花丸「……そっか」

花丸「うん、確かに。マルもそういう話を聞いていないと言えば、嘘になる」

花丸「別に、お寺を継ぐことを強制されてるとか、そういったことはない」

花丸「だけど、継がないのなら継がないで、お寺は人の手に渡ってしまうこともあるかもしれない」

花丸「そうなったとき……というか、そうなる場合。かな」

花丸「相手の人が、その家の女であるマルを求めないとは限らないって」

花丸「もちろん、断っちゃいけないわけじゃない」

花丸「だけど」

花丸「じっちゃんもばっちゃもどんどん衰えていくずら」

花丸「別にいいよ。って、言ってくれてる」

花丸「気にしなくていいからね、って、笑ってる」

花丸「でも……今までわがままを許してくれて、あんまり恩を返せていないのに」

花丸「遺されていくお寺すら放り出して自分の好きに生きていくのは……どんなに、不孝なんだろうって」

ダイヤ「……花丸さんは、優しいのね」

花丸「違うっ」

花丸「優しいなら、優しいなら迷わずに受け入れてるずらっ」

ダイヤ「いいえ、優しいからこそ悩むものですわ」

花丸「っ」

ダイヤ「一度きりの人生を他者の願いに寄り添わせることができるのは、相手を想う優しさがあるからこそです」

ダイヤ「しかし、我を捨てその道を行くのならばそれはただの自棄でしかありません」

ダイヤ「育てて頂いた自分を大事に思い、受けた愛情を大切に感じて、返すべきであると思っているからこそ」

ダイヤ「自分の幸か、親の幸かを悩むのです」

ダイヤ「どちらが最も、親の幸福であるかを考えてしまうから」