海未「……とにかく遠慮せずに使ってください。私はお風呂を沸かしてきます」

胸の苦しさも限界に達し、この部屋という彼女の思い出から逃げ出したくなって、私は足早に立ち去ろうとし


海未「え――」


ぎゅっ――と抱き締められて、心を繋ぎ止められました。


雪穂「……」

海未「あ…」


密着した身体から、彼女の体温が、鼓動が、心の温度が、私の中に流れ込んできて。
その時初めて、この人も今の私と全く同じ心の動きを共有しているんだということに気付けたのでした。

抱擁というよりは、しがみ付くようなその抱き方で、私たちは自分自身を抱き締め合っていたのです。