千歌「果南ちゃ〜ん、なんで昨日ひとりで帰っちゃったの?」果南「え?」
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前スレ再掲から
VIPQ2_EXTDAT: checked:vvvvv:1000:512:----: EXT was configured ペラッ……ペラッ……
鞠莉(ドッペルゲンガー……)
ペラッ……パタン
鞠莉「はぁっ」
鞠莉(調べ方が悪いのかしら)
鞠莉(一冊の分厚い本から得られる情報が一頁分にも満たないなんて)
鞠莉(これは……ダイヤと花丸は相当苦戦するでしょうね)
鞠莉(どちらの家にも半端ない量の蔵書がありそうだし)
サッ
鞠莉「?」
鞠莉(すぐ近くを通った今の人……)
鞠莉(金髪……だった?)
鞠莉(私以外に?)
鞠莉(この町に?)
鞠莉(金髪の人なんて……そうそういないはず……)ガタン 鞠莉(どこへ行ったのかしら)カツン……カツン……
鞠莉(目に見える範囲にいないということは)カツン……カツン……
鞠莉(本棚の奥に入っていった……?)カツン
鞠莉「……あっ」
「?」
鞠莉(黄色いフードを被った人)
鞠莉(なんだ……そうよね、金髪なんて)
鞠莉(私のドッペルゲンガーでもない限り……)
鞠莉「……」フルフルッ
鞠莉(金髪の人くらいどこにでもいる)
鞠莉(髪を染めることなんてよくあるじゃない)
鞠莉(毒されすぎよ、鞠莉)
鞠莉(常に冷静でありなさい)
鞠莉(……次の本を探そう) 〜〜〜〜♪〜〜♪…………
ガラッ
千歌「梨子ちゃーん!!」
梨子「!」
ガラッ
梨子「千歌ちゃん、声張り上げちゃご近所迷惑よ」
千歌「えへへ、ごめん」
千歌「曲が終わったからつい呼んじゃった」
千歌「アレンジ、すごくいいね!」
梨子「そう?」
千歌「うん!明るくて、楽しくて」
千歌「アレンジ前のもしっとりしててすきだったけど」
千歌「アレンジ後はなんだか、元気がモリモリわいてくる気がする!」
梨子「一昨日見せてもらった千歌ちゃんの歌詞が元気いっぱいだったから、曲もそれに合わせて明るくしようって思ったんだけど」
梨子「お気に召してもらえたなら嬉しいわ」ニコッ 千歌「お気に召すなんてもんじゃないよ!大・大・大満足の大興奮!!」
千歌「最後の方なんて前と全然印象違ってて、なんかがんばるぞー!って元気もらえるよ!」
梨子「そこね、金曜日に行き詰まってたところなの」
千歌「梨子ちゃんでも作曲に行き詰まることってあるんだ?」
梨子「あるわよ、行き詰まってばっかり」フルフル
梨子「でもね」
梨子「今日、千歌ちゃんと果南ちゃんがいっぱい元気をくれたから」
千歌「えへへー、楽しかったね!ジムも、ショッピングも、カフェ巡りも!」
梨子「うん!いい刺激をもらえて、作曲もがんばれたわ!」
梨子「…………私がその……ドッペルゲンガーを怖がってたから、二人とも元気付けてくれたんだよね」
千歌「……うん、私自身、こわいなって思うし」
千歌「気分転換して、ドッペルゲンガーなんていない!って思えればいいなって」
梨子「ありがとう」
梨子「いないわよね、ドッペルゲンガーなんて」
千歌「いないいない!」 梨子「だから」
梨子「あそこに見える人影だって、私の気のせいよね……」
千歌「えっ?」
梨子「あそこ、道路の向こう側」
千歌「角度のせいかな……私には見えないけど」
千歌「人影なんて別に気にしなくても」
梨子「いるのよ」
梨子「バレッタで後ろ髪をまとめた」
梨子「私が」
千歌「……………………」 ピロン
千歌「……」チラッ
千歌「いないよ」
千歌「そんなのいない」
梨子「いない?」
千歌「いないいない!」
梨子「……よかった」
千歌「あんまり夜風にあたるのもよくないし、今日はもうゆっくり休もう?」
梨子「そうね、それじゃあまた明日」
千歌「うん、また明日」
ガラッ シャッ
梨子「…………」
梨子「いつもはこの時間、まだカーテン閉めないよね」
梨子「なんて、聞こえないか」
梨子「……何を隠してるの、千歌ちゃん」 DPG対策本部(7)
ダイヤ:進捗はいかがですか
ヨハネ:オエッ
曜:オエッて(笑)
ヨハネ:ほとんど何もわからなかった
ヨハネ:バイロケーションだのオートスコピーだの
鞠莉:自己像幻視だの鏡像幻視だの?
ヨハネ:わっけわかんないよね
鞠莉:馴染みのない文字列読んでもさっぱりだわ
ヨハネ:DPGの別の言い方みたいなのはポロポロ出てきてるんだけど
ヨハネ:DPGそのものについては元々持ってる知識以上の収穫は得られなかった
ダイヤ:そうですか
ダイヤ:私も似たようなものです
ダイヤ:風土資料などは見つかったのですが、量が多すぎてどこから手を付ければよいのかわからない状態です
曜:情報が多すぎるのも問題だね
ヨハネ:ネットなんか、情報が多すぎるように見せかけて似たような情報ばかり出てくる
曜:最初から順調にってわけにはいかないみたいだね
花丸:こっちも本が多くて関連書籍が見つかるまでどれくらいかかるかわからない
花丸:そもそも関連書籍があるのかすらもわからない ルビィ:みんな大変そうなのに手伝えなくてごめんなさい
鞠莉:いいのよ気にしなくて
ヨハネ:ルビィと曜は衣装作らなきゃだし、やっぱりこのグループから外しておこうか?
曜:気になって衣装作りに集中できないであります
ルビィ:同じくであります
曜:それに、情報共有してるとどこかで閃きとかあるかもしれないし
曜:こっちに限界が来るまではよろしくお願いしたい
千歌:(よろしくお願いします)
ヨハネ:(よろしくお願いします)
鞠莉:(よろしくお願いします)
ルビィ:(よろしくお願いします)
ダイヤ:(よろしくお願いします)
花丸:(よろしくお願いします)
曜:この一糸乱れぬスタンプ芸よ
ダイヤ:Aqoursの絆の強さの表れですね
千歌:ちょっと違わないかな 千歌:私の方は、収穫を得られないことがわかったという収穫を得られたよ
曜:なんのこっちゃ
千歌:今日は果南ちゃんと梨子ちゃんとおでかけしたんだけどね
鞠莉:昨日言ってたね
千歌:果南ちゃんにもう少し詳しく、鞠莉ちゃんのドッペルゲンガーについて聞こうと思ったんだけど
千歌:その話は忘れようって言われて
ヨハネ:ああー
千歌:たぶん
千歌:鞠莉ちゃんのドッペルゲンガーと散歩した日のことはもう聞けないと思う
ルビィ:ドッペルゲンガーの話をするとどうしても雰囲気暗くなるから
ルビィ:みんなが明るくいられるように気遣ってくれてるんでしょうね
ダイヤ:暗くなる話題は避けたいのでしょうね
ダイヤ:あれでいて察しのいい人ですから、二人で散歩した日のことを話題にすればドッペルゲンガーについて探られてると悟られてしまうでしょう
千歌:そうなるともう果南ちゃんは貝だよ
鞠莉:貝
曜:口を開かない?
千歌:うん
ヨハネ:お湯で茹でたら口を開くってことか
曜:拷問か! ヨハネ:明日からも難航しそうね〜
鞠莉:平日は特に時間取れないしね
鞠莉:本は何冊か借りてきたけど
千歌:あっ私
千歌:図書館行ってないから平日に調べることない
千歌:インターネットの検索なんて善子ちゃんみたいに上手じゃないし
曜:旅館のお客さんからお話聞けたりしないの?
千歌:軽い世間話くらいならするけど
千歌:こういう特殊な話は聞けないかな
鞠莉:じゃあ私の家で一緒に調べる?
千歌:学校に本持ってきてもらって、それから借りてもいい?
鞠莉:図書館からの又貸しになっちゃう
千歌:鞠莉ちゃんの家行くのは無理そうで
鞠莉:そうなの? 千歌:今日っていうかさっき、ドッペルゲンガー出たの
曜:えっ
千歌:梨子ちゃんと窓から話してたんだけどね、梨子ちゃんが見ちゃったらしくて
千歌:梨子ちゃんのドッペルゲンガーだったらしい
ヨハネ:千歌は見なかったの?
千歌:角度のせいか見えなかった
千歌:ただの見間違いならいいんだけど
千歌:バレッタで髪まとめてる自分が見えるってハッキリ言ってたから
曜:本当にいたんだろうね
千歌:実際私からは見えなかったから、ドッペルゲンガーなんていないって否定しておいたんだけど
千歌:梨子ちゃんすごく顔色悪くなってて、冷や汗もかいてて
曜:心配だね
千歌:平日に鞠莉ちゃんの家に私だけ行ってたら、何か思われちゃうんじゃないかなって
千歌:梨子ちゃんには、ドッペルゲンガーの話はもう終わったって思ってもらいたいんだ
鞠莉:確かにね 鞠莉:ちかっちには引き続き、梨子のメンタルケアをお願いしていいかな?
千歌:うん!
千歌:できることが少なくてごめんね
ダイヤ:そんなことは決してありません
ルビィ:とっても大変だと思います
ダイヤ:他人の精神安定に努めるというのは、自身にも多大な負担がかかるものです
ダイヤ:むしろ千歌さんには、一番労力のかかる役目を受け持って頂くことになると思っています
ダイヤ:苦しくなったときは必ず、私たちに声をかけてくださいね
ルビィ:いつでも頼ってね
千歌:ちょっと大袈裟じゃない?(笑)
千歌:でも、ありがとう! ザーッ
曜「雨、止まなかったね」
千歌「朝からずっと降り続けるなんてなー」
果南「朝練もできなかったし、気が滅入っちゃうよ」
鞠莉「まあまあ」
鞠莉「今日は梨子がアレンジした完成版の曲を聴いて、今後のスケジュールを立てましょう?」
梨子「まだダンスの練習に入ってないって言ってたからCメロをガラッと変えちゃったんだけど……」
果南「ああ、うん、大丈夫大丈夫」
果南「聴いてからまた振り付けもちょっと変えていこうね」
ダイヤ「それでは流しますね」 〜〜♪…………
曜「印象が全然違うね!すごくいい!」
ルビィ「心が晴れやかになるというか!」
善子「そうね、テンションが上がってくるわ」
花丸「音のひとつひとつが軽やかで、元は同じ曲のはずなのにこんなに変わるんだね!」
千歌「でしょでしょ!?元気わいてくるよね!!」
果南「なんで千歌が自慢気なの」クスクス
千歌「だって〜!この曲、一番初めに聴いたの千歌なんだよ!」
鞠莉「アハハッそれ関係あるの?」
ダイヤ「自分が良いと感じたものを、みんなも評価したのが嬉しいんですのよね」
千歌「そうそれ!」
梨子「なんだか照れちゃうな」 曜「創作意欲がわいてくるよ!私、衣装の方しにいっていい!?」
ルビィ「あっそれならルビィも!」
鞠莉「今日は練習もできないし、いってらっしゃい」
ルビィ「いってきまーす」
曜「まーす!」
千歌「私もそーさくいよくわいてくる!」
千歌「歌詞もなんかいい感じにできそうな気がする!」
花丸「あれ、できてたんじゃなかったっけ」
千歌「できてるんだけどね、もっと印象に残るフレーズを入れたいなって思って」
花丸「それじゃあマルも、お手伝いするずら!」
梨子「主旋律に違和感なく歌詞が乗せられるように、私もお手伝いするね」 果南「私、鞠莉、ダイヤ、善子は振り付け組ね」
ダイヤ「動けるように少し、机を端に寄せますわよ」
千歌「はいはーい」ガタン
梨子「花丸ちゃんはそっち持ってもらえる?」
花丸「はーい」カタッ
果南「よいしょっと」ガタッ
果南「これくらいスペースあればいいかな」
善子「私の意見、参考になるものかしら……」
鞠莉「ギラン!とした意見待ってるわ」
善子「バカにしてるでしょ」
ダイヤ「善子さんの意見は斬新で、いつも参考になってますわ」
善子「そ、そう?えへへ」 ――――
千歌「できた?できたかな?これは」
花丸「できてるできてる!前より良くなった感じだよ!」
梨子「歌いやすくもなったと思うよ!」
善子「振り付けの方も案外あっさりできちゃったわね」
果南「元ができてたからアレンジだけだったしね」
鞠莉「曲を何度も聞いて、何か新しいIdeaが浮かんだら組み込んでいく感じかしら」
ダイヤ「Cメロの練習に入るまでは変更可能ですしね」
善子「じゃあ今日はもう?」
果南「解散かな」
ダイヤ「やることありませんしね」
花丸「今日の活動時間は短かったずら」
梨子「雨降ってるし仕方ないね」
千歌「曜ちゃんたちにもLINE送っておくよー」スッスッ
鞠莉「忘れ物ない?曜たちはBagもちゃんと被服室に持っていってるわね?」
ダイヤ「ええ、二人とも持っていっていましたわ」
千歌「じゃあかいさーん!さよならー!ぐっばーい!」
ガチャンッ パタンッ ポスッ
善子(17時20分……)
善子(今日は思いの外早く帰れてよかった)
善子(ドッペルゲンガーについて一から整理する時間がとれる)カタン……
善子(さて……思い付いた順に書き出すと……)
カリカリ……カリカリ…… ―――――
・観測されたDPG
果南、鞠莉、私、梨子
・そのDPGの行動
果南、鞠莉のDPGは会話をした
私のDPGはただ立っていただけ
梨子のDPGも恐らく特殊な言動はしてない
・DPGとは
@本人の関係ある場所に現れる
↓
ファミレス、海辺、校門、自宅付近
A忽然と消える
↓
ファミレスの果南(木曜)、校門の私(金曜)
B他者と会話しない
↓
果南、鞠莉は会話をした
C自分or第三者がDPGを見るとDPGの対象人物は死ぬ
↓
果南は車に轢かれかけた
D本人と成り代わる
↓
果南、鞠莉、私、梨子の中に偽物がいる?
E自分にしか見えず、それは脳が見せる幻覚
↓
原因:脳腫瘍、精神病 等
――――― 善子「む、あれ?」
善子(自分にしか見えないってのと第三者がドッペルゲンガーを見ると対象人物が死ぬってのは矛盾するわね)
善子(どういうこと?)
善子「いや、えっと、つまり……」カリカリ
―――――
DPGの種類
├オカルト的な存在
└身体或いは精神の疾患
―――――
善子「……ってことよね」
善子(だから……)カリカリ
―――――
DPGの種類
├オカルト的な存在 ○
└身体或いは精神の疾患 ×
他者がDPGを観測している為、
今回はオカルト的存在として調査
原因が病気である項目は排除して考察するべき
―――――
善子「うん!」
善子(これで必要な情報と不要な情報とに分けやすくなった)
善子(対策も立てやすくなるはず) 善子(となると、BEは除外ね)カリカリ
善子(他者と積極的に関わろうとしているのにも、これで説明がつく)
善子(あとは、そのドッペルゲンガーの目的)
善子(十中八九、成り代わりね)
善子(下手したら既に成り代わってる可能性もある)
善子(まず、私は今のところ大丈夫として)
善子(果南、鞠莉、梨子……)カリカリ
善子(特筆して不自然なところはなかった)
善子(怪しいのが誰かはわからないけど、)カリカリ
―――――
果南→
鞠莉→
梨子→たぶんまだ本物
―――――
善子(梨子のドッペルゲンガーが出たのは昨日)
善子(私のドッペルゲンガーと同じようにただ立っていただけ……のはず)
善子(私のドッペルゲンガーと同じ状況なら、私が成り代わっていない以上梨子も成り代わっていない)
善子(……よね?)
善子(疑惑は持っておくべきだけど、たぶん、本物のはず) 善子(ドッペルゲンガーがどこまで本人に似ているのか知ることが重要ね)
善子(容姿は瓜二つ、これは間違いない)
善子(性格は……考え方は……所作は……)
善子(……そんなのわかるわけないじゃない)
善子(成り代わっていたとして、見破るすべがない)
善子(もし鞠莉が既にドッペルゲンガーと成り代わっていたとしたら……)
善子(LINEグループに入れたのは間違いだったかもしれないわね)
善子(きっと関係ない情報や間違った情報、全くの嘘で撹乱してくるはず)
善子(こちらの情報の開示は慎重に、偽物に騙されないように)
善子「…………」コトッ
善子(……なんで仲間を疑わなきゃなんないのよ)
善子「嫌になるわ……」
善子(でも、仲間を守るためには、全てを疑ってかかるべきよ……)
善子「私はヨハネ、堕天使ヨハネ」
善子「精神を強く保つのよ、ヨハネ」 曜(外暗いなあ)
曜「外、暗いね」
ルビィ「そうだね、雨降ってるから」
曜(18時30分……)
曜「そろそろ帰る?キリもいいし」
ルビィ「外も暗いし?」
曜「19時くらいに感じるよね」
ルビィ「だねー」
ルビィ「雨も……今は少し小雨になってるみたいだし、帰りましょっか!」
曜「帰りましょう帰りましょー!」
ルビィ「本当はルビィもう目が疲れちゃってて」
曜「細かい作業だもんね、そこ」
ルビィ「ステージで踊ってるのに、こんな細かいところどうせ見えないけど」
ルビィ「こんなにやらなくてもいいのかもしれないけど」
曜「それでもがんばっちゃうのがルビィちゃんなんだよねー」
ルビィ「それは曜ちゃんも!」
ルビィ「妥協を許さない精神!あるもんね!」
曜「間近で見たときに、残念な衣装って思われたくないし自分も思いたくないよね」
ルビィ「ね!わかる!その気持ち!」 曜「……と、あれ?」
ルビィ「どしたの?」
曜「サブバッグ部室に忘れちゃってる」
ルビィ「今日持って帰らなきゃいけないの?」
曜「体操着入れてるんだよー!臭くなっちゃう!」
ルビィ「あー、バスケしたって言ってたもんね」
曜「体操着を忘れるなんてブッブーですわ!くっさいですわ!」
ルビィ「んっ、ふ、ククッ」ケホッエホッ
曜「ごめん」
ルビィ「意外と声が似てて、ほんと……ふふっ」ケホッ
ルビィ「こっちは片付けておくから、先に降りちゃってて」
曜「うん、ありがと!終わったら職員室前で待ってて!」
ルビィ「はーい」 ガラッ
曜「失礼しまーす!スクールアイドル部の部室の鍵借りまーす!」
「まだ何かするの?」
曜「帰るんですけど忘れ物しちゃって」
「そう、早く取りに行って帰りなさいね」
曜「はーい!失礼しまーす!」
ピシャッ 曜(暗い学校で一人で歩くってちょっとこわいな)
曜(早く部室行こうっと)テテテッ
ザーッ ゴロゴロ……
曜(ありゃ、雨脚ひどくなったかな?)
曜(いそげーいそげー)テテテテッ
曜(ドアー鍵ー)キッ カチャッ
曜「Hey!曜ちゃん参上!」ガラッ
曜(あら、カーテン閉まってるから思ってたより暗い)
曜(電気のスイッチこの辺?どの辺?)ペタペタ
曜(わかんないや)
曜(まぁ見えないこともないし、手探りでいっか)
曜「ええーっとー」
曜(椅子の上に置いてたからー)
曜(いや、椅子の下だったっけ?)
ガンッ
曜「あだっ」 曜「いーっいたいーっうーっ」サスサス
曜(えー?机の位置変わってない?なんで?)
曜(いたいよ〜)
曜(あとでルビィちゃんになでなでしてもらお)
曜(ここが机で、椅子がここで……)ペタペタ
ピカッ ……ゴロゴロゴロゴロ
曜「ひゃっ!えっ!?」ドテッ
曜(人影!?人?部室に?鍵かかってたのに?)
曜(まって、え、これ、ドッペルゲンガー?)
曜(誰の?私の?どうしよう)
曜(ひとまず、電気……手探りはもう無理……)
曜(電気……電気……スイッチは……あっ)パチッ
曜「……え、あ、あぁなんだ」
曜(トルソー……)
曜(前の衣装一着だけ飾ってたんだっけ、そういえば)
曜(衣装着せてるトルソーをドッペルゲンガーだと思うって……)
曜「ふふっばかみたい」
曜(ルビィちゃんに話そ) ――――
ルビィ「……本当にそれ、トルソーだったの?」
曜「え?」
ルビィ「雷の光で一瞬姿を捉えられてから、曜ちゃんが電気のスイッチを手探りで見つけて灯りをつけるまでの間」
ルビィ「それは、その影の主が物陰に隠れるには十分な時間なはず」
ルビィ「隠れたあとは、光の中で曜ちゃんが人影をトルソーだったと勝手に思い込むのを見届けるだけ」
ルビィ「トルソーとは別に、本当に人がいたとも気付かない曜ちゃんを嘲笑いながら……」
曜「でも部室には鍵がかかってて……それなのに……」
ルビィ「例え部室にいなかったとしても」
ルビィ「外にいた人が窓越しにシルエットだけ見えた可能性だってあるよね」
ルビィ「こんな雨だもん、学校に不審者が侵入しててもおかしくない」
ルビィ「なんでもないんならいいんだけど」
ルビィ「人の気配を感じたときは、本当に誰かがいる可能性が高いんだよ」
曜「うう……」 ルビィ「……なんて!」
ルビィ「びっくりした?」
曜「なっ!?もう!」
曜「ルビィちゃんホラーセンスありすぎてこわいよお!」
曜「おどかすつもりがおどかされちゃった」
ルビィ「ルビィ、実はこわい話には強いんだよ!」
ルビィ「よく善子ちゃんが怪談話してくるから」
曜「ああー、それで慣れちゃった感じ?」
ルビィ「そうそう」
ルビィ「最近は驚かなくなっちゃったから、からかい甲斐がない!って言われちゃってる」
曜「いつも聞いてればそりゃ、からかわれてばっかりじゃなくなるよね」
ルビィ「ねー」 ルビィ「それより、足、大丈夫?」
曜「うん、もうぜんぜ」
曜「あ、今のなし、すご〜くいたい!なでなでして〜!」
ルビィ「おーよしよし、痛かったですね〜!」
ルビィ「いたいのいたいの、とんでけー!」
曜「あはは、ルビィちゃんのおかげで痛くなくなった!」
ルビィ「よかったあ!」
ルビィ「じゃあ帰ろうか!」
曜「足元ぬかるんでるから気を付けて帰ろうね」
ルビィ「はーい!」 〜〜♪〜〜〜〜♪〜〜〜〜♪……
梨子「……」カタン
梨子(ピアノを弾いたところでなんの気晴らしにもならない)
梨子(みんなの様子がおかしかったせいよ、こんなに不安になるのは)
梨子(何かを隠してるような、なんだか妙な空気だった)
梨子(特に変なのが千歌ちゃん)
梨子(明るすぎるのよ)
梨子(昨日あんな話をしたのに)
梨子(私のドッペルゲンガーがいたのに)
梨子(確認すらしに行かないなんて)
梨子(いないですって?)
ダンッ
梨子「いたわよ!!」 梨子(見えないフリをした?)
梨子(なんで?)
梨子(自分に不都合なことでもあったの?)
梨子(思えば、海に行ったあの夜……)
梨子(そう、あの夜も変だった)
梨子(ずっとスマホを気にして)
梨子(果南ちゃんと連絡を取り終えたと、そのまま連絡を取り続けてるフリをして別の誰かと……)
梨子(ダイヤさんだったわね、あの時のLINEの相手は)
梨子(内容は……『Aqoursの活動を最優先に』)
梨子(最優先、ということは)
梨子(第二優先事項があるということ)
梨子(もしかして、千歌ちゃんもダイヤさんももうドッペルゲンガーと入れ替わってて)
梨子(他のみんなもドッペルゲンガーと入れ替えようとしてる……?) DPG対策本部(7)
鞠莉:ハロー
千歌:はろー
千歌:今日は誰か収穫あったー?
ヨハネ:16:30にはもう部活終わったから
ヨハネ:時間に余裕を持って、これまでのことをおさらいすることができたわ
千歌:新たな収穫は?
ヨハネ:なし
鞠莉:それは残念
花丸:私は少しだけあったよ
曜:ほんと!?
鞠莉:さすが!
ヨハネ:よっ!お寺の娘!
花丸:褒めてるの?冷やかしてるの?
ヨハネ:褒めてる褒めてる
千歌:それで?どんな? 花丸:中国の妖怪の話なんだけど
ルビィ:中国?
曜:ドッペルゲンガーとどんな関係があるの?
花丸:その妖怪は、人を食べる巨大魚なの
千歌:こわっ
花丸:食べた人に成り代わって生活するらしくて
ルビィ:ドッペルゲンガーみたい
花丸:でしょ?
花丸:ドッペルゲンガーみたいだし、魚ってところも少し内浦に関連性があるように思える
ヨハネ:中国の話なんでしょ?
ヨハネ:魚と内浦で関連が〜ってちょっとこじつけじゃない?
花丸:それはそうなんだけど
ヨハネ:というか、むしろ魚ってところしか内浦に関係ない
曜:でも、ドッペルゲンガーだけじゃなくて、それに似た妖怪やおばけのことも調べていけば
曜:何か対策が立てられるんじゃないかな
千歌:なるほどー
曜:その妖怪はどうやって退治したの?
花丸:大きな甕に閉じ込めて護符で封印したみたい
ヨハネ:漢字読めない
千歌:同じく
花丸:かめ
千歌:入れ物の?
花丸:そう 花丸:護符ならうちで用意できるから
花丸:とりあえずひとり一枚ずつ、護身用に持っておく?
ヨハネ:かっこいいやつきた!
曜:できれば使わずにすませたいよねー
鞠莉:それはそうよね
花丸:使わなかったら返してね
ヨハネ:えー
花丸:高いんだよ
花丸:安くても一枚3000円とかする
千歌:わーっ高い!
曜:勿体なくて使えなさそう!
鞠莉:それくらいなら人数分私が買わせてもらうわ
ルビィ:えっそれは申し訳ないですよ
鞠莉:勿体なくていざという時に使えなきゃ意味ないでしょ?
花丸:鞠莉ちゃんがそれでいいなら
千歌:ありがとう!鞠莉ちゃん!
鞠莉:お返しに
鞠莉:みんな無事に、この案件を解決すること!
千歌:お安いご用!
曜:お安いかなあ
ルビィ:何事も起こらないといいですね ダイヤ:調べものをしていてLINEに気付きませんでした
ダイヤ:申し訳ありません
千歌:いいよー
千歌:気付いたときに見てもらえれば
曜:ダイヤさんのところ、たくさん本あって大変そうなのはわかってたしね
ダイヤ:そして鞠莉さん、ありがとうございます
ダイヤ:同じ年長として半分は私が支払わせて頂きたいのですが
鞠莉:いーのいーの!気にしないで!
鞠莉:それよりも果南と梨子にどう言って持たせるかよ
千歌:梨子ちゃんには普通に渡せば受け取ってもらえると思う
千歌:ドッペルゲンガー怖がってたし、お守りだよって言えば
ダイヤ:問題は果南さんですね
鞠莉:まず察するね
千歌:どう渡しても察するね
ヨハネ:察されたらいけないの?
ヨハネ:普通にお守りとして受け取ってもらえそうなもんだけど 千歌:甘いね〜
千歌:果南ちゃん、ドッペルゲンガーの話は完全拒否の体勢だよ
千歌:察したらまず怒る
鞠莉:わかる
ダイヤ:烈火のごとく怒りますね
千歌:ドッペルゲンガーなんていないって言ってるでしょ!
千歌:みたいな
曜:まだそんな下らないことにこだわって!
曜:みたいな
花丸:みんながドッペルゲンガーのことを忘れなきゃ真の平穏は訪れないって思ってそうだね
ヨハネ:なだめられそうにない
ダイヤ:頑固者ですからね
鞠莉:参ったねこれは ルビィ:ストラップにして渡すっていうのはどうですか
千歌:おふだストラップってわけじゃないよね?
ルビィ:ストラップの紐をつけた巾着に、畳んだお札を入れておくんです
ルビィ:巾着にはお札と一緒にポプリを入れておけば、紙の擦れる音もごまかせます
ルビィ:パッと見ただけじゃドッペルゲンガーを連想しないかな、と
鞠莉:なるほど、確かに
ルビィ:実を言うと、もうみんなの分のそのストラップ出来てて
千歌:え!なんでなんで!うれしい!
ルビィ:みんなに喜んでもらえるかなって衣装の合間に気分転換で作ってたんです
ルビィ:それがこんな形で役に立ててうれしいです
曜:こちらこそうれしいよー!ありがとう!
花丸:みんなもその巾着に入れておいた方が、お札をそのまま持ち歩くよりいいね! ルビィ:これならケータイにもカバンにも付けられるし
ルビィ:イヤホンジャックもつけてるからスマホにも付けられます!
ヨハネ:確かにそれは携帯しやすいし、いい案ね!
鞠莉:さっすが私の妹ですわ〜!ってしなくてもいいの?ダイヤ?
ルビィ:お姉ちゃん、今まさに私にそれやってます
ヨハネ:ウケる
千歌:笑う
曜:LINEで想いを伝えるより断然早い
花丸:ルビィちゃんが冷静で、想像しうる状況とのギャップが面白い
鞠莉:ダイヤになでなでされながら返信するルビィ面白すぎるわ
ルビィ:自宅でも割りと日常茶飯事なので
ヨハネ:余計にウケる
ルビィ:というわけで、明日そのポプリストラップ持って行きますね
花丸:私も護符、持っていくね
千歌:はーい!よろしくね! 千歌「おはよーみんな」
曜「おはよーそろー!」
花丸「おはよう、千歌ちゃん」
善子「おはよう」
ストン
千歌「今日はルビィちゃんは一緒じゃないの?」
曜「それ私たちも聞いたー」ケラケラ
花丸「ダイヤさんの生徒会の仕事手伝うからってこれより一本早いバスに乗ったんだって」
千歌「なんて姉想いな!」
善子「千歌の方こそひとり?梨子は?」
千歌「体調よくないらしくって、遅れて登校するってさっきLINEがきた」 曜「やっぱりドッ……アレのせいでストレスかかってるんだろうね」
千歌「なんで言い換えたの」
善子「バスの中で公然と言うもんでもないでしょ」
千歌「それもそっか」
曜「来れなくてそのままお休みしたらお見舞い行こうね」
千歌「ゆっくり休めるといいんだけど」
花丸「遅れて来るにしても、今日は朝練もないし気が咎めないしね」
善子「えっないの?」
曜「果南ちゃんからグループに連絡あったよ」
千歌「屋上の様子見たらすごい濡れてたって言ってた」
花丸「昨日はずっと雨降り続けてたもんね」
曜「モップであらかた拭いておいたから放課後には乾いてるだろうってさ」
千歌「昨日とはうってかわっていい天気だもんね〜!今日はいっぱい練習しようね!」
善子「あんまりはりきりすぎてケガしないようにね」 花丸「あっそうだ、これ」スッ
千歌「あ!昨日言ってた!ごふ!……二枚?」
花丸「千歌ちゃんのと、もう一枚は梨子ちゃんの分」
花丸「渡せるときに渡しておいてもらえるかな」
千歌「了解!まっかせて!」
千歌「曜ちゃんたちはもうもらってるの?」
曜「うん、さっきもらった」
善子「頼りになるわ、お寺の娘」
花丸「なんかむず痒いからそれやめて」
善子「寺の子ならアレなんかサクッと退治できないの?」
花丸「あいにく、マルは退魔師でも霊媒師でもないずら」 千歌「でもお寺の子ならなんかできそう」
曜「花丸ちゃん、たくさん本読んでて知識も豊富だしできちゃいそう感はある」
花丸「直感はそこそこ冴えてる方だとは思うけど退治なんて……」
善子「せめて偽者を見破ることぐらいできないの?」
花丸「マルはまだアレを見たことないからわからないけど」
花丸「不穏な空気をまとってたら多分、わかるかもしれない……」
千歌「花丸センサー」
善子「いいわね、花丸センサー」
曜「小型化して持ち歩きたい」
花丸「小型化して持ち歩くのは護符だけにしてほしいずら」
善子「護符の方はルビィからストラップ受け取って、それに入れれば完璧ね」
花丸「善子ちゃん不運だから、ルビィちゃんからストラップもらう前になくしちゃわないようにね」
善子「だ、大丈夫よ……今だって折り畳んで生徒手帳に入れてるし……なくさないわよ」
曜「バス降りてから生徒手帳落としたりしないようにね?」
善子「気を付けるわ」 ――――
花丸「あ」
花丸(ちがう)
ルビィ「あっおはようみんな」
ダイヤ「おはようございます」
花丸(突然の違和感、強い嫌悪感、直感への確信)
花丸(脳が警鐘を鳴らす)
花丸(この二人は入れ替わってる)
千歌「おはよー、朝早くからお疲れさま!」
善子「おはよう、運んでるのなに?」
曜「大変そうだね、手伝おうか?」
花丸(三人は気付かない)
ダイヤ「古い赤本です、自習室の整理をしていましたので」
ルビィ「そんなに重くないし大丈夫!ありがとう」
ダイヤ「皆さんは荷物もありますし、お気持ちだけ頂いておきますわ」
花丸(見た目も言葉遣いもいつも通り)
花丸(こんなに似てるんじゃあ、千歌ちゃんと果南ちゃんがドッペルゲンガーに騙されたのにも納得がいく) 千歌「生徒会って自習室の整理もしなきゃいけないの!?」
ダイヤ「いえ、資料室に用事があったので」
曜「ついでに隣の教室も整理しちゃったの?」
ダイヤ「そんなところですわ」
ルビィ「これで受験勉強しやすくなるよー!」
千歌「まだ先の話……とは言えないよね、もう」
曜「二年生だからねー、もう受験勉強入ってなきゃいけない時期だよー」
ダイヤ「しっかり励んでくださいね」
ワイワイ
花丸(ドッペルゲンガー目撃時は本物に電話確認……)
花丸「善子ちゃん」コソッ
善子「ん?なによ」
花丸「こっちを見ないで、小声で喋って」ボソボソ
善子「……何かあったのね?」ボソボソ
花丸「みんなにバレないように、ルビィちゃんに電話してほしいずら」ボソボソ
花丸(悟られればドッペルゲンガーに警戒される)
善子「わかった、理由はあとで聞くわ」ボソボソ
花丸(オラはダイヤさんに電話を……) プルルルル プルルルル
ルビィ「ん?」
花丸「えっ」
花丸(いや、まさか……)
ルビィ「んしょ……」ポスッ……スッ
ルビィ「あれ?善子ちゃん?」
ルビィ「なんで電話?」
善子「ん?かけてないわよ?」
ルビィ「でもほら、善子ちゃんから……」
善子「あらほんと」……ゴソゴソ
善子「あー、ポケットの中で勝手に電話かけちゃってたみたい、ごめんね」ピッ
ルビィ「ううん、いいよー」
ルビィ「私も時々やっちゃうし」
曜「画面ついたままポッケに入れてると時々やっちゃうよね」
千歌「あるあるー」
善子「これでよかった?間違えてない?」ボソボソ
花丸「うん……」
花丸(ルビィちゃんの電話をなんでドッペルゲンガーが?)
花丸(もしかして……でもそれじゃあ矛盾がある……)
花丸(いや、ひょっとすると……) ガヤガヤ
善子「で、なんだったの?今朝のは」
花丸「……善子ちゃん、今朝のルビィちゃんとホームルーム以降のルビィちゃん、なにか様子が違って見えなかった?」
善子「いつも通りだと思うけど」
ルビィ「なになに?何の話してるの?」トテテ
花丸「…………朝のルビィちゃん、大変そうだったなって」
花丸「やっぱりお手伝いした方がよかったんじゃないかなって話してたの」
ルビィ「えへへ、ありがとう」
ルビィ「本当にそんなに重くなかったの、気遣ってくれてありがとう!」
花丸「そう……」 ルビィ「お昼ごはんどうする?今日は天気いいし、中庭で食べる?」
善子「ベンチとかまだちょっと濡れてるみたいだし、教室でいいんじゃない?」
善子「あー、私とずら丸、今日は購買でお昼買うからルビィは教室で待っててもらえる?」
ルビィ「教室で?」クルッ
ガヤガヤ
ルビィ「……うん、いいよ」
善子「さ、ほら行くわよ、お財布は?」
花丸「ま、まって」モタモタ
善子「あぁもうまどろっこしい!鞄ごと持ってっちゃいなさいよ、早くしないとカツサンド売り切れちゃう」
花丸「あっ、えっ、わかった」
タタタタッ
ルビィ「いってらっしゃーい」 善子「あんた、お弁当持ってきてたっけ」
花丸「持ってきてるずら……」
善子「じゃあそれ部活前にでもこっそり食べなさい」
善子「口実作ったんだから、手短にさっきの話してちょうだい」
善子「ルビィはドッペルゲンガーなのね?」
花丸「……たぶん」
善子「煮え切らないこと言うのやめてよ、時間ないんだから」
花丸「オラにもよくわからないから……」
花丸「ドッペルゲンガーについて、よく知らないけど、もしかしたらって思うことがあったから……的外れなこと言ってても笑わないでね」
善子「笑わないわ」 花丸「ドッペルゲンガーって、病気のようなものなのかなって思うの」
花丸「感染していても発病していないような、キャリアみたいな状態があるんじゃないかなって」
花丸「今朝のルビィちゃんは間違いなくドッペルゲンガーだった……でも、ホームルーム以降はいつものルビィちゃんに戻ってた」
花丸「ドッペルゲンガーはルビィちゃんの持ち物を持っていて、本物のルビィちゃんはドッペルゲンガーだった時の記憶も持っていた」
花丸「つまりドッペルゲンガーは、ルビィちゃんの体に入り込んで、今まさに混じりあっている最中なんじゃないかって」
花丸「今はまだ主導権はルビィちゃん本人にあるけれど、内部をどんどん蝕んでいって、最終的にドッペルゲンガーが体を乗っ取るんじゃないかって」
花丸「思うんだけど……どう?」
善子「うん」
善子「そういうドッペルゲンガー、私は知らないんだけど、そうであると仮定すると」
善子「千歌や果南、梨子がみたドッペルゲンガーについて辻褄が合わないんじゃない?」
花丸「もちろん、オラだってそれは思った」
花丸「だけどね、その考え方は、固定観念にとらわれてるんじゃないかって」
善子「……どういうこと?」
花丸「ドッペルゲンガーという妖怪は、一種類しかいないの?」 花丸「世界の生物、物質、事象、どれをとってもひとつとして全くの同一のものはない」
花丸「人間と一口に言っても沢山の人種があって考え方があって生き方がある」
花丸「ドッペルゲンガーだけ一種類しかないなんてこと、あるかな?」
善子「それは……盲点だったわ」
善子「昨日の巨大魚だって、ドッペルゲンガーの正体のひとつってわけね」
花丸「そうずら」
花丸「妖怪として外から侵略してくるもの、病気や怪奇現象として内から侵略してくるもの」
花丸「ドッペルゲンガーがいろんな手法を用いてくるのだとしたら」
善子「それらに対して柔軟な思考をもって応じなければならない」
花丸「……」コクン 善子「……となると、ドッペルゲンガーという呼称は間違っているのかもしれないわね」
善子「侵略者、未知の……うーん……」
花丸「名称に意味なんてない」
花丸「これまで通り、ドッペルゲンガーでいい」
花丸「そんなことよりもまずマルたちが最優先でしなきゃいけないことは」
善子「ええ、これまで以上に幅広い調査を……」
花丸「お昼ごはんを買うことずら」
善子「あっそれはそうね!教室でルビィが待ってるわ」
花丸「あんまり遅いと寂しがらせちゃうずら!」タタタッ
善子「急ぎましょう!」タタタッ ガヤガヤ
「それで生徒会長のおかげで助かっちゃって!さすがだね!」
ルビィ「えへへ、自慢のお姉ちゃんだよ」
「私もお姉ちゃんほしかったなー」
善子「ただいまー」
ルビィ「善子ちゃん、おかえりー」
「あ、じゃあまたあとでね」
ルビィ「うん、あ、よかったら一緒に食べる?」
「んー……こっちもそろそろお昼買って帰ってくる頃だし、大丈夫!ありがとう」
ルビィ「そっか!」
善子「ごめんね、待たせちゃって」
ルビィ「ううん、おしゃべりしてたから全然」
ルビィ「花丸ちゃんは?」
善子「鞠莉に呼ばれたみたいで、お昼は理事長室で食べるってさ」
ルビィ「あ、護符の代金……かな」
善子「でしょうね」 善子「そういえばルビィはまだ護符受け取ってなかったわね」
ルビィ「それは善子ちゃんもでしょ?」
善子「私はバスでもらったから」
ルビィ「そうなんだ」ゴソゴソ
ルビィ「じゃあ、はい!」
善子「お、かわいい」
ルビィ「なくさないうちに巾着の中に入れちゃって?」
善子「ありがたくそうさせてもらうわ」ゴソゴソ……グッグッ……キュッ
善子「これでよしっと……いい匂いね」クンクン
ルビィ「うふふ」
ルビィ「ポプリの匂いね、全部違うのにしたんだぁ」
善子「あら、凝ってるのね」
ルビィ「善子ちゃんのはラベンダーだよ」
ルビィ「私のはジャスミンで、花丸ちゃんのはオレンジのを渡したんだ」
善子「ずら丸?いつ渡したのよ」
ルビィ「2時間目の休憩時間、移動教室じゃなかったから」
善子「あー、私がトイレ行ってたときか」
善子「その時護符ももらってればよかったのに」
ルビィ「ポプリの香りの話で盛り上がっちゃって」
善子「うっかり忘れちゃった、と?あなた達らしいわ」 ガラッ
花丸「鞠莉ちゃん、おまたせー」
鞠莉「いらっしゃい、お昼休憩に呼び出してごめんね」
花丸「おかげで無駄にお昼ごはん買わずにすんだずら」
鞠莉「ん?」
花丸「ううん、こっちの話」
ゴソゴソ……
花丸「はいこれ、鞠莉ちゃんと果南ちゃんの分」
花丸「……ダイヤさんのはもうルビィちゃんに渡してるから」
鞠莉「Thank you、果南の分はもう巾着に入れちゃってるのね」
花丸「うん、そのままじゃ渡せないし」
鞠莉「じゃあこれで今日中には全員にお札が行き渡ると考えていいわね」
花丸「ん……」 鞠莉「代金は……」
花丸「うん……はい、ちょうど頂きます」ペコッ
鞠莉「手間を掛けさせてごめんね」
花丸「そんなことないよ」
花丸「こっちこそ、鞠莉ちゃんに全額負担してもらって……申し訳ないずら」
鞠莉「気休めでも、これでみんなの心が落ち着くなら安いもんよ」
鞠莉「って、ご利益あるお札に気休めなんて言っちゃ罰が当たるわね」
鞠莉「さ、お昼食べちゃいましょ」
花丸「うん!……鞠莉ちゃんとふたりっきりになることってあんまりなかったね」
鞠莉「そうねぇ、ユニットも違うし」
花丸「…………鞠莉ちゃんなら、大丈夫だと思うから言うんだけど」
花丸「ダイヤさんに気を付けて」
鞠莉「……それはどういう意味?」
花丸「まだよくわからないから、詳しくは言えないけど……病気になってるかもしれないずら……」
鞠莉「病気……」
花丸「ドッペルゲンガーの病気ずら」
鞠莉「……わかったわ、注意して見ておく」 千歌「んわーっつかれたー!」ペタン
曜「お疲れさま千歌ちゃん、はいタオル」
善子「曜は全然疲れてないみたいだね」
曜「そんなことないよ、今日は二日ぶりの練習だったからちょっとはりきりすぎちゃった」
ルビィ「二日体を動かさないだけで、なんか動きが鈍った感じするね」
花丸「土曜日にはできてたのに、今日はちょっと足がもつれ気味だった気がするずら」
梨子「練習がない日でも、部室や自宅で簡単にステップの確認をした方がいいのかもね」
果南「はいはい、反省会は着替えてからにしてね」パンパン
ダイヤ「水分補給がすんだら速やかに部室に戻るように」
鞠莉「汗で濡れたままのんびりしてると風邪引くわよー!」 ――――
果南「明日は朝練あるから寝坊せずに来てね」
曜「はーい」
ダイヤ「忘れ物はありませんね?」ガチャッ
千歌「梨子ちゃん、かえろー?」
梨子「私、音楽室に忘れ物しちゃって」
曜「じゃ待ってるね」
梨子「ううん、待たせるの悪いし、先に帰ってて」
千歌「それくらい待つよ?」
梨子「いいの、帰って」
梨子「ちょっと、ピアノ弾きたい気分だし」
千歌「……あんまり遅くならないようにね」
花丸「オラもこれから図書委員のお仕事があるから、ちょっと居残りするずら」
ルビィ「手伝おうか?」
花丸「ううん、大丈夫、先に帰っててね」
鞠莉「二人とも疲れてるんだから、程々で切り上げて帰りなさいね?」
梨子「はい」
花丸「はーい」 ガラッ……ピシャッ
梨子「呼び出したのは相談があったからなんだけど」
花丸「うん、それも人に聞かれたくない相談だね?わざわざ音楽室まで来るってことは」
梨子「……」コクン
梨子「これ……見てほしいの」スッ
花丸「これは……オラがあげた護符?」
梨子「本当に?これは花丸ちゃんがくれたものなの?細工されてない?」
花丸「……うん、たぶん間違いなくうちのお寺のお札ずら」
梨子「よかった……」
梨子「それ、千歌ちゃんが渡してきたものなんだけどね、ちょっと……怪しいなって思ってて……」
梨子「これは結構……その、直感、というか、感覚的みたいな、そういう無責任なところがあるんだけど」
梨子「私、千歌ちゃんがドッペルゲンガーと入れ替わってるんじゃないかって思ってるの」
花丸「千歌ちゃんが?」 梨子「花丸ちゃん、こういうお札を用意してくれるってことは、ドッペルゲンガーについて調べてくれてるんだよね?」
花丸「まぁ……うん」
梨子「私、花丸ちゃんが一番信用できると思ってて」
梨子「他の子とは違うお寺の生まれで、そういうの強いんじゃないかなって」
花丸「お祓いしたりはできないよ?」
梨子「うん、でも、誰が入れ替わってるかって目星くらいはつけてるんじゃない?」
花丸「それは、うーん……」
梨子「ダイヤさん」
花丸「え?」
梨子「ダイヤさんは、ドッペルゲンガーよね?」
花丸「……半分、かな……ドッペルゲンガーになりかけてる」
梨子「やっぱり」 花丸「すごいね梨子ちゃん、どうしてわかったの?」
梨子「ドッペルゲンガーと入れ替わってる千歌ちゃんが、コソコソと連絡取り合ってたのがダイヤさんだったの」
梨子「きっと二人とも、Aqoursのみんなを陥れようとしてるのよ」
花丸「あんまり大っぴらには言わないでね、みんなが恐慌状態になっちゃうかもしれないから」
梨子「みんなの前で糾弾はできないのね……」
花丸「まだ疑惑の段階ずら」
梨子「でも千歌ちゃんはドッペルゲンガーよ」
花丸「確信があるんだね」
梨子「ええ、間違いないわ」
梨子「今の千歌ちゃんは、これまでの千歌ちゃんと全然違う」
花丸「オラは千歌ちゃんがドッペルゲンガーになってるとは思わなかったけど……明日、よく観察してみるね」
梨子「ええ、お願い」 梨子「私ね、この窓から見かけた善子ちゃんがドッペルゲンガーだって聞いた時からずっとこわかったの」
梨子「Aqoursのみんなが、正体不明の何かにめちゃくちゃにされるんじゃないかって」
梨子「……それから、昨日から思ってることがあって」
梨子「校門にいたのは本当に善子ちゃんだったのかなって……」
梨子「暗かったし、後ろ姿しか見てないし、本当は、あそこにいたのは、もしかすると」
梨子「私だったんじゃないかって」
梨子「こわくて……」ポロポロ
花丸「梨子ちゃん……」
ギュッ
花丸「梨子ちゃん、大丈夫、何もこわくない」
花丸「こわいことが起こらないように、マルががんばる、一生懸命がんばるよ」ナデナデ
梨子「花丸ちゃん……ごめんね、頼りない先輩で……」
花丸「こんなことが起こってるんだもん、誰だってこわいよ」
花丸「はやく解決して、みんなの笑顔が戻ってくるようにマル、がんばるね!」
梨子「ごめんなさい……ありがとう」グス…… 「――――!」
花丸「ん?」
「――――!」
花丸「あ」
花丸「梨子ちゃん、曜ちゃんが手振ってるよ、何言ってるのかはわからないけど」フリフリ
梨子「曜ちゃん?」
「――――――――!」
梨子「ほんとだ、何言ってるんだろ」クスクス
花丸「梨子ちゃんの名前呼んでるみたいだね、あとは……何言ってるのかなぁ?」
梨子「…………花丸ちゃん、変よ」
花丸「そう?曜ちゃんに変な様子はないけど」
梨子「違うの、声が聞こえることが変なの」
梨子「音楽室から校門は、声が届かないはずよ」
梨子「私がドッペルゲンガーに声をかけたときには、なんの反応もなかったもの」
花丸「あ……」
梨子「本人に成り済ますことを目的としてるドッペルゲンガーなのに、声が聞こえて無反応でいることってありうるかしら」
梨子「あの時は暗くはあったけど、雨でも強風でもなかったから声が聞き取りづらかったわけじゃない」
花丸「それってつまり」
花丸「ドッペルゲンガーの感覚は鈍いってこと?」 花丸「梨子ちゃんすごいよ!すごいことに気付いちゃった!」
梨子「そ、そう?」
花丸「そうだよ!」
花丸「だって、マルたちは人より少し直感が鋭いおかげで気付けてるけど、他の人にはドッペルゲンガーの区別なんてつかないんだよ!」
花丸「これのおかげでみんな、ドッペルゲンガーの判別ができるようになるかもしれない!」
梨子「ま、まって、まって花丸ちゃん!これ、たぶん、みんなに言っちゃだめな情報よ」
花丸「え……?」
梨子「私は千歌ちゃんがドッペルゲンガーだってことには気付けたけど、ダイヤさんに関しては確信できなかった」
梨子「花丸ちゃんはダイヤさんには気付けたけど、千歌ちゃんには気付けなかった」
梨子「私たちの直感も、完全ではないということ」
花丸「うん……」
梨子「下手に伝えて、その伝えた人の中にドッペルゲンガーがいたら?」
花丸「……きっと、なんだかんだ言い訳できる環境を作ろうとする」
梨子「そう」
花丸「伝える人物は、慎重に選別しなきゃいけない……」 トットットッ キィッ パタン
花丸「はぁ……」
花丸(結局、誰も信用できないってことになっちゃうんだ……)
花丸(ルビィちゃんとダイヤさんはたぶんもう……だめ)
花丸(入れ替わりかけてる状態でどうなるかもわからないから、こわくて護符を渡すことすらできなかった)
花丸(マルは弱いなぁ……)
花丸(気付かないだけでマルももう、ドッペルゲンガーの病気になってるのかもしれない)
花丸「ううん、そんなことない」フルフル
花丸(形代でお祓いもしたし、たぶん……マルは病気じゃない、大丈夫)
花丸(……お寺の子でよかったって思えるのは、こういうときに必要なものがすぐ手に入れられること)
コトッ
花丸(身代わり木札……)
花丸(紐を通してあるから首から下げて常に身に付けていられる)
花丸(これに何らかの変化がない間は、マルの身は正常) DPG対策本部(7)
鞠莉:Harvest festival
ダイヤ:収穫祭ですか
鞠莉:今まで調べてきたことを発表したいんだけど、既読5になってるね?
ルビィ:善子ちゃん、今日はネット配信するって
鞠莉:あとで読むだろうから発表しちゃうね!
ルビィ:はーい
鞠莉:私が調べたのは病気について!
曜:ほうほう、病気ですか
千歌:ドッペルゲンガーと病気ってどう関係があるの?
鞠莉:ふか〜〜〜〜い関係があるのよ 鞠莉:そもそもドッペルゲンガーは自分の脳が見せる幻覚の一種で
鞠莉:この、自分の姿を自分で見ることを自己像幻視・鏡像幻視というの
鞠莉:これらの原因はおそらく精神疾患によるもの
ルビィ:精神病ってこと?
鞠莉:そう
鞠莉:脳腫瘍が原因なこともあるらしいんだけど、Aqoursメンバーはみんな健康だと思うから違うかなって
千歌:健康です
ダイヤ:脳腫瘍は初期症状として、慢性的な頭痛、原因不明の嘔吐、言語障害などがあるようですが
曜:健康です
花丸:そういう症状、全くないよ
ルビィ:私もありません
鞠莉:でしょ?だから、脳腫瘍は除外するね 鞠莉:それでこの精神病なんだけど、統合失調症が考えられるらしい
花丸:統合失調症って、悪口の幻聴に悩まされる病気だよね?
鞠莉:そう、悪口や自分に命令してくる幻聴、誰かに操られてる感覚、独り言が多くなったり、引きこもりがちになったりする病気
鞠莉:統合失調症の幻覚には幻聴だけじゃなく幻視もあって、ドッペルゲンガーが見えるのはそのせいじゃないかって話
曜:でもみんな、そんな心の病気って感じじゃないよ?
鞠莉:ドッペルゲンガーのこわいところはね、そこなの
鞠莉:精神病じゃないから大丈夫、なんて言えないのよ
鞠莉:どうやら健常者にも起こるものらしくて
鞠莉:極度の疲労、強いストレス、集中力の低下状態にドッペルゲンガーを見ることがあるらしいの
鞠莉:それから集団ヒステリーっていうのもあって カタッ
善子「ふぅ」
善子(一応、有益と言えなくもない情報は得たけど……今のところなんとも言えない)
善子(LINEの方は……っと)
スッ……スッ……スッ……
善子「…………」
善子「嫌な予感が当たっちゃったわね」
善子(鞠莉はドッペルゲンガー、間違いない)
善子(これだけ怪奇現象が起こってるってのに、なんで精神病なんか調べてんのよ)
善子(理由はひとつ、私たちを混乱させるため)
善子(不要な情報でかき乱して、私たちが困惑してるうちにドッペルゲンガー仲間を増やそうって魂胆でしょ)
善子「呆れるほど幼稚な作戦ね」
善子(でも、それが効果的なことは確か)
善子(精神病のドッペルゲンガーは自身のものしか見ないけど、私たちのドッペルゲンガーの始まりは他人が見たもの)
善子(それに、集団ヒステリーなんて最初の段階で起こるわけもない)
善子(収穫があったなんて言って、みんながそれぞれの調べものをする時間を削ろうとしている)
善子(あからさまな妨害)
善子「絶対に負けないんだから」 Aqours(9)
果南:明日の朝は部室前に集合ね!
果南:みんな体なまってるみたいだし、まずは柔軟、それから走り込み!
果南:そのあと屋上でダンスレッスンしていくよ!
千歌:りょーかいだよー
曜:了解でーす
ルビィ:はーい!
鞠莉:OK
梨子:わかりました
花丸:はーい
ダイヤ:わかりました 善子(Aqoursのグループの方にも通知……)スッスッ……
善子(『了解』)スッスッ
善子(……そういえば昨日、やろうと思えば朝練できたのよね)
善子(屋上が使えなくても、果南なら走り込みだけでもするって言ってきそうなもんなのに)
善子(最近の朝練は走り込みなしで屋上でダンスレッスンしてたし、何よりドッペルゲンガーのことで頭いっぱいで深く考えてなかったけど……)
善子(『昨日はその体力作りすらしなかったのはなんで?』っと)スッスッ……
善子(少しの変化も見逃さないようにしなきゃ……)
善子(…………)
善子(……返事こないわね)
善子(寝たか……それともやましいことでもあるのか……)
善子(果南……) 千歌「ハアッハアッ、はうー」トスンッ
曜「いい具合に体あったまってきたね」
千歌「ほかほかのへとへとだよー」
果南「これからダンスの方もやってくんだからへばってらんないよ!」
千歌「ちょっとだけ休ませてぇ」
ダイヤ「休憩は、ハァ、必要、ですからね、ハァッ」
善子「はいみんな、タオルと水」
ルビィ「ハアッ……ハアッ……ありがと……」
梨子「ありがとう、善子ちゃん」
鞠莉「案外善子はバテてないのね」
善子「私は……まぁ、いざというとき動けるように、最近は筋トレとかするようにしてるし」
千歌「筋トレ!毎日いろいろやってるのに筋トレも!」
果南「いろいろって?善子ちゃん、なにやってるの?」 千歌「あ、ほら、善子ちゃん、あれやってるでしょ?配信!それのこと」
果南「配信?……あぁ」
ルビィ「インターネットで動画配信して、リトルデーモンを増やしてるんだよね?」
善子「そう!日々契約者を増やすことが私の」
プルルルル プルルルル
鞠莉「うん?」
千歌「誰か電話鳴ってるよー?」
ダイヤ「私じゃありませんわ」
曜「私も違うみたい」
善子「あ、私だわ……ずら丸?」
花丸「ん?オラの電話は鳴ってないよ?」
善子「違うのよ、あんたから電話かかってんの」
花丸「んえ?……あ、ほんとずら」ピッ
花丸「画面消さずにポッケに入れちゃってたみたい」
善子「ガラケーと違ってスマホは操作ミス起こりやすいんだから気を付けなさいよね」
花丸「はーい」 果南「みんな落ち着いた?じゃあ屋上行こっか」
鞠莉「Go Go Go!」
千歌「鞠莉ちゃんも意外と体力あるよねー」
曜「確かに」
果南「梨子ちゃん、大丈夫?」
梨子「え?えぇ、はい」
果南「そ、よかった」
果南「カメラとかは私が持ってくからみんな先に上がっててね」
ダイヤ「一人では大変でしょう、私も……」
果南「大丈夫大丈夫!それにダイヤ、まだ少し息上がってんじゃん」
果南「さぁさ、みんな行って行ってー!」パンパン ガラッ
果南(カメラ……と、三脚)
果南(あ、ノートと筆記具も……)
ゴトッ
果南「あっやばっ」
果南(スマホ落としちゃった)
果南(……よかった、割れてない)
フワッ
果南(いい匂い……ルビィちゃんほんと器用だな)
果南(柑橘系、かな、ポプリって言ってたけど……これって中身はどうなってるんだろ?)ゴソゴソ
カサッ
果南「?」
果南(なんだろ?紙?これに香水か何か含ませたりするのかな)カサ、カサ……
果南「えっ、やだ!なにこれ!」
果南(お札……?ルビィちゃんが入れたの?)
果南「……」
果南(悪いけどこれは……なんか気持ち悪いし、捨てとこ)ポイッ ――――
果南「1、2、3、4、1、2……花丸ちゃん!ルビィちゃん!遅れがちだよ!」
花丸「あっ!はい!」
ルビィ「はひ!」
果南「1、2、3、4、1、2、3、4……」
パン パン パン パン…… ……
ルビィ「はふ……昨日と同じとこ、またできなかった……」
果南「うぅん……」
果南(放課後、花丸ちゃんとルビィちゃんは個別で、できないところを集中的にやった方がいいかも)
果南(みんなには次のパートに移ってもらって……いや、それだと進行度にばらつきが出るかな、でも……うーん……)
鞠莉「一昨日変更したところ、ステップちょっと難しいもんね」
果南「鞠莉も若干危うかったしね」
ダイヤ「とりあえず皆さん、汗を拭いて!水を飲んで!急いで着替えて教室に戻りませんと!」
善子「わ!結構時間ギリギリ!」
千歌「急げ急げー!」
曜「授業遅れちゃう!」 梨子「……」
果南(梨子ちゃん最近ずっと元気ないな……)
果南(気にかけてはいるけど……本人に自覚なさそうだし)
果南(自覚ないのにいきなり元気出して、なんて言われても困るよね)
果南「ほら、梨子ちゃんも、大丈夫?」トンッ
梨子「へ、あ、はい、大丈夫です!急ぎます!」
キュッ
梨子「えっ……きゃあっ」グキッ
曜「梨子ちゃん!」ドッ
ドサッ
千歌「曜ちゃん!梨子ちゃん!」
善子「ちょっと!二人とも!!大丈夫!?」
梨子「っつぅ……曜ちゃん!曜ちゃん大丈夫!?」
曜「いたたっ……大丈夫大丈夫、梨子ちゃんこそ大丈夫?」 果南(え……いま……)
果南(私が声をかけたから足を踏み外しちゃったの……?)
果南(私の声で驚かせて……?)
ダイヤ「大きな音がしましたが何か……お二人とも!大丈夫ですか!?」
鞠莉「ちょっと!大丈夫!?何があったの!?」
花丸「え!え?なに!?」
ルビィ「どうしたの!?」
千歌「立てる?おんぶしようか?」
善子「血は出てない?はやく保健室に……」
果南(私が肩を叩いたからバランス崩しちゃったんだ……!)
曜「うん、だいじょ……あったたた」
梨子「曜ちゃん、曜ちゃんごめんなさい!」
梨子「私、足がもつれて……靴紐ほどけてたみたいで……」
曜「だいじょーぶ!そんな顔しないで!」
曜「滑り落ちたのも数段だけだし、梨子ちゃんこそ足挫いたんじゃない?」 果南(どうしてこんなところで声かけちゃったんだろ)
果南(練習後で疲れてたのに、注意力も欠けがちなタイミングなのに)
果南(階段なんて危ないところで後ろから声かけるなんて……)
果南(私のせいだ)
果南(私がちゃんと気を配ってればこんなこと起こらなかったのに)
果南(私のせいで二人にケガをさせた)
果南(私が)
花丸「果南ちゃん!」
果南「へっ!え!?」
花丸「果南ちゃん、どうしたの?ずっと呼んでたのに……ボーっとして……」
果南「あ、あぁ、いや、」
ルビィ「何があったの?転んじゃったの?二人は大丈夫?」
果南「あの、うん、梨子ちゃんが、えっと、曜ちゃんが受け止めたんだけど、転んで、階段の真ん中辺りからなんだけど、二人とも挫いたみたいで」
果南(文章がまとまらない)
花丸「……」
果南「私が、私の、っ……」 曜「あははっ果南ちゃんがテンパってる!めずらしーい!フフッ」
千歌「笑ってる場合じゃないよ!」
曜「えへへ、少しでも場を和ませようと」
千歌「!」ハッ
善子「いいから、大人しくおんぶされなさいよ」
善子「梨子も!ほら!」
梨子「でも私のせいで」
千歌「梨子ちゃんのせいじゃないよ!はい、背中!」ニコッ
梨子「……うん」
曜「いざ!善子ちゃん号、出港!」
善子「耳元でうるさーい!」
曜「ソーリーソーリー!」
千歌「ひげそーりー!なんちて」
曜「ん?」
千歌「ん?」
善子「なに言ってんのよ」ハァ……
千歌「それでは!千歌ちゃん号出発であります!」
曜「全速前進!ヨーソロー!」
善子「だから声大きいってば!」 千歌「失礼しまーす!階段で転んだんですけどー」
「あらあら大変!二人も!」
曜「なんかグキッとやっちゃいまして」
曜「二人ともありがとうね!先に教室戻ってて」
善子「大丈夫?教室まで歩けないんじゃない?」
「歩けない程痛みがあるならすぐにでも病院に行った方がいいのだけど、どう?」
曜「私は軽く挫いただけですけど、梨子ちゃんは?」
梨子「えと、痛いのは痛いですけど、たぶん大丈夫です」
千歌「ほんとに?無理してない?」
「先生が診て判断するから二人は教室に戻ってなさいね、ここまで怪我人を連れてきてくれてありがとう」
千歌「うう……じゃあ……心配だけど先に教室行ってるね」
善子「二人とも安静にしてなさいね」
千歌「お大事に」 ――――
曜「梨子ちゃん、結構擦りむいちゃってたね」
梨子「曜ちゃんは思ってたほどひどくないようで安心したわ」
梨子「…………ごめんね、下敷きにしちゃって」
曜「ううん!大丈夫大丈夫!」
曜「とはいえ二人して捻挫しちゃったからしばらくはダンス練習できないね」
梨子「これから歌の練習の比率を上げるのか、それともみんながダンス練習してる間に曜ちゃんの衣装作製を私がお手伝いするのか……」
曜「歌の……ってそうそう、昨日!大丈夫だった?」
梨子「昨日?」
曜「花丸ちゃんは図書室にいたはずなのに音楽室にいたから!あれ、ドッペルゲンガーじゃないの!?」
梨子「あぁ、あれは私が……ちょっと悩んでることがあって」
梨子「それについて相談にのってもらってたの」
曜「えっ……ってことは」
梨子「安心して、昨日私と一緒にいた花丸ちゃんはドッペルゲンガーなんかじゃないよ」
曜「なあんだぁ……よかった」ホッ 梨子「心配してくれてありがとう」
曜「昨日梨子ちゃんを心配してた私が、今度は千歌ちゃんたちを心配させる立場になってるんだから世話ないよ〜」
梨子「千歌ちゃん……」
梨子「ねえ曜ちゃん、千歌ちゃんのことどう思ってる?」
曜「えっえっなにっ?どう思うって!えっ!」ワタワタ
曜「いや、その、普通に、フッツーに!好きだよ!普通の好き!」
曜「中学の時も友達に勘違いされたんだけどさー!別にアヤシイ関係とかじゃないから!」
曜「いつも一緒にいるせいかそういう風に妄想されちゃうことあるんだよねぇ」
梨子「そう、好きなの」
曜「友達の好きだからね!ライク!梨子ちゃんにまで誤解されたんじゃたまったもんじゃないよ」
梨子「……」
梨子「そろそろ教室だし、雑談もこの辺にしておこうか」
曜「あっ授業の真っ只中だもんね、了解!」 鞠莉「みんな、揃ったね?」
ダイヤ「今日は引き続きダンスレッスン、花丸さんとルビィは今朝できなかった箇所を集中的に、その他の人は次のパートへ、但し曜さんと梨子さんは怪我のため衣装製作についてもらいます」
梨子「あの、ルビィちゃんも一緒に被服室に来てほしいのだけど」
鞠莉「んー、ルビィにはダンスの方してもらわなきゃ……」
果南「いや、ルビィちゃんは被服室に行ってもらおう」
ルビィ「えっでも」
果南「ケガ人だけに行動させるのも不安だし、梨子ちゃんがスムーズに手伝えるように指示を出してもらえる?」
ダイヤ「確かに……怪我人だけ別行動というのも心配ではありますね」
梨子「ルビィちゃん、ごめんね」
ルビィ「ううん、ルビィもふたりが心配だから気にしないで!ダンスのできなかったところはおうちで練習しておく!」 善子「果南、ちょっといい?一昨日のこと聞きたいんだけど」
果南「え?うん……なに?」
善子「一昨日、屋上は使えなくても走り込みはできたわよね?なんで朝練そのものを中止にしたの?」
果南「ああ……、あれ、グラウンドはぬかるんでたし、歩道も泥とか砂利とかで走ると危なそうだったから……」
善子「それでも……ええと、発声練習はできたんじゃない?」
果南「発声練習か……ちょっと思い付かなかったな、それは」
善子「……果南、ちょっと様子変よ?ボーっと……梨子の方?ばっかり見て、何かあったの?」
果南「朝、梨子ちゃんたちがケガしたの……私のせいなの」
善子「え、それどういう」
果南「私が」
鞠莉「かなーん!善子も!突っ立ってないで行くわよ?」
果南「あ、うん、今行く」
善子「ちょちょ、ちょっとまってさっきの」
果南「ごめん、気にしないで」
果南「否定してもらうのを期待して……私ってヤな奴だよね」
善子「どういう意味よ……」 DPG対策本部(5)
堕天使ヨハネが国木田花丸を退会させました
黒澤ルビィが退会しました
曜:えっどうして?
ヨハネ:ずら丸はもうキツいみたい
ヨハネ:グループの抜け方わからないって言ってたから私が退会させた
ダイヤ:ルビィの方は私がグループから抜けるように言いました
ダイヤ:昨日の鞠莉さんのお話で、これ以上ドッペルゲンガーに関わることはルビィに悪影響があると判断しました
ダイヤ:心の病気でなくともドッペルゲンガーを幻視する可能性があるのなら、ルビィにはもう負担をかけさせたくないのです
ダイヤ:身内に対して甘いと評されるかもしれませんが
鞠莉:妹を心配するのは当たり前よ!
鞠莉:過剰に脅すような報告しちゃってごめんなさいね
曜:最初から無理のない範囲でって話だったしね!気にしないで! ヨハネ:調査を続けていく上で二人も抜けたのは厳しいけど
ヨハネ:無理に続けて病んでいったら本末転倒だしね
ヨハネ:特に報告することがなければ個人活動に勤しんでもらうけど、なにかある?
千歌:ある
千歌:今朝はごめんなさい
鞠莉:何が?
千歌:みんなが笑顔でいられるようにがんばるのが私の役割なのに
千歌:梨子ちゃんと曜ちゃんが転んだとき、そのことすっかり忘れてた
千歌:曜ちゃんが明るく振る舞ってくれたから思い出せた
千歌:役割忘れててごめんなさい
曜:そんなの気にしなくていいのに!
ダイヤ:あの状況では笑顔を維持することの方が難しいです
鞠莉:私たちなんか何が起こったかすら把握できてなかったし
ダイヤ:千歌さんはあの時できることをきちんとやり遂げていましたよ
ヨハネ:あんまり気負っちゃだめよ
千歌:でも、それが私の役割だから
曜:善子ちゃんの言う通り、気負っちゃだめだめ!
曜:みんなで助け合っていこうね!
千歌:ありがとう ガララ……シャッ
梨子(ベランダに出るんじゃなかった)
梨子(またあんなもの見るなんて……)
梨子「……」カタン
梨子(ピアノ弾く気にもならない)
梨子(誰が偽者なのか……誰を信じればいいのか……)
梨子「はぁ……」
梨子(胸が圧迫されるような息苦しさ、頭にモヤがかかってるみたいな……まるで酸欠状態のよう……)
梨子(みんなの心の支えになってくれる千歌ちゃん、常に冷静で的確な指示を出してくれるダイヤさん)
梨子(Aqoursの大黒柱とも言えるふたりが入れ替わってるなんて……)
梨子(ふたりだけじゃない)
梨子(入れ替わってる千歌ちゃんを好きだと明言した曜ちゃんもきっと偽者)
梨子(今日私が階段で転んでしまったのも……よく思い出せば果南ちゃんが突き落としたからよ、果南ちゃんの手が肩に触れたもの)
梨子(週明けからいやに私に目をつけて……いつ殺そうかとタイミングを見計らってたんだ)
梨子(……死にたくない)
梨子(死にたくない)
梨子(殺されてたまるものですか!)ドンッ 梨子(千歌ちゃん、ダイヤさん、曜ちゃん、果南ちゃんはドッペルゲンガー)
梨子(信用できるのは鞠莉ちゃんと一年生たち……)
梨子「…………」
梨子(……この人たち、本当に信用していいのかしら)
梨子(ドッペルゲンガーは感覚が鈍い)
梨子(それを考えると……花丸ちゃんとルビィちゃんも怪しむべきかもしれない)
梨子(少し変更があったくらいで踊れなくなるなんて、感覚が鈍い証拠じゃない)
梨子(きっとそうよ)
梨子(曜ちゃんも言ってたもの……図書室にいるはずの花丸ちゃんが音楽室にいたからドッペルゲンガーだって)
梨子(昨日一緒にいた花丸ちゃんはもうドッペルゲンガーになってたんだ)
梨子(そんな花丸ちゃんと同じようにダンスのステップが踏めないルビィちゃんもドッペルゲンガー)
梨子(つまり、今日の放課後はとても危険な状態だったということ)
梨子(ドッペルゲンガーの曜ちゃんとふたりきりになるのを避けようとして)
梨子(結果曜ちゃんとルビィちゃん、ふたりのドッペルゲンガーと放課後を過ごしたことになる)
梨子(そうなるように指示したのは果南ちゃん)
梨子(鞠莉ちゃんと善子ちゃんだけが本物……) 梨子(……ちがう)
梨子(鞠莉ちゃんも新しいステップに少し手こずってた)
梨子(鞠莉ちゃんは体力があって、ダンスがうまくて、時には指導にまわる側こともある)
梨子(そんな鞠莉ちゃんに、できないステップがあるわけがない)
梨子(鞠莉ちゃんもだめ、信用できない)
梨子(善子ちゃんは?善子ちゃんは本当に信用できる?)
梨子(昨日、二日ぶりの練習でもちゃんと動けてた)
梨子(朝練の走り込みのときはあまり疲れてなかった)
梨子(放課後、内容までは聞き取れなかったけど、果南ちゃんに何かについて言及してる様子だった)
梨子(善子ちゃんも、果南ちゃんを疑ってる?)
梨子(もしもそうなら……ドッペルゲンガー同士で仲違いするわけもないし……)
梨子(善子ちゃんは……善子ちゃんなら……信用できる)
梨子(Aqoursで本物なのは善子ちゃんだけだ) Aqours(9)
ダイヤ:連絡をし忘れていました
ダイヤ:放課後に生徒会がありますのでその準備のため、今日の朝練は行けません
ヨハネ:放課後も練習欠席?
ダイヤ:場合によってはそうなります
ダイヤ:早く終われば練習に出られるのですが、現時点ではわかりません
果南:ごめん、私も朝練行けそうにない
果南:気分悪くて
梨子:すみません、私も体調不良で行けません
千歌:二人とも大丈夫?
千歌:無理しないでゆっくり休んでね
ルビィ:果南ちゃんも梨子ちゃんもお大事にね 千歌「おはよー!今日も元気にバリバリ練習始めるよ!」
鞠莉「まだ来てない人いるけどもう始めちゃうの?」
善子「ダイヤと果南と梨子は今日来れないってLINE来てたわよ」
鞠莉「ほんと……果南も梨子も大丈夫かしら……」スッ……スッ……
曜「梨子ちゃんは一昨日の朝も調子悪かったし、本当に心配だな」
千歌「お休みの人の分も!がんばろうね!」
ルビィ「うん!」
曜「へっへっへっ……今日は私がみんなのダンス見て色々口出ししていくぞお!」
千歌「ひえー!お手柔らかに!」
花丸「今日は少人数でグループ分けして練習しない?」
曜「うん?グループ分け?」
花丸「そう!ふたつのグループに分けて、お互いの出来具合や癖なんかを確認して、悪いところは直して、それから放課後の練習に臨むっていうのはどうかな?」
千歌「ん?ん?分ける必要あるの?」
鞠莉「私はそれ、Good Ideaだと思うわ」
鞠莉「曜が一人で五人のダンスを見るより、少人数グループで動きを確認していく方がわかりやすいもの」
鞠莉「いつもは果南が八人を見てくれてるけど、よく考えるとあっちのスタイルの方が異常なのよね」
曜「そっか……果南ちゃんには負担かけちゃってたんだね」 花丸「じゃあ今日はグループ分けすることに決定ずら!くじも準備してるからね!」
ルビィ「花丸ちゃんってすごい……Aqoursの練習スタイルの改善案考えてくれてたなんて」
花丸「……じゃ、ルビィちゃんくじどうぞ!」
ルビィ「うん!あ、丸ついてる」
花丸「丸付いてる人とそうでない人とで分かれるようになってるよ」
花丸「はい、次は善子ちゃん」
善子「ん、私も丸付きね」
花丸「千歌ちゃんどうぞ!」
千歌「うりゃ!あ、丸だ!」
曜「じゃあ次は私がー」
花丸「ふふふ、もうみっつ丸付きが出たから残りは印なしだよ」
曜「なるほど確かに」
鞠莉「それじゃあこの2グループに分かれて練習開始ー!」 鞠莉「最初は花丸の苦手なステップからやっていきましょうか」
花丸「その前に、ごめんなさい、このくじ、実は全部に丸をつけてたの」ヒラッ
曜「えっ……え?」
花丸「鞠莉ちゃんと曜ちゃんに、お話があるずら」
鞠莉「……私たち二人じゃなきゃ話せないのね」
花丸「うん」コクン
曜「えっえっ……えっと……とにかくなにか重要な話なんだね!」
花丸「ただ、いま長々と話してたら」
鞠莉「他の三人に怪しまれる」
花丸「そう」
花丸「だから必要なこと、ひとつだけ言うね」
花丸「ドッペルゲンガーのグループLINEを抜けてほしいの」 DPG対策本部(3)
曜:ごめんね!衣装が遅れがちだから抜けます!
渡辺曜が退会しました
鞠莉:ごめんなさい、私も最近、理事長としての仕事を疎かにしてるから抜けるね
鞠莉:私の調べたことは報告したから、これ以上は力になれないと思うの
小原鞠莉が退会しました 善子「ふぅん……」
善子(またメンバーが減ったのは残念だけど)
善子(鞠莉が抜けたのは好都合ね)
ルビィ「なに見てるの?」
善子「通販サイトからオススメ商品の案内が来てたの」
善子(これなら今日の昼に生徒会室あけてもらう必要はなかったかもしれないわね)
善子(ま、頼んじゃったものは仕方ないし、予定を変えるつもりはないけど)
プルルルル プルルルル
ルビィ「あ、電話」
花丸「え?えーっと……」ゴソゴソ
善子「あんたのじゃないわよ、私の」
善子「大体ずら丸は着信音違うでしょ」ピッ
善子「もしもし」
ダイヤ『もしもし、善子さんですか』
善子「ええ」
ダイヤ『生徒会室の使用許可がおりました』
善子「そう、じゃあ呼んで行くわ」
ダイヤ『呼んで?』
善子「こっちでするから気にしないで」
ダイヤ『わかりました、それでは』 ルビィ「誰から?」
善子「リトルデーモンの一人よ」
善子「今日はそのリトルデーモンたちとお昼食べるから」
ルビィ「そっか……善子ちゃんいないと寂しいな」
善子「ずら丸がいるでしょ」
善子「じゃ、行くから」
ルビィ「むう……いってらっしゃーい」
花丸「ルビィちゃん、悪いんだけど……実はオラも」
ルビィ「他の人と食べるの?」
花丸「うん……近々読書週間始まるから、図書委員みんなでそのお話をしなきゃいけなくて」
ルビィ「それなら……仕方ないかぁ……」
花丸「ごめんね」
ルビィ「いいよ、いってらっしゃい」
花丸「うん、いってきます」 千歌「あの……、曜ちゃん……」
曜「なになにー?」
千歌「衣装大変なのに……」
千歌「……」フルフル
千歌「衣装つくるの!手伝うよ!」ニコッ
千歌「お昼ごはん食べ終わってからでも、放課後の練習が終わったあとでも!」
千歌「土日は曜ちゃんの家にお泊まりとか……」
曜「あ、ううん!いいのいいの!ルビィちゃんいるし、今は梨子ちゃんも手伝ってくれてるし!」
曜「千歌ちゃんは歌と踊りに集中してね!」
千歌「……っ、でも」
曜「あ、あとごめんね、今日は水泳部の人たちとお昼食べる約束してて!」
曜「千歌ちゃんも……今日は梨子ちゃん来てないけど、他の子と一緒に食べてね!ごめん!」
曜「じゃまたあとでね!」
千歌「あ、えと」
タタタッ
千歌「……」
千歌「みんなで助け合おうって言ったの……曜ちゃんなのに……」ポソッ
千歌「千歌なんか……頼りないのかな……」 プルルルル プルルルル
千歌「うん?」ピッ
善子『もしもし、千歌?傍に曜いる?』
千歌「ううん、曜ちゃんは水泳部の人たちのとこ行っちゃった」
善子『そう、それはよかった』
千歌「……よくないよ」
善子『ああ、違うの、アレの件で千歌に来てもらいたくて』
千歌「あれ……アレね、うん」
千歌「曜ちゃんがいちゃだめなの?」
善子『そういうわけじゃないけど、曜はもうグループ抜けたから』
善子『抜けた人に話を持ちかけるのも筋違いでしょ』
千歌「うん、そうだね……」
善子『ま、とにかく生徒会室に来てくれる?話したいことがあるのよ』
千歌「んーわかった」 花丸「理事長室、使わせてくれてありがとう」
鞠莉「You're welcome!このくらいお安いご用よ」
曜「朝の話、聞かせてくれるんだよね」
花丸「なにから話せばいいのか……まとまりがなくなっちゃうかもしれないけど許してね」
花丸「まず、ルビィちゃんとダイヤさんと善子ちゃんと千歌ちゃんと果南ちゃんはドッペルゲンガー」
花丸「オラには、たぶんドッペルゲンガーを見分ける力がある……完璧に見分けられるわけじゃないけど」
花丸「それから、ドッペルゲンガーには最低でもふたつの種類がいる」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています