絵里「素顔の璃奈」
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部室
璃奈「……」カキカキ
璃奈「新しいボード、出来た」
璃奈「う〜ん……あぁ〜」ノビー
カタン パシャッ
璃奈「わっ、ジュースこぼしちゃった‼」
璃奈「……あ〜あ、せっかく描いたボードが……」グッショリ
璃奈「誰か来る前に急いで描き直さなきゃ」
ガラッ
絵里「あら、璃奈。いたのね」
璃奈「うわっ、絵里さん!?」
璃奈「あわわわ……」バッ
璃奈「み、見ないで」
絵里「え?どうしたの?」
璃奈「素顔、見られるの……恥ずかしいから」
絵里「あ、そうなの。ごめんなさいね」
璃奈「こちらこそごめんなさい」
璃奈「あの、今ボードで顔を隠すから廊下で待ってて……お願い」
絵里「わかったわ、出てるわね」 璃奈「……絵里さん、おまたせ。入っていいよ」
ガラッ
絵里「もう大丈夫?」
璃奈「うん、とりあえずライブで使うボードを付けた」
絵里「なにをしていたの?」
璃奈「新しいボードの顔を描いていたんだけど、ジュースをこぼして濡らしちゃったの……」
絵里「あぁ、なるほど。そこに私が来てしまったと、タイミングが悪かったわね」
璃奈「絵里さんは、悪くないよ。私が油断しただけ」
璃奈「また、描き直し。予備のボード持って来ててよかった」スッ
璃奈「……」カキカキ
絵里「あなた、いつもそうやってボードに顔を描いているの?」
璃奈「ボードがないと私、生活出来ないから」
絵里「そう、大変ね」
絵里「ーどうして、ボードで顔を隠すの?」
璃奈「そ、それは……」
絵里「言いたくないなら無理に話さなくてもいいけど」
璃奈「……」 璃奈「私……感情がうまく表情に出せなくて」
璃奈「嬉しいとか、怒ってるよとか、悲しいとか、楽しいとか」
璃奈「そういう気持ちはあるんだけど、どうしてもそれを顔に出せない」
璃奈「だから、璃奈ちゃんボードを使って私の感情を皆に伝えているの」
絵里「そうだったの……」
璃奈「……出来た」
璃奈「絵里さん、ごめんなさい。ボードを交換するからちょっと後ろ向いてて」
絵里「はい、今度は失敗しないようにね」
璃奈「わかってる、慎重に慎重に……これで、よし」
絵里「いいかしら?」
璃奈「うん、璃奈ちゃんボード『おまたせ』」
絵里「見慣れた璃奈のボードになったわね」
璃奈「やっぱり、このボードが落ち着く」 絵里「璃奈ちゃんボード、か」
絵里「私も絵里ちゃんボードなんて物があればあの時素直になれたのかな……」
璃奈「あの時?」
絵里「私、今でこそスクールアイドルをやってるけど」
絵里「μ'sに入る前は生徒会長としてどうすれば廃校を免れるか必死に考えていたわ」
絵里「同じくスクールアイドルとして活躍して廃校を防ごうと頑張っていた穂乃果達を否定したり」
絵里「私を気遣ってくれた希に反発したり」
絵里「とにかく、私一人でなんとかしようと周りも見ずに奔走していたわ」
絵里「でも、一人で頑張らなくてもいい」
絵里「自分の気持ちに嘘はついちゃいけないって」
絵里「穂乃果達が教えてくれたの」
璃奈「絵里さん……」
絵里「ごめんなさい、あなたとはまた事情が違ったわね」
璃奈「ううん、そんな事ないよ。絵里さんも辛い時があったんだね」
璃奈「絵里さんの気持ち、わかるよ。璃奈ちゃんボード『うんうん』」 絵里「ところで、ずっと気になっていたんだけど」
絵里「そのライブ用のボードってどうなってるの?」
璃奈「これはオートエモーションコンバート璃奈ちゃんボード」
絵里「おぅとえもぅしょんこんばぁと……???」
璃奈「簡単に言うと、私の感情を読み取って画面に表情を出してくれるの」
絵里「へぇ〜すごいわねぇ‼」
絵里「でもこれ、前は見えるの?」
璃奈「カメラが内蔵されていて周りをボードの内側から見る事が出来るから。璃奈ちゃんボード『心配ご無用』」
絵里「ハラショー‼まるでSF映画にでも出てきそうね」
絵里「私が付けても表情が出るのかしら」ワクワク
璃奈「これは私専用のボードだから絵里さんは使えないと思う」
絵里「なぁんだ、残念」
璃奈「……ちょっと待ってて」カキカキ
絵里「ん?なにを描いているの?」
璃奈「璃奈ちゃんボードは貸してあげられないから代わりに」
璃奈「私の手作り、絵里ちゃんボード」
璃奈「『かしこい』『かわいい』『エリーチカ』『ハラショー』の全4種」
璃奈「絵里さんにあげる」
絵里「わぁ、私の顔そっくり。上手ね璃奈」
璃奈「えへへ……それほどでも、あるかな」 絵里「絵里ちゃんボード『かしこい』『かわいい』『エリーチカ』」
絵里「『ハラショー』‼」
璃奈「絵里さん、似合ってる。璃奈ちゃんボード『いいね‼』」
絵里「ありがとう、楽しいわね〜これ」
璃奈「……楽しい、か」ジーッ
璃奈(絵里さん、ボードを見てワクワクしたり使えないってわかったらガッカリしたり)
璃奈(絵里ちゃんボードをあげたら喜んだり表情がコロコロ変わる……)
璃奈(やっぱり、私も……)
絵里「璃奈、どうかした?」
璃奈「クルクル変わる絵里さんの表情、羨ましい」
璃奈「私も、絵里さんみたいになりたいな」
璃奈「でも、こんな時でもボードに頼っちゃう。璃奈ちゃんボード『しょんぼり』」
絵里「璃奈……」 絵里「私と璃奈は、変わらないわよ」
璃奈「え……?」
絵里「私は表情で、あなたはボードで感情を表している」
絵里「むしろボードを使っている璃奈の方が個性があっていいと思うわ」
璃奈「そう、なのかな」
絵里「コンプレックスと個性は捉え方次第でどちらにも転ぶものよ」
絵里「それに感情って顔だけで表現するものじゃないのよ」
絵里「声や雰囲気、あとは体全体を使って感情を伝える事が出来る」
璃奈「そっか、表情以外にも感情を表す方法はあるんだ」
璃奈「私、そこまで考えた事なかったよ。璃奈ちゃんボード『目から鱗』」
絵里「璃奈にはしっかりとした感情がちゃんとある」
絵里「それをボードで伝えるのはとても素敵な方法だと思うわ、立派な個性よ」
絵里「だから、自信を持って。あなたのやり方は間違っていないわ」
絵里「私は璃奈ちゃんボード、好きよ」
璃奈「……今の言葉、愛さんが聞いたら喜んでくれるだろうな」
璃奈「璃奈ちゃんボードは愛さんのアイディアなの」
絵里「愛が?そうなの、いい先輩じゃない」
璃奈「うん、愛さんのおかげでこうやって絵里さんとお話する事が出来る。璃奈ちゃんボード『ありがたい』」 璃奈「璃奈ちゃんボードを使うようになって皆とお話出来るようにはなったけど」
璃奈「私、いつかは素顔を晒して感情を表してみたい」
璃奈「その時はとびきりの笑顔でいたいって思ってるの」
絵里「ーその日はきっと、そう遠くないわ」
璃奈「絵里さん、お願いがあるんだけど」
璃奈「私が笑顔を作る方法、一緒に考えて欲しいの。璃奈ちゃんボード『ぺこり』」
絵里「笑顔を作る方法……」
絵里「お笑いやバラエティー番組を見るとか?」
璃奈「そういうのはちょっと違うと思う……出来れば楽しい事をして笑いたい」
絵里「楽しい事、か。う〜ん……」
絵里「あ、そうだわ」
絵里「ねぇ璃奈。今度のお休み、私とおでかけしない?」
璃奈「おでかけ?どこに行くの?」
絵里「楽しい所、よ。ふふ」
璃奈「璃奈ちゃんボード『?』」 日曜日
璃奈「ここは……」
絵里「遊園地よ、来た事ある?」
璃奈「ううん、初めて来た」
璃奈「テレビでは見た事あるけど色々な乗り物がいっぱいだね。璃奈ちゃんボード『ワクワク』」
絵里「ふふ、ボードを使わなくても璃奈がワクワクしてるのが伝わるわね」
絵里「ここなら璃奈もきっと笑顔になれるはずよ」
璃奈「そうだといいなぁ」
璃奈「絵里さん、あれなんだろ?行ってみよう」トテテテ
絵里「あ、こら。走ると危ないわよ」
絵里「もう、まるで子供ね」クスッ
絵里(一緒に来てくれるか不安だったけど連れて来てよかったわ) ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています