善子「ねぇ、運命ってあると思う?」
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ダイヤ「花丸さんの死を聞いた貴女の冷静さ」
ダイヤ「人探しは無駄だと断じたその自信」
ダイヤ「そして、人が死ぬ夢を見たというだけで相談に来た判断」
ダイヤ「ルビィ、貴女にしては……」
ルビィ「おかしかった?」
ルビィ「……おかしいよね。でも、さすがに冷静ではいられなかったよ」
ルビィ「冷静だったら、私はちゃんと高校一年生のルビィでいられたはずだもん」
ルビィ「花丸ちゃんから誰かが死ぬという話を聞いて……お姉ちゃんのことだろうなって思って」
ルビィ「そしたらあんな話を聞くことになっちゃって」
ルビィ「驚いたし、それ以上に悲しかった」
ルビィ「頑張って、頑張って」
ルビィ「私のすべてをかけた呪術でさえ、花丸ちゃんを死ぬ運命から救えなかったんだから」
花丸(ルビィちゃんはあーあ。と、悲しそうな笑みを浮かべながら呟く)
ルビィ「……そうだよ。お姉ちゃん」
ルビィ「花丸ちゃんの小さい頃、一緒に居たのはルビィだよ」 果南「合点がいったよ」
果南「本人だから、探そう。じゃなくて無駄だって言ったんだね」
果南「憶測だけで否定する子じゃないと思ってたけど、そっか……」
ルビィ「ルビィが使ったのは、善子ちゃんが使うのと少しだけ似てる」
ルビィ「違うのは、牛ではなく日本人形を使った呪術であること」
ルビィ「そして、代償はルビィの命」
善子「は?」
ルビィ「以前のルビィは15歳だったから、その15年分を人形に込めるという意味で」
ルビィ「髪の毛を切って、人形に埋め込む」
ルビィ「その人形とルビィの血を使って四方陣を組み、陣の中で命を絶つ」
ルビィ「そうすることで、ルビィを供物として呪術が行使される」
花丸「……じゃぁ今ここにいるルビィちゃんは、誰?」
ルビィ「ルビィはルビィだよ。ルビィの願いを引き受けた人形だけどね」
ルビィ「でも、この世界はルビィが形成しているから人間と何も変わらない。血は流れているし、死ぬよ」 ルビィ「陣を長く保管されるために人形蔵が適しててね」
ルビィ「ルビィが目を覚ましたのは人形蔵で、目の前には花丸ちゃんがいた」
ルビィ「その時に見られちゃったんだね。きっと」
花丸(ルビィちゃんは簡単なことのように語る)
花丸(自分の命を絶つということは、つまり自殺したということ)
花丸(それをルビィちゃんが躊躇したのかしなかったのか)
花丸(自分を人形だと言ったルビィちゃんの姿勢が、教えてくれる)
花丸(ルビィちゃんは躊躇しなかったんだ)
善子「この世界があんたのものってことは、私が何してたのか全部知ってるのね?」
ルビィ「知ってるけど知らないが答えだよ」
ルビィ「この世界はルビィの呪術によって形成されたけれど、理自体を制御してるわけじゃないからね」
ルビィ「ルビィの呪術はあくまで人形で形成された箱庭であり、その中で作られた箱の中身を覗くことは出来ない」
ルビィ「ただし、何かが起こってることだけは察知できる」
花丸「……だから、あんなに気にしてくれてたんだ」
ルビィ「そのルビィを私は知らないけど、でも、そうだと思うよ」 ダイヤ「ではルビィ、貴女は脱する方法を知らないのね?」
ルビィ「そうだよ。だから力になれないって……あぁ」
ルビィ「今、善子ちゃんの呪術はルビィの中で行われてるのは理解できるよね?」
ルビィ「それが可能ということはもしかしたらルビィの呪術ですら、"何かの中"なのかもしれない」
鞠莉「……マトリョーシカのような感じ?」
鞠莉「人形の中に人形っていう」
ルビィ「うん、それがイメージしやすいかも」
ルビィ「だから、箱を開けて行けばどうにかできるかもしれないよ」
ルビィ「ルビィの呪術を破壊して箱庭の外に出る。そこで、もう一度呪術を探し出し、破壊する」
ルビィ「花丸ちゃんが死ぬという運命が回避できないのは、それを人形の内側に内包してしまってるからって可能性がある」
果南「なるほど、一理はあるね」
果南「ただ、破壊した場合どうなる?」
果南「冒険お疲れ様でした。元の世界にお帰りなさいなんて言わないでしょ?」 ルビィ「ルビィが呪術を使わなかった世界に戻ることになると思う」
ルビィ「つまり……いや、その前に話しておくことがある」
花丸「話しておくこと?」
ルビィ「うん」
花丸(ルビィちゃんは怪訝そうな顔でダイヤさんを見ると)
花丸(善子ちゃんとマルへと向き直って、少なくともお姉ちゃんはいるんだよね。と、呟く)
ルビィ「善子ちゃんは前の世界で花丸ちゃんを死なせることなく一緒に呪術を使ったけど」
ルビィ「その結果、本来混じるべきではない不純物が紛れ込んだことになるんだよ」
善子「……嫌な予感しかしないんだけど」
ルビィ「間違いないね」
ルビィ「不純物が入るうえで、本来あるべき何かが外に弾かれちゃうんだ」
ルビィ「ルビィの場合、花丸ちゃんと一緒に戻った結果、物心つく前にお姉ちゃんが交通事故で死んでたよ」
花丸「え……」
ルビィ「繰り返して、月曜日の朝。お姉ちゃんはもう先に学校行ったのかと思ったら遺影なんだもん。絶望しかなかったよ……」 ルビィ「ただ、そのおかげなのか花丸ちゃんは死ぬことなく日曜日にまで行くことが出来た」
ダイヤ「ですが、私は……」
ルビィ「花丸ちゃんと話し合って、お姉ちゃんを取り戻そうって話をしてね」
ルビィ「最後の手段だった呪術を使って今になった」
ルビィ「15年も戻れば、ルビィが繰り返す呪術を使ったという部分を含めて戻る」
ルビィ「それによってお姉ちゃんが死ぬという結果を生み出すことになったことも無くなって」
ルビィ「お姉ちゃんは死なないままここにいる」
ルビィ「だから、ルビィの呪術を壊した場合、花丸ちゃんはいるけどお姉ちゃんのいない世界に戻ることになるはず」
ルビィ「そこは勘違いしないように気を付けてね?」
ダイヤ「では、その世界で――」
果南「ダイヤ。それを言ったらダメなことくらい、私でもわかるよ」
ダイヤ「っ」
鞠莉「ダイヤがいない世界で良いなら、そもそも二人は来てないわ」 善子「誰かがいなくなるなんて、そんな妥協はしたくない」
善子「……だからこそ、この世界もダメね」
善子「花丸が助かるとしても誰かがいないんでしょ?」
ルビィ「うん。お母さんはいたんだよね?」
善子「いたわ」
ルビィ「なら、善子ちゃんの親しい人……Aqoursかな?」
花丸(ルビィちゃんはそう言うと、考え込む)
花丸(誰を、何を)
花丸(失った誰かを推測するルビィちゃんは不意に頷く)
ルビィ「じゃぁ、一つだけ聞くね?」
ルビィ「Aqoursは8人のグループである。あってる?」
善子「なっ」
ダイヤ「違うのですか?」
花丸「違う……9人ずら」
ルビィ「そういうこと……誰かいなくなってる人がいる」
ルビィ「残念ながらルビィは呪術の強制力で誰がいないのかは分からない。すり合わせたほうが早いかな……互いに誰がメンバーかって」 知能指数たけぇって言ってんだろうが
うゅもピギィもぶっぶーもシャイニーもねぇじゃん
キャラ崩壊させ過ぎ >>692
まずそれが既にかずおのせいでキャラ崩壊させられたあとの設定じゃねえかよ この飯まずいって言ってんだろうがって言いながら飯食ってそう。 鞠莉「なら、ここにいる全員は除いて……善子から言ってみて?」
善子「言うって言っても二年生だけど……高海千歌」
ルビィ「いるよ」
善子「渡辺曜」
ルビィ「うん、曜ちゃんもいる」
善子「なら……桜内梨子」
ルビィ「いない」
花丸「梨子ちゃん……? なんで?」
花丸(言い方は悪いかもしれないけど梨子ちゃんは全くの無関係のはずだ)
花丸(なのに、どうして? そう悩むのを悟られたのか)
花丸(ルビィちゃんは困ったように首を傾げた)
ルビィ「むしろ関係ないから弾きやすかったんじゃないかな」
ルビィ「お姉ちゃんは花丸ちゃんの代わりに死んだけど、だからこそ花丸ちゃんの想いが結びついて飛ばせなかったんだろうね」
果南「一応、私は名前くらいなら知ってるよ」
果南「千歌の隣に引っ越してくる予定だった家族の一人。表札に名前が書いてあったからね……」
果南「引っ越してくる途中で交通事故に遭ったらしいよ」
ダイヤ「ほんの一時ニュースになっていたあの……ええ。それでしたらわたくしも名前くらいは」 善子「……なるほど、千歌が死について敏感って言うのはそれが理由ね?」
果南「そう。誰が来るのかって楽しみにしてたんだけど、結局来ることはなかった」
果南「好奇心を止めなかった私の責任かな」
果南「表札の名前を見ちゃってね……それで」
花丸「梨子ちゃんがいない世界……作曲は誰がしてるんだろう」
ルビィ「誰って……それは」
鞠莉「善子よ。なんだっけ、ボーカロイド? とかいうやつでちょっとだけやったことあるからって」
善子「えぇ……」
花丸(本気? と言いたそうな善子ちゃんの苦い表情)
花丸(マルはぼーかろいどがどういうものか知らないけど、知ってる善子ちゃんがそんな顔をするなら)
花丸(あんまりいいものではなさそうだ)
善子「変なことになってるわね……まったく」
善子「それで、ルビィの術式を壊した場合の影響は?」
ルビィ「梨子……ちゃん? さん? は戻ってくるはずだよ。ルビィの術式を壊すにあたって、通れるのは一人だけだから」
ルビィ「因果を崩壊させる花丸ちゃんじゃなく、善子ちゃんがやるのなら。だけどね」 善子「花丸も一緒じゃないの?」
ルビィ「可能だとしてもやめたほうが良いけど、無理だよ」
ルビィ「呪術を使うのではなく、壊すことで回帰させる以上」
ルビィ「壊した人以外が回帰の波に耐えられるとは思えない」
ダイヤ「その呪術破壊は複数人で行うことは?」
ルビィ「んーどうだろう。無理だと思う」
ルビィ「複数人での儀式ならともかく、私一人だからね」
果南「そっか……善子ちゃん、花丸ちゃんはそれで大丈夫?」
善子「大丈夫なんて聞かれても困るわよ」
花丸(ダイヤさん達ではそもそもの輪から外れてしまうことになる)
花丸(つまり、可能なのは善子ちゃんとマルで、マルが不可能なら残るは善子ちゃん)
花丸(要するに、選択肢など存在しない)
善子「せっかく、花丸を連れ出したのに」
花丸「マルがいなくてもマルはいるしみんながいるずら」
花丸「善子ちゃんなら大丈夫」
善子「煽てられても困るんだけど」 善子「また一から説明するのね……信じて貰える自信がないわ」
果南「私は例のやつで良いと思うよ」
果南「実際、あれがあっての今だから」
鞠莉「what? 何の話?」
果南「こっちの話」
花丸(選択肢はなく、善子ちゃんは困ったように頷く)
花丸(善子ちゃんしかいない、善子ちゃんしかできない)
花丸(マルも何かできたらいいのに、何もできない)
花丸(マルには、果南ちゃんのようなキーワードなんてないから)
善子「分かった。分かったわよ。やるしかないし」
善子「ルビィ、その呪術の破壊方法は分かってる?」
ルビィ「うん……分かってる」
花丸(ルビィちゃんは躊躇いがちに頷く)
花丸(それしかないとしたのはルビィちゃんなのに)
花丸(善子ちゃんしかいないとしたのはルビィちゃんなのに)
ルビィ「ただ……善子ちゃん以外は聞かない方がいいと思う」 花丸「え?」
ダイヤ「なぜ?」
ダイヤ「呪術の破壊がどの程度の規模かは分かりませんが、準備含め一人では難しいこともあるのでは?」
ルビィ「破壊まではルビィが手伝うよ。道具の準備とか」
ルビィ「ただ、実際にする内容は……」
果南「……あぁ」
鞠莉「果南?」
果南「んー……いや、まぁ、そういうこと?」
善子「何よ。なんなのよ」
花丸(ダイヤさんと鞠莉ちゃん、それとマル達をよそに)
花丸(果南ちゃんは何かに気付いて呟きながら、目を見開く)
花丸(ありえないものを見ている感じの瞳、そこに映っているのは何なのだろう)
果南「ルビィちゃん、今までの話を全部信じるなら方法は一つしかないんだけどさ」
果南「本当に、絶対にそれ以外にはないの?」
ルビィ「ないですよ」
果南「知らないだけ……じゃ、なさそうだね」 ダイヤ「果南さん、分かっているのなら話してください」
鞠莉「そうよ果南、非常時なんでしょ?」
果南「そうなんだけどルビィちゃんの気持ちもわかるって言うか」
果南「間違ってて欲しいって本能が否定したいって言うか……」
ルビィ「邪魔しないって約束できるなら良いよ」
ルビィ「前提としてそれ以外に方法はないことを分かっててもらいたい」
ルビィ「それをしなければ桜内さんは返ってこない……まぁ、私達この世界の人にとってはそこまで重要な人でもないんだけどね」
善子「ルビィ!」
ルビィ「事実だよ。この世界のAqoursにとって桜内さんは無関係に等しい」
ルビィ「いようがいまいがどっちだっていい。だから、花丸ちゃんが助かるなら尊い犠牲と思おう」
ルビィ「……なんて言われても困るんだよね。特に、お姉ちゃん」
ダイヤ「わたくし、ですか?」
果南「そうだね。あと、鞠莉もあんまり聞きたくない話だろうね……いや、誰でも嫌がるか」 鞠莉「もうっ! いい加減にして!」
鞠莉「止めるか止めないか、何も聞かずに言えるわけがないわ」
鞠莉「果南、ルビィ。分かってるなら話して」
ルビィ「………」
花丸(鞠莉ちゃんの怒った声に怯えた様子はなく、黙り込むルビィちゃんの視線は果南ちゃんに向かう)
花丸(果南ちゃんもルビィちゃんを見て、それを受けてかルビィちゃんは頷く)
ルビィ「この世界はルビィが使った人形による箱庭なのは話してた通り」
ルビィ「そして、さっきしれっと言ったけどその箱庭を形成している人形こそ今みんなの目の前にいるこの私なんだ」
ルビィ「呪術の破壊とはこの世界の破壊」
ルビィ「要するに破壊する方法は……私を殺すってこと」
ダイヤ「ふざ――」
ルビィ「ルビィがふざけてるわけない。ましてや冗談で言うわけがないよ」
果南「この世界はルビィちゃんが形成してるってさらっと言ってたからね。そうかなと思ってたけどやっぱりそうなんだね」 善子「殺す? 私が、ルビィを?」
ルビィ「うん。実際に呪術が行われた人形蔵で殺して貰う」
ルビィ「この世界を形成してる主軸だから、ルビィが死ねばこの世界は崩壊して再構築されるし」
ルビィ「その世界で殺人云々って問題にはならないから安心して良いよ」
ルビィ「善子ちゃんなら知ってるよね。世界は五分前に作られてるってやつ」
ルビィ「まさにそれだよ」
ダイヤ「待って……待ってルビィ。本気ですか? 本気で死ぬと?」
ルビィ「それ以外に道はない。善子ちゃんと花丸ちゃんが桜内さんを犠牲にして良いって言うならまた別だけどね」
ルビィ「……そもそも、私は黒澤ルビィを模した人形だから」
ルビィ「人形が一人の人間として生きていること自体誤りだとするなら、これは必然の帰結」
ルビィ「我儘過ぎたんだよ。ルビィは」
ルビィ「花丸ちゃんもお姉ちゃんも失いたくない。誰も殺したくないなんて」
ルビィ「それが巡り巡って殺され殺させることになった。それを背負わせる善子ちゃんには申し訳ないなぁって思うよ」 花丸(ルビィちゃんは笑う)
花丸(まるで、本来のルビィちゃんのように)
花丸(人形だというのが殺させるための嘘にも思える自然さ)
花丸(だけどそれはきっと、嘘なんかではなくて)
善子「……時間」
善子「少しだけ時間をくれない?」
ルビィ「なら今日一杯はその時間にしよっか」
ルビィ「桜内さんが死んだことで、花丸ちゃんは死ぬ運命からそれているはずだけど」
ルビィ「ここまで引っ掻き回した私達を許してるとは思えないし」
ダイヤ「………」
鞠莉「ダイヤ……」
ダイヤ「すみません、一人にしてください」
ダイヤ「学校は……行く余裕がありませんから、お休みします」
果南「……そうだね」
花丸(影を落とすダイヤさんが部屋から出て行ったのを目で追った果南ちゃんは息の混じった声で呟く) 五分前仮説ww
覚えたての言葉使いたい系小学生やww 思ってたより壮大なことになってんな…最初から読み返そ。 自分が知的なこと書けないからって僻むなよみっともない… ――――――
――――
――
花丸(結局ダイヤさんと鞠莉ちゃんが学校を休み、それ以外のみんなは登校することにした)
花丸(本当は鞠莉ちゃんじゃなく果南ちゃんが休む予定だったみたいだけど)
花丸(状況を考えてか、果南ちゃんが学校に来てくれることになった)
花丸(ルビィちゃんは昨日とそんなに変わらない雰囲気だ)
花丸(まるで、死ぬだの殺されるだのの話が聞き間違いだったかのように感じるその一方で)
花丸(善子ちゃんの沈んだ表情が現実へと引き込む)
花丸(それはクラスメイトにも伝わってしまうようで、心配そうなな雰囲気を醸し出しつつも)
花丸(誰一人として声をかけてきたりはしないまま……お昼休み)
善子「………」
花丸「善子ちゃ」
善子「……大丈夫。ちょっと、見ておきたいところがあるだけ」
花丸(おもむろに席を立った善子ちゃんは、呼び止めることすら許さずに答えて教室を出ていく)
花丸(見ておきたいところがどこかなんて、考えるまでもない) ルビィ「お弁当。一緒に食べてもいいかな?」
花丸「へっ、あっ……うん」
ルビィ「お邪魔します」
花丸(登校途中に用意したお昼)
花丸(同じお店のちょっと違うマルとルビィちゃんのお昼が机を埋める)
ルビィ「なんだか"知り合い"みたいだね」
花丸「そうかな」
ルビィ「そう感じるよ。少なくともルビィ……私達はそう感じてるはず」
花丸(知り合い。友達でも親友でもなく、知り合い)
花丸(今までと比べれば繋がりの酷く薄れた表現が、齧ったパンの欠片を飲み込ませない)
ルビィ「実際、私から見た二人はまだ二日目の顔見知りだし、二人から見た私だってそれと同じようなものじゃないかな」
花丸「そんなことないよ」
ルビィ「そっか。それが私の見当違いだったかな……違う。私の考え方が変わりすぎたんだろうね」 花丸「例の話をしたこと、後悔してるの?」
ルビィ「してないよ。してない……そこが私の狂ってるところなのかもしれない」
ルビィ「必要なことだから。たったそれだけであんなにも簡単に話せちゃったんだからね」
花丸(手が止まってしまうマルの目の前でルビィちゃんは食べ進めていく)
花丸(本当に違う……全然)
花丸(ルビィちゃんは殺される必要があることを恐れてない)
花丸(殺させてしまうことを申し訳なく思っているのに、それ以外の道がないという絶対的な諦念がある)
ルビィ「ねぇ、花丸ちゃんと善子ちゃんは幼馴染?」
花丸「え……そう、だけどもしかしてこっちでは違うずら?」
ルビィ「こっちでは同じだよ。でも、向こうではどうかな」
ルビィ「向こうだと、花丸ちゃんの幼馴染はルビィだったんだ」
ルビィ「……同じことにならないようにって色々と避けてきたこともあるけど」
ルビィ「それ以前に違うことも多いんだよね……多分、それが世界を構築するってことなのかも」 ルビィ「ただ、それでも変わらないことがある」
ルビィ「ルビィが花丸ちゃんたちに出会ってしまうこと」
ルビィ「人数の多少はあってもAqoursが結成されること」
ルビィ「それと……死ぬこと」
花丸「だから、ルビィちゃんは運命だって?」
ルビィ「どうなんだろうね」
ルビィ「善子ちゃん達の話を聞いて、改めて考えてみたんだけど」
ルビィ「お姉ちゃんの意志が花丸ちゃんの死を妨げたのがただの偶然じゃないのだとしたら」
ルビィ「全部、誰かの強い意志が働いているだけなのかもしれないよ」
ルビィ「Aqoursは千歌ちゃんが、私達は私達が」
ルビィ「だとしたら、花丸ちゃんが死ぬようにと強く思ってるのは……」
ルビィ「そこだけが分からない。花丸ちゃんが恨まれるはずない。花丸ちゃんがそう願われるはずがない……だから、答えが見つからない」 ルビィ「私達はここでゲームオーバー」
ルビィ「向こうの世界にも花丸ちゃん達がいるのはいるけど」
ルビィ「でもそれは花丸ちゃん達であって、"今ここにいる花丸ちゃん達"じゃない」
ルビィ「何か、話しておきたいことはないの?」
花丸「……無理をしなくてもいいよ。って、くらいかな」
花丸(殺さないでなんて言ってしまった)
花丸(助けて欲しいと言ってしまった)
花丸(その時考えていた以上に責任は重く、殺意は強く、脱するための方法は常軌を逸してる)
花丸(その過去に戻り、無かったことに出来たらどれだけ良いだろうと、今は思わずにはいられない)
花丸「でも、さすがに言えないよ」
花丸「マルが死んで終わるならそれもいいかもしれない」
花丸「けど、梨子ちゃんがマルの身代わりに消えてしまっている以上それは出来ない」 花丸「……ルビィちゃんが助けたマルは、何か言ってた?」
ルビィ「ルビィの幼馴染は死ぬことを受け入れてた」
ルビィ「早いか遅いか、どう死ぬかの違いだけ。そこに誰かの意志が介入していようと」
ルビィ「世界的に見ればそれは一つの命が終わる運命でしかないんだよ。って……笑ってた」
ルビィ「手を引いた時、花丸ちゃんに振り払われたこともある」
ルビィ「運命を変えるということは、誰かの運命を捻じ曲げることになる」
ルビィ「だから、それがどれだけ理不尽であろうと受け入れなければいけないのが理なんだって、ね」
花丸(ルビィちゃんは食べ終えたパンの空き袋から空気を抜くと)
花丸(話しながら綺麗に折りたたんで、買い物袋の中に入れていく……机の上には、マルの分だけが残った)
花丸「それでも助けたんだよね?」
ルビィ「うん」
花丸「何も言われなかった?」 ルビィ「色々言われたよ。実際、ルビィは花丸ちゃんを助けた結果お姉ちゃんに会えなくなったし……」
ルビィ「ルビィが呪術を使ったという事実そのものを上回る回帰呪術を用いることで、ルビィは逃げるしかなかった」
花丸「もしそのマルだったら、初めから助けてなんて言わなかったのかな?」
ルビィ「言わなかったと思うけど、でも、それはそれ。これはこれだよ」
ルビィ「さっき言ったけど、違う部分は存在する」
ルビィ「もう一人の自分がどうしたかなんて考える必要はないし、考えるなら自分がどうしたいかを考える方がいい」
花丸「……ルビィちゃんは凄いね」
ルビィ「何も凄くはないよ。自分が自分ではないという記憶がある人形だからってだけだもん」
花丸「ルビ……」
ルビィ「……あっ、お昼の時間無くなっちゃうよっ」
花丸(ルビィちゃんらしい声と表情……雰囲気)
花丸(でも、知っているルビィちゃんじゃないと……今はもう、はっきりと分かってしまう) 起 ループ発覚
承 ダイヤが犠牲となって別ループ
転 ルビィを殺す←今ここ
結 ハッピーエンド(断言)
別の呪術使用者がいるならルビィ殺しは承でそれが転かもしれない
これスレッド容量足りないのでは?(推測) さっさとルビィ殺して世界崩壊みんな仲良く消滅ENDで終われば良いのにな ――――――
――――
――
花丸(善子ちゃんは時間ギリギリで戻ってきた)
花丸(横を通ったときの悲しそうな表情……梨子ちゃんの存在は本当になかったんだろう)
花丸(救うためには何かを傷つけなければいけない、失わなければいけない)
花丸(世界にそう、諭されているようで……)
花丸(放課後になると、席を立った善子ちゃんにルビィちゃんが近づいた)
善子「……なに?」
ルビィ「昨日と同じ部屋だって。善子ちゃんが連絡見てないだろうから伝えてって」
善子「そう」
花丸(今日の善子ちゃんの空気もあってか、遠巻きに心配そうな目が向けられる中での、囁く会話)
花丸(二人が喧嘩したんじゃないか)
花丸(ふと聞こえた呟きの平和さに、それならどれだけ良かっただろうかと思う)
花丸(二人と一緒に教室を出て、何も会話をしないままバスに乗る)
花丸(人のまばらなバスの中、善子ちゃんのほっとしたため息が聞こえた) 善子「大丈夫そうね」
ルビィ「……桜内さん、どうだった?」
善子「影も形もなかったわ」
善子「転校前だったからか、ほんと……何にもね」
ルビィ「そっか……」
ルビィ「……全てを背負わせるのは悪いと思ってるよ。でもそれ以外にない」
ルビィ「恨んでくれていいし、憎んでくれてもいい」
ルビィ「その方が、やりやすいだろうからね」
花丸(マルを間に挟んで隣に座る善子ちゃんへと、ルビィちゃんは優しく語りかける)
花丸(ただ、その優しさは痛い)
善子「……ふざけんじゃないわよ」
善子「恨めも憎めもしない……そんなことがあるわけがないでしょ」 善子「あんたが命を賭けてくれたから私は生まれることが出来た」
善子「今は辛い。苦しい。けど、ルビィが悪いわけじゃないし」
善子「繰り返して、何とかしようとしたのは私の意思」
善子「……だから」
花丸(善子ちゃんは言葉半ばに口を閉ざす)
花丸(きゅっと結ばれた唇、俯きがちのせいか垂れた髪の影が重い)
善子「だから、こそ……私……」
花丸「………」
花丸(無理しないでなんて口が裂けても言えない。ありがとうなんて嫌味にも程がある)
花丸(何が言えるだろう。何ができるだろう)
花丸(発端になっているマルに、かけてあげられる言葉は……)
花丸(きっと、何も言わないのが正解だ。何も言わずに……ただ)
善子「っ」
花丸(善子ちゃんの膝上で震える手に、手を重ねる)
花丸(傍に居る。力がなければ声もない。影も形もないけれど……でも、いるからね。と、善子ちゃんの手を握るだけだ) 花丸(善子ちゃんがルビィちゃんを殺さずにこのままを選ぶとしても、責められない)
花丸(梨子ちゃんがいない世界)
花丸(マルを生き延びさせようとしたせいで、梨子ちゃんが消えてしまった世界)
花丸(責任はマルにある。罪はマルにある)
善子「……なによ」
花丸「へ?」
善子「ゲームの恋愛イベントでもあるまいし、もっと何か言ったっていいのに」
善子「何も言わないで……そんな顔して……」
花丸「善子ちゃん?」
善子「花丸を助けるという"理由"でも、そうすると決めて"行動"したのは私」
善子「花丸がそんな顔をする理由も、梨子のことを背負う必要もない」
善子「それは私の役目よ……ここから先に行く、私の役目」
善子「私が頑張ったのも、ダイヤが助けてくれたのも……こんな場所で諦めるためじゃないッ」 花丸(善子ちゃんの手が、強く握り拳を作る)
花丸(力も言葉も強いけれど、心がそれに耐えられるかどうかは別だ)
花丸(特に、マルみたいに間接的じゃなく)
花丸(ルビィちゃんを直接殺すなんていう行いは……)
ルビィ「なら、やれるね?」
善子「ええ」
ルビィ「じゃぁ……そうだなぁ」
花丸(善子ちゃんが頷くのを見ると)
花丸(ルビィちゃんはちょっとだけ悩んでいるようなそぶりを見せる)
ルビィ「あとはお姉ちゃんかなぁ……」
花丸(ルビィちゃんを殺すこと)
花丸(ダイヤさんが許可を出すなんて思えない。許してくれるなんて思えない)
花丸(なかったことになるとしても、殺したことに変わりはないから) 花丸(バスを降りて、果南ちゃんの協力で淡島へと向かう)
花丸(昨日借りたホテルの一室では、ダイヤさんと鞠莉ちゃんが待機していて)
花丸(ルビィちゃんのただいま。という声に、ダイヤさんは「おかえりなさい」と静かに返す)
ダイヤ「善子さん、決まりましたか?」
善子「……やるわ」
ダイヤ「ルビィ、花丸さんも?」
ルビィ「私は善子ちゃんがやり遂げてくれるなら異論は無いよ」
花丸「マルも……ない」
果南「私は一つだけ聞きたいかな」
果南「本当に呪術の破壊が出来るんだよね? 呪術破壊に失敗して何もなくルビィちゃんが死ぬだけなんてことはないよね?」
ルビィ「そこは約束できるよ」
ルビィ「そもそも、私の場合は絶命した時点で黒澤ルビィを維持できなくなるから」
ルビィ「死ねばただの人形になって砕け散るよ……もっとも、それが観測された時点で破壊に失敗したということになるけど」 ダイヤ「……そんな易々と!」
花丸(ダイヤさんの怒号が響く)
花丸(善子ちゃんとマルだけが、その震えた空気に後退って)
花丸(果南ちゃんも鞠莉ちゃんも何も言わない)
ダイヤ「易々と……絶命などと」
ルビィ「私は死ぬ話をしてるんだよ? 死ぬかもしれないじゃなく、死ぬ話」
ダイヤ「ええ分かっています。ですが、そもそもそんな話を」
ルビィ「必要だからしてるんだよ。お姉ちゃん」
ルビィ「お姉ちゃんがルビィを愛してくれてたのは知ってる。その温もりも優しさも」
ルビィ「それを失ったルビィにとって手放しがたい幸せであることに間違いない」
ルビィ「それでも私はこの命を捧げると言う」
ルビィ「私はルビィの命を引き継いだ。願いと祈りを引き受けた」
ルビィ「だから……それを成し遂げられる可能性があるのなら命を賭すことを厭わない。その考えは変えられない」 ダイヤ「人形と言えど、これまで生きてきた立派な人でしょう?」
ダイヤ「それなのに命を捨てるなんて」
ルビィ「捨てないよ」
ルビィ「ルビィが死んだことで私がここにいるように」
ルビィ「私が死ぬことで、芽吹くものは必ずある。私の命は過去の願い。それを無駄遣いなんてさせないよ」
花丸(自分の胸に手を宛がって意思を語るルビィちゃんは強く見えて)
花丸(それを見つめているダイヤさんはとても悲しそうで)
花丸(ダイヤさんの下ろされた手が、固まっていくのが見えた)
ダイヤ「貴女は、生まれたときからわたくしの傍に居てくれました」
ダイヤ「長女の私が担えばいい稽古を、貴女はとても楽しそうに付き合ってくださいました」
ダイヤ「……貴女は自分を人形だと言うけれど、わたくしにとっては貴女こそがルビィです」
ダイヤ「愛しています。たとえ、世界が変わってしまうとしても……ずっと」 花丸(本当は、認めるなんて嫌なはずだ)
花丸(そんなことなんて絶対にさせたくないはずだ)
花丸(だけど、今のルビィちゃんは今までのルビィちゃんとは全く違う異質さを感じさせる)
花丸(あえてそうさせているのか、もう偽る必要がないからなのか)
花丸(立ち位置の違うマルには分からない)
花丸(だけど、それがルビィちゃんの言葉を真実に昇華する)
花丸(拒みようのない"過程"であると証明する)
花丸(だからこそ……ダイヤさんも認めざるを得ない)
鞠莉「けど、向こうでいないのはダイヤなんでしょう?」
鞠莉「それについて何も言わないんだから、ダイヤもダイヤよ」
ダイヤ「わたくしは良いのです。年長者として先立つ覚悟はできていますから」
ルビィ「言っておくけど、私はルビィの15年を合わせて三十路の最年長だからね?」 果南「それを嬉々として語るのはどうなんだろう……」
ダイヤ「その割に、成績は中間でしたが?」
ルビィ「出る杭は打たれるからね」
ルビィ「世界への影響力を考えれば、大きすぎる変革は世界そのものの崩壊を招きかねないんだよ」
果南「って、言い訳かな?」
ルビィ「違うもん!」
花丸(ルビィちゃんはむっとして声を上げる)
花丸(ほんの少しだけ、優しい空気)
花丸(いつも見るものではないけれど、穏やかで愛おしい)
花丸(隣に立つ善子ちゃんは、寂しそうな笑顔でそれを見ている)
花丸(失ったもの、守れなかったもの)
花丸(これから……手に入れようとしているもの)
善子「……花丸、私ね」
善子「花丸がいてくれなかったら、私はきっとただ頭のおかしいことをしてる高校生でしかなかったんじゃないかって思ってるの」 花丸「ん?」
善子「笑わずに聞いてよね……」
善子「私はただの厨二病だった。高校生にもなって、ヨハネだのなんだのって」
善子「そんな私を、花丸はAqoursに入れるようにしてくれた」
善子「こんな私のバカみたいな言動を、呆れながらもかまってくれたのが花丸だった」
善子「ちょっと痛いツッコミもあったりしたけど、でも、人との繋がり方に不安しかない中で」
善子「無視せずに付き合ってくれてるってことが、私にとっての救いだった」
善子「だから、私は花丸を諦められない」
善子「神が花丸を殺すと言うのなら、私はこの手で神の首を絞め殺す」
善子「やるわ。私……やり遂げて見せるわ」
善子「そのために、私はもう一度だけヨハネを名乗る」
善子「だから……花丸はまた、馬鹿なこと言ってって、背中を叩いてくれない?」 花丸(背中を押せと、善子ちゃんは言ってるんだと分かってしまう)
花丸(引いてしまう手を握らずに、拒絶するように背中を叩いてと)
花丸「良いの?」
善子「良い」
花丸(善子ちゃんの声ははっきりとしているのに、マルの声は頼りない)
花丸「きっと、すっごく痛いよ」
善子「それが良いの」
花丸「もしかしたら躓いちゃうかもしれないよ」
善子「もう二度と躓かないわ」
花丸(優しく、笑いも混じっているような善子ちゃんの声)
花丸(覚悟を決めたと分かるその声に、どうしてもう終わりにしようと言えるだろうか)
花丸(バスの中で手を掴まずに抱きしめていれば……もう終わりにしようと言えてさえいれば)
花丸(マルは善子ちゃんを失わずに済んだのだろうか)
花丸(顔を上げれば、善子ちゃんの自信に満ちた横顔が見える) 花丸(あぁ……大丈夫だ)
花丸(あの日見た、ヨハネを彷彿とさせる自信に満ちたこの善子ちゃんなら)
花丸(握った拳を解く)
花丸(息を吐いて……唇を噛み合わせる)
花丸「仕方がないなぁ……ヨハネは」
善子「……善子でしょ」
花丸「マルにとっての始まりは、善子ではなくヨハネだったよ」
善子「だから――」
花丸(持てる力の全力で)
花丸(勢いよく振った左手で、善子ちゃんの腰のあたりを引っぱたく)
善子「ひぐっ!?」
花丸(部屋に響く大きな音。集まる視線)
花丸(痛がる善子ちゃんにだから言ったのにと……微笑む)
花丸(帰ってきて欲しくないから、行ってらっしゃいもさよならも言わないよ。なんて、心にもなく思った) ルビィ「……良い顔をするようになったね」
善子「そう? 変わらないと思うけど」
ルビィ「変わって見えるよ。きっと、向こうの面倒くさい花丸ちゃんもすぐに察してくれると思う」
善子「面倒くさいってどんな感じなのよ」
ルビィ「少なくとも、生きる気はないかな」
ルビィ「死ぬ運命を話しても受け入れるだけで抵抗しようとしない」
ルビィ「善子ちゃんが頑張るなら付き合ってくれるっていう感じ」
ルビィ「ルビィの時もそうだった」
ルビィ「協力はするけどするだけって感じだったね」
ルビィ「諦めても恨みも憎みもする気はないと言うか……むしろ、それでいいって促してくる感じ」
果南「それは……困ったね」
ルビィ「手強いよ。それでも、やれるんだよね?」
善子「やると決めたからにはやるわよ。あんたが心配してることだって……心配ないわ」 花丸(善子ちゃんの言葉に、なぜかルビィちゃんは驚いた顔をする)
花丸(ルビィちゃんが心配していることはマル達が知ってることとは別にあるのか)
花丸(それを聞こうかとしたところで、ルビィちゃんが笑顔を見せた)
ルビィ「それなら……後顧の憂いはないね。安心して任せられる」
ダイヤ「ルビィ、何かあるの?」
ルビィ「ううん、大丈夫。大丈夫だよ」
花丸(ルビィちゃんは心底安堵したように言うと)
花丸(ぐっと体を伸ばして、鞠莉ちゃんへと目を向ける)
ルビィ「鞠莉ちゃん、用意はできた?」
鞠莉「……やるのね?」
ルビィ「うん。花丸ちゃん、人形蔵に入れるよう交渉をしてくれないかな」
花丸「今日はさすがに無理だと思うよ?」
花丸(そうは思いつつも電話をしてみると……意外にも、許可が出てしまった) ルビィが知的なのは三十路だとしてもよしまるもいちいち知的過ぎるんだよなぁ…
馬鹿は天才を書けないらしいがその逆パターンか? 花丸(深夜、みんなが寝静まるころに)
花丸(マル達はこっそりと人形蔵に忍び込む)
花丸(月曜日の朝ににおわせることになっていたこともあって)
花丸(人形蔵の中を見たいという要望は思っていた以上に簡単に叶えて貰えた)
花丸(明日の朝に返すね。と、言ったけれど、返せてしまったら大変なことになる)
果南「……なんかちょっと、不気味だね」
善子「環境的に考えればこんな時間に来ちゃダメな場所だしね」
鞠莉「心なしか……外よりも寒く感じる」
ルビィ「陣はルビィがやるから、善子ちゃんは道具の確認をしておいて」
ルビィ「肋骨や胸骨が邪魔になるから、刃は立てずに寝かせること」
ルビィ「心臓を一突きしたら、鍵を開けるように捻って抜く」
ルビィ「それが一番儀式的に正しく、そして早いと思う」 ダイヤ「っ……」
花丸「ダイヤさん、ここからは無理に立ち会わなくても大丈夫だよ?」
ダイヤ「大丈夫です。大丈夫、ですわ」
ダイヤ「……ルビィ、この人形はどこに?」
ルビィ「人形はルビィを囲むように四方向、仰向けに倒しておいて欲しいかな」
ダイヤ「わかったわ」
花丸(辛そうな表情は変わらないけれど、ダイヤさん達も協力をしてくれる)
花丸(ルビィちゃんを殺す必要のある儀式)
花丸(オカルトなことを信じてくれるのは、果南ちゃんが言ったように信じてくれているからだろう)
花丸(少なくとも……冗談なんかじゃないって)
花丸(ほどなくして準備は終わる)
花丸(ルビィちゃんを囲むように倒れた人形)
花丸(人形同士をつなぐ陣、ルビィちゃんと直結する陣)
花丸(正座するルビィちゃんが、深く息を吐く) ルビィ「じゃぁ始めるよ」
ルビィ「善子ちゃん、ルビィを押し倒す勢いで突き刺してね?」
善子「……分かってる」
ルビィ「お姉ちゃん、鞠莉ちゃん、果南ちゃん」
ルビィ「辛ければ見ている必要はないからね?」
花丸(ルビィちゃんの気遣いにみんなが首を振る)
花丸(分かってる。ではなく、大丈夫という意思)
花丸(ルビィちゃんは困ったように笑うと、白衣を脱いで襦袢のみになる)
ルビィ「……ふぅ」
花丸(ルビィちゃんは息を吐き、目を瞑って祈るように手を合わせる)
花丸(人形のすぐそばに置かれた蝋燭の火が、かすかに揺れる)
花丸(ルビィちゃんの唱える呪術的な言葉は、呟くような声で聞き取り辛い)
花丸(けれど……きっと聞き取ってはいけないものだと総毛立つ) 花丸(数分間の呪詛)
花丸(蝋燭の火が大きく揺らいで……ルビィちゃんの影をかき消す)
ルビィ「……っ!」
花丸(ルビィちゃんは自分の手首を思いっきり切ると)
花丸(その血を人形へと振り撒いていく)
花丸(4つの人形が赤色に染まっていく中で、ルビィちゃんは自分の切った手首を優しく撫でて)
花丸(その血を紅として唇に塗り……善子ちゃんが使う包丁に口づけする)
善子「………」
花丸(互いに言葉はなく、善子ちゃんは包丁を受け取って)
花丸(こっちに来てから練習したルビィちゃんの心臓の位置めがけて――包丁を力強く突き刺す)
花丸(鈍い衝撃音、揺れるルビィちゃんの体、うめき声がルビィちゃんの口から飛び出して)
花丸(善子ちゃんは強く唇を噛みながら、包丁をひねって引き抜いた) このまま皆殺しにすればハッピーエンドじゃん
全滅ENDで良くね? ここから新章?って感じなのかな。どっちにしてもこのスレじゃもたなそう。 ルビィ「っぁ……」
ダイヤ「ルビィ……っ」
花丸(仰向けに倒れたルビィちゃんの苦しそうな声に、ダイヤさんは見ていられなくなったのか目を伏せて)
花丸(善子ちゃんの持っていた包丁から血が飛ぶ)
善子「はぁっはぁ……くっ」
果南「だめだ、浅い……」
花丸「え?」
ルビィ「……ぁっ」
花丸(ルビィちゃんは震える左手で自分の胸を撫でると)
花丸(握り切れない中途半端な手で、人差し指をたてる) 善子「ごめん……っ、ルビィ」
ルビィ「く……っぁ」
花丸「………ルビィちゃん」
花丸(目を逸らすわけにはいかないと、唇を噛み、爪を立てて握り拳をつくる)
花丸(その痛みはルビィちゃんには遠く及ばない)
花丸(けれど、ルビィちゃんはマルのために命を賭けてくれてるから……少しでも。じゃダメなんだ)
花丸(そのすべてをちゃんと、たとえ引き継がれることがないとしてもこの命に刻まないといけない)
善子「ふーっ……ふー……っ」
花丸(善子ちゃんはルビィちゃんに跨ると、一度刺した胸元に包丁をたてて持ち手の先に右手の平を置く)
花丸(ルビィちゃんの表情は苦しそうなのに……笑顔で)
花丸(浮かぶ冷や汗と、穴の開いてしまった心臓から溢れた一部か……咳き込むたび、口元から血が出ていく) 花丸(ルビィちゃんは何か言いたそうで)
花丸(けれど、言葉を発するほどの力はもうないのか……唇が震えるだけ)
花丸(ダイヤさんを鞠莉ちゃんが抱きしめているのが横目に見える)
花丸(唇を噛み切った果南ちゃんの苦渋に歪んだ顔が見える)
善子「……分かってる。絶対にやり遂げて見せるから……待ってて」
花丸(善子ちゃんは、ルビィちゃんに包丁を突き立てたまま、極めて明るく声をかけた)
花丸(殺そうとしている状況とは思えないほど優しく、温かく)
花丸(場に不釣り合いなほどの笑顔を浮かべて)
ルビィ「……が……ぃ」
花丸(ルビィちゃんのかすれた声)
花丸(善子ちゃんはそれを聞いて、添えていた右手で強く握り拳を作り……解く) 善子「くっ!」
花丸(善子ちゃんはその右手で包丁の持ち手の先を力強く叩く)
花丸(持ち手を殴られた包丁は今度こそ、ルビィちゃんの心臓をしっかりと貫いたのだろう)
花丸(ルビィちゃんの体はその勢いでわずかに浮いて、痙攣して)
善子「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!」
花丸(善子ちゃんは叫ぶままに包丁を力一杯に捻って抜く)
花丸(血が、はね飛ぶ)
花丸(ルビィちゃんの体から流れ出ていく血の量は少しずつ増えていく)
花丸(裂けた胸の肉を押しのけ、含んだ空気のはじけた、ごぷっ……という不気味な音が、耳に残る)
花丸(血に染まった包丁を手に、ルビィちゃんに跨る善子ちゃんは天井を仰ぐ) 花丸(ルビィちゃんの血が陣に広がっていくと、不意に眩暈がした)
花丸(足元が崩れるような感覚に立っていられなくなって……)
花丸(果南ちゃん達の方に目を向けると)
花丸(そこには誰もいなくて……真っ白になっていく)
花丸(ルビィちゃんと、血の陣、そして善子ちゃん)
花丸(形成する三つの要素だけが残り……それすらもやがて消えていく)
善子「………」
花丸「善子ちゃん……っ」
花丸(声をかけ、手を伸ばす)
花丸(けれど手も声も届かなくて――すべてが真っ白な中にとけていく) 現段階で1レス750byteで流石に辛いので
すみませんが一先ずこのスレでの投下はここまでにして別スレに移行することになります
次スレをたてたら誘導します あと250レス残ってるのに無理なのか…
次から善子メインになるのかな? 保守期間が長かったにせよ最近では珍しく長いな
次行くなら一連のまとめ作ってくれないかな いつのまにか凄い話になってた
ループ物で救う/救われる二者間で完結しない話って面白いなとは思ってたけど、ここまで色んな人を巻き込んだ展開になるとは ごめんなさい、書きかけのやつのまま投下しちゃいました ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています