梨子「ロストソングD.C.」
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一部地の文あり
オリ設定あり
それなりに長い
速報で書いたSSの加筆修正版
ストーリーの変更はなし
最後まで書き溜め済 ーーー
「いやぁ、てっきりよからぬ事を考えてるのかと思っちゃってーーへっくしゅ!」
梨子「大丈夫……ですか?」
私と同じくらいの世代だろうかーー海に落ちた彼女は砂浜でずぶ濡れのまま慣れた手付きで火を起こし暖をとっている
「へーきへーき♪こんなの慣れっこだかーーへっくしゅ!」
梨子「……」
「すびっ……えっとこの辺の人じゃないよね?観光?」
梨子「まぁ……そんなところです」
「どこから来たの?」
梨子「……東京」
「東京!?凄い!」 梨子「……凄い?」
「ねぇねぇ!東京のどこ!?」
梨子「……えっと、秋葉原……?」
確かそんな名前の街だった
「秋葉原!ってことはμ'sとかA-RISEとかやっぱり生で見たことあるの!?」
梨子「……えっと……ごめんなさい、それは知らないです」
「えー!?じゃあスクールアイドルは!?」
梨子「スクール……アイドル……」
彼女の口から出る言葉の響きに戸惑う
梨子「……ごめんなさい……聞いたことあるような気はするけど……私その、疎くて」
「なーんだー……残念」 梨子「その……スクールアイドル……がどうかしたの?……えっと」
「ん?……あっ!ごめんごめん!自己紹介してなかったよね!」
千歌「私、高海千歌!千歌でいいよ♪」
梨子「千歌さん……私は桜内……梨子です」
千歌「梨子ちゃんだね♪私ね!スクールアイドルをやってみたいんだ!」
梨子「……やってみたい?」
千歌「えっとね……これこれ!これがμ's!私のいっちばん好きなスクールアイドル!」
千歌さんがスマホの画面を向けると私達と同年代くらいの9人の少女達が華やかな衣装で歌い踊っている
梨子「……」
画面を見つめながらどう答えたらいいものか考えていると彼女が距離を詰めてきた 千歌「どう!?」
梨子「えっ?」
千歌「凄くない!?」
梨子「え、ええ……そうね……凄い、のかな?」
千歌「μ'sってねみんな高校生だったの!多分どこにでもいるような……いや東京だから内浦の女子高生よりかはおしゃれだけどさ!でも普通の女子高生なの!なのにね、自分達で歌を作って衣装も作って……自分達の学校が廃校にならないようにスクールアイドルになったの」
目をキラキラとさせながら語る彼女の言葉に引っかかる
梨子「高校生……だった?」
千歌「うん、この動画何年も前のでね、現実のμ'sはみんなもう卒業しちゃってるんだ」
梨子「そう……ですか」 千歌「でもね!今でも沢山ファンがいて、今でも沢山復活を望んでる人がいるくらい凄いの!」
何年経っても待ち続ける人がいる……私にはそんな人がいたのだろうか……
千歌「だから私もスクールアイドルになってこんな風にキラキラ輝いてみたいーーってうわぁ!こんな時間!?みとねぇにキレられるぅ!?」
スマホの示す時間に飛び上がった彼女はまだ生乾きであろう制服のまま鞄を掴んで駆け出した
千歌「梨子ちゃん!もしまた会えたらもっとスクールアイドルの話しようね!それじゃ!」
梨子「う、うん……さようなら……」
突然現れて突然消えていく彼女
でも…今の私の事しか知らない彼女に少しばかり安心感を覚えたのを自覚し、母の判断は少なくとも間違いではなかったんだと思った ーーー
浦の星女学院
今日から私が通う新しい学校
この学校は来年度からの新入生募集を止めるーーつまり廃校が決まっている
皮肉なことに過去のない私は未来のない学校に通うのだ
「桜内さん、どうぞ入って」
梨子「はい」
担任に促され古びたドアをくぐり、教室の広さに若干不釣り合いな少ない人数と対峙する
梨子「東京の音ノ木坂学院から来ました。桜内梨子です、これから2年間よろしくお願いします」
何度も練習したお陰か通った記憶のない学校名といまだに慣れない名前をスラスラと言えた 梨子「実は私は事故で1年間の休学をしており、また後遺症で事故以前の記憶がありません。年齢や知識等様々な点で皆さんにご迷惑をかけてしまうかもしれませんが、是非ともよろしくお願いします」
誤魔化していくことも考えた
でもいずれそれは綻びて明るみに出る時は来るだろう
その時に苦しい思いをするなら
いっその事初めから避けられた方がマシだ
そう考えて全てを打ち明けたものの、深く下げた頭を上げるのが怖かった
「奇跡だよー!!」ガタンッ
梨子「へ?」
その場にそぐわない言葉につい顔を上げてしまう
そこに広がる景色は私ではなく謎の言葉を発した彼女ーー高海千歌に注目するクラスメイトしかいなかった
千歌「梨子ちゃん!私と一緒にスクールアイドルやりませんか!?」
梨子「……はい?」 ーーー
今の私にとっては初めての学園生活がようやく終わりを告げ、クラスメイト達が帰り支度を始めるのに合わせて、千歌さんが私の机へと飛び込んできた
千歌「だーかーらー梨子ちゃんも一緒にスクールアイドルやろーよー」
梨子「あの……さっきから説明してますよね?」
千歌「あのμ'sと同じ音ノ木坂に通ってた梨子ちゃんが入れば百人力!」
梨子「……渡辺さんからも言ってください」
曜「曜でいいよー、千歌ちゃん、音ノ木坂から来たって言ってもなんにも覚えてないって言ってるんだし……」
千歌「もしかしたらスクールアイドルやれば思い出すかもしれないじゃん!」
曜「いや……音ノ木坂にいたからってスクールアイドルやってたとは限らないんだし……」
千歌「有り得ないよ!だって見て!梨子ちゃんこんなに美人なんだよ!?スタイルもいいし!声も綺麗だし!」 梨子「あの……千歌さん……」
曜「いや……思いっきり迷惑そうな顔されてるよ…」
千歌「これで3人!あと2人で部活申請も出来るようになる!」
梨子「……いつもこんな感じなんですか?」
曜「たまにね……」ヤレヤレ
曜「てかさー、やるのは良いけどまだ曲作れる人も衣装作れる人もいないんだよ?」
千歌「梨子ちゃん!楽器とかやってない!?裁縫とか得意じゃない!?」
曜「千歌ちゃん……記憶喪失って何か知ってる?」
千歌「ものすっごい物忘れ!」
曜「梨子ちゃん、うちの千歌が大変申し訳ありません」
梨子「いや、まぁ……」アハハ…
曜「とにかくやる気だけでなんとかならないんだから落ち着いて」 千歌「いや、なんとかなる!なんとかする!」
曜「そんなこと言ってなんとかなった事ないでしょ……」
千歌「グサァッ!!」
曜「もう……とりあえず頭冷やして、ね?」
千歌「はぁい……」ガクリ
曜「梨子ちゃんもごめんね?」
梨子「いえ、私は……」
曜「でもさ、もしほんの少しだけでも興味が湧いたら…私も梨子ちゃんとスクールアイドルやりたいかな」
梨子「……考えておきます」
曜「ありがと♪ほら千歌ちゃん!ぐだくだしてたら連絡船乗り遅れるよ!果南ちゃんのところ寄るんでしょ?」
千歌「やばっ!?そんな時間!?梨子ちゃんまた明日!」
梨子「うん、また明日」
曜「バイバーイ♪」
まるで嵐のような一日だった
ただ千歌さんがすぐに勧誘にくるものだから、物珍しそうに見てくる他の生徒達が近寄れなくなっていたのは、正直なところありがたかった ーーー
母「どうだった?学校?上手くやれそう?」
迎えに来た母の車に乗り、また少し居心地の悪さを感じながら帰路につく
梨子「……うん」
母「全部話したんだってね」
梨子「……うん」
母「……お母さん安心した」
梨子「……え?」
母「記憶が無くなっても梨子は梨子のままなんだなって」
梨子「……」
母「昔から大人しくて引っ込み思案だったけど……いざって時にはちゃんと立ち向かえる強い子だったから」
梨子「……」
母「挫けそうになったらちゃんと頼ってね、梨子の記憶があっても無くてもお母さんは梨子のお母さんなんだから」
梨子「……うん」 ーーー
新しい私の部屋
なんの思い入れもない私物の中でも最も目立つ場所に座る
梨子「作曲……」
かつての私なら出来たのかもしれない
そんな事を考えながら目の前の大きな箱ーーピアノの鍵盤蓋を開ける
ずらりと並ぶ白と黒に指を伸ばし一つ音を出す
梨子「今の私には無理ね……」
この音がドレミのどれかも分からない
上に平積みされた楽譜を開けても何も読めない
梨子「……?」
その中でふと気付く
題名の無い手書きの楽譜
何枚も何枚も何枚もある
梨子「……私が、作ったのかな……」
素人の私でも一つ一つが違う曲だという事くらいは流石に分かった
梨子「……これをあげれば……って千歌さんも楽器はやってないんだったっけ」
一心不乱に勧誘してくる彼女の顔を浮かべながら楽譜を戻す
何も出来ない私にはーー彼女達の力になれない ーーー
千歌「梨子ちゃん今日一緒に帰ろー?」
梨子「えっ……一緒に?」
曜「そういえば梨子ちゃんの家ってどの辺?沼津の方?」
梨子「いえ……えっと確か……十千万?とかいう旅館が近くにあった、かと」
曜「十千万?それってーー」
千歌「それってウチじゃん!?」
梨子「……えっ」
曜「そこ、千歌ちゃんの家族でやってる旅館なんだよ」
梨子「そうなんですか……?」
千歌「なーんだちょうど良いじゃん♪じゃあ今日から一緒に帰ろーよ♪」
梨子「今日……から?」 千歌「だってすぐ近くなんでしょ?だったら帰り道一緒なんだし」
梨子「え、ええ……まぁ……そう、なりますね」
曜「梨子ちゃん残念だったね」
梨子「えっ……何が?」
曜「こうなったらもう千歌ちゃんから逃げられないよー」ニシシ
梨子「逃げるってそんな……」
千歌「よしっせっかくだから果南ちゃんにも紹介しよう!」
曜「今日もいくの?」
千歌「もちろん!」
梨子「あの……その果南さん……とは?」
千歌「会えば分かる!」
曜「私達の幼馴染み、歳は一つ上だけどね」 ーーー
千歌「とーちゃーく!」
曜「よっと、梨子ちゃん足元気を付けてね」
梨子「はい」
千歌「果南ちゃーん!」タタタッ
「お?千歌、今日も来たの?なんかあったっけ?」
千歌「新しい友達紹介しに来た!昨日話してた梨子ちゃん!」
梨子「は……はじめまして、桜内梨子です」ペコリ
果南「あー、はじめまして、私は松浦果南、早速千歌に振り回されてるみたいだね」クスッ
千歌「もーなにーその言い方ー」
果南「これ片付けたら終わりだし、デッキで待っててよ」
曜「りょーかいでありまーす」ビシッ
千歌「梨子ちゃんこっち」
梨子「あ、はい」 梨子「その……松浦さんって学校は?」
千歌「今休学中〜お父さんが怪我しちゃってお店回らないんだって」
梨子「お店……?」
曜「ここ、連絡船の船着場兼ダイビングショップなんだ」
梨子「そうなんですか……」
果南「おまたせ、何の話?」
千歌「果南ちゃんが学校行ってない話ー」
果南「言い方に悪意があるなぁ……私だって行きたくない理由じゃないんだから」
梨子「すみません……私が余計な詮索をしたせいで……」
果南「あーいいよいいよ、別に責めたりしてるわけじゃないから」アハハ 果南「それよりメンバーは集まった?」
千歌「昨日今日で集まるわけないじゃーん」
曜「相変わらず2人のまま……」
果南「梨子ちゃんだっけ?はやらないの?スクールアイドル」
梨子「いえ……私はそういうのは……」
果南「ま、転校してきていきなりスクールアイドルやれーって言われても困るよねー」アハハ
千歌「これじゃあ果南ちゃんが入る前に卒業しちゃうよー」グデェ
果南「そんな事言ったって約束は変えてあげないよー」
梨子「約束?」
曜「メンバー5人集めて正式に部活になったら果南ちゃんが入ってくれるって約束してるんだ、休学中だから設立の頭数には入れられなくって」
梨子「そうなんですか……」 果南「1年生とかは?そろそろ部活勧誘始まるでしょ?」
千歌「部活になってないからおおっぴらに出来ないよー……誰か知ってる人入学したっけ?」
曜「知ってる人だとルビィちゃんとマルちゃんくらいかなぁ」
千歌「んむむ……」
果南「どっちもそういうのあんまり好きじゃないかもねー」
梨子「……?」
果南「今言った2人も幼馴染みでね、今年1年生なんだけど私らと違ってお堅ーい家柄なんだ」
曜「ルビィちゃんは昔からこの辺りの大地主のお家だし、マルちゃんはこれまた古ーいお寺の一人娘なの」
梨子「そう……」
千歌「とりあえず聞くだけ聞いてみよーっと」
果南「マルって携帯持ってたっけ?」
曜「私たちが中学卒業した時はまだだったけど?」
果南「……やっぱり勧誘は難しいかもね」 千歌「これで……よしっ!ルビィちゃんから返事来たら教えるね!」
曜「ヨーソロー!私そろそろバス来るし帰るね」
千歌「梨子ちゃんはどうする?」
梨子「私は別に……いつでも……」
千歌「じゃー帰ろっか」
梨子「曜さんはこの辺りに住んでないんですか……?」
曜「私の家、中学の時に沼津の方に引越したの、まぁギリギリ沼津って言える程度だけどね、それじゃまた明日」フリフリ
千歌「バイバーイ」フリフリ
果南「梨子ちゃん」
梨子「はい……?」
果南「千歌から聞いたよ、色々大変なんだってね」
梨子「……」 果南「千歌って結構バカだし色々面倒臭いなぁって思うかもしれないけどさ」
梨子「……?」
果南「結構寂しがり屋でいい子なんだ、だから仲良くしてあげてね」
梨子「……はい」
千歌「梨子ちゃん、私たちも帰ろー」
梨子「あ、はい」
千歌「じゃーねー果南ちゃん」
梨子「お邪魔しました」ペコリ
果南「いつでもおいで、大体ここにいるから」
千歌「なんか今のおばさんくさーい」クスクス
果南「……なんだってー?」
千歌「わわっ!梨子ちゃん逃げるよー!」ダッ
梨子「えっ、千歌さん!?」アワアワ ーーー
モブ「千歌ちゃーん、なんか1年生が呼んでるよー」
千歌「んん?」
曜「あれ、ルビィちゃんだ」
梨子「あの人が……?」 ーーー
曜「どうしたの?」
ルビィ「昨日千歌ちゃんからメールもらって…」
千歌「わざわざ会いに来てくれたのー!?相変わらずかーわいーなぁ」ギュー
ルビィ「うぎゅっ!?ち、千歌ちゃん……くるし……!」
曜「ちーかちゃーん」グイ
ルビィ「あの……それで……」チラッ
梨子「……」
ルビィ「……この人はどちら様ですか?」
千歌「色々手伝ってくれてる友達の梨子ちゃん」
梨子「えっ!?」
ルビィ「本人が一番びっくりしてますけど……」
曜「気にしないで、千歌ちゃんの最近のお気に入りだから」
ルビィ「あぁ……なるほど」
梨子「それで納得しちゃうんですね……」 千歌「で!で!スクールアイドルやってくれるの!?」
曜「千歌ちゃん近いから」グイ
ルビィ「あの……マルちゃんはやっぱりそういうのよく分からないからって断られちゃったけど、私はやってみようかなぁって……」
曜「梨子ちゃん」ガシッ
梨子「えっ、あっ!」ガシッ
千歌「ルビィちゃーーぐぇっ!?」
曜「ふぅ……危ない危ない」
ルビィ「あはは……ルビィね、誰にも言ってなかったんだけど実は昔からアイドルにちょっと憧れてて……」
曜「そうだったんだ、全然知らなかった」
ルビィ「部屋で動画みたり雑誌読んだりしてるだけでライブとかはまだ生で見たことないんだけどね、あと衣装とか自分で真似て作ってみたり……」
千歌「衣装作れるのっ!?ぃよっしゃー!これで3人!」
ルビィ「3人?」
曜「千歌ちゃんから聞いてない?私と千歌ちゃんとルビィちゃんで3人、あと2人で晴れて正式な部活になれるんだ」
ルビィ「えっ、部活まだ無いの!?」 梨子「どんな勧誘してたんですか……」
千歌「とにかく!ルビィちゃんはもう決まり!後は梨子ちゃんが入ってくれればあと1人!」
梨子「いや……だから私は……」
「なら私が入ってもいいかしら?」
曜「んっ?」
千歌「へ?」
「ハロー♪貴女達よね?スクールアイドルをスタートさせようとしてるのは」
千歌「そう……ですけど」
梨子「……どちら様?」ヒソヒソ
曜「知らない……三年生みたいだけどこんな人いたかなぁ」ヒソヒソ
鞠莉「はじめまして、私は小原鞠莉♪マリーって呼んでね♪私も貴女達と一緒にスクールアイドルをしてもいいかしら?」 千歌「えっと……大丈夫です……けど、誰から聞いたんですか?」
鞠莉「果南から♪」
千歌「果南ちゃんから?」
鞠莉「イエース♪実は私、1年の途中から留学しててね、この学校の思い出ってあんまり無いの。だからとっても楽しそうな事してる貴女達に惹かれちゃって♪」ウインク
ルビィ「留学……すごい……!」
鞠莉「それにちょっとくらいなら楽器も出来るわよ?」
千歌「よろしくお願いします!」ガシッ
曜「決断早っ!?」
千歌「これで5人!」
梨子「だから私は……」 ーーー
ルビィ「マルちゃん、やっぱり一緒にスクールアイドルしない?」
花丸「うーん……歌うのは好きだし憧れる気持ちも分かるけど…マル踊ったりはやっぱり……」
ルビィ「大丈夫だよ!ルビィも運動は苦手だけど好きなアイドルの振り付けとかいっぱい練習したら出来るようになったし!」
花丸「うーん……」
ルビィ「やっぱり……だめ?」
花丸「ルビィちゃんごめんズラ……マルにはやっぱりアイドルは無理だよ」
ルビィ「そっか……ごめんね無理に誘ったりして」
花丸「ううん、おらは平気♪その代わりルビィちゃんがスクールアイドルになったらいっぱい応援するから♪」
ルビィ「……うんっ♪」
花丸「じゃあまた明日」フリフリ
ルビィ「バイバーイ♪」フリフリ ルビィ「……一緒に出来たらもっと楽しいと思ったんだけどなぁ……難しいなぁ……」
ルビィ「……はぁ」
「お待たせ、ルビィ」
ルビィ「あ、お姉ちゃん」
ダイヤ「どうかした?」
ルビィ「ううん、何でもないよ」
ダイヤ「そう……」
ルビィ「そうだ、お姉ちゃんは小原鞠莉さんって知ってる?」
ダイヤ「……何故ルビィがその名前を?」
ルビィ「今日千歌ちゃん達と喋ってたら……その人とあって」
ダイヤ「そう……」 ルビィ「……お姉ちゃん?」
ダイヤ「ルビィ、その人とはあまり関わらない方がいいわ」
ルビィ「どうして……?」
ダイヤ「……あんな無責任な人と付き合っていたらルビィに悪影響よ」
ルビィ「……」
ダイヤ「まぁ……三年と一年だから、そう関わる機会もないと思うけど」
ルビィ「……」 ーーー
千歌「果南ちゃん」
果南「何?」
千歌「小原鞠莉さんって知ってる?」
果南「……」
千歌「知ってるよね?」
果南「……なんでその名前が出てくるのさ」
曜「その、小原先輩もスクールアイドルに参加することになって」
果南「なんでそんなことに……というか戻って来たの?」
梨子「えっ……小原さんは松浦さんから聞いたって……」
果南「待って、私は鞠莉が戻って来てることも今初めて聞いたんだよ?」
曜「えっ」
千歌「どーゆーこと?」
梨子「……?」 曜「あ、ちょっと待って……じゃあそもそもあの人なんで私たちが果南ちゃんと知り合いだって知ってたの?」
果南「……」
梨子「松浦さん……何か知ってます?」
果南「……鞠莉はね、小さい頃から内浦に住んでたの」
千歌「えっ嘘っ!?」
曜「でも私も千歌ちゃんも知らないけど……」
果南「あそこ、淡島ホテルのオーナーの娘なんだよ」
千歌「えー…でも淡島ホテルのオーナーさんって外国人じゃなかった?」
果南「鞠莉はハーフだからね」
曜「あの喋り方……留学かぶれかと思ったらハーフだっんだ……」
果南「小学校の3年生だったかな、イギリスから転校してきてさ……引っ込み思案でまだ日本語も下手でさ……あの頃、多分仲良かったの私くらいじゃないかな」
千歌「……」 果南「家庭教師だとか塾だとかでいっつもすぐ帰っちゃうから、放課後遊んだりもないし、中学は沼津の方の私立に行っちゃって、なのに浦の星に入学したんだよね」
曜「あ、思い出した」
梨子「知ってたんですか?」
曜「知ってたっていうか小学校の頃、確かに学校でいっつも果南ちゃんの後ろにくっついてた金髪の子がいた気がする」
果南「うん、それが鞠莉」
千歌「え、いたっけ?」
曜「いたよ、私たちが果南ちゃんに会いに行ったりしたら逃げたりしてた」
千歌「……それほんとに小原先輩?なんか私たちが見たのとイメージ違いすぎるけど……」
果南「私も一年の時に再開してびっくりしたよ、全然違う性格になってたから」
梨子「……」
果南「自分からどんどんアピールしたりしてさ……その頃に廃校の話も出て、生徒会に掛け合ったりしてさ……妙に張り切ってたんだ、それこそスクールアイドルを始めようなんて話もあった……なのに突然留学したんだ」
曜「えっ…」 果南「……全部放り投げていなくなったんだ……色々企画したりしてさ、みんなも賛同しはじめたり……私やダイヤももしかしたらなんて思ったりしてさ……なのに裏切ったんだ!夏休みが始まってすぐに何も言わずに無責任にいなくなったんだよ!」バンッ
千歌「ちょっと……果南ちゃん落ち着いて……」
果南「あ……ご、ごめん……」
千歌「……」
曜「千歌ちゃん」
千歌「なに?」
曜「ちょっと考え直したほうがいいんじゃないかな?小原先輩の事」
千歌「……」
果南「ごめんね千歌……鞠莉が参加するなら私は千歌達と一緒にスクールアイドルはやれない」
千歌「……」
梨子「千歌さん……」
千歌「うん……ちょっと考えてみる……」 ーーー
ルビィ「そんな事が……」
曜「ダイヤさんには話したりした?」
ルビィ「はい……でもあまり関わらないほうがいいって言われただけで、それ以外は」
梨子「あの……その、ダイヤさんとは?」
ルビィ「あ、私のお姉ちゃんです。果南さんと同じ三年生で生徒会長なんです」
梨子「生徒会長……」
曜「千歌ちゃんどうする?果南ちゃんもダイヤさんもそんな簡単に人を貶したりするような性格じゃないよ?」
千歌「……昨日夜ずっと考えてたんだけどさ」
曜「うん」
千歌「私はやっぱり小原先輩に入ってもらおうと思う」
曜「千歌ちゃん話聞いてた?」
千歌「分かってるよ、果南ちゃんがあんなに取り乱すなんてよっぽどの事だし、ダイヤさんだって昔から面倒見のいい人だもん……でも」
梨子「でも……?」 千歌「今、小原先輩の事を断ったら前に進めない気がする……作曲とか申請の必要人数とか、そういうのを含めて」
ルビィ「……」
千歌「利用するみたいで気分がいい事じゃないけど……でも私は小原先輩をまず受け入れてみたい」
曜「……果南ちゃんは諦めるってこと?」
千歌「今はそうかもしれない、どっちみち部活として形にならなきゃ一緒にやれないんだから」
梨子「……」
曜「ふぅ……分かった!」
千歌「……」
曜「乗りかかった船だからね、船長の千歌ちゃんがそういうなら私もそれに合わせるよ!」
千歌「曜ちゃん……」
ルビィ「る、ルビィも!せっかくスクールアイドルをやれるチャンスだから!辛いことも頑張る!」
千歌「ルビィちゃん……2人ともありがとう……」
曜「さぁ!そうと決まればあと1人!部活設立に向けて全速前進ヨーソロー!」ビシッ
ルビィ「よ、ヨーソロー……?」ビシッ
梨子「……」 ーーー
千歌「いらっしゃーい、適当に座っていいよー」
ルビィ「よいしょ」
鞠莉「放課後に友達の家でまったり……これぞスクールガールって感じね♪」
曜「意味分かんないです……」
梨子「あの……千歌さん」
千歌「んー?」
梨子「なんで私も呼ばれたんですか?」
千歌「えっ?」
梨子「……えっ?」
ルビィ「あ、梨子先輩はメンバーってわけじゃないんだった……」
鞠莉「ワッツ?そうなの?いつも千歌っちと一緒にいるからてっきりメンバーかと思ってたわ」 千歌「……」
梨子「……」
千歌「まぁ来ちゃったんだし、くつろいで行ってよ♪」
梨子「えー……もぅ……」ヤレヤレ
曜「あはは、すっかり千歌ちゃんのペースだね」
ルビィ「で、今日は何するんですか?」
千歌「よくぞ聞いてくれたねルビィちゃん!今日はなんと!」
ルビィ「なんと……?」ゴクリ
千歌「グループ名を考えるのだ!」
曜「あー確かにそろそろ考えておかなきゃだね、設立してからじゃ遅いし」
鞠莉「それもそうねー」
ルビィ「他のスクールアイドルと被らないようにしないとだし、結構大変かも」
千歌「皆さんリアクションがあっさりしすぎじゃないですかー……?」 梨子「これは私も参加した方がいい流れ……?」
鞠莉「ナイスアイディアがあればどんどん発言していいんじゃない?♪」
曜「うんうん、アイドルに詳しいルビィちゃん的にはどんな風に名付けすればいいと思う?」
ルビィ「そうだなぁ……やっぱり私達らしさっていうのは重要だと思うの……千歌ちゃんはどんなスクールアイドルを目指したい?」
千歌「μ'sみたいなスクールアイドル!」グッ
ルビィ「じゃあどちらかと言えば正統派のアイドルかなぁ、それなら柔らかい印象がいいかも、あとあんまりひねくれない感じ?」
鞠莉「比較的ストレートなネームって事ね」
曜「んー……じゃあ歌うに踊ると書いて歌踊丸!」ドヤッ
千歌「曜ちゃん……漁船じゃないんだから……」
鞠莉「今ので曜っちのネーミングセンスがデンジャラスなのがよく分かったわ」
曜「えっそんなにダメ!?」ガーン ルビィ「でも海に関係するのはいいかも、内浦らしいし」
梨子「じゃあ……5人になってからだけどファイブマーメイドとか……」
鞠莉「梨子っちも曜っちとイーブンね」
梨子「えっ!?」ガーン
ルビィ「あはは……じゃあえっと、とりあえずたくさん関係のある単語を挙げてみるのはどうかな?何か良いのがあるかも」
千歌「ミカン」
ルビィ「海はどこいっちゃったの!?」
曜「ヨーソロー」
鞠莉「曜っちは1回船から離れて」
梨子「うーん……海、魚、水……ビーチ……」
千歌「夏!」
ルビィ「期間限定ユニットになっちゃうよぅ…」 鞠莉「sea……water、marine、ocean……wave、aqua……splash……」
千歌「アクア……アクアっていいかも!」
曜「確かになんか透き通った感じするかも」
鞠莉「そうねー、いいんじゃないかしら?」
ルビィ「じゃあ……アクアで♪表記はどうしよう……カタカナ?英語?」
千歌「アクアって英語でどう書くの?」
曜「私が知ってると思う?」
鞠莉「A・Q・U・Aでaquaよ」
千歌「さすが留学生」パチパチ
鞠莉「この程度で褒められても嬉しくないんだけど……」ヤレヤレ
千歌「でもなんかさっぱりしすぎじゃない?」
梨子「うん……単語そのままっていうのが駄目なのかな…」
ルビィ「造語にするならどんなのがいいかな?」
千歌「象語?パオーン?」
曜「それは無いよ千歌ちゃん……」 梨子「どんな風に変えるんですか?」
ルビィ「例えばμ'sは元々ギリシャ神話のMuseからきてるらしくて、更にギリシャ文字のμに置き換えたっていう……」
曜「μ'sって頭もいいんだね!」
千歌「更に遠い存在になった気がする!」
鞠莉「貴女達ほんとにやっていけるの……?」
千歌「じゃあアクアを英語に置き換えたら?」
梨子「アクアがそもそも英語じゃ……」
千歌「ホントだ!?」ガーン ーーー
鞠莉「……んーじゃあ私達のものって意味でoursとかはどう?」
千歌「泡?」
梨子「ours……」
曜「でも読みはアクアにするんでしょ?」
ルビィ「oursを混ぜるなら……」
梨子「AとQは最初にないとめちゃくちゃになっちゃうよね?」
ルビィ「じゃあその後にoursを入れてaqoursua?」
鞠莉「なんか長ったらしくない?最後のUとAは無くてもノープロブレムじゃないかしら?」
ルビィ「Aqours……?」
曜「それでアクアって読めばいいんじゃないの?」
梨子「到底読めないと思うけど……」
ルビィ「まぁグループ名だから読み方はこうだ!って言ったもの勝ちみたいなところはあるから大丈夫かなと……」
千歌「じゃあこれでけってーい!」 曜「やっと終わったー」
鞠莉「貴女達もっとスタディするべきよ……」
ルビィ「あはは……」
梨子「……」
千歌「よしっ!じゃあこれから私達はスクールアイドル……Aqours!……って、どうしたの梨子ちゃんニヤニヤして」
梨子「えっ……あ、面白い名前だなぁと……」
曜「面白い?」
梨子「その……A・Q・Oursって読むと永久泡'sって聞こえません?永久の泡……絶対に弾けたりしない夢の泡って感じが面白いかなって……」
鞠莉「ふふっ♪梨子っちはポエマーなのね♪」
梨子「ぽ、ポエマーって別にそんな!」アワアワ
千歌「私は好きだな!」
ルビィ「千歌ちゃん?」
曜「でも泡ってなんかマイナスイメージな使われ方しない?」 千歌「いいじゃん!この内浦みたいになんにもないところからブクブクブクって湧き出してさ!面白いじゃん!私達ここにいるよ!って!しかも割れないんだよ!ずっとそこにあるんだよ!」
鞠莉「私も千歌っちみたいなポジティブシンキングがいいと思うわ」
ルビィ「なんにもないところからどんどん湧き出る泡」
曜「しかも絶対に割れない永久の泡か」
ルビィ「賛成です!裏のイメージとしてもすごくいい!」
千歌「私達の海、永久の泡!Aqours!」
曜「なんか私も急に色々動き出してきてワクワクしてきた!」
ルビィ「憧れのアイドルへの1歩……!」
鞠莉「もう後戻りは出来ないわよ?♪」
千歌「絶対に退かないよ……絶対に!」
梨子「……♪」クスッ ーーー
鞠莉「梨子っちお待たせ、少しなら大丈夫よ」
梨子「すみません小原先輩」
鞠莉「マリー」
梨子「……」
鞠莉「マ・リ・イ」
梨子「鞠莉……先輩」
鞠莉「んもう、梨子っちの噂、三年まで聞こえてるのよ?」
梨子「……」
鞠莉「同い年なんだから先輩なんて付けなくていいわ」
梨子「……鞠莉さん」
鞠莉「んー、まぁそれでいいわ、で、用ってなぁに?」
梨子「渡したいものがあるんです、私の家がすぐ近くなんで来てもらえますか?」
鞠莉「OK♪」
梨子「こっちです」 鞠莉「……」
梨子「……」
鞠莉「何も聞かないの?」
梨子「何をですか?」
鞠莉「……果南かダイヤから全部聞いてると思ったんだけど」
梨子「……聞きましたよ」
鞠莉「貴女はどう思った?」
梨子「分かりません」
鞠莉「わからない……?」
梨子「今の私は経験が無さ過ぎて鞠莉さんがどんな気持ちかも、松浦さん達がどんな気持ちなのかも正直分かりません」
鞠莉「……」
梨子「でも今日の鞠莉さんを見て思いました、多分私と同じなんじゃないかなと」
鞠莉「同じ……?」
梨子「多分ですよ?……今も昔も……何があったのかなんて分かりませんけど多分鞠莉さんはどうしていいか分からなかったんじゃないかなって」
鞠莉「……」
梨子「本当はそんなつもりじゃなかった……こんなはずじゃなかった…でもそうするしかなかった……そんな感じだったんじゃないかなって」
鞠莉「ふふっ、面白い意見ね♪」 梨子「あ、ここです、今取ってくるので少し待っててください」
鞠莉「ええ」
鞠莉「……」
鞠莉「そうするしかなかった、か……」
鞠莉「……結局は言い訳よね」
梨子「お待たせしました、これを」
鞠莉「……これは……楽譜?」
梨子「ピアノの楽譜なんですけど、鞠莉さん楽器出来るんですよね?」
鞠莉「ええ、まぁ……でもなんでこんなものを……?」
梨子「それ、多分全部私が作った曲なんです」
鞠莉「梨子っちが……これを?」
梨子「私、記憶がなくなる前はピアノをやってたみたいで……でも今の私には読めもしない単なる紙切れなんで……スクールアイドルをやるのに良かったら使って下さい」 鞠莉「……いいの?」
梨子「はい」
鞠莉「じゃ、有難く使わせてもらうわ……用件はこれだけ?」
梨子「はい」
鞠莉「なら私は帰るわね」
梨子「すみません、時間を取らせて」
鞠莉「気にしないで♪それじゃ、チャオ♪」ヒラヒラ
梨子「おやすみなさい」 とりあえずここまで
あとaquaは英語じゃなくてラテン語だわ ーーー
ルビィ「あのぅ……津島さん」
善子「何?」
ルビィ「その……津島さんはスクールアイドルとか興味ありませんか?」
善子「スクールアイドル?ごめんなさい、私そういうミーハーなのは嫌いなの」
ルビィ「そ、そうですよね……変なこと聞いてすみません…」シュン…
花丸「ルビィちゃん……ルビィちゃんは頑張ったズラ」ナデナデ
善子「それよりも私は今噂の記憶喪失先輩のほうが興味あるわね、貴女達も何か知らない?」
花丸「記憶喪失……先輩?」
ルビィ「それって……」
善子「知ってるのね!?このヨハネに紹介しなさい!」ガシッ
ルビィ「ひぃぃ!?い、いきなりそう言われてもぉ……」
花丸「津島さん、先輩の都合もあるだろうし……ね?」
善子「おっとそうね、不可抗力とはいえ人間界にいる以上は人間の都合にも合わせてあげなくちゃ」
花丸「……」ヤレヤレ
ルビィ「い、一応ちょっと聞いてみるね……」 ーーー
梨子「……その、初めまして……」
花丸「はじめまして、ルビィちゃんの幼馴染の国木田花丸です」
梨子「うん、話は聞いてます、よろしくね」
善子「私は堕天使ヨハネ、貴女が記憶喪失だと聞いてピンときたの!貴女は間違いなく天界での我が半身だわ!」ギランッ
梨子「えっ……違うと思います……」
花丸「意味不明ズラ……」
ルビィ「津島さん……先輩だから……」
善子「覚えていないだけよ、私の魂が間違いなくそうだと囁いているの!さぁ、私と共に天界へ反逆の狼煙をあげるわよ!」ビシッ 梨子「あの……帰ってもいいかな?」
ルビィ「いきなり呼び出してすいませんでした……」ペコリ
花丸「すいませんでした……」ペコリ
梨子「気にしないで……私は大丈夫だから……それじゃ」
善子「あ、ちょっと待ちなさいよー!」
花丸「津島さんちょっといい加減しするズラ」ググッ
ルビィ「先輩相手に失礼過ぎるよー」ググッ
善子「あーんもう!せっかく上手く行きそうだったのにー」
花丸「何がどう上手くいきそうだったのか全然わからない……」
ルビィ「なんで梨子先輩にこだわるの?」
善子「だって記憶喪失なんて物凄く不幸じゃない」
花丸「う、うん」
善子「不幸体質の私と気が合わないわけないわ」
ルビィ「うん……?」 善子「もう黒澤さん!」
ルビィ「はいっ!?」
善子「アンタと関わりがあるってことはあの人もスクールアイドルって事よね?」ズイッ
ルビィ「いや……梨子先輩は違うけど……」
善子「庇ったってだめよ!こうなったら私もスクールアイドルになって記憶喪失先輩に取り入ってやるんだから」
花丸「はい……?」
ルビィ「えぇ……そんな理由で入られるのはちょっと……」
善子「アンタが先に勧誘したんでしょ」
ルビィ「うぅ……誘う相手間違えちゃった……」
花丸「ドンマイズラ……」 ーーー
善子「黒澤さんに誘われて興味が湧いたのでよろしくお願いします」
千歌「こちらこそよろしくね♪」
鞠莉「なんだかミステリアスな子ね♪面白そう♪」
梨子「……」
曜「梨子ちゃんどうかした?」
ルビィ「あの……梨子先輩……ほんとにごめんなさい……」
梨子「き、気にしないで、ルビィちゃんは悪くないから」
千歌「よし、じゃあこれで遂に5人!」
曜「部活申請出来るね!」
千歌「うんっ!というわけで皆さん!この用紙に名前をお願いします!」バンッ
鞠莉「OK♪」
ルビィ「黒澤、ルビィ……と」カキカキ 善子「……ヨハネっと」カキカキ
ルビィ「津島さん……」
善子「……ちっ」カキナオシ
曜「出来た!」
千歌「よし!じゃあせっかくだからみんなで出しに行こう!」
ルビィ「えっ……みんなで……」
梨子「あ……ルビィちゃんのお姉さんが……」
千歌「あ、そうだった……じゃあ私が出してーー」
ルビィ「……大丈夫です」
梨子「ルビィちゃん……」
ルビィ「いずれはバレちゃうし……それなら最初から隠さないで堂々としたほうがいいと思うから……」
曜「ほんとに大丈夫?」
ルビィ「はいっ」
千歌「分かった、じゃあ6人で行こう!」
梨子「えっ、私も行くの!?」 ーーー
ダイヤ「……スクールアイドル部ですか」
千歌「はい、5人いれば部活の設立に問題はないですよね?」
梨子「……」ソワソワ
ダイヤ「そうですわね……幾許もない時期になぜ新設するのか等々言いたい事は山ほどありますが、規則としては問題ありませんし、私にそれを覆す権利もありませんわ」
千歌「じゃあ……!」
ダイヤ「スクールアイドル部の設立は認めます」
曜「やった!」
ダイヤ「ですが……」
ルビィ「うっ……」
ダイヤ「鞠莉さん、貴女がもし私達にしたのと同じ過ちを繰り返すというのなら、私は何をするか分かりませんよ」
鞠莉「……ふふっ♪肝に銘じておくわ♪」 ダイヤ「……部室の割り当て等は改めて後日お伝えします」
千歌「ありがとうございます!」
ダイヤ「……」
千歌「失礼しましたー」ペコリ
鞠莉「チャオ♪」
ダイヤ「ルビィ」
ルビィ「な、何かな……」
ダイヤ「貴女ももう高校生、私がとやかく言う事はないけど、その分貴女に責任が伴う事を忘れないように」
ルビィ「……うん」
千歌「……」 ーーー
千歌「よしっ、正式に部活にもなったし、早速スクールアイドルAqoursとして動き出さなきゃ」
曜「とにかく曲を作らないことには始まらないよね」
鞠莉「ふふっ♪そーんな貴女達のためにこのマリーがスペシャルなミュージックをプレゼントしてあげるわ♪」
ルビィ「へ?」
千歌「ミュージックって……もしかしてもう作曲したんですか!?」
鞠莉「イエース♪」
善子「用意周到ね」
鞠莉「だってみんなはともかく私はこの一年しかいないのだから、どんどん動かなきゃ勿体ないじゃない?」
曜「そっか……鞠莉先輩三年生だもんね」 鞠莉「ノンノン♪シリアスはノーセンキューよ♪とにかく聞いてみてくれる?」
千歌「はいっ」
梨子「……」
ルビィ「……」チラッ
鞠莉「どうかしら?」
曜「すごい……ほんとに曲になってる……」
善子「いかにもアイドルって曲ね」
鞠莉「まぁ私ももっとハードなテイストにしようかと迷ったんだけど、王道には王道の良さってものがあるから♪」
千歌「鞠莉先輩すごいよー!」
曜「これに歌詞をつけて振り付けを考えれば……」
ルビィ「私達も晴れてスクールアイドル!」 千歌「歌詞は誰が考える?」
善子「私はアイドルソングとか聞かないしパス」
曜「私もそういうのよく分かんないかな……」
ルビィ「ルビィは衣装作りですよね……?」
千歌「えっ、じゃあ振り付けは?」
善子「私踊りとかやったことないし」
曜「盆踊りくらいなら!」
ルビィ「衣装……」
鞠莉「ダンスもリリックもアイドルらしいのって難しいわね」
梨子「前途多難じゃない……」
千歌「とーにーかーく!鞠莉先輩は作曲だしルビィちゃんは衣装作りだから私達3人がなんとかしなきゃ!」
曜「やっぱりそうなるよね……」 善子「はぁ……黒澤さん」
ルビィ「何かな?」
善子「付け焼き刃になるけどなんかアイドルらしさが分かりそうなオススメとかないの?」
ルビィ「うーん……じゃあとりあえずいくつかまとめて後で送るね?」
善子「ありがと」
曜「ルビィちゃん!」
千歌「私達にも!」
ルビィ「えっ、 えぇ……」 ーーー
ピロリン
梨子「ルビィちゃんから……?」
ルビィ『いきなりすみません。余計なお世話かもしれないですけどこの動画を見てもらえませんか?』
梨子「……」
記された動画のページへアクセスすると
とあるスクールアイドルのライブ映像の詳細ページに繋がる
しかし、私はそのまま再生せずに元の画面へ戻った
梨子「……」
梨子『わざわざありがとう、でもごめんなさい、知識としてはもう知ってるの』
ルビィ『そうでしたか……出過ぎた真似をしてすみませんでした』
梨子「……」
梨子『気にしないで』
そう返して再び動画のページを選択する
二年前の日付と共に記されたタイトル
梨子「……音ノ木坂学院……アイドル研究部……1年生グループ…」
まだグループ名もなく、先輩の前座として踊った初舞台らしい
そこに連なる4つの名前に懐かしさと気持ち悪さが湧き上がる ーーー
千歌「うわぁぁ!もう全っ然思いつかない!」
曜「さっきからμ'sの曲の歌詞ばっかり書いてるもんね……」
善子「堕天使としての本能が隠しきれない!」
鞠莉「貴女達、ここ図書室よ」
千歌「そもそも図書室という落ち着かない空間が悪い!」
曜「他に誰もいないのがまたね……」
善子「嗚呼、リトルデーモンの気配が無い!一体どれほどの結界が張られて……」
鞠莉「貴女達ほんとダメ人間よね」
ガラッ
ルビィ「あ、まだいた」
花丸「お邪魔しますズラ……」 千歌「あっ!マルちゃん!」
曜「久しぶりー」
鞠莉「どちら様?」
花丸「千歌ちゃん、曜ちゃんお久しぶり」
善子「ズラ丸!アンタ私のリトルデーモンになりなさい!」ビシッ
花丸「リトルデーモンってなんズラ!?というかズラ丸って何!?」
善子「だってアンタいっつもズラズラ言ってるじゃない」
花丸「そんなひどい渾名初めてズラ!……あっ」
善子「ほらまた言った!」
鞠莉「ねぇどちら様ぁ?」
曜「あっ、私達の幼馴染みで国木田花丸ちゃんです」
花丸「初めまして国木田です、ルビィちゃんがいつもお世話になってます」ペコリ
鞠莉「オーウ♪初めまして♪」 千歌「マルちゃんもAqoursに入ってくれるの?」
ルビィ「来ていきなり!?」
花丸「あー……それは前にルビィちゃんにも誘われたんだけど……オラはそういうの苦手だから……」
千歌「えーマルちゃん可愛いし歌なんかめっちゃくちゃ上手いからぴったりだと思ったのに」
花丸「オラは聖歌隊で歌ってるだけで十分だから」
曜「そういや、2人はどうしたの?」
ルビィ「本格的な衣装作りだともっと勉強しなきゃなぁって思ってそういう本がないか探しに」
花丸「マルは借りた本を返しに来たのと新しい本を借りに」
曜「それ全部読んでるの?」
花丸「もちろんズラ」ドサッ
千歌「漫画より文字多いのよくそんなたくさん読めるよねー」
鞠莉「それは千歌っちが読まなさすぎじゃ……」
千歌「あ」
曜「ん?」 千歌「マルちゃんって文章好きだよね!?」ズイッ
花丸「文章が好きって……そんな考え方はしたことないけど……まぁ本は好きだけど?」
千歌「じゃあさ!踊らなくても歌わなくても良いから作詞担当として部員になるのはどう!?」
花丸「さ、作詞?」
曜「あーそっか別に部員だからってステージで踊る必要はないんだ」
善子「えっじゃあ私も裏方がいい」
鞠莉「貴女何か裏方作業出来るの?」
善子「……お茶くみ?」
鞠莉「論外デース」
善子「なんでカタコトなのよっ!?」 花丸「いや……オラはそんなことしたことないし……」
千歌「大丈夫!私達もこれからやること全部初めてだから!」
花丸「えぇ……」
ルビィ「マルちゃん……ダメかな?ルビィもマルちゃんと一緒にスクールアイドルやりたいんだ」
花丸「……」
千歌「今すぐにとは言わないから、ちょっとだけ考えてもらえないかな?」
花丸「うん……」
善子「そーいえば記憶喪失先輩は?」
曜「善子ちゃんその呼び方やめなって」
千歌「梨子ちゃんなら今日は沼津の病院に行くって帰っちゃった」
鞠莉「そもそも梨子っちは部員じゃないからいる方がおかしいと思うわよ?」 ーーー
梨子「……」
脳、身体共に特に異常はなし
梨子「……はぁ」
症状ーー全生活史健忘
梨子「……えっと、バス停は……あっちね」
「あっ」
梨子「ん?」
善子「記憶そーーじゃなかったえっと……桜内先輩」
梨子「津島さん、なんでこんなところに?」
善子「なんでも何も、私沼津に住んでるから」
梨子「あ、そうなんだ……浦の星に通うの大変じゃない?」
善子「そうでもないわ」
梨子「そっか……私ここまでくるのにすごい時間かかっちゃったし……」
善子「先輩は転校生でしょ?単に土地勘が無いだけじゃない?」
梨子「あはは……多分それもあるかな」 善子「先輩は……」
梨子「ん?」
善子「なんで記憶喪失になったんですか?」
梨子「なんでって言われても……事故にあったからとしか…」
善子「どんな事故ですか?」
梨子「……私はわき見運転の車に跳ねられたとしか」
善子「そうですか……変なこと聞いてすいません」
梨子「ううん……もう慣れたから」
善子「そうだ、先輩の事渾名で呼んでいいですか?」
梨子「渾名……?鞠莉さんみたいな?」
善子「そうね……んー、りこ……りー……」
梨子「……」
善子「り……あっ!リリーとか!」
梨子「えー……」
善子「決定!今からリリーって呼ぶわ!」
梨子「まぁ……津島さんがそう呼びたいなら私は別に……」 善子「ヨハネ」
梨子「はい?」
善子「ヨ・ハ・ネ!私の事はヨハネって呼んで」
梨子「えっ……なんで……」
善子「なんでって私がヨハネだからよ!」ギランッ
梨子「え……やだ……」
善子「やだって酷くない!?」
梨子「私はそのまま津島さんで……」
善子「いや!だって津島善子なんてダサいじゃん!」
梨子「……じゃあえっと……よっちゃん」
善子「小原先輩から聞いたとおりあんまりセンスないわね」
梨子「うっ……」
善子「まぁ今はそれでいいわ、でもいつかヨハネって呼ばせてやるんだから!」ダッ
梨子「あっ、行っちゃった……」
梨子「……渾名で呼ぶって敬語もやめる感じなのかな……?」 ーーー
千歌「梨子ちゃんおはよー」
梨子「おはよう」
千歌「実は私!昨日すっごいいいこと思いついたのだ!」
梨子「いい事?」
千歌「梨子ちゃん!」ズイッ
梨子「な、なに?」
千歌「スクールアイドル部のマネージャーになってくれませんか!?」クワッ
梨子「マ、ネージャー……?」
千歌「そう!ステージで歌ったり踊ったりするだけがスクールアイドルじゃないんだって」
梨子「どういう事?」 千歌「曲を作ったり衣装作ったりさ、チラシとか!ライブの時も裏方さんってやっぱり必要じゃん!そういうのも全部含めてスクールアイドルなんじゃないかなぁって」
梨子「裏方もスクールアイドル……」
千歌「そう!ほら、私って馬鹿だしさ、曜ちゃんも変なスイッチ入っちゃう時あるし、善子ちゃんはあんなんだし、鞠莉先輩もルビィちゃんも結構マイペースでしょ?」
梨子「うーん……確かに」
千歌「そんなAqoursをまとめられそうな人がきっと必要なんだ、で、それを梨子ちゃんにやってもらいたいなぁって」
梨子「でも……私、元々余所者だし……その、記憶喪失だし」
千歌「だからだよ!」
梨子「……はい?」
千歌「ずっと内浦にいる私達と違うからこそ梨子ちゃんにお願いしたいんだ!きっと私達とは違うものが見えるから!」
梨子「違うもの……」 千歌「あっ」
梨子「えっ?」
千歌「善子ちゃんも内浦出身じゃないや」
梨子「ぷっ……♪」
千歌「あー笑ったー!」
梨子「ふふっ♪ごめんなさい♪」
千歌「もー私これでも真面目に考えてるんだからぁ」
梨子「そうね……私も考えてみようかな……」
千歌「ほんと!?」
梨子「うん、お手伝いくらいなら私にも出来るだろうし」
千歌「いよっしゃー!」
梨子「あの、まだ考えてみるとしか……」
千歌「これで7人だ!」
梨子「だからー……って、えっ?7人?」 ーーー
千歌「ばばーん!」
曜「じゃじゃーん!」
鞠莉「オーウ♪ようやく部室が出来たのね」
善子「でもなんで体育館なのよ?教室どころか校舎単位で余りまくってるのに」
ルビィ「スクールアイドル部のためだけに使ってない校舎を開けるのは難しいんだって」
曜「でもここだと練習とかも行きやすいし」
千歌「体育館でライブする時は控え室にもなるのだ!」
鞠莉「エクセレンッ♪」
千歌「そしてもう一つお知らせがございます!」
ルビィ「お知らせ?」
曜「2人ともこっちこっち」
花丸「……」ドキドキ
梨子「そんな畏まって紹介はいらないんじゃ……」
善子「リリーにズラ丸じゃない」
ルビィ「リリー……?」 千歌「なんと!マルちゃんと梨子ちゃんがサポート部員としてスクールアイドル部に入部することになりましたー!」パチパチ
曜「よっ!」パチパチ
ルビィ「マルちゃん……!」パチパチ
善子「ふふっ……やはりヨハネとリリーは引き合う運命……!」ギランッ
鞠莉「なんだかどんどん部活らしくなってきたわね♪」
千歌「じゃあ2人から一言ずつどーぞ!」
花丸「えっ!?あっ、マルはみんなと一緒に歌ったり踊ったりは出来ないけど……みんなが頑張れるように色々お手伝い頑張るズラ!」
梨子「えー、っと……私もステージには上がらないけど、その分裏方として力になりたいと思います……」
曜「拍手ー!」パチパチ
鞠莉「シャイニー☆」パチパチ 千歌「そして!」
ルビィ「まだ何かあるんですか?」
千歌「こうして部活として動き出したからにはやっぱり見てもらわなきゃダメ!」
善子「まぁスクールアイドルだし」
千歌「なのでライブをしようと思います」
ルビィ「遂に……!」ゴクリッ
千歌「早ければ早い方がいいです」
曜「うんうん」
千歌「だから皆さん頑張って曲を作りましょう……」ガクッ
梨子「えっ……あれから進んでないの?」
花丸「聞いてた以上にマズいズラ……」
千歌「だから梨子ちゃんとマルちゃんが頼りなんだよぉ」シクシク
梨子「……」
花丸「……」
梨子「はぁ……」 花丸「桜内先輩、オラ達で頑張りましょう!」
梨子「そうね……鞠莉さん、曲のサンプルは?」
鞠莉「えっ?……あぁ、このプレイヤーよ」
梨子「ありがとうございます」
鞠莉「……」
梨子「花丸ちゃんは聴いた?」
花丸「オラはまだ聴いてないです」
梨子「じゃあまずは曲を聴いてイメージを考えましょうか」
花丸「分かりました」
鞠莉「……」
ルビィ「鞠莉先輩ちょっといいですか?」
鞠莉「ワッツ?何かしら?」
ルビィ「……ここじゃちょっと」
鞠莉「OK」 ーーー
ルビィ「あの……鞠莉先輩」
鞠莉「何かしら?」
ルビィ「あの曲……鞠莉先輩が作った曲じゃないですよね?」
鞠莉「……どうして?」
ルビィ「……」
鞠莉「ルビィちゃん?」
ルビィ「変なこと聞いてすいません……鞠莉先輩が作ったならそれでいいんです」ペコリ
鞠莉「……」 ーーー
千歌「さすがマルちゃんと梨子ちゃん……もう歌詞が出来た!」
梨子「もう一度言っておくけど仮の歌詞だからね?」
曜「仮でもすごいよ、私達なーんにも浮かばなかったし」
千歌「そうそう」
梨子「難しく考えすぎなんじゃないかな?」
千歌「難しく?」
梨子「うん、私も花丸ちゃんもとりあえず音から作っただけだから」
曜「もう少しわかりやすく説明してほしいであります!」ビシッ
梨子「ええっ……そうね、意味よりも言葉のリズムを優先する感じかな?」 千歌「言葉のリズム……」ムムッ
梨子「うん、それから意味が分かるように言葉を変えたり……パズルみたいな感じ」
曜「千歌ちゃんパズルだって」アハハ
千歌「じゃー私と曜ちゃんには無理だね」アハハ
曜「だねー」アハハ
ようちか「はぁ……」
梨子「2人ともパズル苦手なのね……まぁこれからは私と花丸ちゃんで頑張ってみるから2人はダンスを頑張ってね?」
曜「そーだ!ダンス!うわぁ……」
千歌「とりあえずルビィちゃんに教えてもらったスクールアイドルを参考に色々考えてみよう」
曜「了解であります……あ、そろそろバス来ちゃうや」
千歌「じゃあ曜ちゃんまた明日」
梨子「ばいばい」
曜「じゃーまたねー」 ーーー
千歌「んーと……ここはこう?ほっ!うわっ!?」ドテッ
千歌「いてて……んー?あ、こっちかぁ……ほっ」
果南「ちーかー」
千歌「ほへ?うわわっ!?」
バシャーン
果南「あっちゃー……もうほら掴まって」
千歌「あ、ありがどー」ブクブク
果南「何をクルクル回ってたのさ?」
千歌「よいしょ……ダンスをね、考えてたんだ」
果南「ダンス?千歌が?」
千歌「曜ちゃんもだけどね」
果南「ふーん……なんか千歌のそんなに真剣な顔初めて見たかも」
千歌「それ私がなんか適当に生きてきたみたいじゃない!?」 果南「ごめんごめん♪」
千歌「もぅ……」
果南「千歌はさ、今楽しい?」
千歌「うん?……そりゃぁ楽しいけど、どうしたの?」
果南「いーや、なんでもないよ♪ほらダッシュで帰らないと風邪引くよ」
千歌「あ゛ー……またみとねぇに馬鹿にされちゃうよー」
果南「自業自得だよ」
千歌「はぁ……じゃあ果南ちゃんまたね」フリフリ
果南「気を付けてねー」フリフリ
果南「……」
鞠莉「とーっても心配そうねー♪」 果南「誰かさんのせいでね」
鞠莉「ノープロブレ〜ム♪千歌っち達はみんな立派にやってるわ」
果南「……」
鞠莉「……あのね果南」
果南「……って」
鞠莉「復学した「帰って!」
鞠莉「果南……」
果南「はっきり言うよ、鞠莉がいる限り私はスクールアイドルなんかやらない……だから帰って」
鞠莉「……そう、ごめんなさい」スタスタ
果南「……」 ーーー
千歌「それで、こう!」キュッ
善子「地味じゃない?」
曜「腕を伸ばしてみるとか?」
千歌「こう?」ビシッ
善子「あぶなっ」
曜「あー、今のステップのままじゃ距離が近いか、じゃあ、ここの足運びをもう1歩広げてみた方がいいかな」
千歌「こうして……こう!」キュッ
善子「なんとか形にはなってきたわね」
曜「どうかな?ルビィちゃん」
ルビィ「凄くいいと思う!」
鞠莉「スムーズに動けば中々のダンスになるんじゃない?」
千歌「よしっ!じゃあ1回みんなでやってみよう!」
善子「いや、全員同じステップは変でしょ」
千歌「あっ」
曜「千歌ちゃんをセンターにするわけだから……動き的には善子ちゃんと鞠莉先輩は今のステップでもいいけど……ルビィちゃんと私は逆のステップにしなきゃ」
千歌「出来る?」
曜「まぁ逆にするだけなら簡単だから、ちょっと3人でやってみる?」
善子「ものは試しね」 ーーー
ルビィ「梨子先輩、花丸ちゃーん」
花丸「どうしたズラ?」
ルビィ「歌詞はどんな感じかなぁって思って」
梨子「ほぼ完成してるわよ♪聴いてみる?」
ルビィ「聴くって……もう録音したんですか!?」
梨子「国木田さんの歌、凄く上手でびっくりしちゃった」
花丸「せせせ先輩!言わないでほしいズラ!」
ルビィ「花丸ちゃんの歌聴きたいっ!」 ーーー
花丸「……穴があったら入りたい……」
鞠莉「ワーオ……」
善子「歌になってる……」
曜「凄いよ梨子ちゃん!マルちゃん!」
千歌「うぉぉ!なんか私達すっごいことしてる!」
梨子「あはは……」
ルビィ「ルビィも早く衣装完成させなきゃ……!」
梨子「私達に手伝える事があったら言ってね、といっても大したことは出来ないけど……」
ルビィ「ありがとうございます♪」
千歌「あっ!」
鞠莉「どうかした?」
千歌「チラシ!」ガサゴソ 曜「チラシ?」
千歌「昨日ちょっと考えてみたの!」バーン
善子「……地獄絵図?」
花丸「相変わらずダメな方に限界突破してるズラ……」
千歌「はい、曜ちゃん!」
曜「はいきたー」
梨子「……?」
曜「えっと……ここはこうだから……」サササッ
曜「清書完了でありますっ!」ビシッ
鞠莉「まるでアルケミストね」
ルビィ「清書って一体なんだろう……」
千歌「どうかな!?」
梨子「ええ……曜さんの描いたのならとてもいいと思う」 千歌「よしっ!じゃあこれを配ったり貼ったりしよう!」
鞠莉「配るっていっても具体的にどこに?」
千歌「とりあえずは回覧板で町内にお知らせしたりかなぁ」
善子「案外小さく攻めるのね」
千歌「そりゃあたくさんの人に来てもらいたいけどさ、いきなり高望みしても仕方ないし、まずは内浦のみんなに見てもらいたいから」
善子「……っ!?」
花丸「善子ちゃんが面食らってる……」
善子「思った以上にまともな答えが返ってきたらびっくりもするわよ」
千歌「なんか失礼じゃないかな!?一応先輩だよ!?」ガーン
鞠莉「じゃあチラシについては千歌っちに任せても?」
千歌「あっ、うんっ!」
ルビィ「じゃあチラシを完成させるためにも日程とか場所とか決めないとだね」
梨子「そうだね」 ーーー
ダイヤ「体育館の使用許可ですか?何の為に?」
千歌「はいっ、この日程のどれかで私達のライブをしたいんです」
ダイヤ「……少し待っていてください」
千歌「はいっ」
梨子「そういえば、生徒会長さんも幼馴染みなんだよね?」
曜「そーだよ?」
梨子「その割には果南さんと違って千歌ちゃんの態度が堅いというか……」
曜「あー、昔からダイヤさんって凄く優等生なところがあったから、嫌いとか仲良くないって訳じゃないんだけど、なんて言うか……一緒にいたら背筋がピンっとしちゃう感じかな」
梨子「へぇ……」 ーーー
ダイヤ「ではこれで受理しておきます」
千歌「ありがとうございます」
ダイヤ「他に何か貸出が必要なものはあれば一緒に書類を用意しますが」
千歌「体育館の2階の照明と体育館の放送室って書類いります?」
ダイヤ「照明?……あぁ、あれはいりませんわ、放送室も使ってもらって構いません」
千歌「なら大丈夫です、ありがとうございました」
ダイヤ「えぇ」
千歌「ダイヤさん」
ダイヤ「他に何か?」
千歌「その……ダイヤさんにも色々思う事があるかもしれないけど、良かったら私達の初ステージ見に来てください」
ダイヤ「……考えておきますわ」
千歌「ありがとうございます!失礼しましたー」ガラッ
ダイヤ「……」 ーーー
梨子「果南さんには言わなくていいの?」
千歌「果南ちゃんなら何となく私の気持ちも分かってくれるかなぁって」
梨子「気持ち……」
千歌「なんて言うんだろうなぁ……誘いたいけど今誘ったらもっと離れちゃいそうな気がして」
梨子「……」
千歌「果南ちゃんってさ、昔からお姉ちゃん≠チて感じでさ、まぁ私本当のお姉ちゃんもいるんだけどさ」
梨子「うん」
千歌「私達の前を歩いてくれたり、後ろを歩いてくれたり……いつだって私達が私達でいられるように見守ってくれてるんだ」
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