レストランからマンションまでの道中でも、私たちはぎこちない会話を続けていました。

途中、妙なやる気を出してしまった私が、よせばいいのに自転車に二人乗りを勧め、
案の定慣れていなかったため、坂道で軽い暴走状態となって飛び出した車道で、
『便利屋にこにー』と書かれた軽トラに轢かれそうになり、運転手の方に怒鳴られるという失態もありましたが。
それすらも笑って流せるほどに、二人ともリラックスできていたのです。

マンションのエントランスに踏み込んだ雪穂さんは一言「お城みたい」
私はまたテンパって、「お城みたいと言っても、変な下心はないですから」と余計な一言。
彼女ははにかんで「分かってます。園田さんはいい人ですから」

いい人ですか……。ちょっと切なくなりますね。