
善子「でも、この私は花丸がいたからAqoursに入ることが出来た」
善子「多少乱暴な時もあったけど、私のおふざけに付き合ってくれてた」
善子「もう終わりだと思ってた高校生活が、凄く賑やかになって、楽しくなった」
善子「それは全部、花丸がいたから得られたのよ」
善子「これは意地、これは恩返し」
善子「私は花丸を諦めない。その結果が私の死なら、受け入れるわ」
善子「もちろん、出来れば死にたくないけどね?」 善子(花丸は複雑な表情で私を見る)
善子(言いたいことを抑え込むように、手を震わせる)
善子(でも、花丸は何も言わずに顔を伏せて)
善子(首を横に振って……それでも何も言わなくて)
善子(静かになった部屋に、果南の重い声が鳴った)
果南「これは、本来部外者である私達ではなく、二人がしっかりと決めることだね」
果南「この世界に留まるか、この世界から出ていくのか」
果南「善子ちゃんは出ていこうとしてる。マルちゃんはどうする?」
花丸「私が言いたいことは言ったずら」
善子(果南から戻った私の目に見える花丸は、俯かず震えてもいない)
花丸「それでも、行くと言うのなら私はもう止めない」
花丸「私が善子ちゃんを助けたいのと同じように、善子ちゃんは私を助けたい」
花丸「100年話し込んだって何も変わらない平行線なのは目に見えてる」
花丸「だったら、変化をもたらしてくれるかもしれない善子ちゃん達に譲るずら」
花丸「良いよ。頑張ってみると良い」
善子「あっさりね……」
花丸「どうせ、失敗したらその世界の国木田花丸が呪術を探し当ててここに戻ってくることになるから」 善子「それも、運命だと?」
花丸「私が諦めない限り、私が呪術を探し求めることはもはや宿命なんだ」
花丸「それを変えたければ、私が産まれるよりも前に戻って何かを変えなくちゃいけない」
花丸「例えば、私が浦の星女学院に通えないよう、男の子として産まれてくるようにするとか」
善子「そんなの――」
花丸「無理。だから、私は必ずここに戻ってくる」
花丸「その時、善子ちゃんは今ある記憶のすべてを持っていない」
花丸「だから……そう、もしかしたら私達の子のやり取りだって、初めてじゃないかもしれない」
花丸「もう何十回、何百回と繰り返したうえでのことなのかもしれない」
ダイヤ「だとしても。今ここにいるわたくしたちは、これが最初で最後の勝負です」
花丸「………」
花丸「それもそうだね」
花丸「向こうの世界でダイヤちゃんに協力して貰っていたら、もっと違う変化があったのかもしれないと思うと、ちょっと悔やまれるずら」
ダイヤ「わたくしはそれほど大きな変化をもたらせるとは思っていません」
花丸「だとしても、わずかな違いが大きな変化になることもある」
花丸「投げた小石の波紋は小さくても、その湖の中で大きな魚が動くかもしれない」
花丸「……ふぅ」
善子(花丸は大きく息を吐いて、私を見る)
善子(おっとりとしている大きな瞳は今日ばかりは真剣さを持って、まっすぐ私に向けられている)
善子(いつもとは違う花丸。けれど、花丸)
花丸「そしたら、私の世界に戻る方法を教えるね」
花丸「と言っても、方法は簡単」
花丸「マルの作った呪術の結界そのものを破壊すればいい」
花丸「善子ちゃんはもう知ってるよね? 人形蔵」
善子「……知ってる」 花丸「そんな怖がらなくていいよ」
花丸「ルビィちゃんの時は、私が自分の結界を壊されないために」
花丸「確実に単一の呪術破壊を目的とした方法を話してたはずだから」
果南「どうしてそう言い切れるの?」
花丸「それを話したのが私以外の私だから。私だったらこうする。それが、その私がする行動ずら」
善子「じゃぁ、私は花丸を殺さなくていいのね?」
花丸「それが確実だから、そうするのが一番ずら」
善子「その言い方なら、ほかの方法がある」
花丸「……結界に利用してる人形の破壊」
花丸「最も簡潔に言えば、蔵自体を破壊したらいいと思う。焼却とか」
善子「いやいやいやいや!」
善子「焼却はないでしょ!」
花丸「どうせ燃えたところでこの世界は終わるし」
善子「だとしても――」
ダイヤ「待って」
ダイヤ「この世界が終わる。というのは、善子さんが観測しなくなるというわけではなく」
ダイヤ「この世界の存在そのものが消滅する。ということ?」
ダイヤ「例えば、テレビの電源を消すだけ……ではない?」
花丸「今はテレビというより、夢の方が近いずら」
花丸「夢だからこそ、それを形成している存在が失われれば崩壊して消えてなくなる」
花丸「だから、世界は終わる。と言ったんだ」 ダイヤ「夢……」
花丸「そう。夢」
花丸「だから別に蔵を焼却されたところで、次……というか、以前の世界には何も影響がないよ」
善子「じゃぁ、私がルビィを殺した世界も……」
花丸「その時点で世界の崩壊現象を感じたはずだよ」
果南「崩壊現象?」
花丸「私がそう呼んでるだけずら」
花丸「意識が遠のくというか、持っていかれるというか……まぁ、夢から醒める。みたいな感覚だね」
果南「気になるのは、その時に私達がどうなるかなんだよ」
果南「途方もない話ではあるけど、世界が崩壊する。それは前提としよう」
果南「そのうえで、無関係であろう私達はどうなるの」
花丸「それは……さすがに私も未経験だから分からないかな」
果南「未経験で答えられないと、前提が崩れるんじゃ――」
善子「一週間のやり直しを花丸は経験してるからそこからの推測でしょ?」 善子「一週間のやり直しを何度もしてるけど」
善子「それも多分そこまでの世界を崩壊させて、また戻してる感じ……になるでしょ?」
花丸「それは詳しくないかな。そこは善子ちゃんの感覚に委ねるよ」
花丸「ただ、それに似た感覚を私は感じてきた」
花丸「だから、崩壊現象としてる」
善子(なるほど……私の黒魔術と呪術はほぼ同一の現象とみて良いわね)
善子(もっとも、影響範囲と供物が比にならないほど重いけど……)
善子(でも、もしもそうだとしたら……)
善子「もしかしたらだけど、無関係な人も記憶を持つ可能性はあるかもしれない」
善子「以前の世界の話だけど、ルビィはともかく花丸も時々記憶を継承してるような言動をしていることがあったのよ」
善子「そこからの推測だから……というか、花丸が関わっていた以上眉唾な話にはなるんだけど」
善子「別世界のさらに別世界の状態でもおぼろげながら記憶継承出来ていたっぽいから」
善子「果南とダイヤも次の世界に記憶を持ち越せる……かもしれない」
善子(ちょっとした希望的観測)
善子(可能であればどうであって欲しいという願い)
善子(でも、それを花丸は当たり前のように否定する)
花丸「それは無理じゃないかな」 花丸「善子ちゃんの期待は分かるんだけど、まず無理だよ」
花丸「1週間のやり直しは、やり直し地点までの世界を断絶することにはなるけど」
花丸「あくまで、そのやり直し地点までの世界は継続されることになる」
花丸「……なんて言ったらいいかな」
花丸「Aがルビィちゃんの世界、Bが私の世界だとして」
花丸「善子ちゃんのやり直しは、AからA.5まで進んだ世界からAに戻っているに過ぎない」
花丸「だから、世界の構造自体に変化はないせいで、所謂デジャヴュというものが発生しやすくなっているずら」
花丸「一方で、AからBに世界が移動する際は、Aの世界が崩壊することになる」
花丸「当然ながら、Aに居たダイヤちゃん達とBに居るダイヤちゃん達は似ているとはいえ、すべてが違う」
花丸「世界の構造自体が似て非なるものである以上、デジャヴュのような回帰現象はまず怒らないと思うべきずら」
ダイヤ「では、ヨハネ――善子さんがこちらの世界に来たうえで記憶を持っている理由は?」
花丸「それは世界の構築に根本的に関わっているから」
花丸「さっき言ったけど、本来死ぬ運命にあるのは善子ちゃんなんだ」
花丸「それをマルは、世界の構築と言う強引な手で死ぬ運命を回避させた……」
花丸「つまり、世界の因果に津島善子という主軸が立てられている状態」
花丸「そのせいで、善子ちゃんは一週間のやり直しが出来てその記憶の保持も出来て、さらには世界を超えて記憶を持ち越せてしまう」 花丸「だから言っておくけど、善子ちゃんはともかくほかの誰かが世界を超えようものなら、存在の保証は出来ないよ」
ダイヤ「存在の保証が出来ない。とは、つまりルビィのように消滅するということで良いの?」
花丸「世界から、Aダイヤちゃんが異物として弾かれる際に、Bダイヤちゃんも一緒に弾かれてしまう可能性がある」
花丸「ルビィちゃんに関しては呪術的な問題だから話が違うね」
ダイヤ「……ですが、あくまでその可能性がある。というだけでしょう?」
花丸「私の周囲でそれを試した人はいないからそうなる」
花丸「でもどんな影響があるかわからないずら」
善子(ダイヤにはもう、それを話してある)
善子(だから、ダイヤは驚かない。怯まない)
善子(翠玉の瞳で花丸を見つめる)
ダイヤ「それで結構です」
ダイヤ「果南……貴女には言ってませんでしたが今回のヨハネ――善子さんに同行しようと思っています」
果南「同行って……別の世界にってこと!?」
ダイヤ「ええ」
果南「消える可能性があるのに、やるの?」
ダイヤ「それが、黒澤ダイヤのなすべきことだと思っています」 果南「黒澤ダイヤのって……」
花丸「ダイヤちゃんがその気なら、ルビィちゃんにもそうだったように止める気はないよ」
花丸「残念だけど、どうせ私は消えることになるからね」
花丸「もし向こうの世界でダイヤちゃんがいないとしても」
花丸「向こうの私はダイヤちゃんがいないってこと自体認識できないから」
果南「そんな薄情なこと、よく平気で言えるね」
花丸「止めても無駄……そういう顔をしてるからね」
花丸「私は死ぬためにここにいるんだよ?」
花丸「死ぬ覚悟のある私が、死ぬ覚悟をしてることくらい分からないわけがないずら」
花丸「ダイヤちゃんは冗談でもお遊びでも軽い気持ちでもない」
花丸「本気で、そうなっても良いって考えの上で善子ちゃんに付き添おうとしてる」
花丸「だったら私は止めない。私がそうしてここにいる以上、私には止められない」 花丸「ただ一つだけ」
花丸「善子ちゃんから聞いた話が全て真実なら、ダイヤちゃんは一度世界から消滅してる」
花丸「でも、ルビィちゃんの消滅によってダイヤちゃんが消滅するという原因そのものが取り除かれた」
花丸「だからある意味、今ここにいるダイヤちゃんは"本来存在しない"と考えて良いと思う」
善子「は……?」
果南「待って、ちょっと整理させて」
善子(果南はそう言ってダイヤに適当な紙とペンを借りて、何かを書く)
善子(悩ましそうな果南は、ペンのキャップで自分の唇を押し上げて呻いた)
果南「さっきの例を借りるけど、つまりここはAからBではなく、AからCに移動したようなもの……って認識で良い?」
果南「本来いないはずのダイヤがいる世界……C世界」
花丸「ううん、それも違う」
花丸「ここは間違いなく、Bの世界」
花丸「なんでかって言うと、マルの世界であるBの中にいるから」
花丸「もし仮にここがCの世界なら、私以外の誰かが管理者としての記憶を持っているはず」
花丸「ダイヤちゃんは、Bルビィという存在が呪術によって消滅した空席に座らされたいわば代理人」
花丸「だからこそ、"いないはずの存在"と言うべきなんだ」 善子「ねぇ花丸。本来ならルビィもダイヤもいるはずでしょ?」
善子「それに、ルビィの繰り返しによってダイヤがいなくなったってだけで」
善子「おおもとであるB自体にはルビィもダイヤもいるのが普通なんじゃないの?」
花丸「そうなんだけど……BだろうとB.1だろうとB.5だろうと」
花丸「そのどこかで呪術や魔術によって、黒澤ダイヤという存在が世界そのものから弾かれた場合」
花丸「B世界そのものに影響があるんだと思う」
花丸「さすがに、私もそこまで詳しい知識はないけれど、そう言うことだって思ってる」
花丸「実際、私は黒澤ルビィという女の子を知らないけれど」
花丸「善子ちゃんのことを信じれば、私は知っていて当然のはず」
花丸「でもBの私がルビィちゃんを送り出し、Aの世界でルビィちゃんが消滅した」
花丸「呪術の起点がBである以上、Bにおいて黒澤ルビィと言う存在が消失する」
花丸「でも、黒澤ダイヤと黒澤ルビィの二人の消失は、世界構造そのものを揺るがす重大な欠陥なんだろうね」
花丸「そうしてルビィちゃんが消えて、代わりにダイヤちゃんが入った……って思ってる」
善子「……なるほどって言って良いのか分からないけど、そう思っておくべきね」
善子「呪術も魔術も100%の理解なんて出来やしないんだから」 果南「ちょっと複雑になってきてるみたいだし……仕切り直しでもう一ついい?」
花丸「うん」
果南「ダイヤが"代理人"と言うのはそれでいい。理解は出来てないけど妥協するよ」
果南「それでその場合、ダイヤが本来の世界にたどり着けることへの影響はどの程度ある?」
果南「さっきの口ぶりから察するに、本来ならヨハネちゃんのみ可能でほかは保証できないけれど」
果南「ダイヤが"代理人"なら別って思えたんだけど……どう?」
花丸「今更だけど言っておくと、私が話せるのはあくまで推測の域を出ないものでしかない」
花丸「だから、ダイヤちゃんが"代理人"だったとして、どれほどの影響があるのかも想像になる」
花丸「でも"いないはずの存在"ということは、このB世界にへの繋がりが希薄だともいえる」
花丸「その状態なら、世界の崩壊の引力に巻き込まれずに消滅しないで辿りつくことが出来るかもしれない」
花丸「私の……ううん、国木田花丸の希望としては、そう答えたい」
ダイヤ「では、果南は……」
花丸「ダイヤちゃん以上に高確率で失敗する。その場合、もう一つの世界でどうなるかは分からないよ」
ダイヤ「なるほど……ではやはり、予定通りわたくしとヨハネ。二人で行いましょう」 果南「どうせ消えるなら私もって言いたいけど……ダイヤ以上にダメだって言うならやめた方がいいのかな」
善子「そうね……消えるリスクは低い方が良い」
善子(実際は、ダイヤの力も借りなくて済むのが一番かもしれない)
善子(でも花丸が希望と言ったように)
善子(結末を変えるためには、何らかの変化が必要になってくると思う)
善子(……花丸は、期待してる)
善子(私とダイヤが本当の世界に戻ることで)
善子(ここにいる花丸の、津島善子が生き残ることを)
善子(……津島善子。私じゃない、私)
善子「ダイヤ、本当に良いのね?」
ダイヤ「二言はないわ」
善子「……なら、いい」
善子「花丸。一つ確認なんだけど、私が必ず戻れることは保証されている。これは絶対で良い?」
花丸「そのはずだよ」
善子「なら、私とダイヤの繋がりをもっと深くできれば、ダイヤが戻れる可能性も上がる……と思っていい?」
花丸「そこまでは……」
善子(保証できない)
善子(それは当然……だけど、でも少しでも確実にするために)
善子「ダイヤ、私と黒魔術の契約をしてくれない?」 善子「絶対に効果があるって保証は出来ないし、少し痛いこともする」
善子「でも、やらないよりはやっておきたい」
ダイヤ「黒魔術の契約……言葉だけ聞けば、非常に怪しいものに感じるのだけど」
ダイヤ「その方法と効果はもう分かっているの?」
善子「方法は、自分と相手の血液を白いハンカチ……布でもいいんだけどそれに垂らす」
善子「その布で互いの左手薬指を結んで、中指に銀の指輪をする」
善子「ハシバミの枝で南東向きに三角形を作って」
善子「その方角に左手を向けて"ベレト、ベレト、わが王。どうか我らに導きを"これを2回唱える」
善子「最後に、薬指の布を解いて半分に切ってそれを左手の親指に巻く」
果南「結構面倒な感じだね……というか、本格的?」
善子「私が普段やってるようなお遊びとは違う、本当に本気の黒魔術。それも、悪魔に呼びかける系」
善子「ただ、だからこそ、効果は保証されると言ってもいい」
善子(でも……その効果が……)
果南「効果ってどんな?」
善子(心情なんてつゆ知らず、普通に聞いてくる果南からダイヤへと目を向ける)
善子(やるかやらないかは、任せよう。そう決めて、口を開く)
善子「……恋愛成就。それも、来世でもまた出逢えますように。的なレベルの」 ダイヤ「なるほど……ただ、左手の薬指を結ぶというのは少し難しいのでは?」
ダイヤ「多少無理をすれば不可能ではないけれど……」
善子「そこを突っ込まれても困る。調べた結果の手順だし」
善子(だからこそ、それ自体がガセネタの可能性もないとは言い切れない)
善子(悪魔召喚だから効果は高い可能性がある)
善子(でも、絶対の保証はない……なにより、効果があったらあったで恋愛って……)
善子(再会だのなんだのの縁と言えば恋愛関係だから仕方がないと言えば仕方がないんだけど)
善子(……背に腹は代えられない)
善子「もしかしたらダイヤと私の関係が歪なものになっちゃうかもしれない」
善子「でも、ダイヤが消えるくらいなら、私はそうなってもいいと思ってる」
善子「花丸を助けるためにはダイヤの力がいる……と、思ってるし」
善子「花丸を助けた代わりにダイヤが消えました。なんてなるのはごめんだわ」
善子「もちろん、こんなことしなくてもダイヤが無事に辿り着く可能性はあるから」
善子「どうするかは、任せる」 ダイヤ「……ヨハネ、いえ善子さんは万全を期したいと」
ダイヤ「悪魔崇拝の気持ちはわたくしにはないのだけど、大丈夫?」
善子「私だって100%信じてるわけじゃ……」
善子「そもそも、ガセネタの可能性もあるし」
善子(ダイヤは考える)
善子(私も花丸も果南も見ずに考え込んで、不意に顔を上げた)
ダイヤ「梟盧一擲……思い切りも大事かしら」
ダイヤ「その黒魔術の契約、やってみましょう」
善子(悩みは抜けていない様子ではあるけど)
善子(けれど、ダイヤはそう言った)
ダイヤ「人の命がかかっているのだから、やっておけばよかったという後悔がないようにしましょう」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています