梨子「ロストソングD.C.」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
一部地の文あり
オリ設定あり
それなりに長い
速報で書いたSSの加筆修正版
ストーリーの変更はなし
最後まで書き溜め済 ーーー
千歌「おー!やっぱりブロック予選より人多い!」
ダイヤ「ラブライブ本戦までの途中とはいえ、県内のスクールアイドルの頂点を決めるわけですからね」
曜「むっちゃん達はもう中に入ってるって」
ルビィ「今回は抽選当たったんだね!」
花丸「どんな人が出場するんだろう」
善子「チェックした限りじゃ半分以上が私達よりランク高いグループよ」
曜「やっぱりなかなか大変そうだね」
果南「私達もみっちり練習したんだし、自信持ってやれば大丈夫だよ」
鞠莉「そうね、今更こんなところで怖気付くAqoursじゃないわ!」
千歌「よしっ!地区予選目指してみんな頑張ろー!」
8人「おー!」 ーーー
美渡「たっだいまー」
志満「あ、美渡おかえりー」
美渡「……千歌は?」
志満「部屋にいるわよ」
美渡「やっぱ、落ち込んでる?」
志満「美渡も結果見たの?……帰ってきた時は元気そうにしてたけど……多分」
美渡「ま、スクールアイドルもそう甘くはないって事だね、千歌にもいい勉強になったんじゃない?」ガサゴソ
志満「これで辞めるなんて言い出さなきゃいいけど……」
美渡「どうだかねー、片付ける部屋とかある?」
志満「じゃあ椿と竜胆にお布団運んでくれる?」
美渡「はーい」
志満「……もう回りくどいんだから」
『勝手に食べていいぞ by美渡お姉様』 ーーー
梨子「……」ボフッ
ルビィ『……終わっ、ちゃった……の?』
梨子「……」
鞠莉『14位……』
梨子「……」ギュッ
果南『……まだ足りなかったみたいだね……』
梨子「……」
花丸『……あんなに頑張ったのに……』
梨子「……」ズキッ
善子『……清々しいくらい、ぼろ負けね……』
梨子「……」
ダイヤ『……仕方ありませんわ……』
梨子「……」
曜『……悔しい……』
梨子「……」グスッ
千歌『……やっぱりそんなに甘くないよね』
梨子「……」 コンコン
母「……梨子?」ガチャッ
梨子「……なに?」ゴシゴシ
母「……残念だったわね」
梨子「うん……他のグループの方がずっと上だった」
母「……隣座ってもいい?」
梨子「……うん」
母「……お疲れ様」ナデナデ
梨子「……」
母「今日はゆっくり休んで、また明日から頑張りましょう?」
梨子「うん……」
母「……」
梨子「……」
母「……昔ね」
梨子「……?」 母「梨子が初めてピアノのコンクールに出た時」
梨子「……うん」
母「その時は入賞も出来なくて、梨子は昔から負けず嫌いなところあるから、すっごく泣いててね」
梨子「……」
母「お母さんもお父さんもいっぱい頑張ったねって慰めたことがあるの」
梨子「うん……」
母「でも、その時にね梨子が『私、前より一番上手に弾けたよ』って泣きながらだけど誇らしげに言ったの」
梨子「……!」
母「ただ勝ち負けに拘るんじゃなくて、自分の出来ることに自信を持てる梨子が、お母さん凄く嬉しくてね」
梨子「……出来ることへの自信……」
母「それで今日のみんなの……梨子のステージをテレビで見て思ったの」
梨子「……?」
母「誰よりも楽しそうに踊るみんなは、きっとまだまだ成長出来るって」
梨子「……」
母「梨子が中学生でピアノコンクールの最優秀賞を取れたみたいに、Aqoursももっと大きくなれるって」
梨子「……」 母「時間は沢山ある訳じゃないんだろうけど、4月から始めて、ここまで来れたんだもの」
梨子「……」
母「お母さんは今からもう冬の大会が楽しみよ♪」ナデナデ
梨子「……うん」
母「まだ思い出せなくても大丈夫、悔しい思いをしてもやって来たことを誇れる強さは梨子の心がちゃんと覚えてる」
梨子「こころ……」ギュッ
母「貴女が産まれた時からずっと見てきてるお母さんにはちゃんと分かるわ」ポンポン
梨子「……うん」
母「……♪」ナデナデ
梨子「……ありがとう、お母さん」
母「ふふっ、今日は梨子の好きなものを作ってあるから、それ食べて、また明日からみんなで頑張れ♪」
梨子「……うん!」 ーーー
梨子「あれ……もしかしてもう誰かーー」
ガラッ
ダイヤ「あら桜内さん?」
梨子「ダイヤさん!?まだ6時半ですよ!?」
ダイヤ「その言葉、そっくりそのままお返ししますわ」クスッ
梨子「うっ……」
ルビィ「あっ!梨子先輩♪おはようございます♪」
梨子「ルビィちゃんも……」
果南「ただいまー」
花丸「はぁ……はぁ……あ、朝からこんなに走ってるなんて……」
曜「やっぱり朝走ると気持ちいいなぁ♪あっ、梨子ちゃんおはよー♪」
梨子「果南さんに曜さん、マルちゃんまで……」 ガラッ
善子「ふわぁぁ……って、いっぱいいるし……」
梨子「よっちゃん……」
鞠莉「さーて、どこに隠れてようかしらー♪」ジャーン
ダイヤ「隠れるとは?」
鞠莉「oh……遅かった……」ガクッ
梨子「鞠莉さん……」
善子「なによ、みんな考えること一緒じゃない」
ルビィ「そうみたいだね♪」
果南「あとは千歌だけだけど……」
ダイヤ「真っ先に来てると思ってたんですけどね」
ガタッ
鞠莉「何っ!?」
花丸「ロッカーから?」
曜「……まさか」 ガチャッ
千歌「……zzz」
ルビィ「……寝てるね」
ダイヤ「もしかして私達より先に来て隠れてたと……?」
花丸「そういう事みたい……」
梨子「……千歌さん」トントン
千歌「……zzz」
梨子「千歌さん!」
千歌「っふぇあ!?」ビクッ
果南「あーあー涎垂れてるし」クスクス
千歌「はれぇ?……みんな?」ゴシゴシ
善子「練習始めるわよ」
千歌「んぅ……えぇっ!?みんな来ちゃったの!?」ガタッ
ダイヤ「当たり前ですわ」ヤレヤレ
千歌「えー……せっかく驚かそうと思ったのにぃ……」
鞠莉「ちょっとチープだったわねー♪」
梨子「隠れる気満々だった鞠莉さんが言います?」
鞠莉「な、何のことかしらー」
花丸「何からする?」
ダイヤ「まずは冬のラブライブに向けてこれからどうしていくか話しましょうか」
曜「ルビィ先生の出番だね!」
ルビィ「任せてくださいっ!」フンス
千歌「……」ポカーン 鞠莉「新曲を持ってきたから後で聴いてくれる?」
花丸「分かりました!」
果南「夏休み終わった後も含めて、練習プランも練り直さないとね」
善子「あんまりハードなのはやめてよ?」
果南「えー」
千歌「……みんな」
ルビィ「ほら千歌ちゃん♪」
ダイヤ「いつまで惚けてるんですか?」
果南「夏休みもまだ半分あるしね」
曜「早く始めようよ!」
花丸「やらなきゃいけない事がいっぱいあるズラ!」
鞠莉「止まるわけにはいかない、でしょ?♪」
善子「やらないなら帰るわよー?」ニヤッ
梨子「千歌さん、お願い♪」
千歌「……うん!」
千歌「じゃあ今日も……Aqoursの練習始めるよ!」 ーーー
善子「これ何インチよ……」
鞠莉「75くらいだったかしら」
花丸「マルよりおっきいズラ〜……」
果南「そろそろ始まるよー」
曜「……この感じ……ポップコーンが欲しくなる!」
ダイヤ「映画じゃないんですから……」
千歌「……」ソワソワ
梨子「本当に最初から最後まで生中継なの?」
果南「そう、書いてあるけど」
善子「断言するわ、私途中で寝る」
ルビィ「みんな静かに!」
TV『ーー8月も最終週!夏の暑さに負けない盛り上がりがやって参りました!皆様お待ちかね、第七回ラブライブ!!』
千歌「始まった……!」 TV『全国を勝ち抜いた総勢40組のスクールアイドルによる頂上決戦!』
鞠莉「……」
TV『全てのスクールアイドルの頂点に立つのは一体どのグループなのかっ!』
ダイヤ「……」
TV『日本中が注目する中、アキバドームのステージにスクールアイドルが集結します!』
ルビィ「まさにそうそうたる顔ぶれだね……」
善子「いや、分かんないし……」
『前回優勝者により、優勝旗が返還されます! 』
果南「これがν-tral?」
ルビィ「はい」
梨子「……っ」ズキッ
『第一回優勝者にして、公式サポーターでもありますA‐RISE綺羅ツバサさんより、開会の挨拶です!』
鞠莉「私達も優勝すればプロアイドルになれるのかしら?」
曜「μ'sがプロになってないし無理なんじゃない?」
ルビィ「そもそもラブライブ優勝経験のあるプロアイドルはA‐RISEだけだよ」
千歌「そうなの?」
ルビィ「うん、あとテレビに出てる人はμ'sの矢澤にこさんがマルチタレントとして出てるくらいかな……」
鞠莉「そう簡単にはいかないのね」
ルビィ「もちろんプロとしてデビューするチャンスはぐっと上がるけど、それでもプロとしてやっていくのはスクールアイドルよりもずっと難しいんだと思う」
TV『ーーエントリーナンバー1!雨にも負けず風にも負けず、三度目の本戦出場!悲願の優勝なるか!岩手県花巻市立ーー』 ーーー
曜「1、2、3、4、1、2、3、4、おっけー」
果南「チェックするよー」
千歌「どれどれ〜?」
ダイヤ「果南さんは少しここの振りが大きいので、もう少しコンパクトにしてもいいのでは?」
果南「あー確かに、次ちょっと気を付けるよ」
曜「あっ、ここちょっとズレてない?」
ルビィ「あっ、ルビィがちょっと早いかも……」
千歌「後でそこだけ合わせてみよっか」
ルビィ「うんっ」
花丸「……頭痛、大丈夫?」
梨子「……うん、ごめんね」ズキッ
鞠莉「あまり酷いようなら病院行ったほうが良いんじゃない?」
梨子「うん……」
善子「明日から二学期も始まるし、ライブだって控えてるんだから、無理しないでよ?」
梨子「うん……」ズキッ ーーー
医者「あくまで痛みを和らげる為の薬だから、あまりにも酷くて動けない時に服用してくださいね」
梨子「はい……」
医者「激しい運動よりもストレッチや軽い体操を中心にしてもらったほうが改善に繋がると思いますから、焦らずゆっくり様子を見ましょう」
梨子「はい……ありがとうございました」ペコリ
梨子「……」
梨子「……これから頑張らなきゃ駄目なのに……何してるんだろ……私……」ズキッ ーーー
梨子「……」トボトボ
梨子「……あっ」
梨子「第七回ラブライブ特集……ν-tral、二度目の優勝……」ペラッ
梨子「……約束……守れない、のかな……」ボソッ
梨子「……」ピタッ
梨子「あれ……約束……?私何言ってるんだろ……」ズキッ
梨子「だめだめ、帰って休まなきゃ……頭痛いからってネガティブになっちゃだめよ……」トボトボ ーーー
千歌「梨子ちゃんお疲れ様っ!今日は調子良さそうで良かった♪」
梨子「うんっ!ライブ楽しみだったから、ちゃんと整えて来たよ♪」
善子「松浦先輩とマリー、歌詞間違えてなかったー?」ニヤッ
果南「げっ、バレてた……」
鞠莉「そういうのもライブの醍醐味なんだからいいじゃない♪」
ダイヤ「完璧にしろとは言いませんが、開き直るのはどうかと」ヤレヤレ
ルビィ「善子ちゃん!この間のPVは評判どう?」
善子「えっ?あー、うん、上々よ」
花丸「ランキングはどうズラ?」
善子「えっ、まぁ、ランクはイマイチかな、見てくれる人は格段に増えてるけどね」
曜「コメントは?いっぱい来てる?」
善子「コメント……うん、まぁ、いつも通り……大丈夫……ごめん、ちょっとお手洗い行ってくる」
曜「……?」
ルビィ「善子ちゃん……?」 ーーー
梨子「……」
ガタッガタッバンッ
梨子「……まだ入っちゃだめー?」
ダメー!
梨子「はーい……何やってるんだろう……」
鞠莉「あれ?梨子っち、ドアの前で何してるの?」
梨子「あ、鞠莉さん……それが中に入るなって言われて」
鞠莉「……ははーん、なるほどね♪」
梨子「そういえば、その大きな箱なんですか?」
鞠莉「イッツァシークレッツ♪ちょっと通してくれる?」
梨子「あ、はい」
鞠莉「はぁい♪マリーのとうちゃーーきゃぁっ!?」
梨子「ひっ!?鞠莉さんが部室に吸い込まれちゃった!?」
オソイデスワッ
ソーリーソーリー♪
ドコオイタズラー!?
ソッチニナイノ!?
梨子「……」
梨子「……まだかなぁ」 バァンッ
梨子「っ!?」ビクッ
千歌「おまたせ!」
梨子「あ、もう入ってもーー「そいやっ!」ガバッ
梨子「きゃっ!?何っ!?何被せたの!?紙袋!?見えないよっ!?」アワアワ
千歌「外しちゃダメだよ!足元気を付けてね」
梨子「気を付けるも何も見えないんだって……」
千歌「梨子ちゃん、ここ、椅子あるから座って」
梨子「い、椅子?えっと、これ?」
千歌「じゃあ紙袋取るよー」
バッ
梨子「一体何を……」
8人「ハッピーバースデー!!」
梨子「えっ……と……」キョトン
曜「18歳のお誕生日おめでとう梨子ちゃん♪」 鞠莉「19日なのはもちろん分かってるんだけど、平日じゃない?」
梨子「え、えぇ……」
ルビィ「だからちょっと早いけど今日お祝いしちゃおって、みんなで話してたの♪」
梨子「そう、なんだ……」
果南「うーん……あんまり嬉しくなかった?」
梨子「あ、いえ……そういう訳じゃなくて……」
善子「……?」
梨子「その……自分の誕生日って実感があんまりなくて……なんて言うか、今の私に取ってはまだ2回目だから……」
ダイヤ「確かにそうですわね……すみません、私達の考えが至らないばかりに」
梨子「あっ、別にお祝いしてもらって嫌だったとかじゃないんですよ?」アワアワ
千歌「じゃあ18歳のお誕生日兼、2歳のお誕生日ってことで!」
花丸「いや、それはなんだかおかしい気がする……」
梨子「……ふふっ♪」
千歌「あっ、笑われた!?一応真面目に考えてるつもりなんだよー!?」ガーン
梨子「ごめんなさい♪」クスクス
鞠莉「まぁまぁ細かい事は気にしないで♪とにかくバースデーパーティーを楽しみましょう♪」
曜「賛成ー!」
梨子「うんっ♪みんなありがとう♪」 ーーー
千歌「沖縄と言えばー?」
曜「海ー!」
梨子「また海……?」
曜「はぁ……分かってないなぁ梨子ちゃん、沖縄の海は沖縄の海という特別なものなんだよ……」ポンポン
梨子「前にも聞いたような台詞ね……」
果南「今年は沖縄なんだ、良いなぁ、私も沖縄で泳ぎたかったなぁ」
曜「果南ちゃん、思い出話で我慢してよね」ニシシ
ダイヤ「あの二人の前世は間違いなく魚ですわね」
ルビィ「あはは……」
鞠莉「しゅーがくりょこーかー」ムスッ
花丸「あ、そっか小原先輩、留学してたから……」
鞠莉「そーなのよー……自腹でついて行こうかしら」
ダイヤ「馬鹿なこと言わないでください」 鞠莉「生徒会長権限でどうにかならないのー?」
ダイヤ「なりません、そもそも私の任期はこの間終わりました」
鞠莉「まだ出入りしてるじゃなーい」
ダイヤ「引き継ぎをしてるんです!」
善子「……」
果南「どーしたの?善子ちゃん、難しい顔して」
善子「えっ?あー、私も修学旅行、あんまりいい思い出ないなーって」
花丸「なんで?」
善子「ふふっ……ヨハネがあまりにも崇高過ぎて並び立てる人がいなかったのよ!」ギランッ
鞠莉「ぼっちだったのね」
善子「ぼっち言うなぁ!」
花丸「来年は絶対オラが一緒に回ってあげるズラ!」ギュッ
ルビィ「もちろんルビィも一緒だよっ!」ギュッ
善子「そんな不憫そうな目で見ないで……」シクシク
千歌「というわけで、数日はいないからよろしくね」
梨子「新曲の準備とか諸々任せちゃってごめんね?」
曜「次のライブも近いしね!」 ーーー
善子「混沌より出でし反逆の業ーカルマー」
花丸「却下」
善子「じゃあ、魂に刻まれし獄炎の聖痕ースティグマー」
花丸「却下」
善子「えー……じゃあ偽りの楽園に囚われた者達の解放ーリベルタスー」
花丸「さっきから意味不明ズラ……」
善子「ぬぅ……作詞って難しいわね」
果南「ここでバク転、よっ!」
鞠莉「いや……無理でしょ」
果南「そう?曜は出来たと思うけど」
鞠莉「貴女達二人くらいしか出来ないわよ」
果南「えー、あっ、じゃあこういうのは?鞠莉そこに立ってて」
鞠莉「バッドフィーリングしかないわ……」 果南「いくよー!」ダッ
鞠莉「ちょっ!?」ビクッ
果南「とうっ!」タンッ
鞠莉「怖っ!」
果南「よっと、こんな感じで跳び箱みたいに……」
鞠莉「出来るわけないでしょ!」
ダイヤ「苦戦してるわね」チクチク
ルビィ「今まで千歌ちゃん達が中心になってやってたからね」チクチク
ダイヤ「なんだかんだでいないと困るわね」
ルビィ「でも最初はルビィ達もあんな感じだったし、慣れじゃないかな?」
鞠莉「アクロバティックな動きは禁止!」
花丸「罪とか悪魔とか変な言葉禁止ズラっ!」
ダイヤ「……慣れる以前の問題な気もするけど」
ルビィ「あはは……」 ーーー
梨子「……」
善子「煉獄を突き進む翼をもがれた使者ーリトルデーモンーはやがて地上で堕天使と共に新たなるエデンの礎となる……どうよ!」
花丸「りとるでーもんズラぁ……」フラフラ
梨子「マルちゃんの心が折れてる!?しっかりしてー!」アワアワ
果南「よっ!」クルンッ
曜「ほっ!」クルンッ
果南「バッチリだねっ!」
曜「流石果南ちゃんだねっ!」
鞠莉「貴女達、とりあえずそこに正座して」
ダイヤ「……いかがですか?」
千歌「……衣装だけでも進んでることを良しとしよう!」
ルビィ「もしかしたら次のライブは既存曲でなんとかするしかないね……」
千歌「果南ちゃーん!そんなの私出来ないからー!」
ミッカアレバデキルッテー!
千歌「出来ないしっ!」 ーーー
花丸「はろうぃん?」
善子「そ、ハロウィン、秋葉原でやるんだって」
ルビィ「秋葉原!?」
曜「またあの人混みの中に……」
果南「そんなに人凄いの?」
千歌「うん、なんかイベントしてるんじゃないかってくらい人がいたよ」
鞠莉「まぁ、私達が前行った時は実際イベント前日だったんだけどね」
ルビィ「ハロウィン……秋葉原……はっ!」
ダイヤ「どうかしたの?」
ルビィ「まさか!ちょっと待って!善子ちゃん、パソコン!」
善子「持ってきてないわよ」
ルビィ「また?もう……えっとそのイベントは……」ケンサクケンサク
梨子「……」
ルビィ「……出た、これ!?」
善子「あー、うん、それ」
鞠莉「なーに?知ってるの?」
ルビィ「これ、μ'sやA‐RISEも過去に出演したハロウィンパレードなの!」
千歌「うそっ!?」 果南「じゃあ凄いイベントってこと?」
ルビィ「うんっ、年々規模が拡大して、今では秋葉原駅周辺を始めとするかなりの広範囲で開催されるの!去年も30組以上が出演したり、周辺のお店もほとんどがパレードに合わせてハロウィン仕様だったり!」
曜「協賛の数がとんでもない……」
花丸「これも大会ズラ?」
ルビィ「ううん、これは特に投票とかもないの、ステージも道路を通行止めにしただけ」
果南「なかなか豪快なイベントだねー」
ダイヤ「私達がそれに呼ばれた……と」
ルビィ「私達の出番は最終日!これもμ'sやA‐RISEと同じ!」
善子「なんかルビィの気合い入り過ぎじゃない?」ボソッ
曜「多分μ'sとかA‐RISEと同じっていうのがそうさせてるんだと思うよ」ボソッ
ルビィ「やるよみんな!」ガタッ
千歌「えっ!?」
鞠莉「今日のルビィちゃんは頼もしいわね♪」
ダイヤ「暴走してるだけでは……」
梨子「……っ」ズキッ ーーー
曜「ちょっと座らせて……」ガクッ
果南「これ、夏まつりより人多くない?」
花丸「はぐれたら二度と会えなくなりそうズラ……」
ルビィ「みみみ、μ'sと同じ場所で……」ソワソワ
善子「フッフッフ、感じる……感じるわ!この混沌渦巻く都に湧き上がる闇の力が!私に……ヨハネにその翼を広げよと呼びかけている!」ギランッ
ダイヤ「なんですの、アレ……」
千歌「凄く生き生きしてるね……」
鞠莉「まぁ、今日は堂々とあんなファッション出来る状況だからねー……」
善子「さぁ!立ち上がりなさい我が使徒、リトルデーモン達よ!間も無く黄昏の聖戦の角笛が吹き鳴らされるわ!」バサァッ
花丸「もうすぐ始まるから準備しようだって」
ダイヤ「よく分かりますわね……」
花丸「何となく慣れてしまってる自分がいるズラ……」
ダイヤ「ご苦労様ですわ……」
梨子「……」
千歌「梨子ちゃん大丈夫?」
梨子「えっ?えぇ……」
千歌「なんだかずっと顔色悪いけど……」
梨子「大丈夫、出番になるまでに落ち着くと思うから……」
千歌「……」 オーラーイ
ユックリー
オケーイ
イイヨーアゲテー
9人「お疲れ様でしたー」
千歌「いやぁ楽しかったー♪」
曜「うーん、踊るとなんかスッキリするね♪」ノビー
ダイヤ「たまにはこういったイベントも良い刺激になりますわね」
鞠莉「普段と違って一体感みたいなのがあるからね♪」
ルビィ「はぁぁ♪ルビィはとにかくμ'sやA‐RISEの立った舞台に上がれただけで満足ぅ♪」ルンルン
花丸「オラにぱそこんの知識があれば昔の動画も観れるのになぁ……気になるズラぁ……」
善子「それくらいすぐ覚えられるわよ……」
果南「内浦でもこういうイベントやれば人集まったりしないかなぁ?」
ルビィ「うーん、こういうのは東京とかの方が豪華だったりするからどうなんだろぉ……」
曜「飾り付けとかも凄いもんねー」
善子「その分、片付けが大変そうだけどね」
ダイヤ「明日にはまた通常営業に戻られるでしょうからね」
花丸「そう簡単にはいかないよねぇ……」
ミシッ…
善子「ん……?」キョロキョロ ギギギ…
千歌「善子ちゃんどうかしたー?」
善子「あ、いや、なんか砂みたいなのが降ってきてーー」
ギギ…バキィッ!
梨子「っ!!」ダッ
鞠莉「梨子っち!?」
果南「善子ちゃん!!」
善子「えっーー」
梨子「ーーーー!!」
ガッシャァァン! ナンダー!?
ゲートガクズレタゾー!
花丸「……えっ……」
ルビィ「善子ちゃん!!」
ダイヤ「ルビィ、待ちなさい!」ガシッ
ルビィ「だって善子ちゃんが!!梨子先輩がっ!!」
「君達、危ないから離れて!」
果南「あのっ!私達の友達がーー千歌っ!」
「君っ!待ちなさい!」ガシッ
千歌「嘘だっ!善子ちゃん!梨子ちゃん!」ジタバタ
「誰か手貸して!女の子がいる!救急車も!」
曜「あっ……」ゾワッ
鞠莉「……離れてましょう」グイッ
ルビィ「嫌だ……やだやだやだ……」ギュッ
ダイヤ「……っ」ギュゥッ
果南「みんなは待ってて」
花丸「か、果南さん!?」 「貴女、大丈夫?立てる?」
善子「だ、大丈夫です……ちょっと擦りむいただけで」ヨロッ
「君っ、おいっ、しっかり!聞こえてる!?」
梨子「……」グッタリ
善子「リリー……?」
「呼吸確認、脈拍……大丈夫、担架!急いで!」
「気を失ってる、気をつけて、1、2、3!」
梨子「……」グッタリ
善子「リリー……!リリー!」
「落ち着いて、彼女はきっと大丈夫だから、貴女も念のため病院に」
善子「は、はい……」
果南「善子ちゃん!」
善子「松浦先輩!?」
果南「善子ちゃん、大丈夫?怪我は!?」
善子「私はちょっと擦りむいただけ……でも……」 果南「……梨子ちゃんは……?」
善子「先に救急車で……気を失ってて……」グスッ
「貴女お友達?」
果南「はいっ!」
「念のためにこの子を今から病院へ送りますね」
果南「私も付き添います」
「分かりました、貴女歩ける?」
善子「は、はい、大丈夫です……」
果南「……もしもし?ダイヤ?私、今から二人の病院に付き添うから……善子ちゃんは少し怪我してるけど大丈夫」
善子「……」
果南「梨子ちゃんはまだわかんない……うん、善子ちゃんの家と梨子ちゃんの家に連絡入れてくれる?うん、ありがと、みんなは先に内浦帰ってていいから、病院の場所は後で送る」
善子「……」
果南「うん、それじゃ」 ーーー
果南「本当に申し訳ありませんでしたっ!」
善子「ごめんなさい……っ」
母「二人共、顔を上げて、みんなのせいじゃないんだから」
善子「でもっ、私がぼんやりしてたせいで……」グスッ
果南「私がもっと早く気付いてたら梨子さんがこんな目に合わなくて済んだんです……」
母「大丈夫、大丈夫だから、ね?そんなに自分を責めないで?」
果南「はい……」
善子「……」グスッ
父「あ、いたっ、梨子は!?」
母「お父さん、梨子はまだ……でも命に別状はないそうよ」
父「っ……そうか、良かった……君達は?」
果南「梨子さんと同じ学校の松浦果南といいます」
善子「津島善子……です」グスッ 母「彼女達と一緒にいた時に事故にあったみたいで……」
父「そうか……君達は怪我は?」
果南「私は何も……」
善子「梨子先輩が助けてくれたから……少し擦りむいたくらいで……」
父「梨子が……助けた……?」
母「そう……みたい」
父「それじゃ、梨子は……」
母「ううん、そうじゃないみたい……」
父「……そうか……それなのにあの子は……全く……いつも人の事ばっかり考えて……」
果南「あの……すみません……一体何の話ですか……?」
父「あぁ、すまないね、こちらの話ばかりして、君達梨子の事情は?」
果南「本人から記憶喪失だという話は……」
母「あまり人に話す話ではないのだけども……実はね、あの子の記憶喪失の原因はーー」 ーーー
母「梨子!」
梨子「あ……お母さん……」
母「良かった……もう、心配したんだから」ギュッ
梨子「ごめん……なさい……」
母「ここ、どこか分かる?ちゃんと覚えてる?」
梨子「うん……さっき先生から聞いたし……なんでここにいるかも分かってる」
母「良かった……」
梨子「……みんなは?」
母「内浦で梨子の事待っててくれてるわ」
梨子「……ナナは?大丈夫だった?」
母「……えっ?」
梨子「……?」 母「梨子……今なんて……?」
梨子「ん……?あれ……違う……えっと……」ズキッ
母「梨子……?」
梨子「あ……よっちゃん……よっちゃんだ……」
母「……津島さんなら大丈夫よ」
梨子「良かった……」
母「梨子……今日が何日か分かる?」
梨子「えっ?うん、さっき教えてもらって……えっと……12月?……違う……ハロウィンのイベントだったから……11月だ……」ズキッ
母「梨子……」
梨子「あっ、先生が今日と明日は様子を見て、明後日には退院出来るって」
母「そう……じゃあお母さんも先生とお話ししてこなきゃね」
梨子「うん、心配かけてごめんなさい……」
母「いいのよ、貴女が無事ならそれで、じゃあ無理しないでね」ナデナデ
梨子「うん」
ガラッ
梨子「……痛っ」ズキッ
梨子「……頭が……割れ、そう……っ」ギュッ ーーー
千歌「だめなのだ!」
梨子「えっ?」
ダイヤ「病み上がりなんですから大人しくしててください」
梨子「でも……冬のラブライブもあるし……」
曜「だからだよ、練習したい気持ちも分かるけど、まだ本調子じゃないでしょ?」
梨子「でも……」
善子「じゃあヤモリの干物食べる?」スッ
梨子「……大人しく休んでます」
花丸「なんでそんなもの持ち歩いてるズラ……」
善子「私がヨハネだからよっ!」ギランッ
ルビィ「梨子先輩♪歌の練習は一緒にしましょうね♪」
梨子「うん、ありがとう♪」
果南「じゃあ行ってくるね、こっそりついてきたりしたらダメだよ」
梨子「果南さんじゃないんですから、そんなことしません」
果南「ちょっとどういう意味っ!?」ガーン
鞠莉「梨子っち分かってるー♪」
果南「鞠莉まで!」
梨子「ふふっ♪」
梨子「さて……じゃあ何してよっかな……」キョロキョロ
梨子「……先に音楽室で歌の練習でもしてよっかな」 ーーー
梨子「……」
梨子「……ピアノ」スッ…
『ーー先輩に憧れてーーしたいと思ってーーしました』
ポロンッ…
梨子「……あ……」ゾワッ
『ーーだよね』
『だってーー』
『どうしてーー』
『ーーが部長でしょ』
『まぁまぁーー』
梨子「いっ……つぅ……」ズキズキッ
梨子「はぁ……はぁ……」
梨子「……っ」ギュッ
『改めて、ようこそーーアイドル研究部へ!』 ーーー
千歌「おーい梨子ちゃーん」
花丸「しんどくて帰っちゃったとかかな?」
曜「それなら何か言ってくれると思うけど……」
ルビィ「……?」ピクッ
鞠莉「……ん?」キョロキョロ
果南「どうしたの二人共」
ルビィ「なんか聞こえない?」
ダイヤ「……?」
千歌「……」
善子「……これ、ピアノ?」
果南「誰か弾いてるのかな?」
花丸「……っ!」ダッ
ルビィ「思い出した!これμ'sの曲だよっ!」ダッ
ダイヤ「ちょっと、校舎内で走らない!」
曜「何っ!?」ダッ
鞠莉「いいから!」ダッ
千歌「……!」ダッ
果南「二人共置いてくよ♪」ダッ
善子「あっ!そういうこと!?」ダッ
ダイヤ「もう!」ダッ ーーー
ガラッ
ルビィ「はぁ……はぁ……!」
花丸「あっ……!」
果南「……!」
〜♪〜♪
鞠莉「そんな……」
善子「まさか……」
曜「すごい……」
梨子「……♪」
ダイヤ「……優しい音」
千歌「うん……分かる……これが梨子ちゃんの音なんだ……」 梨子「……弾けた」
パチパチパチパチ
梨子「……!?」ガタッ
千歌「梨子ちゃーーうぐぇっ!?」
果南「すぐ抱きつかないの」グイッ
鞠莉「ビューティフォー♪」
ダイヤ「素晴らしい音色でしたわ」
梨子「み、みんないつから!?」
ルビィ「少し前から♪」
花丸「うぐっ……感動的な曲じゅらぁ」ズビッ
善子「えっ、泣き過ぎでしょ!?」
梨子「……」
千歌「梨子ちゃん……?」
梨子「……私……私ね……」ギュッ
鞠莉「梨子っち……」 梨子「ずっと弾いてなかったから……全然指が動かなくってね……本当はもう少し上手に弾けたんだけど……」
ダイヤ「……」
梨子「頭も痛くって……集中も出来なくて……人に聴かせてあげられるような出来じゃないし……」
ルビィ「……」
梨子「でもっ……でも……」グスッ
曜「梨子ちゃん……」
梨子「私……ピアノが……スクールアイドルが好きなの……」ポロポロ
善子「っ……!」
梨子「私……ちゃんと覚えてた……ぐすっ……好きなこと……少しだけど……思い出せた……!」
千歌「……梨子ちゃん」
梨子「ぐすっ……ごめんな、さい……」ゴシゴシ
千歌「……私、もっと聴きたいな!」
梨子「……えっ?」
千歌「もっと……もっと私達に聴かせてよ!梨子ちゃんの好きな音!」
ルビィ「ルビィも聴きたい!」
鞠莉「これで作曲家マリーは引退ねー♪」
果南「元々梨子ちゃんが書いた曲が土台でしょー」 梨子「でも……まだ全然……」
ダイヤ「上手い下手は関係ありませんわ」
善子「そうね、上手い曲が聴きたいんじゃなくて、リリーの曲が聴きたいわ」
花丸「オラも……じぇんぱいのぎょく……ひぐっ……きぎだいじゅらぁ……」スビッ
曜「マルちゃん……梨子ちゃんより泣いてる……」アハハ…
梨子「……どんなに下手でも笑わないでね……」
千歌「うん、笑わないよ」
曜「そもそも上手いとか下手とか分かんないしね」
果南「私も」
ダイヤ「心のこもったものを笑う様な人はここにはいませんわ」
梨子「……ありがとう」
鞠莉「じゃあせっかくだから今日は梨子っちの伴奏で歌のレッスンしましょうか♪」
梨子「えっ!?そ、それはちょっと……!」
花丸「ずびっ……よーし、全員整列!」ゴシゴシ
善子「諦めなさい」ニヤリ
梨子「えっ……えー……」
ダイヤ「みんな嬉しいんですよ、貴女のピアノが聴けて」
梨子「……ありがとうございます」 ーーー
鞠莉「お待ちかねの新曲よー♪」
果南「あれ?作曲家マリーは引退したんじゃなかったの?」
鞠莉「ノンノン♪今回はなんと梨子っちが作ったのよー♪」
花丸「いつも桜内先輩の作った曲なんじゃ……」
鞠莉「それはそうだけど、そうじゃなくって、今回のは未完成だったのを梨子っちが新しく作り直したのよ」
曜「ホントに!?」
梨子「うん……まだ技術的に不安だったから打ち込みを鞠莉さんにお願いしたけど」
千歌「聴きたーい!」
鞠莉「じゃあ流すわよー」
〜♪ ルビィ「わぁ……♪」
ダイヤ「とても良いと思いますわ」
梨子「なんか、恥ずかしい……」
千歌「難しいことはよく分からないけど、梨子ちゃんらしい曲だと思う!」
曜「うん!優しくて暖かい気持ちになるね!」
梨子「気に入ってもらえたなら良かった♪」
千歌「これで冬のラブライブは必勝だ!」
果南「また、そんな大口叩いて……」
花丸「作詞するの楽しみズラ〜♪」
ルビィ「善子ちゃん」
善子「ん?」
ルビィ「そろそろ冬のエントリーが始まると思うけど連絡きた?」
善子「んー、まだだったと思うけど来てたらエントリーしておくわ」
ルビィ「えっ……あ、うん」
善子「……」 ーーー
善子「ただいまー……」
善子「ふぅ……」
善子「……」カチカチッ
善子「……」
善子「……」ギリッ
善子「あとは私が何とかしなきゃ……」
善子「大丈夫……私はヨハネなんだから……」
善子「……」
善子「これ以上……」
善子「……嫌な思いはさせたくないのよ……」 ーーー
ダイヤ「貴女……寒くないんですか」
果南「ん?んー……そんなに」
鞠莉「クシュンッ……これで寒くないとかなんなのよ……」
果南「でも海の中の方が冷えるし」
ダイヤ「どんな理屈ですか……」
鞠莉「もうウィンターよ!北海道は雪降ってるのよ?」
果南「えー、でもここ降ってないじゃん」
ダイヤ「……もう冬なんですよね」
鞠莉「ダイヤ……?」
ダイヤ「私達、あと3ヵ月もすれば卒業なんですね」
鞠莉「……そうね」
ダイヤ「鞠莉さんはどこを受験するんですか?」
鞠莉「しないわよ?」
果南「えっ?」
鞠莉「だってもう大学決まってるし」
ダイヤ「どういうことですの?」 鞠莉「あれ?言ってなかった?私留学中に飛び級してるから大学受験終わってるのよ?」
ダイヤ「……聞いてませんが……」
果南「じゃあ本当に浦の星を卒業するためだけに戻ってきたの?」
鞠莉「ええ、だから卒業したらまた向こうに戻るの」
ダイヤ「そう……でしたか」
鞠莉「大学卒業したらまたこっちに戻って来るつもりだけどね♪果南は?」
果南「私はそのまま店で働くよ、お父さんも怪我してからあんまり無理出来なくなっちゃったし」
鞠莉「そう……ダイヤは?」
ダイヤ「鞠莉さんと似たようなものですわ、県外に進学してから、家を継ぐために戻って来ます」
鞠莉「そっか」
果南「二人共、ちゃんと戻ってきてよねー、私待ってるから」
ダイヤ「当然ですわ」
鞠莉「意地でも帰ってくるわ」 ーーー
千歌「そういえば梨子ちゃん」
梨子「ん?」
千歌「ν-tralの二人にはもう連絡したの?」
梨子「……ううん」
曜「なんで?せっかく記憶戻ってきてるのに」
梨子「まだ断片的にしか思い出せてないし、何か失礼な事とか言っちゃったら悪いし……」
千歌「それでいいの?」
梨子「うん……それに、まだあの二人と友達だった実感もなくて……」
曜「そっか……」
梨子「だから……もう少し思い出せるまでは、今のままでいようかなと思って……」
千歌「じゃあその時は改めて私達の事紹介してほしいな!」
曜「そだね!」
梨子「ふふっ♪もちろん!」 ーーー
ルビィ「……」
花丸「無限の選択肢……うーん、ちょっと言葉が堅い気がする……うーん」
善子「……」
ルビィ「善子ちゃん」
善子「ん?」
ルビィ「何か……ルビィ達に隠してない?」
善子「は?何の話よ」
花丸「……?」
ルビィ「……じゃあ最近どうしてパソコン持ってこないの?」
善子「慣れてきたから家で作業するだけで十分だし、なんだかんだ重いしねー」
ルビィ「……本当にそれだけ?」
花丸「……ルビィちゃん?」
善子「……何が言いたいの」
ルビィ「夏のラブライブの時はわざわざ千歌ちゃんにエントリーするように言ってたのに、今回は善子ちゃんがエントリーしちゃったよね」
善子「……あれは初めてのエントリーだから花を持たせてあげただけよ、誰がエントリーしたって結局一緒なんだからいいでしょ」
ルビィ「……みんなでランクとかコメントとか見るの楽しかったのに……」
善子「……別にそれぞれアカウント用意して見ればいいでしょそんなの」
ルビィ「……だから見たよ」
善子「……っ」 花丸「あの……何の話ズラ?」
ルビィ「……今までは出来るだけみんなで見たいと思ったから、Aqoursのページは見ないようにしてたけど……善子ちゃんが全然見せてくれないから……ルビィのアカウントで見てみた……」
善子「……あっそ」
ルビィ「……なんでコメント非表示になってるの」
善子「……」
ルビィ「……ねぇ」
善子「私あれなのよねー、あれ、画面に文字流れるの嫌いなのよ、だから」
ルビィ「……そんなの見る人が自由に出来るでしょ……」
善子「そうだっけ、それは気付かなかったわねー」
ルビィ「……」
善子「聞きたいのはそれだけ?私が管理任されてるんだから私の好きにして何か問題ある?」イラッ
花丸「あの……二人とも……」オロオロ
ルビィ「……動画編集とか出来るからって……善子ちゃんに全部任せちゃってるのは悪いと思ってるよ……」
善子「別にいいわよ、そんなの」 ルビィ「でも、だからってルビィ達にまで見せないようにする必要ないよね……」
善子「……だから私が任されてるんだから、私がどうしようと関係ないでしょ!」
ルビィ「あるよ!」
善子「っ……」
ルビィ「ルビィ達みんなでAqoursだもん!」
善子「……」
ルビィ「……だから見せてほしい……見てる人がどんな風に思ってくれてるか、知りたいから」
善子「……いやよ」
ルビィ「なんで!」
善子「なんでも」
ルビィ「いやだっ!見せて!」
善子「しつこいっ!」
ルビィ「なんで見せてくれないの!」
花丸「る、ルビィちゃん落ち着いて」オロオロ
善子「あんなもの見せられるわけないでしょ!」 花丸「善子……ちゃん……?」
ルビィ「……」
善子「……チッ……」
ルビィ「……やっぱり」
善子「……っ!?」
ルビィ「……ルビィはね、善子ちゃんが思ってるよりずっとスクールアイドルが好きなんだよ……」
善子「……」
ルビィ「だから“そういう事”があるのも知ってる……」
善子「……っ」ギリッ
ルビィ「善子ちゃん……いつもぶっきらぼうだけど本当は優しいのも知ってる……」
善子「……違う」
ルビィ「だからルビィ達の事思って、コメントを隠しちゃったんだよね?」
善子「……私は」
ルビィ「でもね、善子ちゃん1人だけで背負ってほしくないな……」
善子「……」
ルビィ「ルビィ達、9人でAqoursなんだから……嬉しいことも嫌なことも9人で感じてたいから……」
善子「っ……」
ルビィ「だから、見せてほしい」
善子「……」
善子「……わかったわ」
ルビィ「善子ちゃん……!」
善子「ただし」
花丸「……?」
善子「まだ……リリーには黙ってて」 ーーー
善子「……」
ルビィ「……」ギュッ
果南「なんなのさ……これ……」
ダイヤ「……」
曜「酷い……」
千歌「……いつから?」
善子「ブロック予選の前くらいから……」
花丸「じゃあ夏休みの初めくらいからずっと……?」
善子「うん……毎日じゃないけど……」
千歌「なんで黙ってたの……」
善子「……」
千歌「ねぇ」
果南「千歌、落ち着いて」
千歌「……ごめん」
善子「……大会前だったし……消したりしてたら……すぐに飽きて止めるだろうと思って……」
ダイヤ「それで……一人で抱え込んでいたわけですね」
善子「ごめんなさい……なんとか出来ると思って……」
ルビィ「善子ちゃんが謝る事じゃないよ……」
曜「でもこのままどうするの?」
善子「打てる手は全部打ったつもりだけど……」
千歌「……」
ダイヤ「このまま隠し通すつもりですか?」
花丸「……」
果南「もう少し何とかなるまでは、そのつもりの方がーー」
ガラッ
梨子「誰かいる……の……?」 曜「えっ……」
果南「っ……!」
千歌「梨子、ちゃん……」
梨子「……今日休み……だよね……?」
曜「いや、ちょっと……たまたま……」オロオロ
梨子「……みんな揃ってなにしてるの……?」
ダイヤ「……」
花丸「その……これは……えっと……」
梨子「それ……動画?みんなで見てたの……?」
ルビィ「えっと、これは……そうじゃなくて……」
果南「梨子ちゃん、これはたまたまで……」
梨子「……なんで隠すんですか」
ルビィ「っ……」
善子「……」
ダイヤ「ルビィ、果南さん……見せてあげてください」
果南「でも!」
ダイヤ「……」
果南「っ……」
梨子「何の……話を……」
ダイヤ「桜内さん、私達が見ていたのはこれです」スッ
梨子「……っ……なに……こ、れ……」
『ν-tralについていけなかった落ちこぼれ』
『ダブりなのによくスクドルやれるよね』
『ラブライブ出れなかったらまたダブって転校してそう』 果南「あのね、梨子ちゃん……」
善子「……ごめん、なさい……」
梨子「……」
善子「私がもっと早くちゃんと対処出来てたらこんなことにはならなかったの……だから……ごめんなさい……」
梨子「……」ギュッ…
ダイヤ「桜内さん……」
梨子「……私……忘れ物取りに来たんだった……」フラフラ
ルビィ「あのね梨子先輩!」
梨子「良かった……やっぱりここにあった……」
曜「梨子ちゃん……」
梨子「……じゃあ、私、先に帰るね……」
千歌「梨子ちゃん!」
梨子「……ごめんなさい……少し、1人になりたいから……」
バタンッ
千歌「……ぁ」 曜「ど、どうしよう……」
鞠莉「ダイヤ!どうして見せたのよ!ハッキリ言って、一番最悪な状況よ!?」
ダイヤ「遅かれ早かれこうなるのは分かりきっていたことでしょう?」
鞠莉「でも、だからって……」
ルビィ「ルビィのせいだ……」
花丸「ルビィちゃん……何を……」
ルビィ「ルビィが善子ちゃんのこと問いただしたりしなかったら……こんなことには……」
善子「アンタのせいじゃないわよ……私がもっと上手くやれてれば……」
果南「誰の責任とかじゃないでしょ、私達全員被害者なんだから」
花丸「そうだよっ!ルビィちゃんも善子ちゃんも悪くないって」
千歌「……私のせいだ」ボソッ
鞠莉「千歌っち……?」 千歌「私が……私が無理に誘わなかったらよかったんだ……」
果南「千歌!」
千歌「私が梨子ちゃんのこと何にも知らないのに無理矢理誘ったりしたから……梨子ちゃんが嫌な思いしちゃったんだ……わたしがーー」ギリッ
バンッ
ルビィ「ひっ……!?」ビクッ
ダイヤ「貴女達、いい加減にしなさい!」
千歌「っ……」ビクッ
ダイヤ「……津島さん、運営に通報は?」
善子「……してる……アカウント凍結とか対応してくれてるけど……余計に逆恨みされる原因になって……」
ダイヤ「少なくとも見捨てられてる訳ではないのですね」
善子「そう、かもしれないけど……」
ダイヤ「けど、けど、けど、とネガティブになるのはやめてください」
善子「そんなこと言われたって!」
ダイヤ「私達が沈んでいていれば、桜内さんは誰を頼ればいいか、分からなくなってしまいますわ!」
鞠莉「ダイヤ……」
ダイヤ「確かに私達に事を解決する力なんて無いかもしれません、ですが……せめて桜内さんを受け止めてあげることは出来るでしょう?」
曜「……」 ダイヤ「千歌さん」
千歌「……」
ダイヤ「桜内さんを誘った自分のせいだと言うのなら、その責任、最後まで背負ってください」
千歌「責任……」
ダイヤ「全く……普段はヘラヘラとおバカなくせに、無理に悩んでどうするんですか」
千歌「お、おバカ!?」
ダイヤ「ええ、ええ、おバカですわ、だからクヨクヨ悩まずにいつも通り根拠もなく前向きにいて下さい」
鞠莉「褒めてるのか、貶してるのかハッキリしなさいよ……」
ダイヤ「桜内さんがどうにもならなくなった時、この部室は、私達がいる場所だけは、彼女の居場所として守ってあげるのが友達というものでしょう?」
千歌「……居場所」
果南「……そうだね」
曜「わかった!私もおバカだから悩まない!」
善子「なによそれ……」
花丸「マル達が桜内先輩を支えてあげなきゃ」
善子「……もう少し出来ることないか粘ってみるわ」
ルビィ「ルビィも!」
千歌「うん……うんっ!……一番苦しいのは梨子ちゃんなんだもんね……!」
ダイヤ「そうですわ」
千歌「だから私が……私達が居場所になってあげなきゃ!」 ーーー
むつ「ねぇ、ちょっと」
千歌「どうしたの?」
むつ「……桜内さんと喧嘩でもしたの?」
千歌「えっ?」
いつき「桜内さん、最近授業終わったらすぐ帰ってるみたいだから」
よしみ「なんかあったの?」
曜「そういうわけじゃないけど……」
むつ「……?」
いつき「私達にも何か出来ることない?」
千歌「ありがとう、でも今は待っててあげることしか出来ないから」
よしみ「……」
曜「でも、きっとまた元のAqoursに戻れるから、だからみんなも待っててくれないかな」
いつき「……」
むつ「……わかった、二人がそういうなら」
よしみ「うんっ」
いつき「またライブする時は手伝うからね」
千歌「ありがとう♪」 ーーー
ルビィ「善子ちゃん、これ」
善子「……不味いわね」
鞠莉「どうかしたの?」
善子「ν-tralにまで飛び火しちゃってる」
果南「えっ」
ルビィ「ν-tralは元々人気も凄いから動画も画面いっぱいにコメントが出ちゃって見えなくなるって理由でコメント非表示を推奨してるんだけど……」
花丸「とんでもない理由ズラ……」
ルビィ「そこに多分私達の動画にコメントしたのと同じ人がコメントしてたらしくって、それに気付いた人達がいたみたいで……」
果南「とんでもない奴だね……」
ルビィ「それが広まっちゃって……昨日ν-tralのページに二人からのコメントが出てたの」
ダイヤ「……現在、一部の方よりご指摘を受けている件について……」
鞠莉「プライバシーに関わる事であるため、詳しい内容については伏せさせていただきますが……事実とは全く異なる内容であり、ご指摘にあるようなトラブルは一切なく、現在に至るまで良好な関係であると認識しております……」
ダイヤ「……また今回の件につきまして、私共は一個人を狙った悪質な誹謗中傷であると判断し、このような行為が行われている事に対し、深く遺憾の意を表明します……」
鞠莉「……国立音ノ木坂学院アイドル研究部所属……ν-tral、高坂雪穂、絢瀬亜里沙、及びアイドル研究部部員一同……」
果南「大事になってきちゃったね……」
善子「流石にランキング1位のグループまで巻き込まれたとなるとね……」
ダイヤ「ですが、ここまで大っぴらになれば運営も表立って動きやすくなるのでは?」
鞠莉「確かにね、それがどう転ぶかは分からないけど……」
ルビィ「……梨子先輩」 ーーー
花丸「……」グスッ
善子「……」
ガラッ
ルビィ「あっ……千歌ちゃん……」
千歌「おはよう、どうしたの?」
果南「ダイヤ……」
ダイヤ「私達が来た時に書き置きが……ご迷惑おかけしました、退部します……とだけ」
曜「そんなっ……」
千歌「……退、部」
鞠莉「さっきから連絡もしてるけど……何も返ってこないわ」
果南「千歌……」 曜「なんで……梨子ちゃん……」
千歌「……梨子ちゃんの家に行こう」
ダイヤ「全員で行っては家の方にご迷惑ですわ」
千歌「私だけで行ってくる」
善子「私も行くっ!」ガタッ
ルビィ「善子ちゃん……」
善子「私があんなの見せちゃったせいなんだから!」
ダイヤ「ですから、そういう話は……」
善子「分かってるわよ!分かってるけど……やっぱりちゃんと謝りたいの!」
鞠莉「……なら、ヨハネちゃんと千歌っちで行ってきて、私達はここで待ってるから」
花丸「……」グスッ
千歌「分かった、善子ちゃん行こう」
善子「絶対リリーを連れ戻してくるから!」
バタンッ 果南「……これからどうするの?」
ダイヤ「どうもこうもありませんわ、届けが受理されていればそれまで」
ルビィ「お姉ちゃん……!」
ダイヤ「桜内さんの意志を私達の勝手で覆すわけにはいきませんわ……」
鞠莉「ダイヤ……バカ真面目なのはいいけど、あんまり融通利かないなら……」ギリッ
ダイヤ「一個人の私が何の融通を利かせろと?」
鞠莉「じゃあ何!?このまま黙って梨子っちを見捨てろって言うの!?」バンッ
花丸「……っ!」ビクッ
ダイヤ「誰もそんなこと言ってません!」
曜「やめてよ二人共!」
果南「マルとルビィが怖がってる」
鞠莉「っ……ごめんなさい……」
ダイヤ「すみません……」
果南「……とりあえず千歌と善子ちゃんが梨子ちゃんを連れ戻してくるのを待ってよう」 ーーー
ピンポーン
母「はーい」
ガチャッ
母「あら……貴女達……」
千歌「朝から急にすみません!あのっ、梨子ちゃんに会わせて下さい!」
善子「どうしても話がしたいんです!」
母「……ごめんなさい」
千歌「っ……お願いですっ!少しだけでいいんです」
母「そうじゃなくて……今いないのよ」
善子「えっ……」
母「朝早くにね……出かけちゃったみたいで」
千歌「どこにですか!?」
母「……お父さんに会ってくるって書き置きがあって……」
善子「お父……さん……?」 母「今、夫が……梨子のお父さんが1人で暮らしてる家……私達が元々住んでた家に行ってるみたい」
善子「元々って……東京……」
母「ええ、だからごめんなさい……」
千歌「そう……ですか……」
善子「突然すみませんでした……」
母「力になれなくてごめんなさいね……」
千歌「……あのっ!」
母「……?」
千歌「梨子ちゃんが帰ってきたら……私達ずっと待ってるからって伝えてあげてください!お願いします!」
母「……ええ……ありがとう、必ず伝えておくわ」 ーーー
梨子「……」
父「はい、梨子」コトッ
梨子「ありがとう……」
父「それにしても、突然でびっくりしたよ、連絡くれれば良かったのに」
梨子「ごめんなさい……」
父「いや、構わないんだがね、休日は庭の手入れくらいしかすることもないから」
梨子「……いつもしてるの?」
父「ああ、放っておいたら母さんに怒られるからな」
梨子「お母さん……いつも綺麗にしてたもんね」
父「……母さんの言ってた通り、少しずつ戻ってきているんだね」
梨子「……うん、本当に少しずつだけど……」
父「良かった、本当に」
梨子「……うん」
父「……この間の怪我は大丈夫かい?」
梨子「え?あ、うん、それは大したことなかったから」
父「そうか……あの時と全く一緒だから驚いたよ」
梨子「……」
父「本当に……人の事ばかり心配して……」
梨子「……そう、だね」 父「あぁそうだ、今更だが、今日はどうしたんだ?」
梨子「……特に用があったわけじゃないんだけど……なんかお父さんに会いたくなって……」
父「……」
梨子「……」
父「そういうところも変わらないな」
梨子「……えっ?」
父「何かあるとすぐ父さんの側に来るくせに、何もないなんて誤魔化すところがね、昔から変わらない」
梨子「そう……なんだ……」
父「……心の目でよく見なければものごとはよく見えない」
梨子「えっ?」
父「父さんが梨子にいつも言ってた言葉だよ」
梨子「……心の目……」
父「何に悩んでるのかは父さんには分からないし、そもそも年頃の女の子の悩みなんて、父さんがアドバイスしてあげられることはないけどね」
梨子「……」
父「いつだって答えは梨子の心にちゃんとあるはずだよ」
梨子「……私の……中に……」
父「ああ、梨子は多感な時期だ、色んな事を見て、色んな事を考えて、色んな事に迷うだろうけど、そんな時はじっと心を見つめて、心で見つめなさい、そうすれば自ずと答えは見つかるはずだ」
梨子「……こころを……」
父「さて、梨子、せっかくだからお昼でも食べていきなさい」
梨子「えっ?あ、わかった……」
父「母さんや梨子みたいに上手じゃないけどね、それなりに食べられるものは作れるようになったから」
梨子「……なんか不安になる言い方だね……」クスッ ーーー
梨子「……じゃあ私、そろそろ行くね」
父「帰るのか?」
梨子「うん、でもその前に行かなきゃいけない場所があるのを思い出せた……」
父「……そうか、気をつけてな」
梨子「うん、ありがとうお父さん」
父「なに、父親として当然のことをしただけだよ」
梨子「うん」
父「梨子、父さんはいつだって梨子の味方で、梨子のファンだからな」
梨子「ふふっ……ありがとう」
父「梨子、心の目でよく見なければものごとはよく見えない」
梨子「……肝心なことはいつも目で見えないんだ、だよね」
父「……!」 梨子「お父さんと話してたらまた少しだけ思い出せた」
父「……そうか」
梨子「本当にありがとう、また来るから」
父「ああ、いつでもおいで」
梨子「それじゃ」
父「梨子」
梨子「ん?」
父「いってらっしゃい」
梨子「……うん!行ってきます!」
父「全く、変わらないようでちゃんと成長してるんだな……」
父「……ただ、反抗期が来てないような気がするんだが……うむ……」 ーー
梨子「……」キョロキョロ
梨子「確か……この辺りだったと思うんだけど……」キョロキョロ
梨子「うーん……」
ワンッ
梨子「ん?」
?「えっ……」
梨子「あっ……」
ワンワンッ
梨子「ナナ……」
ナナ「梨子……なんで……」 ーーー
ワンッワンッ
梨子「ふふっ、よしよし、覚えててくれたんだね」ナデナデ
ワンッ
ナナ「お茶でよかった?」コトッ
梨子「うん、ありがとう」
ナナ「……」
梨子「……あの、いきなり来て、ごめんね……」
ナナ「ううん、梨子が転校しちゃった時……もう会えないかと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃっただけ」
梨子「……」
ナナ「でも、記憶が無くなったって聞いてたのに……」
梨子「少しずつだけど……戻ってきてるの」
ナナ「えっ……」
梨子「小さい頃のこととか……ナナ達と過ごした時のこととか……事故のこととか……」
ナナ「そっか……良かったね」
梨子「うん」 ナナ「……」
梨子「……」
ナナ「あの時は……本当にありがとう」
梨子「……」
ナナ「それから……ごめんなさい」
梨子「ううん……ナナは悪くないよ」
ナナ「でも……梨子は私を庇ったせいで車に撥ねられて……」
梨子「もう過ぎた事だし、見ての通り今も元気にやってるから」
ナナ「梨子……」
梨子「ねぇナナ」
ナナ「ん?」
梨子「一つ聞いていいかな?」
ナナ「何?」
梨子「どうしてスクールアイドル辞めちゃったの?」
ナナ「……あんな事があったのに……続けてられないよ」
梨子「……」
ナナ「私が逃げ遅れたせいで梨子が入院して……記憶まで無くなって……それなのに私だけ続けるなんて出来ないよ……」 梨子「雪穂や亜里沙は?穂乃果先輩達は?」
ナナ「みんな引き留めてくれたよ……私だって最初は梨子のことを待ってようって思ってた……でもやっぱり続けられなかった」
梨子「……」
ナナ「雪穂も亜里沙も、他のみんなも今でも仲良くしてくれてるよ?……でもやっぱり自分のこと責める気持ちだけは無くならないから……結局スクールアイドルそのものから離れないと耐えられなかった……」
梨子「……」
ナナ「……ごめんね、せっかく梨子も記憶が戻ってきて良くなってるのに……こんな話して……」
梨子「……」
ナナ「……」
梨子「ナナ」
ナナ「……?」
梨子「ナナに見てほしいものがあるの」
ナナ「見てほしいもの……?」
梨子「えっと……これ」
『今日はみとしースペシャルライブに来てくれてありがとうございます!』
ナナ「これ、は……スクールアイドル……」 梨子「今、私のいる学校のスクールアイドル……Aqoursって言うの」
ナナ「……どうしてこんなのを」
梨子「いいから見てて」
ナナ「……」
梨子「……」
『実はみんなにお知らせがあります!』
『Aqoursに新しいメンバーが加わりました!国木田花丸ちゃんと!』
『桜内梨子ちゃんです!』
ナナ「え……」
梨子「……」
ナナ「嘘……」
梨子「不思議だよね……」
ナナ「……」
梨子「何にも覚えてないのに……何にも知らないのに……私、懲りずにまたスクールアイドル始めちゃったの」クスクス
ナナ「梨子……」
梨子「伝えに来るのが遅くなってごめんね……ナナや雪穂達とは一緒じゃなくなっちゃったけど……私は今もちゃんとスクールアイドルだよ」
ナナ「……っ」
梨子「だからもう自分を責めないで」
ナナ「り、こ……」グスッ
梨子「……私のせいで辛い思いさせてごめんね」
ナナ「梨子のせいじゃない!私……私が……うぅっ……」
梨子「ナナ……」ギュッ
ナナ「うわぁぁぁん!」ギュウッ ーーー
ナナ「……はぁ……」ズビッ
梨子「落ち着いた?」
ナナ「……久しぶりに会えたのに……みっともないところ見せてごめん……」
梨子「そんなの気にしないよ」
ナナ「ありがと……少し楽になれた気がする……」
梨子「良かった♪」
ナナ「梨子は今楽しい?」
梨子「えっ?」
ナナ「この新しいグループのみんなといて、楽しく過ごせてる?」
梨子「うん、どうして?」
ナナ「苛められてない?」
梨子「苛められてません」
ナナ「なら良かった」
梨子「なにそれ、もう」
ナナ「雪穂と亜里沙には言ったの?」
梨子「うーん……言ったというか……まだ記憶が戻ってない頃に一度会ってるの」
ナナ「そうなの?」
梨子「うん、まぁそれからまだ会えてないけど……」 ナナ「……」
梨子「……」
ナナ「会いたい?」
梨子「えっ?」
ナナ「今日のこの時間だと……もう少ししたら男坂で練習始まるんじゃないかな」
梨子「……」
ナナ「離れたって言っても同じクラスだし、雪穂と亜里沙とは中学から一緒だしね、どこで練習してるかくらいは分かるよ」
梨子「……」
ナナ「きっと雪穂も亜里沙も喜んでくれるよ」
梨子「……うん」
ナナ「……」
梨子「……」
ナナ「考えてる暇があったらとりあえず動く!」
梨子「えっ?」
ナナ「凛先輩がいつも言ってたでしょ」
梨子「そう……だっけ」
ナナ「うん、だから行ってきなよ」
梨子「……わかった」
ナナ「……今日は本当にありがとうね」
梨子「ねぇ、ナナ、またみんなで会えるかな?」
ナナ「……どうかな、私達はもう卒業だから」
梨子「そう……だよね」
ナナ「でも、大丈夫、今日会えたから」
梨子「……うんっ」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) ーーー
「じゃあ、まず一年生から」
「はーい」
「いくよー……スタート!」
タッタッタッタッ
「しっかり足上げてー」
タッタッタッタッ
「……」
タッタッタッタッ
「はい、お疲れー、タイムは?」
「うん、ちょっとずつ短くなってるよ」
「だいぶ体力付いてきたね、じゃあ次ー」
「はーい」
梨子「……」 ーーー
亜里沙「お疲れ様、じゃあ10分休憩してから基礎ステップの練習ねー」
「はーい」
雪穂「亜里沙ー」
亜里沙「なに?」
雪穂「ブロック予選の曲なんだけどね」
亜里沙「うん……ん?」
雪穂「どうかした?」
亜里沙「……えっ」
雪穂「亜里沙……?」
亜里沙「……!」ダッ
雪穂「ちょっ!?どこ行くの!?」
亜里沙「梨子かもしれない!」
雪穂「えっ!?ごめん!ちょっと後任せる!」ダッ
「えっ?分かりましたー……?」 ーーー
亜里沙「梨子!梨子ー!いるの!?」
雪穂「亜里沙、本当に梨子なの?」
亜里沙「忘れるわけないよ!あれは梨子だよっ!」
雪穂「亜里沙……」
亜里沙「梨子ー!」
雪穂「……」キョロキョロ
亜里沙「梨子ー!」
雪穂「あっ!亜里沙!あれ!」
亜里沙「やっぱり梨子だ!梨子ー!」
梨子「……」スタスタ
亜里沙「おーい!会いに来てくれたんだよね!」
梨子「……」スタスタ
雪穂「亜里沙、ちょっと待って」
亜里沙「なんで……止まってくれないの……梨子」
梨子「……」スタスタ
雪穂「……」
亜里沙「……どうしてこっち見てくれないの……」 雪穂「……亜里沙」
亜里沙「……なに?」
雪穂「私に合わせて」
亜里沙「えっ?」
雪穂「すぅ……音ノ木坂学院アイドル研究部!高坂雪穂ぉ!」
梨子「……」ビクッ
亜里沙「っ!同じくアイドル研究部!絢瀬亜里沙ぁ!」
雪穂「私達は!ν-tralとしてー!絶っ対決勝に行くからー!」
亜里沙「アキバドームで待ってるからー!」
梨子「……」
雪穂「はぁ……はぁ……」
亜里沙「……はぁ……梨子……」
梨子「……っ」
雪穂「……戻ろ」
亜里沙「でも……」
梨子「……」
梨子「……浦の星女学院!スクールアイドル部!桜内梨子っ!」 雪穂「……っ」ビクッ
亜里沙「梨子……!」
梨子「今度は……今度は必ず決勝に行くから!」
雪穂「……」
亜里沙「……」
梨子「形は違っても!約束を守るために!絶対!」
雪穂「約束……」
亜里沙「それって……!」
梨子「……っ」ダッ
雪穂「……」
亜里沙「ねぇ、雪穂……」
雪穂「……うん……きっと思い出せたんだ……」 ーーー
梨子「はっ……はっ……はっ……」
梨子「帰らなきゃ……っ」
梨子「謝らなきゃ……っ」
梨子「みんなに……っ」 ーーー
ガシャンッ
梨子「……はぁ……はぁ……」
梨子「……門……開いてない……」
梨子「はぁ……はぁ……そうよね……もうこんな時間なんだし……」
梨子「……何か挟まってる……紙?」
梨子「……」スッ
梨子「……っ!」ダッ
『初めて会った場所で待ってます 千歌』 ーーー
梨子「……っ!」
梨子「……いたっ!」ザッ
梨子「はぁ……はぁ……はぁ……」
千歌「……」
ルビィ「梨子先輩……」
花丸「……」
鞠莉「ほんとに来たわね」
ダイヤ「……」
曜「梨子ちゃん……」
善子「り、リリー……」
果南「善子ちゃん待って」
梨子「……っ」
梨子「ごめんなさいっ!」
千歌「……」
梨子「練習行かなくなったり……勝手にいなくなって……自分勝手でした!」 ルビィ「そんなこと……」
ダイヤ「ルビィ」
ルビィ「っ……」
梨子「どうすればいいか分からなくて……みんなに迷惑かけたくなくて……」
花丸「……」
梨子「でも……お父さんに会って……ナナや雪穂達と会って……気付いたの……」
善子「……」
梨子「私……心の底からスクールアイドルが好きだって!だから記憶がなくたって、またここでスクールアイドルを始めたんだって!」
果南「梨子ちゃん……」
梨子「だからっ!だから自分勝手で滅茶苦茶で!迷惑もいっぱいかけちゃうけど!また私をスクールアイドル部に入れてくださいっ!!」
鞠莉「……何を馬鹿なこと言ってるの」
梨子「っ……分かってます……馬鹿で最低な事を言ってるのは……でもっ……たとえ一緒に踊れなくても……せめて同じ部員としてーー」
千歌「梨子ちゃん、なんか勘違いしてないかな」
梨子「……えっ」 千歌「スクールアイドル部を辞めた人なんていないよ」スッ
梨子「これ……私の書いた退部届……なんで……」
ダイヤ「全く、私が回収してなければ本当に受理されてましたわよ」
果南「ダイヤが先生に掛け合って保留にしてもらったの」
梨子「……どう、して……」
千歌「信じてたから」
梨子「……っ」
千歌「梨子ちゃんなら絶対戻ってくるって信じてたから」
曜「負けず嫌いな梨子ちゃんがこんなところで逃げ出したりしないって」
花丸「それでもヒヤヒヤしたズラ……」
千歌「だから、おかえり、梨子ちゃん」
梨子「っ……うん……うんっ……ただいまっ……」グスッ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています